新章。推敲不足です。(読者への裏切り)
感想より、罪罰の種が天種ではなく死種と表記されていたのを修正。
ありがとうございました。
78話 花開く緑種
ゲームというのは、ステージが進むほどに難易度が上がるものだ。特殊なギミック。変わったボス。あの手この手でプレイヤーを飽きさせないように変化を加えてくる。
緩やかに進むインフレに対する対策として、ステージギミックや使用制限というのがある。要は殴っちゃいけない敵を用意するとか。完全に使用禁止にするのだ。
実質両者共に同じようなものであるが、反発が小さい方が前者であり、工夫を凝らして推しを活躍させたり、バランスブレイカーをゴリ押しさせたりと、インフレに対する抑止力は控えめになっている。
後者は、より明確な縛りであると同時に、使えないなら実装するな。というような反発を引き起こしやすい。今まで使わないようなキャラクターにスポットを当てやすくなる行為ではあるが、上手く使わないと炎上等に繋がっていく。
イズムパラフィリアもソシャゲの皮を被っているので、インフレの対策はよくある方だ。ソシャゲなんぞ、金と時間をかけたほうが勝てるゲームというものであるにも関わらずプレイヤースキルを重視した制限を設けた事で、ユーザー離れを引き起こした過去がある。
問題はメインクエストにそんなものを用意したというところである。詰め将棋のような感覚で遊べるものの、最初はこの手法を受け入れられない課金ユーザーやクレーマーみたいな奴が消えていった。
ふるい落としとしては成功だし、今後続いていく伝統みたいなものになるのだが、これもまた、ソシャゲというゲームの。ひいてはイズムパラフィリアというゲームの凋落の歴史の一幕である。
「…………ここが、里香達がいる場所なの?」
「うん。どうやら先に入っちゃったらしいね。ただ、樹少年は入っても出されるらしく、外周のどこかにいるらしいよ」
レイデンを抜けて更に西へと進んだ先。白のドームにより外界からは覗くことができない場所で、俺達は立っていた。
数日前のメッセージから、樹少年達はこの街へとたどり着き、中へと入っていったと予想される。
俺の記憶が正しければ、ここは敵の生産拠点のような場所である。アルラウネの従魔によって、人間及びそれに近しい生物を従魔へと近付ける事ができる薬が開発されているはずだ。
具体的に言えば、エンドロッカスが作った従魔化の薬物の主成分がここで作られている。レフトオーバーという薬物もこれの残滓で作られている。
一応アルラウネは味方になる従魔だ。補助や回復を行うスキルを覚える従魔であり、ガチャでヒーラーを引けなかった場合はしばらくお世話になること間違いなしの有能従魔である。
「ここ、特殊ギミックある場所なんだけどなぁ。まあ、寄生されてなければ大丈夫かな」
「え、寄生? そんなグロい感じのやつがあるの?」
「まあ、そういう能力を持つ従魔だからこそ薬物として利用されたんだ。よほどヤバいことしてなければ問題ないよ」
早速、街に入る為にノーソとリリィをコールして出しておく。今回は洒落にならないので全力で警戒すべきだ。
トラスをしっかりと肩車し、アヤナへと振り返る。
「じゃあ、後は留守番よろしく。できれば樹少年と合流しておいてくれると嬉しいかな」
「はぁ!? ちょっと待ちなさいよ!」
「あるじさま!?」
「いってらっしゃいませ。旦那様」
制止の声を無視してドームへと潜り込む。ノーソは知らないのか驚いた様子で。リリィはわかっているのか普段通りなのか、ニヤニヤと送り出してきた。
弾き出されるというのは、樹少年の手持ちに高レアヤンデレ系従魔でも引き当てたのだろうか? 束縛アビリティがあればもしかしたらここに入るのは難しいのかもしれないし。
ゲームではそんな挙動聞いたことがないのだが、反発しそうな条件を組み合わせた場合はそうなる気がする。
とはいえ、そんな従魔でもリコールすればいいはずなのだが。
「…………イベントの最中とかかな?」
一部イベントでは従魔が仮所有状態になる。その期間中はロストしない自由戦力が勝手に使われるので、おそらくそういった従魔を持っているのかもしれない。
その場合は期間中にイベント完走すれば手に入るので、知らぬ間に入手して完走してない状態なのだろう。
