私の名前は「      」   作:捻くれ餅

122 / 180
121話です。




二度目は嫌

「アメリカへの出向?」

 

「うん。大本営から声がかかってね」

 

「そうですか」

 

 口ではそう答えながら、心の中では盛大にブーイングをする。

 「夜の哨戒(夜勤)が終わった後だから寝させて」くらいは言っても良いと思ったけど、露骨に嫌そうな顔になってないか自分でも心配になったから取り敢えず話だけは聴いておこうかな。

 

 

 

 出向。

 

 艦娘は世界中に居る。

 同じように世界中に深海棲艦は居る。

 

 アメリカを始めとする世界中に艦娘、妖精さん、提督候補は居るが不思議なことに日本よりも少ないらしく、つまり深海棲艦に対する戦力が日本よりも少ない。

 

 突如現れた深海棲艦という危険に対して各国の政府がなんやかんやあって、日本は艦娘って言う対深海棲艦に特化した戦力を世界に派遣するように要請。代わりに日本は色々と融通してもらっているらしい。

 つまり「防衛手段貸して? タダでとは言わないから」ってことなんだとか。そんなことを掻い摘んで鹿島さんに聞いた。

 

 政治の世界って怖えなぁ……。

 

 

 

 そんなおっかない話を改めて提督に聞いた俺は

 

「確か六人でしたよね? 明後日までに行きたい人集めておきますね」

 

 そう答える。海外なんて行きたくない!

 水もまともに飲めないのは修学旅行で懲りてるから、行きたい奴に行かせときゃ良いでしょ。

 

「残念なことにスチュワートは名指しで指名されてるから断れないよ」

 

「……」

 

 な ん で ?

 

 あー……そういえばまだ大湊に来てから一年経ってないし、当初受ける罰則の期間は終わって無いんだっけ? あまりにも普通に他の人と同じように過ごしてたから忘れてた。でもさぁ……指名ってどうなの?

 

「それに、もうメンバーは決めてあるんだ」

 

「はぁ……」

 

 だったらもっと早く言ってくれねぇかなぁ紛らわしい。

 

「他のメンバーは長門、加賀、神通、初風、陽炎だ」

 

「……声を掛けてきます」

 

 まだ朝だし、どうせ俺が声かけてきてくれって言うんだろ? ダルいけどやらなきゃいけないのが辛いところ。

 

「それはもう朝潮が済ませている」

 

「えっ!?」

 

 バッと振り返る。

 朝潮……「?」じゃねぇよ。俺の仕事減らしてくれるなんて良いヤツだなぁ~。後で取っておいたお茶請けをあげよう。

 感動のあまり朝潮の頭を撫でながら考える。

 

「……休みのところ済まなかった。話は終わりだから、ゆっくり休んでくれ」

 

 本当だったら今頃ぐっすり寝てる筈なんだけどなぁ! せめて夜に連絡寄越してくれや!

 

「朝潮、どう思います? コレ」

 

「? 話の内容に問題は無かったと思います!」

 

 そうだね。でもそうじゃない。

 少しは気を使えよって感じのことを言って欲しかったけど、朝潮の提督に対する忠誠心が高すぎる。

 朝潮を使って負の感情(愚痴)をガードするなんて卑怯だぞ!

 

「……では失礼します」

 

 提督め、勝ったと思うなよ……

 

 再び自室に戻って、眠気が我慢できないからそのままベッドに倒れこむようにして寝る。

 シャワーすら浴びてないけど……起きてからで良いか。どうせ部屋には鍵掛かってるし誰も入ってこれないだろう。

 

「は~~やっと寝れる。うおぉ……

 

―――

 

――

 

 

 

 

 

 

「出向? あー…………そう言えばそんな事言われたような」

 

「ちょっと~? 大事な話を半日で忘れるとか心配になるんだけど!?」

 

「う~ん……妙高姉さんに言われたことならどんな些細なことでも三カ月は覚えてられるんだけどな~」

 

「初風。私の話を覚えてくれるのは嬉しいのだけど、大事な話は私の言葉よりもしっかり覚えておきなさい」

 

「はい! しっかり覚えました!」

 

「……」

 

 初風の後ろに左右に振れる尻尾が見える見える……懐かれまくって困惑気味の妙高さんも新鮮だけど……盗ったりしないから睨まないでよ初風。

 

「……スチュワートはどう思う?」

 

 夜。食堂で陽炎を見つけたから声を掛けて、近くに居た妙高さんから初風を借りようとしたときの会話がこれである。どう思うってそりゃあ……

 

「初風は実は妙高型だったってことにしておけばいいんじゃないですかね」

 

「ダメよ! 初風も私の大事な妹なんだから!」

 

でもあれは……陽炎は泣いて良いのでは?」

 

 初風って妙高さんが来てからはずっと妙高さんと一緒に居るような気がする。史実で何か関わってるのか? 

