私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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100話です。

一つの目標であった100話に到達しました。ありがとうございます。

次の目標は「兎に角、完結させる」ことです。これからもよろしくお願いします。


第一印象は大事

「いや~助かりますぅ……」

 

 薄暗くなってきた水平線に向かって灯りを点けては消してを繰り返し、俺を先導する響には頭が上がらない。響が居なかったら見当違いの方向に向かって全力移動。クソ広い海で盛大に迷子になってたところだ。

 

「スチュワートは変なところで常識知らずだね」

 

 呆れた顔を向けてくる響に返す言葉が無い。そらそうよ? 一般人はモールス信号なんて言葉は知ってても解読なんて出来ないんだから。

 見た目からは想像も出来ないけど、大戦を経験してる生粋の軍人である艦娘と一緒にしないで欲しい。

 

「そろそろ通信が繋がるかもね」

 

「了解。『聞こえますか?』」

 

『聞……た…じゃ! その声はスチュワートかの?』

 

 おお、繋がった。そしてその声と話し方は初春で間違いないね。

 

『はいそうです。それで、そちらの状況は?』

 

『何とも言えんのう……向こうに敵意を感じぬから、互いに攻撃をせずに睨み合ってるだけじゃ。正直なところ、少しばかり飽きてきた』

 

『もう少しで着くので、待っててください』

 

『助かる。戦果を挙げようとする白露を押さえるのが骨じゃ。……これ! 単独で敵に突撃するなど何事じゃ! 今指示を仰いでおるから待っとれ!

 

『初春……ありがとうございます。白露と他の人に発砲するなとだけ伝えてください。よろしくお願いします』

 

 多摩が居る筈なんだけど……白露を押さえてたんだろうか?

 

『了解した。待っておるぞ』

 

 初春との通信が切れた。

 

「スチュワート、何か秘策はあるのかい?」

 

「敵意は無いらしいので、コレで何とかなりますよ」

 

 冗談っぽく言いながら、持って来ていた間宮羊羹を取り出して見せる。

 

「……」

 

 響が胡乱な目を向けてくるが、子供(北方棲姫)にはお菓子! コレ世界の常識。……やってることは完全に不審者だけど、平和の為だからしょうがないね。

 まぁ、俺自身も本気でコレ(羊羹)で何とかなるなんて思ってない。

 取り敢えず、北方棲姫を刺激しないようにしつつ港湾棲姫に話を聴かないといけないな。

 

 

 

 

 

どうすればいいにゃ!?

 

 やっと艦隊が見えてきたと思ったら、多摩さんが飛びついてきた。

 俺も分からん! って脊髄反射で応えそうになったけどグッと我慢する。脳を通さずに会話すると碌でもないことになるって俺は学んだからな。

 あと、爪を立てないで欲しい。

 

 痛い。

 

「まずは敵意が無い事を……これはしばらく睨み合ってるならまぁ置いといて良いでしょう。次に、一人であそこまで行って、会話を試みる必要がありそうですねぇ……」

 

一人で行かせるなんて危険だにゃ!

 

「駄目です。一人でです。これは譲れません」

 

 一人で行くことで相手よりも頭数を減らし、抵抗しない、出来ないって意思表示することが必要だ。頭を下げて、首を晒すのと同じようなものだな。

 

ならば!先程から随分元気な白露に行かせたらどうかのう?」

 

 片や危険だと言い、片や効果が薄いと言って睨み合ってたところに初春が割り込んできた。後ろには、右手を響に、左手を菊月に捕まった白露が居て、初春の提案を聞いたのか勢いよく頭を上げた。

 

ホントに!? だったら任せて! ギッタンギッタンにしてやるんだから!

 

 うん

 

ダメです♪

 

 

 

 

 

 それから暫く白露が騒ぐだけで時間が過ぎ、いくら敵とは言っても待たせるのが忍びなく感じて来た頃、多摩さんが折れた。但し、俺に何かあった時は直ぐに行動に移せるように通信は入れておけと言われた。

 

念には念をって姿勢は嫌いじゃないけど……どうして分からないかなぁ?

