真面目な展開@疲れた さんがログアウトしました。
「作戦の成功を祝って!」
「「「
グラスや陶器がぶつかる小気味の良い音がそこかしこで響き、直後に談笑や食器同士のぶつかる音が耳に流れ込んでくる。
乾杯の合図より前まではかなり静かだったから余計に音が大きく聞こえる。
それもさっきまで提督が
・作戦は成功。轟沈もナシで良く戦った! ありがとう
・MVPは加賀さんと榛名さん。他の人達も頑張った!
・昨日は報告で忙しかったから今日は騒いで。乾杯!
の三行で終わるような内容をわざわざ三十分くらいに希釈して演説してたからだ。
しかもみんなは真面目に聞くモンだから食堂内がそれはもう学校の朝礼みたいなフィールドに早変わりして、長くなるヤツだと判断してからは話半分で聞いてた俺に特効の睡眠魔法を垂れ流してくれた。
早いうちに人が少ない窓際に陣取ってて良かったとつくづく思うね。舟漕いでてもバレないんだもん。
それにしても……
「随分増えたな~」
加賀さんと榛名さんがMVPの何かを貰って嬉しそうにして、それぞれが瑞鶴さんや大鳳さん、金剛さんに絡まれて嬉しそうにしている。加賀さんの方はちょっと分かり辛いけど……あ、瑞鶴さんが煽られてキレた。
駆逐艦は基本的に同型艦が集まって、好きな食べ物を奪い合ったりしながら今回の作戦の感想や武勇伝を言い合ってた。
その近くに居た提督は男性ということもあって一般的な量の料理を艦娘より素早く胃に収め、何点か常識的な注意だけをして食堂から出て行った。
その後は軽巡や重巡はお酒を飲み始めてゆっくりと語り合い、空母が多く座ってるところは早くも皿が積み上がり始めていた。
厨房で忙しそうにしてる間宮さんと伊良湖さんもどことなく楽しそうだ。
「……」
この賑やかな光景は『艦これ』のもので、これから艦娘が増えて行くともっと賑やかになっていくんだろうなぁ……。
今はまだ五十人前後で学校の一クラスよりも少し多いくらいだけど、大体二百人くらい居るから一学年ってところ? 多過ぎる……
でも、
一歩引いた場所から見てる俺は何とも言えない、強いて言うなら鬱な気分になってきた。
周りはお祝いムードなのに俺だけ勝手に鬱ってたら迷惑だろう。
サッと並べられてる料理を食べて、気配を消してはそっと食堂から出て行こうと決めた。
どうせこの空気の中では誰も気がつかないだろう。
そう甘く考えていたのが悪かったと思う。
「スチュワートさん! 何処へ行くんですか?」
扉に手を掛けたタイミングで吹雪に捕まった。その所為で食堂の少なくない視線が俺の方に向けられ、誰にも知られずに居なくなることが失敗したと悟る。
「ええと、少し体調が悪くてト……お花摘みに」
どう? 誤魔化せる?
「ごめんなさいっ! ……あっ! 後で金剛さんがお話したいって言ってました!」
仮病は使えないらしい。
「……回復しました」
「えっ? ……よくありますよね!」
吹雪は納得したように苦笑いしてから離れて行った。
ああ……吹雪は誤魔化せたけど食堂から逃げられない!
「裏切者を捕まえたネー!」
「え?」
金剛さんからの話とは何ぞや? と思ってからテーブルに向かうと、いきなりこんなことを言うもんだからビックリだ。
「……裏切者って誰のことです?」
深海棲艦のスパイ疑惑が掛かった俺じゃないの?
「Hey雷~! 裏切者を吊るすデース!」
そんな言葉と共に吊る……しはされてないけどいつの間に準備したのか分からない紐を手に持った雷が誰かを引っ張って来ていた。
「……龍田さん?」
どういうことだ……?
なんで龍田さんが後ろ手縛りをされてるんだ?
「この女は提督へ好意を寄せすぎる余りに、最も近いと思われるスチュワートを貶すような噂を広めましター! 恋する乙女の風上にも置けないデース!」
金剛さんがそう言うと、近くで肯定するような声が聞こえる。
「え?」
どういうことだ……?
「何か弁明はありますカー?」
「え?」
「しょうがないじゃない……スチュワートちゃんはあまりにも高い壁で……提督が少しでも貴女から目を逸らすようになれば良いと思って……」
「え?」
「それを乗り越えてこその愛でショウ!? もしかして……その程度だったんデスカ~?」
「ッ! そんな訳無いじゃない!」
「えぇ……」
……なんか始まったんだけど。
それにしてもおかしいね~? 龍田さんって天龍さんLOVEだったような気がするんだけど……会話から察するに提督に対する好感度かなり高くね?
