この不幸な女神に祝福を!   作:なんさん

1 / 6
プロローグ

「……ここは……?」

 

 

うっすらと目を開けると私は暗い空間にいました。

そして目の前には羽の生えた女の人が立っています。…ん?羽の生えた女の人?夢でも見ているんでしょうか?

と言うことで、頬をつねってみました。

 

「…痛!!」

 

夢だと思って、全力で引っ張ってしまいましたよ…あれ?と言うことは現実!?…と言うことは、私死んじゃったんですか。目の前の女の人は…羽が生えてるので多分天使でしょう。

その光景を見ていた天使は苦笑すると、

 

「ようこそ死後の世界へ。出雲蒼空さん、貴女は死にました。短い一生を終えられたのです。」

 

…えっと、ちらちら見てるのはもしかしなくてもカンペですよね。せめてそれは覚えててくださいよ、短いんですから…

まあ、とりあえず、私死んじゃったんですね。うーん…あんまり実感湧きませんが。あれ、そういえばどんな感じに死んだんでしたっけ…あ、だんだん思い出してきましたよ。確か……

 

 

 

 

 

 

私は幼馴染の和真の葬式に来ていました。普通の葬式なら、この空間は重い空気になっているはず…なんですが、時々小さく笑う声が聞こえます。あ、ちなみに私もその笑ってる中の一人です。

えっと、最初はこんな雰囲気じゃなかったんですよ。…皆さんが和真の死因を知る前までですが。

 

死因は、外出した帰り道に、女性を庇ってトラクターに轢かれかけたことが原因のショック死です。はい。

…これを和真の両親から聞いた時には、今までで一番笑いましたよ。と言うか、これを聞いて笑わない人はいないと思いますね。

お、ようやく葬式が終わりましたよ…ある意味苦しかったですね。

 

でもやっぱり死んじゃったんですね、和真。

高校生になってからはほとんど会っていませんでしたが、小学生、中学生時代はよく遊んでました。

…あれ?その頃なかなか友達が出来なかったのって、ひょっとして和真のせいでは…?

そういえば、密かに「鬼畜の和真」みたいなことを言われていたような記憶が…

ま、まあ過ぎたことですし、無かったことにしましょうか。

 

そんなことを考えていたからですかね。後ろから包丁を持った男が走ってきていることに気付かなかったのは。一応私は剣道部に入部していて、高二になってからは全国大会で入賞したことがあり、運動神経は悪くないと思うんですよね。

 

後ろから包丁で刺されたときにはもう遅く、バーナーで炙られた様な熱さと、背中から流れる血を見たところで目の前が暗くなっていき、意識が途絶えました。

 

 

 

 

 

 

…うわ、かなりエグい死に方しましたね、私。思い出さなくても良かった気がします…

私が死に方を思い出したことに後悔していると、天使がゆっくりと話し始めました。

 

「え、えっと、貴女には…三つの選択肢があ、あります…」

 

…もうカンぺガン見してるじゃないですか!天使としてどうなんですか!?」

 

「す、すみません…最近急にこの仕事を任されたもので、まだ覚えてないんです…」

 

あ、途中から心の声出てましたか。ん?最近?

 

「あの、最近と言うことは、天使さんの前にこの仕事をやっていた人がいたってことですか?」

 

「は、はい、日本から来た人が、特典として女神様を連れて行ってしまったんです…」

 

なるほど…と言うか、特典ってなんですかね?ひょっとして、異世界転生みたいなのがあるんですかね?

とりあえず、天使の話の続きを聞きましょうか。…スルーしてましたが、女神も特典の一つなんですね。

 

「選択肢は、天国に行くか、日本に赤子として生まれ変わるか、異世界に転生するか、です。

ちなみに天国は、貴女方が思っているような世界ではなく、娯楽等はありません。また、肉体が無いため、物を食べることも出来ません。天国ではなく、地獄と思われるような世界です」

 

天使でも地獄と思うような場所なら、もう天国ではなく地獄と言えばいいんじゃないですかね?

それはともかく、うーん…赤子から、しかも記憶が無くなるのは嫌ですね。

 

「えっと、異世界ってどんなところなんですかね?」

 

「日本人に解りやすく言いますと、漫画やライトノベル?でよくある様な世界(らしい)です」

 

かなり解りやすいですね。…ん?らしいって言いました?まあ、話が進まないので言いませんが…

 

「本来なら、異世界へ行く時には特典を与えるみたいなんですが、担当の女神様が特典として連れて行かれたため、渡すことが出来ないんですよ……本当にすみません…」

 

…それってかなりヤバくないですか?剣道をやっていましたが、私ただの一般人ですよ?

