イズムパラフィリア   作:雨天 蛍

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執筆に使っていたスマホが死んで自分もモチベが下がって女神転生ⅣとDSJとアークナイツとウマ娘をやってました。やはり、バックアップは取っておくべきですね!(肝心の最新話のデータは吹っ飛んだ人)
新しいスマホはアプリを同時に2つ開けるから設定とか前話とか見ながら文章書けて凄い楽です!

なお、詫び石の配布はありません。


74話 きっつ

 従魔との同期は、感覚の拡張に等しい。フルダイブVRが出てからはあまり使われなくなったが、AR技術や、人体拡張デバイスの接続に似ている。

 

 ゲーム時代では俯瞰視点からの操作だった。しかし、従魔というものは人間よりも遥かに高性能であったようだ。

 

「──見える」

 

 ラインクレストの外観はロボ娘だ。もっと進むと、そっちは本体じゃないことが判明するものの、未凸状態ではそうもいかない。

 基本的に従魔は人類よりも遥かに優れた存在であり、本質は情報体なので、同期をしたところで脳に負荷がかかるということもない。あちら側で情報の処理もしているのだろう。

 むしろ、同期を切った方が感覚が鈍くなるのでデメリットになる。繋いだ時に人体へと変換された拡張された情報が途絶えるので、腕を失ったような気持ちになるのだ。

 

 最大の問題点は、人間を越えた感覚を与えられる万能感と、それに伴う中毒性だろう。肉体に破滅をもたらさない麻薬にも等しい。

 

 それを、理性で抑えていく。同期はゲームでも何も説明が無いただのシステムであったが、これは危険である。

 

 イズムパラフィリアにおいて、俺が考える敗北、終了は『召喚士でなくなること』である。

 それが、死であることも確かだが、より身近な危険として、従魔使いになることが挙げられる。

 

 従魔使いは、人間を辞めた存在だ。身体能力を強化することが可能だが、引き換えに人間の枠組みから外れてしまう。

 それが何の問題になるかというと、召喚が行えなくなるというデメリットがあるのだ。

 

 従魔との召喚に関する契約では、基本的に、召喚士に対する害意ある行動や攻撃はできないとされている。では、従魔使いになるのは害意に当たるのではないかと思われるが、そうではない。

 

 基本的に、従魔の善意で変わるか、人が求めることに応じる形で、従魔使いへと変貌するのだ。

 

「従魔は力である。しかし、俺自身の力ではない」

 

 戒めるように呟く。ここを違えれば、たちまち力に呑まれるであろう。

 

「……行こうか」

 

 ラインクレストを操り、敵を撃ち抜いていく。俺、彼女が通った道に撃ち漏らしは無く、光の玉が立ち上っていく光景だけが残る。

 

 台風のように周囲を蹂躙しながら、俺はゆっくりと目的地へと向かった。

 

 ぶっちゃけ今のままだと勝つのが難しいからね。高レアリティによるレベル上げの遅さがここに来て少し厳しい状態になってきた。

 終末の洞窟を通って来た時に、ある程度上昇はしているが一番成長したのがウィードなのが痛い。龍種覚醒のデメリットである動けない時間というのは、ステータスの総量から算出されるのである。

 

 だからこそ、味方龍種にデバフ技を積み込んでむりやり起動させるギミック構成も存在するのだが、ウィードの耐性に対する味方従魔の必要ステータスが不足している。

 なお、龍種覚醒中にバフを積んでも待機時間が増えることはない。ただ上限値が伸びるだけなのだ。

 まあ、そういったバフを積んだ時限爆弾エース戦法には特定の従魔が居れば詰ませる事ができる。レア度高い上にリミテッド従魔だが。

 

 レイデンのボスは手持ち従魔にコンセプトが組まれている。肝心のアイドルが人間なので真の脅威ではないものの、シナジー効果が高いのだ。

 従魔【アイドルステージ】の与える熱狂という状態異常は、スタン状態にならなくなる代わりに受けるダメージが増えるというもの。また、アビリティの一つに 【おさわり禁止】というものがある。これは、ステージ上にいる味方へのダメージを肩代わりするというものである。

