ですが、これからも文字数は増える一方となり、一日投稿も難しくなってくると思います。
だけど、作者は負けません。頑張ります。
だからよ、止まるんじゃねぇぞ......(自己暗示
グッモーニン。勇者でっす。
さて、目覚めの良い朝ですね。
差し込む日光が心地よく、そしてこのご立派な王城がひっくり返るんじゃないかと言わんばかりの大騒ぎがいいBGMになっています。
自分の仕事の成果を誇りたいところですが、走者に無駄な時間の使い方は許されません。
ささっとベッドから起ちあがったらすぐに部屋を出ましょう。そして出来るだけ間抜けそうな顔で辺りをうろついてみます。
「あ、あのぉ……すいません」
「わっ! ゆ、勇者様⁉」
それとなく冷血鉄仮面聖女の部屋に近づきながら廊下を歩いていると、都合よく前方には昨夜大活躍をしてくれたアルマちゃんがいるではありませんか。早速極限まで腰を低くして話しかけます。
「ど、どうされたのでしょうか?」
「どうされたと言われましても……王城全体が騒がしいみたいなので何かあったのかと思いまして、邪魔になるかもしれないと思いつつ、城内をうろついていた次第です。はい」
「なるほど。こんなに大変な状況の中でも自分に出来ることを探すなんて、流石は勇者様ですね!」
「ありがとうございます。ところで……この騒ぎの原因は何なんですか?」
「それが実はですね――」
何の躊躇もなく国王が暗殺されたことを教えてくれるアルマちゃん。流石に盗賊王が蘇った云々は知らないようですが、それでも昨日出会ったばかりの人間に対して色々喋り過ぎじゃないですか?
勇者=いい人。という法則が頭の中にあるのかもしれないですが、やっぱりこの子は程よく無能ですね。
良いことです。
「なるほど……国王陛下が亡くなったと。まだ会ったこともないので自分はどうしても悲しみづらいですが、お悔やみ申し上げます」
「いえ、勇者様がお気になさることではありませんよ。貴方のお仕事は魔王を倒すことですから。それに、心配されなくとも犯人は直ぐに見つかりますよ。なにせ、今の王城にはクリスティーナ様がおられますから! 裏では冷血鉄仮面聖女とか呼ばれていますけど、本当に思慮深くて冷静で、素敵な方なんですよ!」
「へぇ……」
やっぱりアルマちゃんは使えますね。
こっちが何も言わなくても自動的にフラグを立ててくれるので、「どうして貴様がそれを知っているッ⁉」みたいな凡ミスを防ぐことが出来ます。
ちょっと廊下で立ち話をするだけで格段に動きやすくなるので、皆さんもRTA時には積極的に彼女を利用していきましょうね!
「アルマさんがそこまで言うのであれば、自分はクリスティーナ殿の部屋に行ってみます。何もしないよりは賢い人に使ってもらった方が有意義でしょうから」
「それはいいお考えです! あの方であれば勇者様にいいアドバイスをして下さるに違いありません!」
「随分とクリスティーナ殿の事を評価しておられるのですね?」
「評価だなんてそんなおこがましいこと私には出来ません。……でも、あの方は不幸な目に遭われたにも拘らず自分の能力だけで今の地位まで上り詰めた御方です。実際に、あの人が提示する政策案は素晴らしいものらしくて、馬鹿な私にはよく分かんないですけど……でも! 本当に凄い人なんです! あまり星の巡りが良くない方なので、これから先の人生でちょっとでも報われて欲しいなぁーって思ってます」
「へぇー」
いまいち何を考えているか分かりづらい鉄仮面聖女さんですが、実は意外にも人徳があったりします。
まぁ、アルマちゃんの場合は誰にでも懐きそうなのでいまいち信用ありませんが。
「優しい方なんですね」
「はい! 実際に何度かお話したことありますけど、見た目の怖さの割には意外に――」
「そうじゃなくて。自分が言っているのはアルマさんの事です」
「……へっ⁉」
心底驚いたらしいアルマちゃんは顔を真っ赤にしながらあたふたと慌てています。初々しいですねぇ~。タイムロスなので口説くつもりはありませんが。
暫くの間訳の分からない言い訳をしていたアルマちゃんですが、落ち着いてから急に懐疑的な視線をこちらに向けてきました。
「……勇者様ってもしかして結構な女たらしだったりします?」
「いえいえ。今のは明らかにアルマさんの耐性のなさが原因かと」
「……否定できないのが悔しいです」
