矛盾とかありましたら指摘してください。既に私は設定を把握しきれていません。とりあえずプロットと手元の設定に従って書いていきます。偶に付け加えたりしてます。
「管理ミスによる暴走?」
「ああ、この街ではモンスターを使った産業に目を付けていたのだが、どうやらそこでなんらかのミスがあったようでな。気付いた時には手遅れだった」
柊菜達は、男の先導に従って召喚士ギルドの中にいた。
安全が確保された建物の中では、様々な人達がいる。
怪我をしてうめき声を上げる者。泣き喚く子供。大声でうるさいと怒鳴る者。
里香は大人が配慮もせずに怒鳴ることにキレて噛み付きに行っている。
お陰で来たときには野戦病院の様相だったのが、戦場そのものといった姿になっていた。
殴り合いとまではいかないが、緊張状態が開放されたとしか言いようのない言葉の応酬とそれに呼応するようなどつきあいが柊菜の背後で繰り広げられている。
これが本格的な乱闘に発展しないのは、里香に噛み付かれている人達が気圧され気味だからだ。
これが日本であれば、力に勝る大人が動いてそうなものであるが、外から来た召喚士というだけで、全員が里香を恐れているのだ。
剣士や魔術師、召喚士はこの世界の実力者なのだから。
魔術師は流れの者は土地に縛られない分弱体化する。剣士は武芸者に近いが見て分かるような脅威がある。見た目でも判断は可能なのだ。
対して、召喚士は一切不明だ。実力も統一されていないし、召喚士そのものが強くないことは明らか。
しかし、どこまで行っても得体の知れない存在なのだ。
「今は、魔術師により、内側に緑種従魔を封じ込めるタイプの結界を張って、それが外に出ないようにしている。応援は頼んでいるが……今の勢いだと、たどり着く前に結界が破壊されるか、我々が飲み込まれるだろうな」
「……その、責任者はどうしたんですか?」
柊菜が尋ねると、男は首を横に振った。
「一番最初に飲み込まれたのだろう。一切連絡も目撃情報もない」
「えっと、どうしてそれを?」
「ああ、紹介がまだだったかな。私はこの街の召喚士ギルドのマスターだ。他よりも、従魔という種の違いはあっても、人外のエキスパートだからな。アドバイスや情報提供として、関係者ではあったのだよ」
里香は、そこでちらりと男の腰に付いているカンテラを見た。
この世界はかなり文明がちぐはぐだ。ファンタジーといえばそこまでだが、それでも一際異彩を放つのが、彼の持つカンテラであった。
火とは違う光源によって、それは輝いていた。
「この街では、モンスターを利用した事業の研究を行っていた。従魔よりは弱く、しかし星の脅威として存在する原種……。それらが持つ力を正しく利用できれば、世界はもっと豊かになるはずだったのだがね」
「それは、残念です」
柊菜が男の言葉に共感したように言う。それをミルミルとチェリーミートは複雑そうに見つめていた。
彼女達は、モンスター同様この地の原住民なのだから。正しく利用という無自覚な傲慢さに気付いていた。
「ごちゃごちゃ御託並べてさ。そんなことはどうでも良いのよ」
面倒くさい雰囲気を感じ取った里香が介入しに来た。
格付けは既に済んでおり、彼女の周囲に近寄る人の姿はなく、彼女の歩みを止めようとする者は誰ひとりとしていなくなっていた。
「第三者が介入する場合は、客観的事実と対処すべき問題の提示。解決方法のみの模索をするべきよ。そりゃ事実関係の確認とか背景を知る必要はあるでしょうけど、まずは何が問題でどうすればいいのかを先に確認するべきね」
ずい、と顔を寄せる。整った容姿から繰り出される威圧的な表情は、この世界で積んだ経験と相まって荒事に慣れたならず者を彷彿とさせた。
「ここの敵は誰でどこに問題があって、何を解決したいの? さっさと言いなさい」
小さく鼻を啜る。里香は花粉症なのだ。
・・・・・
「ゲームにおいて、スタンスというシステムが存在する。有名なもので言えば、善、悪、中庸。秩序、混沌、中立といった感じだね」
これに関しては、人々の思想にも関係するし、個人的に言えばゲームキャラクターの深みを与えるものとして好きだ。
「とはいえ、時代によって思想は変わってくる。行き過ぎた思想やスタンスは考えが近くとも馴染めないという人は多いだろう」
そこに働きかけるのは倫理観や道徳といった感情だろう。
これまでのスタンスは、社会の在り方を示す形が多かった。基本的に個人の思想というよりは、社会基盤を根本から打ち崩して、新しい社会をコントロールしていく。という形になりやすかった。
「これからの正義の話をしよう。社会の基盤全てが崩されることは無く、しかし自浄能力を失い腐敗していく社会を変える力についてだ」
どれが善でどれが悪なんてわかりやすい物語じゃない。後味の悪い
最大多数の幸福の為ならば少数は切り捨てるべきか?
