私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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119話です。

気が付いたら蝉も鳴かなくなってますね。
時の流れを感じます。

今回も二本立て。



6章 ~幕間④~

・一方その頃……

――――――――――

 

『このまま進んだところに島があった筈だから、そこで艤装を展開させて欲しい』

 

 アンタの意見や要望なんて聞くわけないでしょ!

 

 そう言おうとしたけけど、提督に「出来る限り協力して(意訳)」って言われてることを思い出した。

 

 ……ま、まぁ確かに? 聞いた話だと相当な量の艦載機飛ばせるらしいし……悔しいけど今いる艦隊の中じゃ最高戦力だろうし、素直に言うこと聞いておいた方がいいかな? 歯向かわれても困るし。

 

「そう……ま、頼りにしてるわ」

 

 一航戦の二人とか大湊(ウチ)の大鳳さんに比べたらまだまだ頼りないことは間違いないけどね!

 

「ではその……潮たちが空母水鬼をその島まで引き連れてくれば良いんでしょうか……?」

 

 あ~そっかぁ……港湾棲姫って陸上に艤装を展開するからこっちから仕掛けられなくなるのかぁ。そうなると必然的に港湾棲姫の近くまで引き寄せないといけなくなるのかぁ……。

 

「そう……ね。悪いけどお願いできる? 飛鷹と摩耶もお願い」

 

「任せ()!」

 

 やっぱり先に建造された人たちは頼もしいな~。

 ……翔鶴姉が建造された時に「私のがお姉さんだ!」なんて言ってみたりして……

 

えへへ……はっ!? ほ、ほら! こんなことさせるんだからそれ相応の、しっかりとした成果を出してもらわよ!」

 

『? ああ。勿論分かっているさ……だが相手は空母水鬼。生半可な相手では無いぞ』

 

はぁっ!? 始まる前から言い訳とか、程度が知れるんだけど!? 笑わせないで!

 

 二航戦の二人なら良い特訓の的だって言いながら倒しそうなのにこの深海棲艦は言い訳みたいな甘っちょろいこと言ってんのよ!

 

「仲いいな~お前ら」

 

『摩耶……だったか? そう見えるなら一度眼を診てもらった方が良いぞ』

 

「ちょっ!?」

 

 こっちのセリフなんだけど!?

 

ねぇ、那珂ちゃんのこと忘れてない!?

 

「あ」

 

 「緊張を解すため~♪」とか言って五月蠅かったから意識の外に置いておいてたわ。

 川内(かわうち)の妹ってこともあって色々と騒がしいから、煽るにはピッタリでしょ。

 

「頑張ってね」

 

 作り笑いで投げやりにそう声を掛けると

 

「まっかせて~! 最高のライブにしてくるから!」

 

 流石は自称アイドル。完璧な笑顔だよ……。

 私からしたらアイドルは癒しのひと時を与えてくれる間宮と私の翔鶴姉だけで十分なんだけど……流石にそれを言っちゃマズいかな。

 

 

 

 

 

「……」

 

『……』

 

 潮たちが空母水鬼を引きつける為に島で別れてから数十分。

 駆逐級は時々寄ってくるけど、簡単に倒せちゃうから基本的に暇~。……っていけないいけない。ボーっとしてる間に不意を突かれるかもしれないからね! それに今は潮たちも頑張ってる頃だろうし、私だけが呆けてる場合じゃないよね。

 

「……ねぇ」

 

『なんだ』

 

「不埒なこと、考えてないでしょうね?」

 

『そんなことは無いぞ』

 

「本当かどうかも怪しいところね。まぁ、いざとなったらアンタが何かする前に頭撃ち抜いてあげるだけだけどね」

 

『あんまり怖い事を言うな』

 

 監視してるってことをアピールする為に港湾棲姫に話しかけるけど……なんか私が悪者みたいじゃない! 面白くな~い!

 

『む。来たな』

 

 港湾棲姫の声が聞こえた直後に『掛かったぞ! 今向かってる!』って通信が入った。

 目を凝らすと、水平線に点が見えるような見えないような……。

 

「……アウトレンジで決めたいわね」

 

『同感だな』

 

 ギュッと弓を持つ手に力を込める。

 港湾棲姫も見慣れた艦載機を沢山召喚した。……両脇の口から。

 

「その滑走路は飾りなの?」

 

『こうした方が早い』

 

「そう……」

 

 この艦載機が近くに、それも味方として存在するのは違和感が凄まじいけど……これからはそんなことも言ってられないか。

 

艦載機飛ばすよ! ……姫級の実力、見せてもらうわよ! まさか日和って戦えませんとか言わないよね?」

 

『抜かせ。私には帰りを待ってるのが居るんだ。やられはしない』

 

 そう言って港湾棲姫の艤装から大量の艦載機が飛び出していった。

 ……裏切る心配も無さそうだし、私も全力で行かなくちゃね!

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・恋は盲目

――――――――――

 

 『……最初の失敗は何だったのかしら?

