10話目です(大事な事なので)
このままのペースで100話まで続けばいいな……頼みましたよ未来の自分。
考え事をしながら海を進む。今日は雨でかなり波が高いけど動かないよりはマシだろうと思って移動を開始した。屋根もない無人島で雨に撃たれながら一晩過ごすなんてそれこそ意味がないと思う。
「しかし、悪天候の海ってこんなに荒れるモンなんだな。あ゛ー気持ち悪い……早く止まねぇかな……」
自分の身長以上の波に叩きつけてくる雨風、時折光る稲妻で俺はもうグロッキーだった。
上下左右に大きく揺られ、強い風を感じ続けても前へ進む。まるでジェットコースターだけどアレよりもだいぶ遅い。それにジェットコースターはスリルを楽しむ物で、こっちはスリルもない癖に脳とか内蔵に直接ダメージを与えに来てる。
乗り物酔いの気持ち悪さを強烈にしたような気分の悪さに出発したことを後悔し始めたのも結構前のことで、意地で進んでしまったばかりに引き返せず、引き返すよりも進んだ方が近いと妖精さんも言っていた。
幸いなことに深海棲艦も見ていない。流石の深海棲艦も雨の日には大人しくしてるんだな。まぁこんな状況で相手はいつも通りの動きが出来ますなんて言われたら溜まったもんじゃないからそのまま大人しくしていて欲しい。ずっと大人しくしてるのがベストだ。
そして考え事は荒れた海の事から戦い方と艤装の事、深海棲艦のことに移っていく。気持ち悪いのは変わらないけど何も考えずに無心で進むなんてことは俺には出来ないから何かを考えるしかない。せめて二人以上なら会話が出来るんだろうけど妖精さんは艤装の中に隠れたので非常に退屈だ。
まずは戦い方の事を考えよう。艦娘としての特性を活かしたであろう戦いは以前イ級相手に出来ただろう。しかしイ級ならともかく他の深海棲艦はどうだ? 人型の鬼や姫級なんかにはあんな子供だましは通用しないだろう。
確かにここはゲームの中の世界だったがゲームの『艦これ』ではない。ターンなんてものはないし腹が減ったら動けなくなるし、天気が悪いと思うように進めない。
無くなったものが多いが決してそればかりではない。相手も恐らくプログラムデータから生物? に変わっている。
そして生物である以上弱点が生まれる筈だ。人型なら特に、頭を撃ち抜けば即死するはずだ。なんならリアルだからわざわざゲームに出てくる砲の撃ち合いなんてしなくてもいいのかもしれない。あぁ、考えてたらワクワクしてきたな。面白くなりそうじゃない?
艤装をコツコツ叩いて妖精さんに呼び掛ける。艤装から頭だけ出して来た。こっちはずぶ濡れだというのに偉い身分じゃねーかオイ。
「なぁなぁ妖精さんよ、盾とか投擲武器って作れない?」
「……はい?」
妖精さんが「何言ってんだコイツ」みたいな顔で見てくる。それだ、それだよ。
予想外のことが起きれば意表を突かれた相手は呆然とする。恐らく深海棲艦だって盾とか持ってるヤツとの戦いなんて想定してないだろうし、そこに付け入る隙がある筈だと力説する。
人が今みたいに割とどーでもいいことで困惑してるのを見るのが好きだとか、他人に迷惑が掛からないレベルでふざけて楽しくなれば、それで面白くなれば万事オッケーだとかは言わない。こんなしょうもないことでダメって言われたくない。
どうやら悪ふざけとか他人がしないようなピエロみたいなムーブをかますことは俺が俺である以上止められないみたいだ。他人がやらないであろう事をやるちっぽけな優越感が俺を幸せにしてくれるんだ。……だから友達に「犯罪者みたい」なんて言われたのかもしれないが。
妖精さんは考え込んでいる。頼むよ~有ったら絶対に役に立つから! なんて言っても考えたままだ。何故? 刀を持った艦娘が居るんだから刀は作れるだろう。だったら盾だって作れるんじゃないの?
「作れないことはない……ですが、ちゃんと他の妖精さん達と話し合わないと難しいかもしれません」
「何が何でも日本へ行かないといけない理由が出来たな」
「こんなことでやる気になるなんてよく分からないですぅ……」
「何言ってんだ! ロマンは大事なんだよぉーッ!」
これだから妖精さんは……いや、コイツだけかもしれない。だいたい『艦これ』の二次創作では妖精さんがやりたい放題してたりするし、工作艦の明石とかと一緒に時空壊れるようなもの作ってたりするし……
とにかく今は気分がいいから進む! 気分屋な俺は気分が良い内にやるだけやっておかないと後で面倒くさくなってやらないことは俺自身が一番知ってる。
「今どの辺に居る?」
「フィリピンの近くですぅ。このままのペースで四時間くらいで見えてくると思いますよ~」
「そいつぁあ良い! 飛ばしていくぜー!」
20分後に気持ち悪くて吐いた。
長距離移動するときには意識してちょっと速く移動するだけで随分と到着時間が変わっていたりするものだ。妖精さんから言われた四時間くらいよりも早い三時間でフィリピンに到着した。地図を見るとスラバヤよりも日本の方が近いんじゃないか? ってくらいの場所だ。まだ予想の40日の半分どころか四分の一くらいなんですけど……やっぱり俺の時間管理はガバガバだな!