 艦娘が増えて来たから色々なやり取りを見るのは楽しいけど、流石に本当の姉なのに全く構われない陽炎は泣いて良いと思う。

 

 お喋りしてる間にいい感じに冷めたカレーに辛さ調節の(幸せの赤い)粉末をかけて混ぜる。うん、辛い。

 

「……よくそんなモノが食べられるな」

 

うぇっ!? ……長門さんもどうです?」

 

 急に声が掛けられてビックリしたから、仕返しとばかりにスプーンでカレーを掬って話しかけてきた長門さんに向ける。確か辛いの苦手だった筈だから食べたりはしないだろう。

 

「……遠慮しておこう」

 

 やっぱりな。

 

「では私がいただきますね」

 

「「!?」」

 

 長門さんが案の定遠慮したから差し出したスプーンを引っ込めようとしたら、横から出て来た加賀さんに食べられた。

 

ゴホッ これは……想像以上ね」

 

「そんなにか……それはさて置き陽炎と初風、加賀まで居るとは丁度いい。出向の話をしようと思ってスチュワートに声を謗帙¢繧医≧縺ィ縺励◆繧薙□縺(掛けようとしたんだが)縺ゥ縺?@縺滂シ(どうした?)

 

菴募崋縺セ縺」縺ヲ繧薙?繧(なに固まってんのよ?)

 

「よ く き こ え な い で す」

 

 やっべぇ……混乱のあまりなんて言ってるのか全然理解できないぞぉ?

 

 カレーが髪に付かないように手で押さえる加賀さんが滅茶苦茶セクシーだった……って違う違う。

 冗談半分で差し出した俺のスプーンに加賀さんが口をつけたってことは、このスプーンを俺が使うと間接キスに該当するんじゃないだろうか!?

 

 それはヤバい。なんかヤバい。何がヤバいか分からないけどヤバい。

 なんとしてでも回避しないといけない。

 考えろ考えろ……何か方法は……あった!

 

「本当に大丈夫なの? さっきから顔が真っ赤よ?」

 

「何でもないです! ……ああースプーンがー」

 

 スプーンを落とす。これで洗いに行って離脱出来る。

 天才!

 

洗ってきますね!

 

「そうした方が良いだろう」

 

 逃げるようにその場を後にする。

 

 

 

「様子が変ね……」

 

「疲れてるんだろう……妙高、席を借りても良いか?」

 

「いいえ、きっとここにもう一人来るんですよね? でしたら私は席を外します」

 

「だったら私も!」

 

「アンタは残ってないとダメでしょうが!」

 

 

 

 

 

「お待たせしました……」

 

 スプーンを洗い終わって席に戻ると、神通さんも来ていた。

 

「大丈夫なのか?」

 

「まぁ、はい」

 

 流石に不自然過ぎたか? まぁ、加賀さんの顔を見ないようにすれば問題は無いか。思い出すだけでも恥ずかしい……

 

 そんな俺の思考を知る筈の無い他のメンバーは、出向について佐世保で演習ついでに話を聞いてきたらしい神通さんから説明を受けて色々なことを決めていった。途中で意見を聞かれたりとかしたけど、相変わらず俺は生返事しか出来なかった。

 

「―――では出発は明後日、貨物船の護衛と移動を兼ねる、期間はアメリカに到着してから約一ヶ月。各自私物は旅行鞄二つまで。ここまでで何か質問はあるか? ……無いみたいだな」

 

 長門さんが仕切って、そのままスルスル話が進む。

 特に目立った内容が無いから、俺はそのまま「アメリカの艦娘って誰が居たっけ……」と別のことを考え始めていた。

 

「では準備を進めておいてくれ」

 

 その言葉で現実に引き戻されて、さて何が必要なんだったかと思い出すと。旅行鞄を持ってないことに気が付いた。借りものの鞄は返しちゃったしなぁ……

 明日一日の予定が買い物で潰れるだろうと思って、溜息を吐いた。

 




忠犬朝潮 妙高専用犬初風

この初風は一部の好感度がバグってます。

▶出向を拒否
『しめい されてるから にげられない!』

▶スプーンを洗う
『それを あらうなんてとんでもない!』

だから童貞だったんだぞ主人公。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。