 従魔【スピーカーマイク】の音属性攻撃は、通常攻撃が同心円上に広がる広範囲攻撃であり、単騎では弱い。だが、この従魔は【ピースメーカー】同様に装備品アビリティを持っているのだ。装備品アビリティの特徴は、装備適性持ちにアビリティを発動した時に、装備者へ自分のスキルとアビリティを追加できる効果があるのだ。

 更に、戦闘になるとアイドルステージ上に、スピーカーマイクを装備した従魔が現れる。こいつも地獄属性を持っているのだ。つまり、通常攻撃で音属性と地獄属性の両方が乗っかるのである。範囲攻撃に回復を付けるとかいうコンボでデカイ回復効果を発揮してくる。

 これに加えて、彼女は戦う時に従魔使いの特有である補助効果を使ってくるのだ。これは、敵専用と言っていい能力であり、プレイヤーは召喚士だから使えない。これがボス敵の難易度を高める要素になっているのだ。

 効果はアイドルリンク。スピーカーマイクの装備者が与えた回復効果をアイドルステージに発動するという効果である。

 

 これにより、初心者及び無課金の雑魚の集団戦法で挑むと無限に回復されて負けるのである。

 

 対策としては、スピーカーマイクは攻撃範囲自体はそこまで広くないので、遠距離攻撃型の従魔で戦うのが一つ。集団戦法だとしても、攻撃には間隔があるので、回復量を上回る攻撃を与えるのが一つ。最後に、エース戦法である。一体の従魔にひたすらバフを集めて倒すというものである。

 

 普通にプレイしていれば、現在の手持ちはチェリーミートにミルミル、そして適当な星三以上の従魔は最低限いるはずだ。ミルミルとチェリーミートでアタッカーをやりつつ、ピクシー辺りで回復を入れていれば勝てたのが本来のストーリーである。

 

 今は上方修正されているので勝てない。マイクを持つ従魔に歌姫アビリティが追加されたので。

 

 相手の要となる従魔は星四死種【歌うバンシー】である。初期はただの地獄属性持ちでバインドボイスによる行動妨害が厄介な従魔なだけであったが、第二部開始にあたってアプデが入り、追加された【歌姫シリーズ】という従魔によって、こいつは大幅な上方修正が入ったのである。

 歌姫シリーズは、アビリティにサポート効果を持っている従魔だ。効果は様々だが、地形タイプの緑種従魔以外の次に登場したフィールドアビリティ持ちの従魔である。つまり、居るだけで意味があるのだ。

 敵が緑種を持っていないことだけが幸いである。バンシーの歌姫アビリティの効果は、敵のステータス弱体化と、音属性の耐性を減らすという効果である。本来は、バンシーのアビリティであるバインドボイスの強化なのだろう。しかし、ここにシナジー効果があるボスがいたので、ストーリー難易度が凶悪化したのだ。

 

 まあ、そういった事情があるので、ここをスルーせずに潰していく場合は、強化が必須となったのだ。

 俺がここを避けない理由としては、第一部ではこれ以降死種の従魔向けの経験値稼ぎの場が無いという点が一番にあがる。

 第二部も序盤はほとんど稼ぎどころがないので、今後を見据えてある程度鍛えておきたいのだ。

 

 長射程高火力の従魔であるラインクレストが居てくれたおかげで経験値稼ぎが随分とはかどる。有力なアタッカーがウィードだけだった場合、ニ週間くらいは滞在することも検討していたのだ。

 

 死種は攻撃属性の性質上基礎ステそのものに打たれ強さは無いのだ。高い再生力でステータスを誤魔化すような『殴らないと死ぬ』という弱さを持っている。

 

 だからこそ、レベルは低くても一方的に殴れるラインクレストは相性が良いのだ。

 

「目標値まで稼げたら、さっさとボスを倒して先に行こう。ラインクレスト。ペースを上げるよ」

「承知いたしました」

 