久しぶりに港に来たから屋根のあるところで休もうと思う。……随分と図太くなったな。それともどうせ金は無いからと開き直ってしまっただけかもしれない。
どちらにせよ休まなければならないことには変わりない。既に到着から時間が経っているのでそろそろ妖精さんが何時ものように何処からともなく食べ物を入手してくる筈だ。
二度あることは三度あると言うし、多分今回も碌でもないところから拾ってくるんだろうな。それで助かってるから文句は言えないけど心の中で文句を言うくらいは許されるだろ。
今回は倉庫……ではなく廃墟だ。倉庫じゃないからまだ罪悪感が少ない上に倉庫と違って人が生活する為に建てたものだから生活用品も無くはない。
因みに大きな問題が一つあった。台所のテーブルに突っ伏したまま動かない人が居たことだ。
なんか外国人ってだけでは説明がつかないくらい肌の色がおかしかったし、妙に髪がパサパサだし、何より呼吸をしていないから十中八九死体だろう。やけに冷静なのはきっと現実だと認識できてなかったからじゃないかな? 触ったり、表情を見たり、わかりやすく血塗れだったり蛆が湧いてたりしてたら即発狂してたな間違いない。
どうにかして処理したいけど触るのは嫌だ……というわけで埃っぽい毛布を被せて見えないようにした。
そして手を合わせて信じてないけど神様にでも祈っておいた。……普段は神様なんて気にもしないのにこういう時だけ都合よく思い出すような俺の祈りが届くかどうか。天罰でも下るかもしれない。
外は相変わらず酷い雨風で、廃墟は隙間風と雨漏りが目立つ。それでいて埃が積もっていてカビ臭い。ざっと見た感じでは家具があまりない。多分今の俺と同じように入り込んだ泥棒が目ぼしいものを持って行ったのだろう。
二階に上がると部屋は三つあるようだとわかる。
「ゴミ部屋に、空き部屋に、寝室か」
俺は寝室に入った。ボロボロで中身が飛び出たベッドがある。やはり埃が積もっているが払えば使えるだろう。汚いなんて贅沢は言ってられない。コンクリや石の上で寝るよりよっぽどいい。
……風呂は? シャワーは良いのかって? 馬鹿言うなよ、この体で水浴びしたことなんて一度もねぇよ。今日の雨でずぶ濡れになったのが水浴びなんだよ……
興味本位でシャワー室に入ったら水が出てこなかった。
「風呂に入りたい……とびっきり熱いヤツに」
だからだろう、日本人として当然の感想が出てくる。……もう一週間以上シャワーも浴びて無いし、飯は不味い。泥棒みたいなことして過ごしてたり一日中海を只移動してたり……こういったごく普通が出来ないってところから人間性って失われていくのだろう。
なんて暗い思いをしながら部屋を見回す。……人影もないし良いだろう。
セーラー服を脱いで椅子に掛ける。スカートも同様に掛けておく。インナーとスパッツは流石に脱がない。人目が無いからといってそこまでする度胸はチキンな俺にはない。
鉄製のブーツを脱いでひっくり返したら結構な量の水が出てきた。……『艦これ』のキャラクターって靴の中に水って入らないのかな?
下着同然でベッドに腰かける。傍から見たらかなりアレだろう。前世の俺がここに居たら「すいませんでした!」って言って部屋から逃げるだろうな。この体の持ち主が俺じゃなかったら通報されてお終いだったな。襲うだなんてとんでもない!
しばらくの間、特にこれと言って考え事も無くボーっとしていたら妖精さんが戻って来た。今回はパンかぁ~腹持ち良くないから好きじゃなかったんだよね……今は前世程食べられないから評価を改める必要がありそうだ。
「なぁ妖精さん……いつもありがとうな」
「!?」
実感は無いが死んでしまったが転生させられて艦娘として生きていること、偶々だろうがこんな境遇でもいろいろと助けてもらっている。そのことにお礼の言葉を掛けたら信じられない物を見たって感じの反応を返された。今まで何回かお礼は言ってるじゃん。なんで今回だけこんな反応なの? 流石に凹むんですけど……
驚いている妖精さんを放っておいて横になる。カビ臭いが柔らかい布団に挟まった俺の意識は疲れからかスッっと落ちていった。
というわけで盾や投擲武器とかを持たせる予定です。オリジナル艤装は二次創作の特権。
日本までの距離はだいたい半分くらいですがこのままだとグダグダになるので巻きます。