私の名前は「      」   作:捻くれ餅

102 / 180
101話です。

一昨日「昨日は明日(今日)雨降るって言ってたのに明日になってる」
昨日 「昨日は明日(今日)雨降るって言ってたのに明日になってる」
今日 「昨日は明日(今日)雨降るって言ってたのに明日になってる」

天気予報仕事して?


心配、不安、悪だくみ

▼――――――――――

 

にゃぁ……」

 

どうかしたの?

 

 通信機に耳を当てて、一人で深海棲艦のところに向かったスチュワートの様子を探っていた多摩さんが小さく唸った。

 私たちの中で一番詮索、探索が得意だからハッキリと聞こえたみたい。私は雑音とか拾っちゃったから良く聞こえなかったんだけどなぁ。

 比較対象の多摩さんが軽巡ってことと、まだ新人っていう言い訳が出来るけど、そんな事ばかり言ってられないから、私も頑張らなきゃ!

 

「これは拙いにゃ……」

 

「む。何かあったのかのぉ?」

 

 初春が、双眼鏡を覗き込みながら多摩さんに質問した。初春の隣に居る響もそうだけど……ソレ(双眼鏡)はどこから取り出したんだろう?

 

「さっきからスチュワートの様子がおかしいにゃ」

 

「そうかい? 見たところでは特に変わった様子は無さそうだよ」

 

 「気のせいじゃないんだけどにゃあ……」って言って、また通信機を耳に押し当てる多摩さん。

 

 う~ん……多摩さんと響と初春が居るなら私、要らないよね?

 

 辺りを見回すと、落ち込んでるようすの白露が居た。

 すぐ後ろには菊月も居て、目が合うと「処置無し」と言わんばかりに腕を上げて首を振った。

 

あたしが一番あたしが一番あたしが一番……

 

 近づいてみると不気味な呟きが聞こえる。心なしか、白露の周りに不知火……じゃなくて鬼火が見えるような……雰囲気も暗いし。

 出発前から騒がしい印象だったけど、スチュワートから一言貰っただけでまるで別人みたいに……スチュワートは何者なの?

 

「ほら、シャキッと! アンタそれでも長女(ネームシップ)なの?」

 

 お尻を叩いて声を掛ける。

 

「痛っ……勿論よ。でも……」

 

 振り返った白露は据わった目と下がった肩、まるで覇気のない声で全体的に(しな)びてて別人かと思った。……暗い! 全然噛みついてこないじゃない。

 

「はぁ~あ……張り合いが無いわね。アンタは同時期に建造された駆逐艦の長女だし、私のライバルだと思ってたんだけどな~」

 

うん……そう。そうだよね! あたしがいっちばん高いハードルとして立ち塞がってやるんだから!

 

 うん、元気になった! ちょっと煽って正解だったかもね。暗いのは白露には似合わないよ。

 急速に活力が宿り、肩をグルグル回している白露はもう大丈夫だと思う。

 

「済まない。それにしても、長女(ネームシップ)としての発破をかけるとはやるな」

 

「まぁね~。でも、元気になったらなったで……」

 

 また突撃するかも……なんて言葉は、様子を窺っていた三人が上げた声に掻き消された。

 

「「あ」」

 

「あっ……」

 

「何があった!?」

 

みんな! 深海棲艦のところに行くにゃ!

 

 不穏な呟きに菊月がいち早く反応する。三人の焦り方が普通じゃない。

 

「白露、行けい! 一番槍であるそなたの出番じゃ!」

 

「え? え!?」

 

「通信が繋がらなくなったにゃ!」

 

「我らが初期艦を倒すなんて……弔い合戦だよ」

 

 倒されたって……「多分何とかなりますよ」って言うから信じたのに、全然大丈夫じゃ無いじゃない! 信じた私たちが馬鹿みたいでしょ!

 

「わらわも見ておったが、攻撃されたりして大破した訳ではなかったぞ? 勝手に弔うでない」

 

「それより良いのか? 白露がもう……」

 

急ぐにゃ!

 

 こんなことなら、様子がおかしいからって様子見を提案するんじゃなかった!