 ラインクレストを抱き寄せる。助走をかけて跳び上がり、シルクをコールし指示を出す。

 

「『シルバーウィンド』『リコール』」

 

 弱小従魔ながら完凸レベルマまで鍛えたシルクのスキルはそこそこの威力を発揮する。

 風を打ち出した反作用により浮き上がる。むりやりだが機動力をこれで引き出せる。今ならキャラクターコントロールをミスすることもない。

 

 どこぞの鴉のようにぴょんぴょん跳ねながら、ラインクレストの銃で敵を撃ち倒していく。

 

 アヤナには悪いが、しばらく監禁されていてもらう。

 

・・・・・

 

 アヤナが連れて来られた場所は、かなり広めの部屋であった。

 放り投げるようにそこへ入れられた後は、ガチャンと大きな音をたてながらさっさと錠を閉められてしまう。少しの文句を言う暇も無かった。

 

「ここは……」

「お前はしばらくそこで待っていろ! 今指示を貰ってくるからな!」

 

 アヤナの声に答えたわけじゃないだろうが、ゴロツキが荒々しく言い終えると、足早に去っていく様子が感じ取れた。

 とはいえ、アヤナも大人しく待っているつもりはない。どうにも嘘か隠し事をしているような連れの指示でこんなことをしている。彼を信じていないわけでもないが、自分でできることはやっておきたい性分なのだ。最低限自力で脱出できるようにはしておきたい。

 

 本人は否定するが、全く信用していないようだ。

 

「材質は……思ったより丈夫そうね」

 

 自分の力で今すぐ壁をぶち抜いて脱走。とはならないだろう。

 

「唯一の嬉しいポイントは、魔術師ギルドがないところね」

 

 魔術師というのは、基本的にどこの街にも一人は存在する。しかし、どうやらここにはいないようだった。

 アヤナがどうして理解できたのか。それは、この地に地脈の噴出口が無いからだ。つまり、重要拠点でもなく、本来ならば従魔にでも殲滅されるであろう場所であるのだ。

 歴史で見れば、きっと本当に短い期間しか存在できない場所なのだろう。地脈もなく、魔術師もいないということは、街中に従魔が発生し放題で、同時に迎え撃つ能力もなく、街を再建する能力もないということになるのだから。

 

「じゃあ、後は悪事を暴けばいいのかしら」

 

 どこも安心できる場所ではないため、アヤナは休む気にもなれなかった。

 部屋全体を見渡すと、細かいキズが残っているのがわかった。

 それらの多くが、鋭い爪によるひっかき傷のようで、おそらくここが、チェリーミート達のような獣人が収容させられていた場所なのだろう。

 なぜ、今はここにいないのかが不明だが。

 

 部屋をうろうろと彷徨っていると、不意に扉が開かれて、薄ピンクでフリフリの衣装に身を包んだ女性が入ってきた。

 鼻から下を薄いベールで隠しているが、目元のシワは隠せていない。アヤナはひと目見たときに「キッツ」と言わなかった自分の精神力を褒めた。

 

「おまたせ~! みんなのアイドル、ネイリィちゃんだよ!」

「キッツ」

 

 儚い精神力だった。

 

「あぁ〜!! 今ひどいこと言った! 確かに私は歳だけど、それでもアイドルなんだから!」

 

 たとえアイドルであろうと、年齢が上がればキツいものはキツい。

 

「そう、うまい具合に人生のパートナーが見つかっていないだけだから…………!」

 

 なんと悲しきモンスターなのだろうか。

 ハッと気付き、主導権を奪われていると思ったアヤナは気持ちを切り替える。いつでもネイリィを倒せるように、こっそりと構えた。

 

「それで? そんな人がどうして私を捕まえて、わざわざ顔を見に来たのかしら?」

「そうね〜。あなたは、召喚士じゃないから勇者アヤナちゃんかな? あなたならいいかもね」

 

 こちらをまじまじと観察しながら、ネイリィは切り出した。

 

「ねえ、あなたのいた【地球】って、どんなところ?」




短めです。
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