私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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122話です。




コンテナ船

 出向に持って行く旅行鞄の買い物を終え、忘れ物を取りに佐世保鎮守府に寄ったその帰り。

 

「まさか本当に買い物で一日が潰れるとは……」

 

 同じく休日だった綾波と狭霧に付き合ったのが間違いだったかもしれない。

 ショッピングモールに入ったら服屋ばっかり入っていくんだからさぁ……考える時間なげーよ。まぁ、二人は楽しそうで良かったから、そこまで後悔はしてない。どっちにしろ駅で電車を待つ時間が変わるだけだっただろうし。

 

 そんなこんなで大湊に帰ってきたのは夜。

 

「ハァ~……」

 

 人の居ないバスで溜息を吐く。

 これから鞄に必要な物を詰めていかないといけないと思うと面倒で仕方ない。

 

「しかも乗り物酔いだよ……死ぬわ俺」

 

 

 

 次の日の早朝。

 都合よく体調不良になってたりしねぇかな~なんて考えとは真逆で、殆ど寝てないにもかかわらずスッキリ目が覚めてしまった俺はパンパンになった鞄から要らない物を出す作業をしていた。

 モサモサしたのもを引っ張り出すと、なんと冬に雪かきをした時に着た防寒着が出て来た。

 

「……」

 

 出向の目的地はロサンゼルスの近くらしい。調べた限りだと一年を通して暖かいってことが書いてあったのに……昨日の俺は何を想定してコレを入れたんだろうか?

 その他にも耳かきに付いてるフサフサ(梵天)、養生テープ、単三電池と意味不明なラインナップが出るわ出るわ……。

 

 全部出してから最初から詰めると三分の二くらいの重さになった。

 そんな無駄極まる取捨選択の間にも時間は流れていて、結局遅刻スレスレになった頃に長門さんが部屋にやってきた。散らかってる部屋に入れる訳にはいかないと、大事な物と鞄だけを持って部屋を出た。

 

 

 

 

 

「帰ってきてくれ」

 

「今生の別れって訳でも無いでしょうに……」

 

 見送りに来た艦娘を代表した提督の言葉に対して空気も読まずにそう答える。

 この提督はいつもそうだ。“勝利”とか“戦果”なんて言葉は使わずに、毎回毎回「帰ってきて」とばかり言う。いざとなったら逃げてもいいから沈んで欲しくないって意思を感じる。

 

「金剛さんたちと上手くヤッてくださいね?」

 

 そんなに寂しいなら慰めてもらえよ。きっと楽になるぜ?

 

「あ、ああ……」

 

「そうだぞ提督。我々は少しの間ここから離れるが、それでも頼もしい仲間は沢山居るだろう?」

 

「……そうだね。私もしっかりしなくては」

 

 そうだぞ。いつまでも俺に構ってんじゃねぇぞしっかりしろ。

 綺麗な人は沢山居るんだし、好かれてるみたいなんだからそろそろ期待に応えてやったらどうだ? 恋する乙女をあんまり焦らすと病んで取り返しのつかないことになるぞ俺は詳しいんだ。

 

「よし、行くぞ!

 

 長門さんの号令に従って出発する。「お土産よろしく~!」……アメリカの甘ったるいお菓子でも買ってこようか?

 

 皆から見送られながら警備所の前に停まってた大型車(ハイエース)に乗り込む。運転は長門さん。……いつの間に免許取ったの?

 ……自動車の運転ならやったことあるし「代わりますか?」って訊いたら「無茶するな」って頭ポンポンしたの忘れねぇからな?

 

 

 

 あっ、自室に鍵かけたかなぁ……

 

 

 

 

 

「大湊警備府の艦娘の皆様。今回はよろしくお願いします」

 

「こちらこそ、よろしく頼む」

 

 警備府から少し離れたところには、貨物船が泊まっていた。

 今回の出向のリーダーである長門さんが挨拶をして、簡単な日程を話したらそのまま乗組員の部屋まで案内される。

 

 意外と快適そうな部屋に驚いてると、荷物だけを降ろして長門さんの部屋に集合するように言われた。移動中のコンテナ船護衛の班分けをするんだとか。

 

「夜、昼の当番は……丁度六人だから半分の三人ずつでどうだろうか?」

 

異議あり! 長門さんと加賀さんは二人で十分だと思います!」

 

 バランスを考えろバランスを!

