相変わらず展開がダラダラして面白くないのは私の分の特徴。
直したいけど直せない。
白いシャツに付いたカレー汚れより大変……
「コノヤロー!」
呆けていて気付かなかった。
気付いた時には長波の顔が結構近くにあって……ド突かれた。痛い。
その後、長波と金剛さんが何か言ってきたけど耳がキーンってなってて良く聞こえなかった。
勝手に突っ走ったことに対して怒ってるか、一人で盛大に花火を上げたことに対して怒ってるか、艦載機落としまくったことに対して嫉妬してるかのどれかだろう。
青葉さんと江風も合わせて俺を囲み、逃げ場が無くなったことに対して焦り始めた辺りで耳鳴りが治まって、何を言ってるかが聞こえるようになってきた。
さっきの予想の全部に合わせて、青葉さんが大爆発の真相を熱心に訊いてきていた。……適当に「そうですね~」とか「はい」とか「ごめんなさい」って言ってたから絶対に噛み合ってない。
俺を円から一歩離れた場所で優しい目で見てる榛名さんが今の癒しだった。
「榛名さ~ん……」
それはもうワザとらしく泣きつくように榛名さんのところへ行く。
この人達めっちゃ怖いっスよ~……。
「うふふ……怒られる時はしっかり怒られてくださいね」
肩をしっかり押さえられて金剛さんに突き出された。
救いなんて無かった。
「……あ、それはそうと榛名さんが撃ち込んだ三式弾、良い感じに爆発してくれましたね。ソレが無かったら結構大変なことになってたかもしれないですね!」
「……」
「いや~不発弾のまま持ち去るなんて酷い艦載機でしたね~ハハハ……」
「……」
榛名さんの撃ちこんだ秘密兵器、聞いたところだと三式弾って言うらしい。それに上手い具合に高角砲が当たったってことにしてさっきから他の人達を説得してるんだけど……榛名さんだけが納得する素振りを見せない。何故?
結果的に艦載機は三式弾二つと投擲物、後は味方の艦載機によってかなり数を減らしたと思うんだけど
……。
顔には笑顔を浮かべたまま、だけど背中は冷や汗で凄い事になってる気がする。榛名さんから目をジッと見られて、逸らすまいと瞬きもせずに見つめ返すこと数瞬。榛名さんが溜息を吐いた。
折れた!
よっしゃあ! なんて心の中で喜んでいたら金剛さんが口を開いた。
「腰に下がってる缶が一つ無くなってマース。関係ないとは言いませんよネ?」
やだ、
「えっとそれは……あ! 青葉さんどうしましたか!?」
「大淀さんから連絡です!」
グッド! 実に素晴らしいタイミングですよ青葉さ~ん。
「想定よりも被害が少ないのでハワイまで後退した深海棲艦に対して包囲網を敷いてそのまま一網打尽にするそうです」
「へぇ。それはそれは」
俺は作戦の立案なんて出来っこないから適当に返事を返す。如何にも「分かってますよ?」って雰囲気を出してればそれで良いのだ。
腕を組んで目を瞑り、うんうんと軽く頷きながら耳を傾ける。
「じゃあさっさと行こうぜ。ダメージを与える分には問題ないんだろ~?」
「ヒヒッ、長波はバカだねぇ。正面からアタシらだけ行っても横から逃げるに決まってンじゃン」
「あ、そっかぁ……じゃあ後ろに居るのを待ってればいいのか?」
「いいえ――」
おーおー楽しそうに話すねぇ。羨ましいなぁ。
何々。正面と左右からの三方向で軽く抑えておけばいいの?
青葉さんと江風、金剛さんと長波が左右でぇ~……
「よろしくお願いします」
「イエ゛ッ!? あっ、俺もなのね こちらこそ!?」
背後から声を掛けられた。しかも耳元で。
榛名さんも結構お茶目なところあるね? それにしても音もなく近寄るなんて……心臓止まるかと思ったぞ。
「ふふっ、お姉様の言った通りでした」
また金剛さんか!
バッと金剛さんの方を見るとニヤニヤしていた。
心臓止められかけたんだから文句の一つでも言おうかと思ったけど、榛名さんとのお喋りの切っ掛けが生まれたと考えればまぁ……
「それじゃあ行きましょうか」
「はい」
深海棲艦を追いかける。追いつけそうで追いつけない絶妙な速さの軽巡ツ級に対して、短時間で何度「ケツに弾ブチ込んだら即死しそうだなぁ~」って考えたことか。
榛名さんが背中に撃ったら海面とキスするから比較にならない。でも倒れたら倒れたで次の標的の背中が見えるからどんどん倒していける。……その度に俺は似たようなことを考えるんだけど。
榛名さんも張り切ってるから俺の絶望的な火力と平均して良い感じになっている。言われたように倒し過ぎない適度なラインは守れているだろう。
つまり順調……だったんだ。
「スチュワートさん」
「何でしょうか?」
「これ、おかしくないですか?」
「え?」
今までは。
榛名さんの言葉を受けてやや減速。
前ではなく周りを見て見ると……囲まれている。
しかも駆逐艦が殆ど見当たらない。軽巡、重巡がメインで戦艦も多数居る。
どうしてこんなことに?