自由であるならば力あるものが弱者を虐げようともそれは自己責任か?
困っている人を助けるのが美徳であるならば救済の為に自らの努力で勝ち得た富を敗者へ分け与えるべきか?
中立的であればそれは違うと言い切れるだろう。全ての理念を元にバランスを取りながらなるべく多くの幸福と自由と美徳を得るべきだと言うだろう。
そして、その在り方は立ち位置と見え方で変わってくる。この街はそんな正義の話の一つである。
「この世界には、幾つもの脅威がある。野生動物もそうだし、原住種のモンスターもだ。そして、災厄を始めとする外来種の多くが存在して、破壊の限りを尽くしている。文明の発展。生存競争。多くの力を持たない生物は今を生きるのに必死であり、この世界の未来など知ったことじゃないと無関心を貫いている」
「自身ができる限りの親切を行えば、今より世界が良くなると思うのですが……」
「与えられることは受け入れても、施すことは嫌がるのが人間だよ」
エンドソーマの言葉は善性を信じる人間にしか通用しない。まあ、この世界なら、他を知ることは容易じゃないからまだ成し得やすいとは思うけど。
「それ以上に、圧倒的な個が全部倒して新しい個が全部決める方が早いだろうし」
歩みを止める。あと一歩でも進めば、先の見えない大穴へと落ちるだろう。
「正しい入口は別にあるけど、ここから入るとボス手前までショートカットできるよ」
緑種従魔であるエンドソーマの必要な分の経験値は間に合っている。後は元人間の従魔に必要なフラグさえ用意すれば、完凸までレベル上げだけで十分だ。
問題といえば、手持ちではないデンドロなのだが。
「……?」
おどおどしながら、機嫌を取るようににっこりと笑う彼女を見る。
今から召喚しても多分失敗しそうなんだよなぁ。
穴から降りて着地した時に、水に混じった何かを踏み潰した感覚があった。肉にしては身が少なく、植物にしてはみずみずし過ぎる。半分枯れたミイラのような感覚だ。
暗くてよく見えないのでそのまま無視して、感覚と記憶を頼りに歩く。手を前にふらふらと歩けば、つるりとした鉄の扉にぶつかった。
従魔の力でこじ開けて貰えば、その先は魔術により明かりがついた通路がある。
「ここは?」
「デンドロちゃんのおうちだよ」
デンドロへと向かう視線。
「えっと……」
「まあ、主犯は別にいることはわかっている。ここで足踏みしているのもつまらないからさっさと先に行こう」
ここのボスはアルラウネのデンドロじゃない。出来事の発端は彼女にあるが、倒すべき敵は召喚士ギルドのギルドマスターと、そいつと繋がっていたアルラウネにより緑化作業を進めようとする魔術師の男である。
つまり、エンドソーマは若干間違えているのだ。
ちなみに、ここはダンジョン扱いである。
一応ボス戦闘もあるので、俺達が入った場所からボス手前の場所まで移動できるという寸法である。
ということで、ボス部屋へと侵入。
「──世界を守れ。世界を守れ」
枯枝のように骨が浮き出た男。
そいつは、眼孔から植物を生やし、両の手足を磔にされたような形で木に飲み込まれていた。もちろん年齢的な事情から下半身はへそまでしっかり植物の中だ。
デンドロは太ももまでなので、配慮としてはどうなのだろうか。
肌は植物同様に地球には存在しない謎の材質をしており、今も男から伸び続けている。
嗄れた声で、ボソボソと呟く。
「ずいぶんと元気そうだ」
声をかけると、呟きが止まった。
「何の用だ」
「この街を植物で覆った奴を見に来ただけだよ」
「……貴様、どこの人間だ?」
「勇者と同じ出身かな」
地球という括りではアヤナとも同じである。里香は多分同じ世界の地球出身だ。