 

「私もそうした方が良いかと……」

 

「実際神通さんを夜に回すのは確定として、私たち駆逐艦の誰かを昼に回しても過剰戦力だと思う」

 

「私だけでは不十分と?」

 

「む……いや、確かに私と加賀でどうとでもなるが……」

 

 そら見たことか! 誰も長門さんの案に賛成しないじゃないか!

 それに、二人でどうとでもなるって言っちゃってるんだし任せていいでしょ。

 

「長門さんか加賀さんの片方だけでも良いんじゃない?」

 

「あら、海の上で油断は大敵よ?」

 

初風さん?

 

「ヒッ」

 

 軽口を叩いた初風が神通さんに笑顔を向けられたことで震えあがり、陽炎を盾にして視線を遮ろうとしていた。

 ……神通さんの訓練は相当厳しいらしいからなぁ。夜戦に関しちゃ川内さんとはベクトルの違う厳しさがある。既に陽炎と初風を含めた数人は苦手意識持ってるみたいだし。……俺は参加したこと無いけど。

 

 

 

「いや、何時になったら出発すんねん」

 

 案外こんなもんだったりするのかなぁ。 

 やっぱり点検とかに時間が掛かってるんだろうなぁ。

 

 護衛についても話し合いが終わって暇になった俺は、時々すれ違う作業員に会釈をしながら船内をウロウロしていた。

 ……関係者以外立ち入り禁止の部屋多くなぁい? まぁ、俺とかがボイラー室とかに入って「ポチッとな」して取り返しのつかないことになったら全く笑えないからしょうがない。

 

 少々退屈を感じたままに甲板に上がると見えたのはコンテナの山。……そりゃあコンテナ船だから当然か。

 そんな感じで感心してると突然揺れた。もしかしたらと思って淵まで行くと、陸地が段々と離れて行くのが見えた。

 ……普段から出撃とかしてる時にも艤装付けてるから実質同じような事してるのに、自分で動かないのに海の上を移動できるということになんか特別な気分になった。 

 

深海棲艦が出たぞー!

 

「!? あのさぁ……

 

 あまり襲われることは無いって最初の説明で言ってなかったっけ? それにしては動き出してから深海棲艦が発見されるまでの時間が短すぎると思うんだけど……

 

「フッ、この長門が居るんだ。この船に傷一つ付けさせはしないさ」

 

 さっきから艤装を着けて海の上に立っていた長門さんが自信ありげに宣言した。

 

戦いぶり、しっかり見させてもらいますからね~!

 

「……尚更頑張らないといけないな! 掛かって来い深海棲艦共!」

 

 「見てるぞ」って感じでプレッシャー掛けるつもりが、何故か長門さんが逆に張り切り始めたぞ?

 ……空回っても加賀さん居るし別に良いか。やる気がある分には何の問題も無いだろう。

 

「お手並み拝見といこうかしら」

 

「……? 加賀さん!?

 

 何故甲板に……長門さんと一緒に深海棲艦への対処の筈では……?

 

「そんなに驚かないで頂戴。乗組員に訊いたらはぐれた駆逐級ばかりの様だったわ。そこまで脅威はないみたいだから、甲板(ここ)から艦載機飛ばすだけで充分だと判断したわ」

 

 本当? 思いっきり油断してるけど大丈夫なの? 加賀さんに限ってサボりたいとかは無いだろうけど……

 

「あ」

 

「どうかしたの?」

 

 俺、気付いちゃいましたぁ~

 

「なるほどなるほど……加賀さんはいつ来るか分からない深海棲艦に備えて資材を無駄遣いするつもりは無いと。つまりそういうことですね!」

 

 うん、そう考えるとそれ以外俺には考えられない。

 分かってますよと言わんばかりに加賀さんを褒めちぎると

 

「そこに気が付くとは流石ね」

 

 って言われた。

 如何にも実力を隠してますよって感じるセリフだけど……本当はサボりたかったのね。

意外だけど……分かるよ? 移動の時くらいはゆっくりしてたいよね。

 

 目が泳いでるから気が付いたけど。

 目は口程にって本当だったんだなぁ。

 




※主人公の部屋は普段は小綺麗にされています。

提督「生きよう、生きてれば次があるから」

長門「駆逐艦が三人……来るぞ流星!(六〇一空)」

加賀「……(先を見通してると勘違いされ冷や汗を流す)」


次→忙しいから今週中……しばらくお待ちください……
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