私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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110話です。

評価バーが染まりきった!? ありがとう……ありがとう……
それはそうとあと五話以内には一区切りつけたいところ。

この時期はアイスが恋しい。
そんな私は毎年南極に行きたいって言ってるような気がします。



猫は気まぐれ

 前方から砲の撃ち合う音と深海棲艦の雄叫びは絶え間なく聞こえてくる。

 

 そんな中でまだ敵影すら見てない俺は、期待されてないからここに居るんじゃないかと不安になると同時に活躍しないといけないという義務感が胸の中に渦巻く。

 

「そんなにソワソワするものでは無いわ」

 

「加賀さん……」

 

あちら(佐世保)の赤城さんも言っていたのだけれど、貴女はソレを持って突撃するのが好きみたいね?」

 

「恥ずかしながら。盾では攻撃を受けることは出来ても遠くから攻撃は出来ないので……」

 

 隣を進む加賀さんに答える。

 冷静に答えられたと思うが、実際は心の中で赤城さんに「何言っちゃってんのぉ!?」って言いたい気持ちでいっぱいだった。

 

「逸る気持ちは解るわ。だけど焦っていても仕方ないでしょう?」

 

「仰る通りです」

 

「……私もね、建造されて間もないのにこうして作戦に、それも主力として出撃している現状には些か疑問があるのだけど」

 

 「どういうことかしら?」と言いたげに俺の方を見る加賀さんに対して俺は、ハハハと乾いた笑いを上げながら頬を書く仕草をするのが精いっぱいだった。

 しょうがないじゃん。警備府は今発展途上なんだからさ……。

 

「……提督の仕事は、作戦を成功に導きつつ皆さんを無事に帰還させることです。その為には頑張らないといけないですね?」

 

 と無理矢理話題を逸らしつつ「一航戦の誇り、見せてくれますよね?」と言うと、加賀さんは目を閉じて前を向いた。

 不敵に笑みを浮かべた横顔の、後ろに流れる髪の一房が無性に恰好良く見えた。

 

「愚問ね」

 

 飛行場姫に負ける要素無ぇわコレ。

 

 

 

 

 

 猫がフシャーッ! と鳴いて威嚇するのと、今みんなが経験しているように飛行場姫がサイレンをクソデカい音量で響かせるのは同じことなんだろうか……。

 

 島を出発してから暫く、浮かんだまま動かない深海棲艦を横目に進み続けた俺たちは遂にと言うべきか、飛行場姫のサイレンを聞くことが出来た。

 俺を含む偵察した面子は二回目だけど、やっぱり初見だと心停止するってこんなの……どう考えても猫の威嚇と規模が違い過ぎる。ねこは心停止なんて引き起こさない。ねこはいます。

 

 

 そしてこのサイレンが鳴り響いたということは、とうとう主力艦隊の出番が来たということである。そしてその主力艦隊は俺と加賀さん、金剛さんと榛名さん、伊勢さんと多摩さんの六人。

 

戦争でもしようって言うんですかね……

 

「何言ってんの? 戦争でしょ?」

 

 独り言を伊勢さんに聞かれた。

 そりゃあ『艦これ』は軍艦がモチーフのゲームだから戦争で……

 

「戦争でしたね……何でもありません……」

 

 ガチ震えてきやがった。これが武者震い……?

 マジで普段からこんな編成を組もうものなら資材の消費が怖くて発案者の頭と正気度を疑うようなものなんだけど、今は大型作戦の真っ最中だから尚更失敗は許されないっていうのも理由かもしれない。

 

「う~ん……」

 

ヒヤッ……

 

ヒィ゛ェア゛ア゛ア゛ッ!

 

 突然、首筋に冷たい感触がした。

 

「に゛ゃーっ! うるっさいにゃあ!」

 

 バッと振り向くと、目を吊り上げた多摩さんが居た。

 さっきの俺の絶叫で他の人達も全員こっち向いてるし……距離的にさっき首筋に触って来たのは真後ろに居た多摩さんで間違いないだろう。

 

「……いや、仕掛けた本人が五月蠅いって言うのはちょっと違うと思います! それはそうと何してくれたんですか!」

 

 緊張感のカケラも無ぇな!?

 そんな多摩さんを咎めるように怒って見せると、全く悪い事をしたとも思ってないようなキョトンとした顔をしていた。

 それどころかそんな俺の様子を見て、フッと柔らかい表情になると

 

「さっきまでは緊張し過ぎだったように見えたにゃあ。適度に気を抜かないと疲れちゃうにゃ~?」

 

「……」

 

 やだ……カッコイイ……。緊張を解してくれるとか意外とお姉さんだな?