「そうか。貴様も、巻き込まれた側か」
「──たとえマスターがそうだとしても、私はこの街の住人です! あなたが主犯ですか!」
ロッドステッキを構えたエンドソーマが言う。その言葉に、男は鼻で嗤った。
「西から来た人間が何を言う。世代こそ貴様らではないが、子孫という枠組みで言えば、貴様ら人間こそがこの事態を引き起こした存在ではないか」
「いったい何を──」
「忘れてたとは言わせんぞ。侵略者共が! この星に寄生した外から来た害虫が! 貴様らのせいで、我が森が、自然が、大地が! やせ衰えているではないか!」
血反吐を吐きながら吼える男。その深い憎しみと怒りに、エンドソーマが後退る。
男は怨嗟の声をあげながら、エンドソーマへ迫ろうと肉体を蠢かせている。
「貴方は、獣人ですか」
「ならどうしたというのか。既に血が混ざり過ぎて、因子の欠片も残っていないがな。魂の故郷にも帰れず、ただここで人も生きれない
「森から出ない獣人であれば、確かに恩恵が少なく、伝統から見ても侵略者と言われてもおかしくはないと思います。ですが、分かりあえるはずです!」
この世界の文明は結構近代的である。近世辺りの活版印刷技術はもちろん。ある程度の工場製品は存在しているのだ。
時代で言えば中世終わりから近世辺りかな。金属関連素材の資源の採取が難しいので若干ちぐはぐではあるが。
まあ、取捨選択しながら文明を選んで発展させているのだろう。特に電気は全くと言って良いほど発展していない辺り、ネットワークは普及させないつもりだ。
そこら辺の代替で止まっている間に魔術師が現れて魔術で代用していくことになった。
「分かり合う!? 分かり合うだと! これほどまでに侵略の手を尽くした人間が! 今更被害と慈愛の面をして分かり合えるだなどと!」
種族人間の側にいる俺としては、なんとも言い難いものだ。
人間とは快楽に貪欲で不快には我慢ならないとんでもない短気な生き物だ。だからこそ利便性を追求し続けて発展してきた歴史がある。
仮に同じような知的生命体が存在したとして、自身の優位性が確保されていなければ、人間はそれを滅ぼそうとするだろう。多分。少なくとも差別はする。
利用価値があるのなら、また別の道を選ぶかもしれないが、そこら辺はどうとも言えない。
同盟結んだ移民国家の奴隷制度を見れば、この世界の問題も若干分かるだろう。
違うのは、身体能力では遥かに貴族、獣人側が上。外見も基本的に優位であったことだ。生まれつきの差では。という注釈はあるが。まあ、それがあったとしても、未開部族レベルの知的生命体を相手に同じ立場で接することは無かっただろう。
とにかく、排斥なのか迎合なのか無視なのかは不明だが、ほとんど一方的に人間の都合を押し付けられた側としては、人間を許したくない。そして、世界を自分達の知る状態に戻したい。と考えた訳だ。
「かつてあった星の資源を、命を食い尽くし、されどなおも増え続け、自ら以外は知ったことではないと愚を犯し続ける人間如きが、世界を率いるリーダーだと思い上がりもはなはだしい! 星にとってのモンスターこそが貴様ら人間だ!」
怒りに植物が呼応し、急激な成長が地盤を揺るがす。
入口は封鎖され、足場を埋め尽くす程に植物が迫る。
俺は既に緑種従魔であり、植物化人間のエンドソーマを所持している為、植物に取り込まれる事はない。寄生されることも。
そして、ウィードがいる為、地震や大地の隆起に対しての影響は受け付けない。ぶつかれば衝撃を受けるので無敵というわけでもないが。
「今、新たなる可能性を、手に入れた私が! 人間の命を土壌にし、世界に再び緑を取り戻そう!」
「来ますっ!」
名も知らぬ魔術師が襲いかかってきた。