と言うか、女神を連れて行くとかめちゃくちゃチートじゃないですか。

 

「えっと、その女神様なんですが…その、一言で言い表すと、馬鹿で運がとてつもなく悪く、トラブルメーカーなんですよ…連れて行かれる前にも、先輩女神様に迷惑掛けてましたし……あと、一応身体能力は大幅に強化されて転生できますが、特典のような強さは得られません…」

 

心の中の疑問が解決しましたよ、ありがとうございます。…全然一言じゃないですね。

特典として女神を連れて行った方、ご愁傷様です。…あ、身体能力はしっかり強化されるんですね、それなら何とかなりそうです。と言うことで、

 

「異世界に行きたいです。」

 

「はい、分かりました…あと、貴女に言わなければいけないことがありまして…」

 

…なんか嫌な予感がするんですが…

 

「えっとですね…さっき言った女神様を連れて行った人と一緒にパーティになってほしいんです…」

 

「なんで私がならないといけないんですか!?」

 

ほらね、やっぱり!そんなの絶対嫌ですよ!

 

「貴女しかいないんです!上の方から言われたんですよ、お願いします…!」

 

…天使から土下座されたんですが…これは私断れませんよ…

 

「分かりました!なので顔をあげてください!」

 

「ありがとうございます…断られたら消されてました……本当にありがとうございます…」

 

え、えぇ…そんなに重大なことなんですか…断らなくて正解でした。

 

「その、連れて行った人ってどんな外見ですか?」

 

「連れて行った人よりも、女神様の方が分かりやすいと思います。…えっと、青髪の人で、多分遠くから見ても直ぐに分かると思います。あと、騒ぎの起こっている時は基本的に女神様が関係していると思います。そして、女神様の名前はアクアです」

 

なるほど…しっかり覚えました。かなり適当に思えますが、多分合ってるんでしょうね。

 

「そして、1人でパーティをサポートするのはかなり辛いと思うので、ある“もの”を用意した…と、この最高神様から賜ったお手紙に書いてあります…」

 

あ、そんなに紙を持った手が震えているのはそう言う訳でしたか。女神…アクアの外見を聞いた時から紙、ではなく手紙を持っていたのはこれを伝える為みたいです。てっきりカンぺかと思っていました。

と、そのことは置いといて、あるものが何なのか気になりますね…冒険に役立つものでしょうか。

 

「あるものってなんですか?」

 

「私には伝えられていないので、分かりま…あ、まさか…!」

 

まさか…なんですか。早く続きを教えてくださいよ!

 

「それは…「どうも、ある“もの”です(棒読み)」あ、やっぱりですか…」

 

突然天使の後ろから少女のような声が…って少女じゃなくて幼女ですね。

見た目は完全に幼女ですが、女神なはずなので永い間生きているんでしょう。そのよ…ではなく女神は、

 

「(あの最高神絶対分かってて言ったでしょ…)「ん?」…あ、こっちの話です。あとさっきの棒読みはあんまり気にしないでください。とりあえず、自己紹介から。私はカリナと言う女神です。よろしくお願いします」

 

えっと、「よろしくお願いします」?…あ、そういうことですか、ようやく分かりました。

つまり、“者”ということですか。…こっちは駄女神じゃなさそうですね、助かりました。まあ最高神から選ばれるほどですからね。あ、私の方も自己紹介しなくては。

 

「私は出雲空と言います。こちらこそよろしくお願いします」

 

「…では、その魔方陣に乗ってください。」

 

あれ?最高神から直々に役目を貰った女神なんですよね?カリナってかなり高位の女神だと思うんですが、今の天使は目の前でも緊張しないで言えてますね。どういうことなんでしょう?魔方陣が光り始めているので、聞く時間は無いですね。あとでカリナに、着いたら聞いてみましょうか。

 

「いってらっしゃいませ、蒼空さん、カリナ様。どうかご武運を…」

 

天使がそう言うと、私たちは眩い光に包まれました。

 

 

 

 

 

 

 

目を開けると、そこはラノベで読んだ通りの街が広がっていました。ラノベって街じゃなくて草原に送られるイメージなんですが、そうでなくて良かったです。もし草原に送られたとしても、隣に女神のカリナがいるので死にはしないと思いますが。幼女に助けてもらう女子高生ってなんか変な気がしますね。

 

「これからどうしますか、カリナ…様?」

 

危なかったです。絶対高位の女神なはずなので、様付けないと不味いですよね。

 

「とりあえず、冒険者ギルドに行きましょうか……そう言えば、相手のある程度の心の声は解るんですよね…なんか、凄いですね、ソラさんって…」

 

