誤字報告、感想、評価ありがとうございます。励みになっております。1500ポイント達成しました。これも皆様のお陰であります。本当にありがとうございます。
しかし、今回は短めです。推敲も不足気味です。
「従魔級モンスターとの戦闘においては、数を揃えるよりも突き抜けた個の戦闘力が欲しいということは知っているだろうか?」
ギルマスが尋ねる。それに対して俺は小さく頷いた。
現地民であるミルミルも同様で、若干追い付けているのか不安なのが柊菜だ。
単純に、従魔のステータスは星が一つ違えば最終的に数十レベル分の差が開くことになる。そうじゃなくても、基本的にレアリティが高ければ高いほど耐性は充実していくし、基礎ステータスも高くなる傾向がある。
罪罰のような例外もいるが、そういうのは唯一無二なアビリティを持っていたりするので除外である。彼女は育成終了してもステータスは伸びないのだ。
代わりに結構強力なアビリティを習得するが。
ちなみに、従魔級モンスターっていうのは、今のところ従魔ではないデンドロにおける評価である。同じ立ち位置には、エンドロッカス系統の人からモンスターへと派生したタイプや、災厄が当てはまる。
「現状では、緑種従魔以外がこの場に召喚できず、ほとんど個であの怪物相手に戦える者がいない状況だ」
「まあ、緑種ってほとんど環境操作型だしね」
「結界の解除はどうなの? まだこの地の魔術師はいるんでしょ?」
「結界に関しては、この街特有の防衛機構だ。街にモンスターを引き入れて実験をしていたのだから、最悪の場合は、街ごと処分するようになっている」
つまるところ、あの結界は守るようではなく、逃げないようの檻ということか。
緑種は、この世界の召喚士は召喚可能最高レアリティが星五までなので、単体でデンドロに勝てるやつは非常に少ない。デンドロは一応レアリティは星四クラスなのだ。緑種のエースであるエルフ系従魔は、第二部からのガチャシリーズキャラだし、最低レアリティは三だった記憶があるが、いないということはそういうことなのだろう。
序盤の緑種従魔のほとんどは人間型ではなく、虫か植物がほとんどだ。後は本当に環境そのもので、砂漠とかがある。
ちなみに、詰み防止も兼ねているのか、最初のガチャで環境型緑種が召喚されることはない。多くの緑種従魔は、一章完結後に召喚解禁されることになる。
細かいアプデで戦える緑種は増えたが、それらもプログラムが面倒なのか、最初に登場することはない。これが、最弱と言ってもいい種の従魔なのに、使い手が少ない理由だ。
「二人の従魔の扱いを見ての判断だが、アレを倒す力は無くとも、抑え込むくらいはできると判断した。だからこそ、前衛を二人に頼みたい」
「まあ、良いけどさ。勝ち目はあるの?」
「正直に言えば、薄い。だが、絶望するほどではない」
ギルマスは強く言い切った。
「アレは化け物であっても従魔ではないからだ」
「……? 従魔って──」
「まあ、スキルは無いだろうしね」
柊菜の言葉を遮る。情報質量システムに関して説明するのはあまりにも面倒だから。それなら分かりやすい部分を話したほうがいいだろう。
スキルは従魔の持つ技術だ。アビリティは固有能力みたいなものだが、従魔になる前の時点で持っている事が多い。
「攻撃に関しては魔術師を。彼女らを守るのがこちらの役目だ。例え死んだとしても守り切る」
「……ふん。自分のケツも拭けない未熟者達に手を貸すのは優れた者の役目だから!」
「私の手持ちに戦える能力がある従魔はいない状態ですけど?」
「場を作るだけでもありがたい。それに、一度見たが、空間を使って攻撃の回避などもできるのではないか?」
「ぶっつけ本番でですか……?」
柊菜が不安そうに俯く。しかし、すぐに強い決意を宿した目をして顔を上げた。
「なんとか、やってみようと思います」
「……この街の人間ではないのに、感謝する」
もちろん俺も、断る理由はないので頷いた。
決行は二時間後になると言って、ギルマスは他の人の所へ行った。
彼が十分に離れてから、ミルミルがこちらに目をやった。
「生存してたのは知ってたけど、無事だったのね」
「結構苦労したけどね」
「ふーん? それはこっちの状況よりもかしら? なんせこっちは世界の崩壊を目にしたんだから! 樹も里香も柊菜も、もちろんこの私も成長してるのよ!」
「……遅れましたが、スリープさん。お久しぶりです。私は特にそこまでの事はありませんでしたが、樹くんが、ちょっと」
柊菜も、少し気まずそうに声をかけてきた。少し顔を赤らめている辺り、シモの話かそれに近いものの予感がする。
それよりも、崩壊を見たのか。星十六の従魔は確かに一度登場するが、場所が違うはず。どんなイレギュラーが起きたのだろうか?
