そろそろシナリオ進めないとヤバいヤバい……
でも茶番が止められないんだ!
サブタイトルがネタすぎる……
「? ……??」
俺は困惑していた。原因は目の前の艦娘。
今まで見たことがないから間違いなく新人なんだろうけど……佐世保で見た鈴谷さん、夕張さん、木曾さん、五十鈴さん、長月、山風、夕雲、その誰とも当てはまらない鮮やかな緑色の髪をしたこの人は一体……
時は遡ること二日前。
やっとの思いで警備府に辿り着いた俺たちは、空腹のあまり痛む腹を押さえるのを堪えながら提督に報告に行き「明日聴くから、ご飯を食べて休め」という嬉しい指示を貰って、遅い時間にも関わらず食堂に残っていた間宮さんにこれでもかと
すると提督はノートに書き込みを始めて思考の海に沈んでいった。
何とも提督らしくなっちゃって……と、近所のおばちゃんみたいな感想を抱いてたら俺たちの存在を思い出した提督に「戻っていい」とだけ言われて自由になった。
暇になったから警備府をうろついていたら、やっぱり話は広がっていたのか俺に話しかけてくる人は一部を除いて殆ど居なくなったことに気が付いて、すぐに部屋に引きこもって枕を濡らして一日を潰した。
そして今日、一緒に飛行場姫の
主な話題はやはり俺のことで、叢雲と曙からの「本当?」っていう追及で心が痛くなったが、摩耶様からの「深海棲艦をブッ飛ばしてあたしらを攻撃しない深海棲艦は居ねぇ!」っていう言葉で全部すっ飛んで行った。
「舎弟にしてください!」
そう言ったら拳骨されて、さらにエッグトーストに砂糖をかけられたが「ほら食えよ」と悪戯っぽく笑う摩耶様も、砂糖の上から唐辛子で味を塗り替えた俺の行動には引かざるを得なかったらしい。
「ヘヘッ、焼きそばパンでも買ってきましょうか? 10円だけ渡してくれれば十分ですァ!」
そう冗談を言ったらまた拳骨された。普通に痛かった。
そして俺のことを意外にも疑っていなかったのが満潮と荒潮だったことは驚いた。
荒潮は考えが読めないからしょうがないにしても、満潮は佐世保でも警備府でもツンツンしてたから正直嫌われてるかと思ってたけど……
「だって佐世保の私はアンタを……」
「え、何て?」
「ッ! 何でもないわよ!」
「あらぁ~、素直じゃないわね~♪」
佐世保でも満潮はツンツンしたような気がするが、俺……というか駆逐艦スチュワートは一体駆逐艦満潮に何をやったんだか。沈めたとかは気まずくなりそうだからちょっとやめて欲しいなぁ……。
その後、俺の投擲物を見ていないか軽く探りを入れ、誰も見ていないことに安堵して、いつまでも俺のことばっかりだとつまらないだろうと叢雲の角? とかを揶揄っていた頃、提督がやって来て俺たちが居なかった十日近くの間に建造された艦の紹介を始めた。
そして今に至る。
俺たちの前に居るのとは人数が合わないが、今日も佐世保に演習に行っているらしい。
手元には合計十人の名前が書かれている名簿があり、目を通すと一番上に「榛名」と見える。金剛さんが上機嫌だった理由が分かったな。
そう思っている間に自己紹介が進み、最後に出て来たのがこの緑の艦娘。
「私は松! よろしくお願いします、先輩方!」
……誰?
「提督、
俺が知ってる『艦これ』にこんな人は出てきたっけ? 佐世保でも見たこと無いし……
「ああ、極最近になって妖精さんが設計図の復元に成功したらしい」
「なるほど?」
つまり、今まで未実装だった艦娘ってことでオーケー?