最悪の場合、ステータスすら判明していないデコイとして使われているだろう。
まあ、なんにせよ樹少年とは合流できないだろうから、さっさとこの街をクリアするべきだ。
ドームを潜り抜けた先は、植物が侵食した街だった。
人々が恐怖に満ちた顔で、植物化している。あちこちに茨や蔦が伸びており、そこから毒々しい色合いの花が咲いている。
空気中には、その花の花粉であろうピンク色の粉が舞っている状態だ。すぐさま袖で口元を塞いだが、幾らか吸い込んでしまっただろう。
そして、やはりというべきか。ここでは従魔の召喚ができなくなっている。
召喚制限。他のゲームでいえばレベルキャップであったり、使用禁止キャラであったり名前も形も変わることが多いが、要するに縛りプレイみたいなものだ。
イズムパラフィリアでは、メインクエストに様々な種類の召喚制限が付けられる。第二部は分かりやすく高レア従魔を召喚できなくされる。
一応、第一部であっても召喚制限で星十五以上は使えなかったりするのだが、特に考えなくても良いことである。
設定としては、世界毎の許容量やらが関係しているとかなんとか。だから、メインストーリーでも一度は星十六の野種と共闘できるのだが。
時間経過で背景がボロボロになっていき、一定時間戦闘が終わらなかったら強制敗北になる特殊ステージである。普通だと操作できない野種が自動で倒してしまうので気付かないが、対策打って検証した結果そういうステージだと判明している。
さて、話を戻そう。今回のメインストーリーの舞台は『花開く緑種』星四緑種従魔【花開くデンドロ】を使ってクリアする方式である。
ステージギミック。というか召喚制限として、この街は魔術師による結界で緑種従魔以外は召喚できないようになっている。
俺の手持ちは、龍種ウィード、緑種シルク、天種ノーソ、野種リリィ、機種ラインクレスト、死種罪罰が手持ちである。同じ召喚士であるトラスは機種と野種の従魔のみ。
柊菜は睡蓮というステージ型従魔で、樹少年がピクシー。里香は今のところ手持ちに緑種は見たことがない。
つまり、ほとんど手持ち無しで挑むことになる。更には既に柊菜達が街に入っているので、ストーリーは開始されている可能性が高い。
というか、多分何かミスってるだろう。俺はこんな状態になった街を見たことがないので。
アルラウネが従魔として覚醒してるんじゃないかと言わんばかりの荒れた街並みに、明らかに従魔化の失敗みたいな侵食のされ方をした人々。
これでアルラウネが何も関与していないとしたら、俺は今後のストーリーを何も信じないで行くしかない。人間死滅してるのに薬出回ってるとか説明もつかんわ。
とりあえずトラスは現地民の頑強さを発揮しており、特に異常も見受けられない。俺は不安が残るので、とりあえず早めに行動したい。
シルクを召喚し、通信が繋がるのか確認しながら、街中へと踏み入る。
「……だれっ!?」
「お、第一村人発見。…………いや、手遅れかな?」
石畳が剥がされて穴ぼこまみれの道を歩いていると、協会に差し掛かったタイミングで声をかけられる。
声の相手は女性であり、シスターのような深い青色の修道服に身を包んでいた。明らかにサイズが合っていなさそうな胸の膨らみ具合。それを大きく歪ませながら、こちらに正眼の構えでロッドステッキを向けている。
しかし、緊迫した状況かと思いきや、彼女の頭にはベールの代わりに大きな花が咲いている。絶対に脳に根付かれているであろう大きさと位置だ。
これがやがて街民みたいな植物へとなっていくのだろうか。
「えっと、とりあえず落ち着いて聞いてほしい。俺はスリープ。肩車している幼女はトラスだ」
「……」
女性は警戒しているようで、姿勢を崩さない。
「仲間がこの街にいると聞いてやってきたんだけど、何か知らない? 俺と同じ召喚士なんだけどさ」
「……現在、街ではアルラウネが暴走しており、街は閉鎖。生存者は避難しています。同時に、この街の中で殺人や暴行。戦闘行為が行われており、警戒するようにと指示が出ています」
「人一人いなさそうな荒廃具合だけど?」
「民間人のほとんどは魔術師ギルドへ集合しております。感染者だけが街に取り残されています。召喚士ギルドのギルドマスターが今回の事件の犯人であるとされています。あなたはどちらでしょうか?」