 

 だって攻撃してこないんだぜ? 多少とは言え一方的に攻撃されたのに。

 

「私は貴女たちを信じているのに……ねぇ?」

 

「……」

 

 港湾棲姫のところまで辿り着いて声を掛ける。

 宙に浮かんだタコ焼き亜種みたいな奇抜なオブジェクトのお陰で、それなりに離れていても場所は特定できた。

 

「こんばんは」

 

「……こ「オ前、怪シイ! カエレ!」

 

「えぇ……」

 

「ホッポ……」

 

 挨拶をしたら、陰に隠れていた北方棲姫(ほっぽちゃん)から帰れって言われた。

 その北方棲姫は、港湾棲姫の陰にまた隠れてしまった。

 

 そんなに怪しいかなぁ? まだ “にこやかに” 挨拶しただけなんだけど……。流石に子供から出会い頭にそう言われたら悲しくて涙出そう。

 

 すると今度は、どこか申し訳なさそうな顔をした港湾棲姫から話してきた。

 

「ホッポガ悪カッタ。……一ツ訊キタインダガ、オ前ハ何故攻撃シテコナイ?」

 

 あっ、面倒くさい質問だ。

 

「そぉですねぇ……戦う理由があんまりないから? ですかねぇ?」

 

「理由ダト? ソンナモノ……」

 

 いくらでもあるだろう。

 と続けた港湾棲姫の言葉に被せるように言葉を放つ。

 

「いや~! だって貴女たちの方こそ攻撃してないですし? それとも、今背中を向けたら攻撃するんですか? しないでしょう?」

 

「……」

 

 沈黙は肯定。古事記にも書いてある。

 っていうか、奇抜なタコ焼き以外に艤装っぽいの無いやんけぇ! 攻撃して来ないも何も……出来ないんじゃないの?

 

「ホラ。そっちが戦う気が無いならこっちも同じなんですよね。そもそも、人間に敵対的な深海棲艦が居なかったら戦いなんて起こりませんし。……戦わないに越したことは無いですよね? それに、痛いのはお互いに嫌ですよね?」

 

 本音を言うと、姫級、所謂ボスなんだから絶対に強いだろうこの二人とは戦いたくない。

 今だって、ふざけてるからまだ平気だけど、真面目に会話なんてしてたら空気とかプレッシャーに飲まれて、蚤の心臓がパーンなるで。

 

「……私タチハ深海棲艦ダゾ?」

 

 だからなんだよ

 

「それがどうかしましたか? 駆逐棲姫は一言だけ、何か言ったと思ったらボコってきましたよ? それなのにホラ……まだ生きてる! 本当に深海棲艦ですか?」

 

 殺意足りてないんじゃないの? って言ったときに気が付いた。

 港湾棲姫と北方棲姫からジッと見られている。

 

 目を話したら死ぬ、その瞬間に殺されるんじゃないかって思う。今すぐに目を逸らしたいけど、目が離せない。心臓が握られてるような錯覚に陥って上手く呼吸が出来ない。

 

フゥー……フゥー……

 

「ソウカ……」

 

 何を納得したのか、安堵の表情を浮かべた港湾棲姫が指……クソでかい爪を俺の方に向けてきた。

 

フゥーーッ フゥーーッ

 

 目の前までゆっくりと伸ばされた爪から目が離せない。

 

 次は何をしてくる?

 

 このまま俺の頭を握りつぶすのか?

 

 目を突きさす気か?

 

 首を刎ねる気か?

 

 それとも……

 

 集中しろ。 死にたくなかったら百分の一秒の挙動を見逃すな。

 

「オ前ヲ……」

 

 俺を? どうするんだ? 殺すのか?

 

フーッ! フーッ!」 

 

 突然頭が痛くなったと思ったら、視界が端の方から急に暗くなっていく。

 なんか奥に落ちていくような感覚を味わって、鼻からドロドロした……鼻血?

 

 ……まぁ、ヤバいなってことを感じ取って、足に力が入らなくなってもう……崩れた。

 

信ジヨ……オイ!

 

 なんか言ってやんの……頭回んなくて何言ってるか分かんないなぁ……。

 

 




北方棲姫(ほっぽちゃん)に近付いて、保護者(港湾棲姫)の間の前で鼻息を荒げて、最終的には鼻血を出して倒れこむのは間違いなく変態のソレ。


……驚いたでしょう? 100話なんですよ? コレ。

深海棲艦で、喋るタイプの姫、鬼級の言葉は漢字以外はカタカナ表記にしました。不評でしたら鍵括弧を変えるようにしますので「読みにくい!」って方が居ましたら教えて頂けると幸いです。
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