高いハードルってことになってる俺を蹴落とそうとするとか、まるでヤンデレみたいだぁ……まさか天龍さんが居ないことによっておかしくなったとか?
その後も何故か茶番は続いた。話があるって呼ばれた俺は殆ど喋ってないにも関わらず。
始めは少人数で龍田さんと「愛とは、恋とは」みたいな難しい話をしてたのに、何の騒ぎか気になったのか大勢が集まってきた。
最終的に何故か俺が
そうなったら一大事だ。精神的ショックから一週間は寝込む自信があるね。
だから俺はそんな危険なゲームから降りさせて貰おう。
「私は提督好きじゃないので……誰でも良いから早く提督とくっ付いて欲しいですね」
俺がそう言ったら茶番の主役達とギャラリーが凍った。
「……え?」
周りの反応に逆に俺が固まっていると、青葉さんが俺の前にやってきた。
「それでは、スチュワートさんはこの戦いに参加しないってことですか!?」
どの戦いだよ……ってツッコミたいけど、どんな戦いかも知らない俺に参加資格は無いだろう。薄々どんなものかは察せるけど……そんな戦いの参加資格なんて欲しくない。
「まぁ、そうなりますね」
そう答えると、青葉さんが「なるほどなるほど……」と呟いた。
物凄く悪い顔してますぜ青葉さんよ。
「スチュワートさん……流れた噂の内容にしてはそこまで邪険にされなかったのは不思議に思いませんでしたか?」
……いきなり何の話だ?
「まぁ……提督が何かしら手を回したんだろうな~とは思いましたけど……」
「フフフ……それは半分不正解ですっ! 不肖この青葉が、提督と共に我らが初期艦の為にそれはもう奔走しました!」
聞くと「殺るならもうしてないとおかしい」「
「成る程……ご迷惑をおかけしました。……ありがとうございます」
自分の為じゃなくて他人の為に色々と行動出来るのは素直に凄いと思うし、実際に助けられた。
「借りが出来てしまいましたね……出来る事なら―――
「では提督の好みなどを後でじっくりと教えて欲しいです!」
俺が言うが早いか、食い気味にそう言ってきた青葉さんに「まさか」と思う。
話しかけて来たタイミングからして……まさか最初から提督の情報が目的だった!?
幻滅した。やっぱりキレイな青葉さんなんて居なかったんだなって……
「ハァ……」
でも、いくら幻滅しても受けた借りは借りなんだよね……
「それくらいだったら……」
と言うと
「青葉ー! 抜け駆けは良くないネー!」
「そうです! ズルいですよ!」
「そういうのは私達にも教えなさいよ!」
周りが青葉さんにブーイングの嵐をぶつけるが、当の青葉さんはどこ吹く風。
「青葉の行動に対する正当な報酬です!」
なんて言う始末。
流石にこれだと青葉さんのメモ帳を盗むべく刀傷沙汰になるか、俺に貸しを作ろうとする人たちに追い掛け回される……そんな未来が見えた。
借りに対しての返しがこれだけ、しかも俺にとって価値が無いから借りを返した気にならないのも困る。
「……それだけだと少ないのでもう一つどうぞ。それと、情報はしっかり欲しい人に分けてあげてください」
「むぅ。仕方ないですね~」と言った青葉さんがどこからともなく袋を取り出した渡して来た。
「では明日一日だけで良いですからコレを!」
コレって何だ?
袋を開けてみると出て来たのは……メイド服
「……は?」
何処でこんなの手に入れたんだよ……でもやるって言っちゃたしなぁ……そう言っちゃた俺にドロップキックをかましたい。
「いいものが撮れそうですねぇ~」
カメラを構えて笑ってる顔の青葉さんに手が動いたけどグッと堪える。
「フゥ~~~~……」
怒りを吐き出すかのように長く深呼吸をする。
借りを受けたのは俺、借りを受けたのは俺、借りを受けたのは俺……
「……」
助けて漣!
お酒の席の恋愛事情。
いつの間にか龍田さんは解放されてた。
・龍田さんは方法を間違えただけの恋する乙女でした。
恋は盲目。(周りを顧みない)
仲間割れの描写はちょっと出来ないかなぁ……と
・瞳孔全開主人公「おのれ……」
・漣の第一印象に騙される主人公www
青葉「スチュワートさんのメイド姿を捉えた秘蔵のカメラからデータが……」
青葉さんは動かしやすくて便利なのでいつも助かってます。
これが6章「大型作戦」の最終話で良いのか?
次からしばらく幕間です。