それとも、召喚制限を無視した従魔が現れたのか? この世界は、ラインクレストの召喚ができるように、プレイヤー側の制限などあってないようなものなのだが。
「まあ、いない人のことは後で聞くとして、久しぶり。手持ちは増えた?」
「樹がまた女を増やしたわ!」
「……えっと、そういうこと、です。私は、特に。スリープさんはどうですか?」
「石の回収効率は良いから、結構増えたかな」
何気ない雑談を交わしながら、それでも柊菜が不思議そうにこちらを見つめてくる。
「それで、その頭に生えているのはなんですか?」
「あ、ほんとじゃない。なに? 人間辞めたの?」
「あー、紹介しようか」
言われてから気付いた。そう、今の俺はエンドソーマを頭に生やした状態にしているのだ。
というのも、戦闘が終わって一息ついたところ、彼女が死んだ目でこちらに寄りかかってきたのだ。
そしてずるずると動き、あっという間に俺の身体の中へと潜り込み、頭に花を咲かせやがったのだ。無意識に奴の性癖が滲み出ている。
というか、エンドソーマの本体は人間部分だと思っていたのだが、わりと簡単に触手のようになって俺の口腔から内部へと入り込みやがった。
まあ、別に悪影響も無いようだから放置しているけどさ。元人間の癖にあっさりと人間の感覚を捨てたエンドソーマにツッコミを入れられなかったのだ。
意識して命令をかければ、彼女は俺の口からぬるりと這い出てくる。柊菜が顔を青くして口を押さえ、ミルミルは「うわっ……」とドン引きの声を出して後退った。
俺は従魔になったミルミルが最終的にゲーム主人公の魂に住み込もうとしたのを知っているぞ。
メゾンド召喚士である。口、目、魂、精神など、主人公の一部になりたがったり、勝手に同居する従魔は案外多いのだ。
ちなみに、主人公寄生勢と、主人公しまっちゃう勢の二種類が争う一面もある。これぞパラフィリア。
まあ、緑種従魔の主人公の肉体に対する執着は異常なところがあるから……。これがデフォみたいなものだ。
従魔によっては好感度イベントで想像だけで実をつけるやつまでいる。
主人公は苗床。はっきりわかんだね。
「あ……えっと……どうも。つい最近にマスターの従魔となりました。エンドソーマです」
「はぁ!? つい最近!?」
「そうですね。数時間前です」
「出会ってすぐの距離感じゃないですよ!?」
ゼロ距離密着だもんね。むしろマイナスかもしれない。
指摘をされたエンドソーマは、ハッと正気に戻ったような顔をして、赤面しながら俯いた。
「いや……あの。これはですね……。ちょっとショッキングなことがあって無意識にやってしまったんです!」
「むしろ無意識の方が問題あると思うんだけど?」
そんな姿をミルミルに突っ込まれていると、柊菜が一歩寄ってきた。
「スリープさん。私は以前見せた睡蓮以外は使える従魔がいないです。一応、瞬間的な展開による回避は使えます」
「あ、ちょっと。それなら本当に瞬間的な展開にしなさいよ。じゃないと魔術師が地脈から力を借りれなくなるから」
「それなら、俺の方に来る攻撃を柊菜が防いでくれない? そうすればエンドソーマが自由に動ける」
「わかりました」
そこで一度話が途切れる。柊菜の表情が暗いので気になっていそうな事を伝える。
「里香なら多分王都で復活してるよ。死体が残ってないし」
「それならさっき連絡があったので大丈夫です。えっと、それで……。里香ちゃんと合流するのにスリープさんは付いてきますか?」