ヤバいです!会った時から心の声聞こえてたんですか…あ、だから時々微妙な表情していたんですか。

 

「ま、まあ、聞かなかったことにしておきましょうか。あと、様無しで良いですよ、堅苦しいのは嫌なので。ではさっそくギルドに向かいましょうか。」

 

異世界に着いて数分で消されるところでした…自分でも態度が悪いのは分かってるんですが、直せないんですよね……

 

 

 

 

 

 

カリナと雑談しながら歩いていると、いつの間にか着いていました。想像よりかなり大きいですね。では入りましょうか。

 

「いらしゃいませ!冒険者登録は、あちらのカウンターで行ってます!」

 

なんか、一か所だけ列が出来ているんですが…なるほど、美人なお姉さんだからですか。並んでる人が男しかいないので、そうみたいですね。…どこのの世界でも男は一緒みたいですね。私達も見られてますし。

ちゃっちゃと登録を終わらせたいので、空いてるカウンターに行きました。

どうやら人が来なくてかなり暇だったみたいですね。

 

「今日はどうされましたか?」

 

「冒険者登録をしに来ました。私と隣のよ…ではなく彼女の二人分お願いします」

 

「あの、登録手数料がかかりますが、大丈夫ですか?」

 

えぇ…お金なんて持ってないんですが、どうしましょうか…あ、カリナが出してくれました。お金持ってたんですね、後で返さないと。

 

「はい、それではこちらのカードに触れてください。それで貴女方の能力が分かりますので、能力に応じた職業を選択してください。では貴女からお願いします」

 

確か、身体能力は強化された状態で送られてきたんですよね。上位職に就ける位強化されてれば良いですが…

 

「す、凄いステータスですよ!!全て平均を上回っており、特に筋力が有り得ないほど高いです!前衛職はほとんど全てなることが出来ますよ!」

 

なんかめっちゃ目立ってるんですが…て言うか、強化されすぎなのではないですかね?

そんなことを考えていると、カリナから小さな声で理由を説明してくれました。

 

(ソラさんは元々身体能力が高かったので、その身体能力をさらに強化した結果、こんなステータスになったんだと思います)

 

あーなるほど…私って運動神経はそんなにい方では無いと思ってましたが、凄かったんですね。実感は無いですが…

まあ、それは置いといて、職業を決めなくては。

 

「えっと、お勧めの職業はなんですかね?」

 

「は、はい、お勧めはソードマスターですね」

 

「私もそれが良いと思います」

 

「じゃあソードマスターでお願いします」

 

「分かりました」

 

剣道をやっていたので、剣を使う職業ならすぐに上達出来るはず…多分。

次はカリナの番ですね。何せ女神ですもん、絶対凄いですね。

 

「…え!?ええええ!!!全ての能力が途轍もない数値ですよ!?特に、筋力は貴女のお姉さんよりも高いですよ!?さらに魔力の数値があの紅魔族よりも高いです!!」

 

案の定そうでしたね。ちなみにその後カリナは魔法と剣を使えるらしいルーンナイトになりました。

 

 

…そのままの勢いで依頼を受けようとしたら、カリナに止められました。

 

「なんで止めるんですか?」

 

「大事なことを忘れてるからですよ!」

 

んん?大事なことですか?…あ、私武器持ってませんでしたね。

 

「違いますよ!……あの駄女神を連れて行った人を見つけなきゃいけないんですよ……」

 

ええ…嫌ですよ…でも受けちゃったわけですし、やらなきゃいけませんよね。

 

「うーん、でもこのギルドの中にはいないみたいですけど、どう探せばいいんですか?」

 

「もう少し待ったら来ると思いま…」

 

「…カズマみたいな最弱職がいても、私がパーティの募集をしたらすぐに来るわよ!なんたって私アークプリ-ストなんだからね!」

 

「いや、お前が張り切ると嫌な予感しかしないんだが…」

 

ん?カズマ?しかも、聞き覚えのある声が…まさか…?

 

「…ね?来たでしょ?」

 

青髪の女の人とギルドに来た男の人…カズマがいました。

 

「……あれ、お前……ソラなのか?」

 

「…カズマですよね…?」

 

「私しかいない」と言われた理由がようやく分かりましたよ。普通に考えて、赤の他人とパーティになれとか言わないですよね。

隣では諦めたような表情をしたカリナが、青髪の女の人…アクアを見つめていました。




今回は、蒼空が主として進んでいますが、次回からはカリナが主となるのでタイトル詐欺にはなりません。
カリナがどんな理由で異世界に行くのかがかなり簡潔になりそうなので、蒼空目線で詳しく書きました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。