露骨に落ち込むアルマちゃん。話している感じだと結構モテそうな感じですが、すぐにあがっちゃうのが原因なのかもしれませんね。
「もっとアルマさんと話していたいのですが、そろそろ動かないとまずい気がします。自分はこれで失礼しますね」
「はい。勇者様のご武運を「あっ、そうだ!」はい?」
「そういえば昨日の夜電気を消し忘れたまま眠っていたんですが、あれを消してくれたのってアルマさんですか?」
「あっ、はいそうなんです。お部屋の電気が消えていなかったのが気になってしまいまして、身勝手ながら私が消させていただきました! ……あの、もしかしてですけど、電気付けといた方が良かったですか?」
「いえ、アルマさんが正しかったです。昨夜は疲れ切っていたのでベッドに倒れ込んだらそのまま寝ちゃったんですよね」
「やっぱりそうでしたかー。召喚されたばかりですもんね、勇者様」
ニコニコと微笑んでいたアルマちゃんだが、不意に顔を伏せると何やら恥ずかしそうな表情をする。どうしたのかとこちらが首を傾げると、彼女は頬に手を当てながら言った。
「……まぁ、かくいう私も昨夜はかなり疲れていたようで、気が付いたらベッドに入っていたんです。着替えることもせずにそのままベッドで眠っていて、本当にビックリしちゃいました」
「ハハハ、アルマさんは意外とおっちょこちょいなんですね」
「笑わないでくださいよー!」
顔を真っ赤にしてぷんすか怒るアルマちゃんは非常に愛らしいのですが、生憎とこちらは時間を無駄に出来ない身。
必要な情報を手に入れたらさっさと退散しましょう。
「それでは、自分はこれで失礼します」
「はい。勇者様のご武運を祈っています」
「……あの、その挨拶はちょっとおかしいと思いますよ?」
「? どうしてですか?」
ちょこんと首を傾げてアルマちゃんは言った。
「これから国王陛下を暗殺した犯人を見つけてぶっ殺すのですよね? だからご武運をお祈りしたのですが」
「……」
怖っ
アルマちゃんは意外に好戦的な性格も秘めていたらしい。
何故かちょっと青白い顔色になった勇者を笑顔で見送ったアルマは、自分の仕事に戻るため踵を返して長い廊下を歩き始めた。
(にしても、勇者様って意外に気さくな人だったんだなぁ~。凄い人っていう印象しかなかったけど、結構話しやすかった)
心なしか足取りの軽い彼女は彼の事を考えていた。
身に纏う強者の雰囲気とは裏腹に、ちょっと笑っちゃうくらい腰の低い態度の勇者様について。
可笑しな人だな、と思った。
それと同時に面白い人だとも。
あの勇者の実態を知っている人間は何人いるのだろうか?
あと数日もすれば王城中に広まることではあるが、アルマは情報を先取りしたみたいでちょっと嬉しかった。
会話の内容も善良な人のそれで、意外に人見知りなアルマでも直ぐに打ち解けられるほどだった。
(しかもしかも! 私が電気を消したことを覚えてくれているなんて! なんで分かったのかは分からないけど、流石は勇者様って感じ! 気配を覚えていたのかな?)
そもそも彼は寝ていなかったうえに強引な手段で暗殺のアリバイ工作を手伝わせていたのだが、そんなことアルマは知らない。
これから知らされることもない。
知った時は、彼女の命が終わる時である。
「フン、フン、フン~♪ フフーン~♪」
「なによアルマ。凄い機嫌よさそうじゃない?」
「えっ? なんで分かったの⁉」
「いや、その態度で分かるなという方が難しいって言うか……」
仕事に戻ってからもアルマは上機嫌を維持していた。当然、おかしく思った彼女の同僚が尋ねて来るが、
「ううん……秘密!」
「あっそ。どうでもいいけど、早く仕事済ませなさいよ」
「冷たくない⁉」
にへら、と笑う彼女に同僚も一瞬で諦めた。
その後も上司に「たるんでいる!」と喝を入れられたりしたが、アルマはニコニコ笑顔のまま仕事をこなしていた。
もしも彼が本当に何の肩書もない普通の人物であったとしたら、アルマとてここまで喜んではいない。
だが、彼は「勇者」という肩書を背負った人物である。
世界が滅びゆく今の時代において、その名がどれほどの効果を持つのか。
世界を救うために呼び出された救世主といち早く仲良くなれたという優越感が彼女の心を満たしていた。
まず間違いなく顔は覚えてもらえただろう。彼はアルマに対して(非常に小さいが)恩が出来たのだから。
さらには彼女の名前まで――
(あれ?)