その質問が出たことに驚いた。結構な依存気質がありそうな柊菜のことだから当たり前のように合流して一緒に行動することを前提にすると思っていたのだ。
「…………まあ、色々済ませていないまま逃げるように動いているからね。来た道を戻るとしても、柊菜達と一緒に行くと思うよ」
「そうですか……」
「それに、そう遠くない期間に西側の攻略を終えるか、特定従魔を召喚しないといけないだろうしね」
「やっぱり、世界は崩壊するんでしょうか?」
この言葉が出るということは、世界に影響を与える従魔が出たということだろう。そこで見たものにショックを受けたと。
凄く答えにくい質問だった。
「このままいけば崩壊するだろうね。それまでに脱出をしなきゃなんだよ」
「残された人は、どうなりますか?」
「記録されることになる」
「え? 記録?」
「そう。記録されて、保存されるが、大本は崩壊に飲まれる。その後、従魔によって記録されて再現されるか、そのまま保存されたまま終わるかどちらかになる」
柊菜は、なぜここで従魔? といった腑に落ちないような顔をする。
これに関しては、従魔がどういう存在なのかを知る必要があるからなぁ。
「従魔っていうのは、既存システムにおけるバグみたいな存在なんだよ。その目的はあらゆる情報の集積と保存。だからこそ、従魔は多くの世界で現れては情報を集め、観測してから消える。…………まあ、創作における天文台とかそんな感じの存在なんだよ」
「目的はなんですか?」
「煙に巻くようなことだけど、人のレゾンデートルは何だと思う?」
「……進化だと思います。進化の先に、理想があると信じて、私達は発展していくのだと思います」
聞いていて思うが、柊菜は全体主義的な思想を持っている。それこそが柊菜の主張の多くを占める価値観なのだろう。それでいて争いを肯定する考えがあるのもまた面白いが。
「まあ、生物的なもので見たりすればそんな感じの答えになるよね。俺としては明確なものは持っていないけどね。強いていうなら答えをみたいから、人は存在するんだと思っている」
「答えですか?」
「表現的な言葉でしかないけどね。何かしら納得のいく答えとか、満足するような何かを求めて存在するんだと思うよ。哲学的な真理というよりも、自分自身の美的感覚による物語の終着を探し求めている的な感じかな?」
「なんか、よく分からないです」
「まあ、自分でも言語化できてない未熟な考えだから、覆るかもしれないし、理解されなくてもいいかな」
時間があれば、もう少し考えを深めてもいいかもしれない。
実のところ、俺は何かをはっきりさせるのはあまり好きじゃなかったりする。主義主張こそはっきりしているつもりではあるけれど、絶対不変でも無い。
なんというか、可能性を狭めたくないのだ。
「従魔っていうのは、情報をただひたすらに集める存在だ。そこにおける情報はただの文字でもないし、俺たちが思う物質的なものも含んでいる。それらをただひたすらに集める存在なんだよ」
「つまり?」
「案外俺達と同じようなものなんじゃないかなってさ。アプローチ方法とかが違うだけで、従魔もまた何かを探してそんな行動をしているんじゃないかな」
もしくは、それこそ天文台のように、ただひたすらに観測する事が目的なのかもしれない。
それを知る可能性のあるエンドソーマは、こちらの会話に触れることはなく、柊菜もまた考え込むようになり、それ以降話すことはなかった。