さっきまでは駆逐艦ばっかりだったじゃないか。
再び前を見ると……
「ッ! 飛行場姫……」
もう目視できるとかそんなレベルじゃない。なんなら
違う。飛行場姫は移動してないから……軽巡を追いかけてる内に深入りし過ぎたのか。
だったらさっきまでの周りの逃げるような深海棲艦はフェイク? どうしてわざわざ
頭の中を疑問がグルグルと渦巻いて……
「こちらスチュワート! 敵の罠に嵌りましたァーッ!」
思いついたのは報告。若干事後報告っぽくなってるけど、しないよりはいいだろう。
『……――!? い―――何―――!?』
あっ……通信出来てない! ジャミングとかコイツら本当に大戦時代の遺物がモデルなのか?
『せめて貴女達
「あっ」
そして飛行場姫は飛行場姫で……捨て身で俺たちだけに狙いを絞るとか正気の沙汰じゃねぇ!?
俺たちを誘い込んだ基準は……新人の榛名さんと駆逐艦相手にも防戦一方の俺だから? そして俺たちが選ばれたのは偵察機を使って!?
やられた! 飛行場姫自信は相打ち覚悟で、しかもこれだけ戦艦とか重巡が取り巻きで居るなら厳しいなんてもんじゃない。
「そんなことは、榛名が! 許しません!」
勇ましい声と共に榛名さんが飛行場姫目掛けて斉射した。
それが引き金となって、今まで俺たちをただ見ていた深海棲艦が一斉に襲いかかってきた!
「ヤベェッ!」
咄嗟に黄色の缶を引き抜いて、榛名さんの背中側に放る。ついでに軽巡目掛けて魚雷もプレゼントだ。
雷光のようなフラッシュが発生して、僅かながら深海棲艦の動きが止まった。
その隙を逃す榛名さんではなく、標的を飛行場姫から軽巡に移して既に何体か葬っていた。戦艦スゲェ。
「退きましょうスチュワートさん!」
榛名さんが提案……にしては無理矢理言い聞かせるような、異論は無いよな? と言わんばかりに強く言ってきた。
勿論撤退に関しては異論なんて無いけど……
「飛行場姫はどうなりましたか?」
早口で問う。逃げるにしても艦載機が飛んでたら非常に面倒だからこれは大事な質問だ。
「今は沈黙しています!」
マジ? 仕事早すぎない? 倒したって明言こそしてないけど動かなくなってるなら十分すぎる。最高かよ。
「それは良かった! ではハワイ島に撤退しましょう。」
「……えっ?」
榛名さんが驚くのは尤もだけど、今俺たちがいるのは殆どハワイの近く。飛行場姫の指示で俺たちだけを沈めに来たという予想が正しいなら、きっとこの包囲網の厚さは結構ある。
そしてそれは俺たち二人で突破するのは多分厳しいと思う。
……だったら無理に突破せずにハワイに上陸しても良いんじゃね? と言うのが俺の考えである。勿論深海棲艦に占拠されたからと言って人が全く居ないとは限らないからそこまで中心部までは行けないけれども。
それでも海の上には陸上生物っぽい足を持ってるヤツ以外は来れないだろうし、その時点で駆逐艦と軽巡の数種類は考えなくても良くなる。
と言うことを伝えたら納得してくれた。
榛名さんの主張である「機動力でブッチ切る」って言うのも良いんだけど、飛行場姫の側、つまり砂浜の近くには深海棲艦が少ないこと、ついでに沈黙してる飛行場姫に攻撃出来ることなど……いろいろメリットがあるように思うんだよね。
そして今は煙幕の中。紫色の未知なる煙を恐れて深海棲艦が凸って来ないのは良いことだ。
「準備は良いですか?」
「はい。真っすぐ飛行場姫目掛けて進んで、これでもかと言うほど砲弾を浴びせつつ上陸、そのまま後方に撃ちながらハワイ島内部に移動……ですよね?」
その通りでございます。
「自分から言っておいてなんですけど……本当にやる気ですか? 沈むかもしれませんよ?」
「一人にはさせられません! それに……勝機があるから提案したんでしょう?」
「さて、どうでしょう?」
作戦は伝えた。そんなときに煙が薄くなる。
覚悟が決まった顔をした榛名さんの顔が見える。きっと俺の顔は同じように覚悟をしてる者の顔か、ニヤついてるかのどっちかだろう。
「あ、煙が……」
察知能力が高いヤツが居たのか、早くも砲撃音が聞こえてきては俺たちの近くの海面に砲弾が突き刺さる。おっかね~……
「合わせますよ?」
「では……行きます!」
榛名さんが宣言して煙から飛び出して、俺が続く。
俺たちの戦いはこれからだ!
完!
スチュワートの次の命にご期待ください
キチガイのお茶割りでどうですか?
飛行場姫の声が何故か聞こえるのは【ご都合主義】で……
敵性の反応だから魚雷や艦載機と同じように離れていても察知できるとか?