梅干し欠乏症……
体はアミノ酸を求める。
「―――って感じです」
「簡単な説明ありがとう。最後の言葉は気になるけど一回置いといて……」
警備府に戻ってきて執務室。
朝食後の話から龍田さんは戻ってきていないそうで、代わりに大淀さんが秘書艦の椅子に座っていた。どうやらこの後は金剛さんとチェンジするらしい。選り取り見取りだな提督?
……っとまずいまずい。意識を現実に戻す。
「―――島のことだが、一応妖精さんと話をした結果見積もられた量の資材は持たせたつもりだったが」
「……それなら大丈夫でしょう。妖精さんは建造、建築のプロですから」
何せ
万が一資材が足りなくなっても、あの島にはまだ資材の素が落ちてる。
「あ、そう言えば……北方棲姫からの要望で、あの島を『ナラスカ島』と呼んで欲しいと」
「う~ん……勝手に名前を付けるのはちょっとねぇ……警備府でだけ伝わるように周知させればセーフだと思うかい?」
「まぁ……勝手にそう呼ぶくらいなら誰も怒らないんじゃないですか?」
最悪の場合「へぇっ!? 知りませんでした!」って感じで良いんじゃないかな? 分かりやすくなるんだったら何だっていいと思う。
ナラスカ島……鳴らすか? 慣らすか? アラスカ? ……駄目だ名前の由来がさっぱり分かんねぇ。適当に決めたんだろう。
「次に港湾棲姫の提案だけど……受けようと思う」
「えっ」
「えっ……駄目なの?」
「いえそんなことは……ですが、あんまり深海棲艦の言うことを聞いてると距離が近いって疑われますよ? ただでさえ怪しいって言われるのがここに居るのに」
提督が寝返った! そんな噂が流れ始めたら真っ先に疑われるのが俺なんだからな! 「提督が裏切る筈が無い!」「やっぱり深海棲艦のスパイだ!」「提督
「……う~ん、そうだ! 北方棲姫は
ワーオ。北方棲姫を人質に取ると……
「……その条件をのんでくれたらいいですね」
多分のんでくれるとは思うけど……
抑えるって言った手前やるけど、それとは別に北方棲姫を人質に取るのは許さんって感じになりそうなんだよなぁ……もしそうなったら
「最後に飛行場姫についてだね」
そう言った提督は、大本営で飛行場姫について結構多くのことを学んでいたらしく、口から出て来た言葉も港湾成果から聴いた話と大差ない物だった。
内容は名前の通り飛行場。つまり船ですらないとのこと。
港湾とか飛行場とかさぁ……もう深海棲『艦』じゃないよね?
「やっぱり言葉だけだとイメージし辛いよね? 百聞は一見に如かずって言うし……」
あっ、嫌な予感。
「ちょっと偵察、行ってみない? 行ってきて」
急いで執務室から出ようとした俺の背中に声が掛かる。
ピクニックじゃねーんだぞ!? そんな軽い気持ちで言うことじゃないと思うんだけど!?
「……という訳です」
「「「……」」」
あまりにも適当だったから流石に納得できなくて提督に質問した。
すると、龍田さんが話を広めてる可能性があるらしくて提督も結構余裕が無いらしいことが分かった。話の
だからと言って「危険だと思ったら直ぐに撤退して良いから、
一緒に向かうのは摩耶様、叢雲、曙、満潮、荒潮と、まるで俺に対して監視してますって言ってるような面子。
提督が何の理由もなくこんな嫌がらせ染みた人選をするとは思えないから、龍田さん辺りに対する疑ってますよってアピールみたいな感じの理由があるんだろう。
「ねぇ、龍田さんから聴いた話って本当?」
違った。
これ包囲網ってヤツだ。
既に話広がってんじゃんヤベェヤベェ……
「何ぞこの怪しい者め! 成敗致す!」なんて闇討ちされないよね?
……そんなことは置いといて、だ。
広まっちゃったものはもう手に負えないだろうし、全員知ってるって考えた方が良いよね? 限られた空間の中ではどんな秘密であれ一度話題に出たら公然の秘密になるって言うし。
「ええ、本当ですよ……失望しましたか?」
だからそう、変に隠そうとしないで堂々と言っちゃえば良いんだ。
「失望って言うか……本当にアッサリ認めるのね。龍田さんと一緒に私たちを揶揄ってるって言われた方がまだ信じられるんだけど」
ところがどっこい! ノンフィクションなんスよコレ。
よく言われるじゃん? 事実は小説より奇なりって。
「仮にそれが事実だったとしてスチュワート、あんたはどうするつもりだ?」
「どうするも何も……何もしませんよ」
何か出来るとも思えないし。
「ほう?」
腕組みした摩耶様怖い……。
「どこまで話を聴いてるかは分かりませんが……
「そういうことは相談しなさいよ! この馬鹿!」
はい分かりました! ……なんて言おうとしたけど、流石に空気読めてないから止めた。
叢雲といい摩耶様といい……なんか反応が薄いように感じる。俺の緊張感の無さも原因なのかもしれない。
「……あんまり大きな声出すから、敵に見つかったみたいね~?」
「あっ……ごめんなさい」
……因みに今は警備府を出てから四日目だ。
会話の始まりは「どうしてこの面子なのか」を満潮が気にしたからで、会話が終わったのは荒潮が進行方向に深海棲艦を発見したから。
気のせいとかじゃなく、間違いなく深海棲艦との遭遇が増えた。目的地に近付いたって証拠だろうな。
「駄目そうな時だけ発砲しろよ、一気に突破するぞ、付いて来な!」
まあ、こうやって逃げるように行動して交戦は控える。ちょっと見てくるだけの偵察をするならこれで良いんだ。
「……撒いた?」
「そうみたいだな。ふぅ~、全く、数が多くて嫌になるね」
満潮と摩耶様の声を聞いて、一行の間に張り詰めていた緊張感が消える。
今の場所はどこかな~? ……おっ? 近くにハワイあんじゃん!
「アレが目的地のハワイですね」
「へぇ。アレが……」
……ん? ハワイ……?
「あっ」
ァアアア
ァアアア
アアアア
「五月蠅いっ!」
「きゃあっ!」
「あらあら♪」
俺の呟きから数舜後、頭が痛くなるようなレベルの音量のサイレンが鳴り響いた。
学校の社会の授業で習ったことがある……コレは、空襲のサイレン!
つまり何!? もう飛行場姫に気付かれたってこと!?
ど、どうする……
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!
発狂。
ふと、あのサイレンの恐怖を知ってる人の言葉や想いは、正しく後世に伝えられているかを考えました。
語り部は大事ですが、重要視されない問題。
次回は7/32の予定です8/1予定です。
もう8月ですね…