 

「やっぱりスチュワートちゃんを疑ってかかったことかしらね〜」

 

 そこが違えば、もっと別の現在になってたと思うもの。

 

 

 

 私は建造されてからずっと、まだ建造されてない天龍ちゃんのことばかり考えていたわ。

 駆逐艦や海防艦の子達は可愛いいから元々好きだったし、後から建造される天龍ちゃんはきっと、もっと好きになることは間違いないわ。

 そんな“好き”に囲まれながら一緒に戦う。辛いけれど楽しい、そんな毎日が続いていくと思ってのだけれど……。

 

「いつからだったかしら?」

 

 提督のことを気がつけば目で追っていたのは……。

 

 

 

 最初は気の迷いだって思って忘れようとしたけれど、二度、三度と続いてからはだんだん意識しちゃって~……次第にいつも提督を、提督の痕跡を探してるようになって……。

 “提督を見るんじゃなくて、提督に見て貰いたい”

 そう思うようになるまで時間は掛かったものの、なんとも私らしくない考えに辿り着いてしまったとつくづく思うわ。

 

 所謂一目惚れってやつね。

 

 どうして私がこんなに提督を見ているのに、提督はあまり私を見てくれないのか。

 ……勿論、提督だって何十と居る私達艦娘の面倒を見なくちゃいけないから、ずっと私だけを見るなんてことは出来無いってことは分かるわ。

 でも“誰か”を見るなら、出来る限り自分だけを見て欲しくて……

 

 どうしたら振り向いてもらえるかしら?

 

 そう考えた結果、いつも提督の目に居座ってる彼女の評価を下げるといったとんでもない行動に移してしまった。

 それの効果は絶大だった。……艦娘に対して。

 

 とても驚いたわ。

 だって提督もスチュワートから話は直接聞いたのだし、内容が内容なだけにもっと距離を置くと思ったのだけれど……ちっともそんな事ないんだもの。妬けちゃったわ。

 

 

 

 それからは遠征、日常、作戦の時でさえ微妙に距離を置かれるようになって……そこで『私は失敗した』って気が付いたわ。

 普通に考えたら不和を齎す人は、煙たがられて当然だものね。私だったら提督を貶すような子が居たら刃を向ける衝動に駆られるもの。

 

 でも、作戦が終わった後に金剛さんを始めとした少なくない人達から叱られたことは悪くないと思っているわ。私のやり方は相当捻じ曲がっていたことに気が付いたから。

 ……まぁ、そこで初めて私以外にも提督を慕ってる子がいることに気が付いた時は正直とても焦ったけれど、相手を下げることで足の引っ張り合いをするのではなくて全員が高め合う、切磋琢磨出来る環境がそこにあったことを知ることが出来た上に、その輪に入ることが出来たのは大きな前進よね。』

 

 

 

「まぁ、私のしたことはしっかりと怒られたんだけどね~」

 

 そして今居るのが通称『お仕置き部屋』ってところ。

 空き部屋に椅子と机、“反省文書”って書かれたノートだけが持ち込まれた、提督も知らない私達艦娘だけの部屋。

 ノートをパラパラと捲ると、『暁を苛めてしまった。反省はしているが後悔はしていない』といった響ちゃんの反省文や『夜に騒いで迷惑をかけたけど、だったら全員夜に起きるようにすれば良いと思う』というあまり反省の色が見えない川内ちゃんの文まである。

 

 クスリと笑って今まで書いた長ったらしい文章を消してペンを執る。

 この部屋に来た先人に従って簡単にエピソードを纏めて、書くのは短い文章だけ。

 

 アプローチの仕方を変えて、いつか必ず提督の隣に居座って見せる。

 この戦いに関して言えば、天龍ちゃんが相手になろうとも引く気は無いわ。

 

『首を洗って待ってなさい♡』

 

 

 

「ふぅ……暇になっちゃったわ~」

 

 明日の朝になったら明日の秘書艦の子が鍵を開けてくれるらしいんだけど。せめて簡素で良いからベッドが欲しくなるわね。

 

「また読み返そうかしら……」

 

カチリ……バン!

 

龍田さん!

 

 噂をすれば何とやら。スチュワートちゃんがこの部屋に来たわ。

 私に折檻でもしに来たのかしら~?

 

「私を笑いに来たなら~回れ右し―――」

 

龍田さんの所為でメイド服着せられるんですけど!? どうしてくれるんですか!

 

 ……え?

 

「あ、あら~……可愛いじゃない♪」

 

 聞いたところ、青葉さんが“良い一枚”の為に貸しを消費したらしい。

 変なところに拘るスチュワートちゃんのことだから、きっと陰で練習してたりとかするんでしょうけど……見れないのが残念ね~。

 

 面白いとは思うけど、わざわざ既に高いハードルを更に高くする必要はあるのかしら?

 青葉さんの行動に疑問を感じている内に、ひとしきり文句を言い終えて語彙力が無くなってきたスチュワートちゃんが出ていった。

 

 書き終わった私の文章の後ろに、一文を加える。

 

『壁は高いけれど、私は絶対に諦めないわ』

 

――――――――――

 




・本当は一航戦も二航戦も大好きな瑞鶴。

・ヤンデレ風味の龍田さん。恋は盲目ってこんな意味だったっけ?

キャラ崩壊が激しいですが、どうか許してほしいです……。

次は7章!
のんびりやる訳にはいかないので時間を進めます。

??「スチュワートさんのメイド服を収めたデータが……」
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