「対抗勢力側の召喚士かな。そういう君は感染者……で、いいのかな?」
とりあえず情報は引き抜けたので、友好的な存在でも探しに別の場所へ向かおうかな。
柊菜達もいないので、ここで足止めされていてもどうしようもないのだ。そう思い、踵を返そうとするが、こちらに寄ってくる気配に気付いた。
「敵さんが来たらしいけど、早く引っ込んでた方がいいよ」
「敵ですか? それなら、私が出ますので、逃げてください」
俺の横に並び立つシスター。これは一時休戦だろうか。こちらの警戒は崩していないが、距離は近くなっている分信用されたのだろう。
すこしためらいがちに、彼女は口を開いた。
「……エンドソーマです」
あっ、君従魔かぁ。
見たことも聞いたこともない従魔であった。しかしもう、名前がパラフィリアである。
丸呑み性癖と似ているのだが、それ以上に相手の体内へと吸収されたい性癖こそが、エンドソーマフィリアである。体内への侵入。そして存在する状況への性的嗜好のことを指す。
丸呑みの方はボラフィリアという。こっちの方が比較的有名なジャンルだ。
今回のシナリオで手に入るデンドロちゃんは、単純に樹木への愛情を示す言葉である。デンドロフィリアという。ガン○ムでも植物でもない。
デンドロちゃんが植物の代表面をしているが、実際の人気はまた別の従魔が奪っている。
イズムパラフィリア界隈の植物性愛は激戦区なのだ。
まあ、これだけで従魔認定するのも悪いので、暫定従魔娘だとしておく。
彼女のことは置いておき、俺は召喚石を取り出した。
「戦力拡充も兼ねてさ、試したいことがあるんだよね。『召喚』」
これは結界なのだから、制限は入るときにかかるだけではないのだろうか? そう思い、石を割ってみた。
現在はアヤナ貯金があるので余裕があるのだ。とはいえ、沼る*1とすぐに底をつく程度なので、今回は一回のみだ。
本来ならここで、デンドロちゃんが入手できる。柊菜か里香が先に手に入れている場合はどうなるのか気になるところだ。
詳しく検証したいのだが、石も環境も足りていない。とりあえずは少数のサンプルだけで大まかに推測をしていくしかないのだ。
「「えっ?」」
さて、いつも通りのガチャ演出が終わると、そこにはなんにもいなかった。
正確に言うならば、例のシスターしかいなかった。
召喚制限に引っかかったわけでもなく、ただ単にすぐ近くにいた彼女が、リミテッド従魔として召喚されたということである。
星四緑種従魔【花開くエンドソーマ】つまり彼女は既に人間ではなく植物側らしい。
まあ、アルラウネの眷属であろう名前だ。下位互換ならあんまりいらないんだけどなぁ。
「わ、私……人間じゃ……」
ショックに震える彼女を無視して、ステータスを確認する。
「……うん。ヒールあるし、泥沼バトルしようか」
明らかな魔法後衛型である。初期スキルもヒールのみ。レアリティのわりにピクシー並である。
回復役としては使えるものの、現在の使える手持ちは後衛低レア緑種とかいう打たれ弱さの塊みたいな奴しかない。
とはいえ、エンドソーマは見た目が人間なのもあってある程度戦えなくもない能力をしている。
姿を見せたのは、茨で形作られたモンスターのみ。従魔ですらないが、アルラウネ生成の雑魚だろう。
相手もステータスはともかく、弱点属性は多いだろうし、序盤で戦えるように鍛え上げるしかない。
デンドロちゃんでも同じことをする予定だったので問題はないはずだ。
ここでは従魔とはボス戦でしか遭遇しないはずだ。召喚制限分弱く設定されているため、ここまで緑種を引けなかったプレイヤーでも詰まないように構成されているのだ。それでいて、経験値もおいしい。緑種のレベリングとしてはいい場所なのだ。
「よし、行くぞ!」
「ええ! ……ま、マスター!」
ロッドステッキを構えたエンドソーマが敵に殴りかかる。
俺達が戦闘音を聞きつけた敵の物量に飲み込まれるまで、十五分。
ちなみに、後書きの余白とかが異常に長い場合は、コピペしてみると、隠された設定とかが見えたりします。
これは私以外の作者様もやってたりするので、気になる部分にはぜひ一度やってみるといいでしょう。思いがけない設定や文章が出てくることもありますし、tipsみたいな小ネタが出ることもあります。
もちろん私もやってます。