とここでアルマは首を傾げた。
そして脳裏に浮かんだ純粋な疑問を吐き出す。
「なんで勇者様、私の名前を知っていたんだろう?」
ふむ。
今のところ、ガバをやらかしている感じはありませんね。アルマちゃんは昨夜のことを覚えていないようですし、国王の暗殺犯も判明していない。
これは幸先いいですね。このままのペースを維持していきたいものです。
コンコンッ
さて、やって来ましたのは冷血鉄仮面聖女さんのお部屋です。
何故か彼女は異常なほど落ち込んでいますが、一緒に犯人を捜そうやと誘えばあっさりとついて来ます。
どうしてわざわざ犯人捜しをするのか疑問に思われるかもしれません。中には、時間の無駄だと思われる方だっておられるでしょう。
そんな方々の為に簡潔に説明すると、今回の茶番は全て冷血鉄仮面聖女こと、クリスティーナ・エヴァートンを仲間にする為の作戦なのです(今更)。
もちろん王様が邪魔なことは本当ですが、どちらかというと一石二鳥的な意味が大きく、本命はこちらの怖いお嬢さんの方です。
ここで簡単にですが、彼女のスペックをご紹介しておきましょう。
名前:クリスティーナ・エヴァートン
性別:女
身長:156cm
体重:40kg
スリーサイズ:忘れたけど、お胸はぺったん
職業:聖職者
特技:内政、外交、全体指揮、洞察、推理、計算
趣味:なし
好きなこと:なし
苦手なこと:奇跡、魔術、演技
とまぁ、こんな感じなのですが……ご覧の通り、かなり矛盾しているキャラクターであることが分かると思います。
まずは職業が聖職者であるにも関わらず、奇跡と魔術が不得意という「お前本当に聖職者かよ⁉」と突っ込みたくなること必須のあり得ない現象について説明していきましょう。
実はですね彼女、聖職者の癖に神様が大っ嫌いなんですよ! っていうか、祈るという行為自体がもう嫌いらしいです。めちゃくちゃ驚きですよね……えっ? そうでもない? なんでぇ……?
まぁ、分からないことは一旦脇に置いておくとして、
聖職者キャラの癖に回復奇跡の一つも使えない女など存在価値全くないと思われがちですが……ここで目を向けて欲しいのが彼女の特技です。
内政、外交、計算、全体指揮
そう。
実は彼女、
それも柔和な笑みでやり繰りするタイプではなく、断固たる意志で祖国一強を貫くみたいな、そんな強気の外交が非常に得意です。
おまけに有無を言わさず人を従えさせるカリスマ性も多少は持っており、頭良いので内政も得意です。
ぶっちゃけ、あの無能王じゃなくてこの人が女王になった方が絶対に良いレベルで有能なんですよね。
どうして皆あの王様を早く殺して彼女を即位させなかったんだろう?(純粋な疑問
さらにさらに、彼女の良さは他にもあります。
実は、この王国には終盤まで使えるスーパーチート級の武器が眠っておりましてねぇ、ヒヒ、それを使えば魔王の攻撃なんて屁でもないようなマジにイカれた性能なんですがァ……これがですねぇ、彼女にしか、ヒヒッ、使えない武器なんですよぉ(ネットリ
……もう一回言いますね。
内政チートの冷血鉄仮面聖女にしか使えない武器があるんですよぉ(怒り
はーい、クソ。
ったく、何がレジェンド武器だふざけやがって。誰が魔王を討伐すると思ってんだ? 誰が世界救うと思ってんだ。俺に使わせろや。俺に使わせろや。一週間で魔王殺してやっからよ。なんで? なんでこの世界はこんなに俺に対して厳しいの? ちょっとくらい楽させてくれたっていいじゃん。ほんのちょっと貸してくれるだけでいいんだよ。それだけでさ、攻略タイムが年単位で縮まるんだよォォォォ! 俺、そんなに難しいこと言ってるかな? 別に不正なチートを頼んでいるわけじゃないよ? ちょこっと武器を貸して欲しいだけ。お願い! 先っぽ! 先っぽだけでいいから俺に――
自主きせいちゅう
……ふぅ。すいません、少々取り乱してしまいましたね。あまりの武器欲しさにちょっとだけ我を見失っていました。
ただ、これで私の言いたいことは分かってもらえたと思います。
クリスティーナ・エヴァートンという少女は、
内政をさせてこちらの装備や食事を充実させるバックアップ要因にしても良し。
それか、私が欲しくてたまらないチート武器を持って攻略に参加してもらうも良し。
どちらにせよ、こちらに益しか生まない金の卵なのです。
これは全力で羽化させるっきゃねぇ!