 

 

 

▲――――――――――

 

 

 

 苦しい?

 

 

 

 息が……出来ない?

 

 

 

「ッ!? ~~~ッ!?」

 

 

暴レルナ!

 

 顔、鼻と口が押えられて息が出来ず、押さえてるものを取っ払おうとしたら顔面を何か柔らかいもので殴られた。

 こんな酷い寝覚めって無いよ……

 

「大丈夫ナノカ?」

 

「……そうだった。あ~ハイハイハイ……大丈夫ですぅ……」

 

 上から声を掛けて来た港湾棲姫に覗き込まれて一瞬ギョッとしたけど、倒れる前には港湾棲姫と会話していたことを思い出したからヘコヘコしながら起き上がる。

 

 流石に倒れた人の介護に海の上は良くないと判断したのか小さい島、岩礁? に移動したみたいで、さっきまでは装備してなかった艤装が鎮座していた。

 何と言うか……デカい。これもうMAP兵器でしょ。固定砲台型のめっちゃ強いヤツ。

 

「サッキノ続キダガ……オ前ヲ信ジテオ願イガアル」

 

 さっきの続きと来たか……いや、真剣な話ってのは分かったからそんなに凝視しないで! プレッシャーがヤバいからまた倒れる!

 ……不誠実だろうけど、まともに目を合わせてたら心臓がいくらあっても足りない。だから目を微妙に逸らしながらの会話を提案したら受け入れて貰えた。

 

「色々と済みません……それで、お願いとは」

 

「アア、私達ハ深海棲艦ノ中デモ穏健派デナ。他ノ奴等ノ方針ニ合ワナカッタンダ……」

 

 うん、知ってた。

 

「それで、抜けて来たから居場所が無いってことで良いでしょうか?」

 

「話ガ早イナ。匿ウ……マデハ行カナクテモ、深海棲艦ノ少ナイデアロウ鎮守府ノ近クニ身ヲ潜メタイ」

 

「なるほど」

 

「ソレト……恥ズカシイ話ダガ、私モホッポモ、腹ガ減ッテイテナ……」

 

「……分かりました」

 

 俺がそう言うと港湾棲姫は明らかにホッとして、陰に隠れていた北方棲姫が出て来た。

 

「オマエ、イイ奴ダナ」

 

「それ程でもない」

 

 腹が減るのはしょうがないことだし、これはこれで割と重要な情報じゃないか? 深海棲艦にも空腹の概念はあると……。

 それはそうと、ちょっと持ち上げられて気分が良くなったからドヤったら腹パンされた。痛い……。

 

 

 

 

 

「ム……」

 

 空飛ぶたこ焼きがギャアギャア騒ぎ始めた。すると即座に北方棲姫が俺の服を掴んで、たこ焼きが見る方向の逆側に移動した。

 何事かと思ったら何かが近くに落ちた音がした。

 

肉盾にされた……

 

「砲弾カ?」

 

 地面から煙出てる……砲弾ですねぇ!

 

「これマジ?」

 

 なんで撃って来たし。白露辺りが我慢の限界でも迎えたか?

 取り敢えず連絡を……

 

「あっ!」

 

 通信機機能してない(死んでる)じゃん!

 えっ? つまり何? 俺の通信機が壊れて連絡が取れなくなって? 仮に双眼鏡とかで見てたとしたら、俺が謎の方法で倒されたことになるの?

 

 そりゃあ俺が見てる人達の立場だったら助けに行くわ。

 でも、俺は勝手に自爆しただけだから助けは要らない。

 

「……二人はここで待っててください。身内が混乱しているようです」

 

 そう言って、返事も聞かずに海へ出る。

 顔から火が出そうだ。完全に自分のミスじゃんかさ。

 

 

 

「……という訳で、私は私です」

 

「じゃあ、操られてる訳じゃ……ない?」

 

 深海棲艦、港湾棲姫のプレッシャーにやられて極度の緊張と興奮状態になって倒れたことと、その時に通信機が水没して前衛的なストラップに変わったことを説明しても、何故かまだ疑ってくる一行。

 ……アレか? 鼻血出したことまで言わなきゃいけないのか? そもそも操られてるヤツがこんなに綺麗な目をしてる訳ねぇだろ常識的に考えてくれない?