 これがギャップ萌え? でも、語尾が無かったらただのイケメンだからそのままでお願いします。

 

「ありがとうございます、球磨さん」

 

「にゃっ!? 多摩は球磨姉じゃないにゃ!」

 

 あ、艦載機……

 

「さぁ! いつまでも騒いではいられませんよ!」

 

 そう言いながら高角砲を構える。

 後ろでニャーニャー言ってる人は知らない。今はもう遊んでる場合じゃないんだ。

 

 発射して……命中。良い感じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 飛んで行く艦載機、俺から見えるそれらは加賀さんがぶっ放すもので、空中では小規模の爆発が続いている。

 俺たちの近くまで抜けて来た艦載機が居ないか目を凝らして、百を優に超える艦載機の群れが空を蠢く蟻に見えて来て気分が悪くなってきたが、提督が明石さんに用意させた “秘密兵器” を持ってる金剛さんと榛名さんに負担をかける訳にはいかないと考え、再び空を睨む。

 

 ……良いニュースと悪いニュースがある。

 良いニュースは提督の計画通り金剛さんと榛名さんはまだ最低限の砲撃しかしていないから余力はしっかり温存できているということと、先程大淀さんが寄越した通信で、無数に沸いた深海棲艦の処理の進行度合いが良い感じだから主力艦隊に大鳳さんが助太刀に来るということ。

 

 そして悪いニュースは、金剛さんたちを温存させ続けられるか、大鳳さんの助太刀が何時になるか分からないことと……

 

「くっ……」

 

 斜め後ろから小さいが、伝わる苦々しさはそんなもんじゃない声が聞こえてくる。

 チラリと振り返り、声の主である加賀さんの隣につく。

 

「一時だけ戦艦の皆さんに対空を頑張ってもらいましょうか?」

 

「まだやれるわ」

 

 そう言いながら、近付いたとはいえまだぼんやりと輪郭が見える程度には距離が離れたハワイをジッと睨み、弓を射る加賀さん。

 応える口調は勇ましく、視線も射殺してやると言わんばかりに気迫が籠っているが、額には玉のような汗を浮かべ、弓を構える時以外は肩で息をしていることから、相当疲弊しているのが分かる。

 

 加賀さんが押されている。これがもう一つの悪いニュース。

 でも本人がまだやれるって言ってるんだし……

 

「無理そうだとこちらが判断したら介入します。頑張ってください!」

 

「そんなに心配しないで頂戴。私を誰だと思ってるの」

 

 天下の一航戦。そう言おうと思ったけど

 

ごめん! そっち通した!

 

「!」

 

 叫ぶような伊勢さんの声に反応して大きく返事を返すと同時にそちらを見る。

 そうだよ。俺ばっかりお喋りしてサボって良い訳ないもんな。 

 

ガァアアアアア!(グゥアアアアア!)

 

 何この……なに? 駆逐ハ級を二つくっつけたのに御者みたいな+αをくっつけたような深海棲艦は……初めて見るな。軽巡? それともスペシャルな駆逐艦? 分からん……

 

ドンドンドンドン!

 

「ッ!」

 

 咄嗟に盾を構えて受け止める。後ろには加賀さんが居るから避けるという選択肢は無い。

 

『助けは必要ですか?』

 

「榛名さんが狙う相手はコイツじゃありませうおっ!

 

 魚雷と同時に砲撃だと!? ふざけろ畜生!

 盾を海面に半分くらい突っ込んで、残りの海面から出てる部分に隠れるようにして身を屈め……ないで腕で顔を覆う。

 ヤツの射線上に俺と加賀さんが居るからどっち狙ってるのか分かり辛いんだよクソが!

 ビシビシと、顎から下に小さい石を投げられたような衝撃を数度受ける。痛い……が目に入らなかっただけ良しとしよう。加賀さんには集中して艦載機を飛ばし続けて貰いたいからね。俺も多少の無茶はするってモンよ。

 

『……ふふっ、金剛お姉様の言った通りですね。でも、無理はしないで』

 

「え? あ、はい」

 

 榛名さんからの通信の直後に沈めていた盾にも衝撃が加わり、海面を支点とした梃子の原理で思わずつんのめる。

 

「おっとぉ……よし。Go! ……ん?」

 

 海から盾を引き上げて魚雷を発射したところで、ヤツから艦載機が飛び出した。が、挙動がおかしい。こちらに向かって来るでもなく、そのまま上にフワーッ……って

 

「えぇ……」

 

 あんなの良い的ですって言ってるようなモノじゃん。

 高角砲で撃ち落とす。何しに出て来たんだあの艦載機。

 

グヮアアアアア!(ガァアアアアア!)

 

 おお、当たった当たった。

 後は魚雷のおかわりで追撃しようかな、と思ったところで

 

 相手が大きな水柱に包まれた。

 

「……は?」

 

 薄くなる水煙から何が飛び出してくるか、盾を構えて警戒していると……

 

間に合いました!

 

 水柱があったところに大鳳さんが立っていた。

 同時に、加賀さんが居た場所からパシャリと、弱い水の音が聞こえた。

 




ト級 お前、消えるのか……?


多摩はいます。
います

多摩でした。

よろしくおねがいします
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