……となると、今後実装されていくであろうボスとか艦娘の情報を知らない俺は知識的なアドバンテージを失っていくってことで。
元から軍艦だった記憶なんて砂粒程度しか持ち合わせてない俺は協調性に欠ける節がある。それに最近では警備府内に不和を齎した疫病神だ。このままだとただの役立たずに成り下がってしまう。
「それだけは嫌だなぁ……」
「何か言ったかい?」
「いいえ!? 何にも」
まずは、近いうちに始まる作戦で
「貴女がスチュワートさん? 話は聞いているわ! 大丈夫、護って見せるわ!」
「あっ……たっ、足りてますぅ……」
「……え?」
ヤベ。コミュ障発動した。
まずは艦娘と打ち解けないと駄目かぁ……。
あまりの不甲斐なさに、再び部屋に引きこもって枕を濡らした。
陰鬱とし過ぎてて苔が生えてくる勢いだ。
▼――――――――――
「いよいよ作戦を始めようと思う」
ヒトハチマルマル。
演習が終わったばかりの私達を含めた全員を食堂に集めて提督が言葉を放つ。
「今回の作戦の目標はハワイを制圧した飛行場姫の撃破、同時に、ハワイの近くに出現した空母水鬼の撃破だ」
私は最近建造されたばかりだから知らなかったのだけれど、今はそれなりに大規模な作戦の準備期間だったということだったのね。
目標を聴いただけでは、今の警備府の現状から考えてとても厳しいものになると思うのだけれど……提督の指揮に期待しましょう。
「遂行するのは非常に難しい……が、最近捕虜として捕えていた港湾棲姫が協力を申し出た。そして私はそれを受けようと思う」
提督のその言葉は静かだった食堂に波紋を呼ぶには十分過ぎたみたいで、あちこちから囁くような会話が聞こえてくる。
勿論私も驚いている。深海棲艦を撃破せずに捕虜とするのは珍しくも無いかもしれない。それでも、協力を申し出たからと言って簡単そうに承諾したような言い方には違和感があるわね。
「万が一に備えて北方棲姫を一時的に人質とすることを条件にした」
提督の言葉で更に騒めきが大きくなった。
深海棲艦を人質……これではまるで海賊だ。これではどちらが悪者か分からないじゃない。
「更に支援兼見張りとして瑞鶴を旗艦にする艦隊を付けるつもりだ。瑞鶴、頼めるか?」
「……はい」
む。
返事が遅い。三点減点。
でも、そんな大事な役目を任されるなんて……やるじゃない。
「よし! 次に、先日偵察に行った艦隊からの意見として、ハワイまでの道のりに中継地点の設営を計画した。深海棲艦に襲われて万が一振り出しに戻るなんてことがあると、今後の作戦に大きく響くから妥協はしない。艦隊は―――」
私は主力として投入されるらしい。良い采配ね。
でも、華のある戦艦や空母の戦いよりもそれらが全力を出せるように整える仕事が一番大切だと思うから、やってみたいと思わないことも無かったのだけど。
それに補給地点の設営となると、必然的に敵主力とぶつかる直前までは最前線に居続けることになるから……ダメね。とても
「……先日、我らが初期艦についてあまり良くない話が広まった」
そう……。
私も噂は聞いたことがあるのだけれど、初期艦……スチュワートは佐世保で提督を殺したのだとか。
どうやらそれは本当のことで、聞いた時はどうしてくれようかと思ったのだけど、それなら佐世保の艦娘達が、赤城さんが笑顔で彼女のことを語る筈が無いもの。
きっと以前の佐世保の提督が酷い人だったということでしょう。まぁ、やったことはやったことで、簡単に許されて良い事では無いと思うけれど。
「話を聞いて、スチュワートを悪だ、敵の
「榛名は、スチュワートを怒らせちゃダメデース! 初期艦権限で休みが減らされるヨー!」
「えぇっ!? そ、そうなんですかお姉様!?」
「Yes! 彼女は
金剛さんが榛名さんと大袈裟に騒ぐなんて……警備府全体から嫌われてる訳じゃないのね。少しだけ安心したわ。
目の前の青い髪の子を見る。
艦隊が発表された時だけ真面目に話を聞いていて、今は自分のことを言われているのに我関せずと言わんばかりにスープに浮いてる油を箸でくっつけて遊んでいた。
……素でやってるのか演技なのかは分からないけれど、当の本人がコレじゃあ馬鹿らしくなってくるわね。……本当に赤城さんを追いつめたのかしら?
「最後に、私はみんなが出撃するまでの間にここで作戦を立てて、どれだけ作戦を遂行しやすく出来るか作戦を練るのが仕事で、その後は祈るしか出来ない只の人だ。だから……全員、無事に帰ってきてくれ」
あら、戦果を挙げろではなく無事に帰れと言うのね。
少しだけ好感が持てるわ。
「提督はいっつも
恐らく独り言だったのでしょう。スチュワートが提督を舐めてるとしか思えない発言をする。
「……」
何故かしら? 先程までの提督の話を台無しにされたような気がするわ。
「あ、加賀さん。食べます?」
視線が一瞬合い、空気を読まずに差し出されたのは間宮さんのアイスと……焼き鳥。
チョイスになかなか悪意と揶揄いが感じ取れるわ。
きっと本人としては軽い悪戯のつもりなんでしょうけど……。
心の中で溜息を吐く。
いつの間にか、食堂全体が私達の方を向いているじゃない。
「……頭にきました」
「え?」
スチュワートに怒っているのではないわ。
視界の端で笑いを堪えてる瑞鶴。貴女によ。
▲――――――――――
・松さんが着任しました。真の“護る艦”はどちらだ!?
・露骨に金剛+榛名を揃えてくる嫌らしい作者は私です。
・こんな言われ方や態度だから、主人公が提督から贔屓されてると思われてもっと嫌われる可能性が微レ存?