 

 ついでに、二人が敵対的な意思を持っていないことを確認したことを伝えた。

 そこまでやっちゃったなら隠し事もクソも無いから俺一人でアレコレ言う理由も無くなった。なんで港湾棲姫とかのことを知ってるかって言われたけど、初期艦だから色々と知ってるってことで言いくるめた。後で提督に訊かれないことを祈ろう。

 

 

 

「……という訳で、私はあくまで要求を理解したというだけです。何せ決定権は提督、もしくはもっと上の立場の人が決めることですから」

 

 皆で港湾棲姫のところに向かって話し合いの続きをする。

 まずは、姫級の深海棲艦を事実上匿うとなると俺の一存では決められないからこれだけは伝えておいた。

 そして今は提督と連絡を取っていた。

 そこで活躍するのはスマートフォン。電話がこんな辺鄙な場所でも繋がるのは素晴らしいとしか言えない。

 やはり文明の叡智はいいぞ。

 

『……流石に無条件は駄目だ。それに、深海棲艦を警備府に入れるのも駄目だ』

 

 猫を拾ってきた子供に捨ててきなさいって言うオカンみたいなこと言ってんじゃねーよ。

 でも、提督も提督でそこまで拒否感は抱いてないっぽい。なんか否定的なのは恐らく、体裁とかを気にしてるんだろう。

 お政治のことは私、よく分かりませんわ~?

 

「鹵獲したってことにすれば……」

 

『いや、その場合は間違いなく大本営に回収されるだろうね』

 

「う~ん……皆さんは何かアイデアがありますか?」

 

 スピーカーモードにしてるから、向こうで遊んでる北方棲姫と、暇つぶしの相手をさせてる陽炎と多摩さん以外の全員が頭を捻る。スマホからも何も聞こえなくなり、提督も色々と考えていることが分かる。

 

「そう言えば、深海棲艦って海中にも行けるんだよね?」

 

「……アア。潜水艦以外デモ水中ニ潜レル。好ンデ潜ル奴ハ居ナイダロウガ」

 

「じゃあさ……警備府から比較的近い島、あったじゃん? その地下に穴でも空けちゃえば良いんじゃないかな!?」

 

「? ……ああ。ビーバーの巣みたいにすればってことですか」

 

 白露……こやつ天才か? 俺が常識に囚われすぎただけか?

 

『確かにそれなら……う~ん』

 

 提督も唸ってるから、もう一押しってところだな。

 

「じゃあ後は、深海棲艦の情報とかを尋問したってことにして大本営に報告すれば良いんじゃないかな?」

 

 響のナイスアシストで、提督も決心したらしい。

 

分かった。その島に港湾棲姫と北方棲姫を連れて行ってくれ』

 

「「「了解!」」」

 

『それと港湾棲姫には、艤装をこちらに引き渡して貰いたい』

 

「当然ダナ」

 

 おいおいおい……あの提督が随分強気に出るじゃねーかよ。

 武器を捨てろって言われて応じる港湾棲姫も港湾棲姫だしよぉ……実は艤装はオマケで、本体が暴れるだけでゴジラ顔負けの被害出せるとかは……無いよね?

 

『……私は、我々大湊警備府の艦娘には君達二人には危害を加えないように呼び掛けておこう』

 

「感謝スル……提督」

 

 そう言った港湾棲姫はスマホ越しのただの電話にも関わらず、深く頭を下げた。

 




愛くるしい北方棲姫と超グラマーな港湾棲姫!
大湊の提督を慕う艦娘達に危機が訪れる!?
新たなメンバー(?)が艦娘達の恋路に齎す影響とは!?
次回「青葉、死す」 お楽しみに!


多摩はちょいちょいダメなお姉さん感が好きです。
語尾のせいで大分幼い印象が強くて……(隙自語)

港湾棲姫って料理上手そうよね……。
でも電子レンジは使えなさそうな感じがする……。

次:忙しいので7/22まで待っていただきたく……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。