というわけで、彼女を最短で仲間にする為にも絶対に見つかるはずがない犯人捜し始まるよぉ~!
「……復活した盗賊王、ですか。ルタはどう思います?」
「一応聞いておくけど、この世界に人を蘇生させる魔術とかはあるの?」
「ないです」
「じゃあ、盗賊王に罪を擦り付けたい誰かの犯行だろうね」
「やはりそうなりますか」
私は現在、未来の仲間と共に国王の寝室を訪れています。普通に事件現場ですね。部屋中荒らされていて、流石に死体は撤去されたようですがそれでもベッドとか家具に飛び散った血痕はそのままです。
これはひどい有様。一体誰の仕業なんだー(棒
クリスティーナ嬢は鋭い眼差しで部屋中を観察し終えた後、再び私たちに情報を与えてくれた女性と向き合いました。
誰だこの人って最初は思いましたけど、普通に昨夜国王といたしていたあの女性ですね。わざと見逃したあの人です。
「しつこいようですが、もう一度尋ねさせて下さい。本当にその男は盗賊王ジャリバンと名乗ったのですね?」
「……私は直接聞いたわけじゃありません。ただ、扉の向こうで倒れていた警備兵がうわごとのように『盗賊王ジャリバンが帰って来た』と繰り返していたので、そうなのではないかと思っただけです」
「ふむ……風貌はどのような感じでしたか?」
「……薄汚れたマントで全身を覆っていました」
「顔は見えませんでしたか?」
「見えませんでした」
「声は?」
「一言も話していなかったので、何とも。今治療を受けている兵士が意識を取り戻せば分かるかもしれません」
「そうですか……ありがとうございました」
そこで質問を打ち切ったクリスティーナは顎に手をやって何か考え込んでいます。
彼女は本当に賢いので僅かな糸口でも残していればすぐに僕が犯人であると看破されてしまうのですが、今回は大丈夫そうですね。
内心結構冷や冷やしながら見ていたのですが、やはりこの女性は生かしておいて正解でした。こちらの手際がどうだったかよく分かりますし、何よりクリスティーナに対して
今回の私は、何も盗賊王ジャリバンに全ての罪を擦り付けたいわけではありません。というか、クリスティーナの洞察力を前にしてそんなことはまず不可能です。
故に、
容疑者は一人じゃありません。一人にはしません。
あともう一人、生贄が必要なのです。
コンコンッ
開きっぱなしだった寝室のドアを律儀にノックし、一人の男性が殺人現場に入室してきました。
かなりの長身。一部白髪が混じっているものの、完璧に整えられた髪の毛と眉毛。いかにも神経質そうなその男性の姿を見て、若干ですがクリスティーナの眉が寄せられました。
「失礼します。クリスティーナ様がこちらにおられると聞き、お呼びに参上しました」
「ゾルディン殿。私は見ての通り、現在事件の調査中です。最優先で解決すべき調査、それを中断する必要があるほど重要な相手からの呼び出しなのですか?」
「でなければ、私が派遣される道理はありません」
「……」
クリスティーナが苦手とする彼の名は、ゾルディン。
この国の宰相を務める嫌味で神経質な男性です。
ただまぁ、かなり有能な男ではあります。あんなに無能極まりない王がトップに立っていながらも何とかアルカディアが国の形を成していたのは、この男の功績が大きいでしょう。
だからこれからもこの国を頑張って支えて私の攻略を手助けして――とはならないんですよね。残念ながら。
「……私を呼び出したのは、一体誰です?」
「あなたの
「――なるほど」
さてさて。宰相殿。これまで本当にご苦労様でした。長い間、一人で国を回して大変だったでしょう?
でも大丈夫。これからはずっと楽になります。
山のような書類と向き合うこともなくなり、無能な王に頭を痛める必要もなくなります。
なんでかって?
――あなたは、国王殺しの犯人として捕まるからですよ。
うーん、外道。
ただ、一応ちゃんとした理由もありますので、それに関しては次の勇者視点をお楽しみにしていてください。