私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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124話です



初めてではないらしい

「畜生……」

 

 甲板で缶コーヒーを啜りながら呟く。

 頭の中に浮かんでくるのは昨日までの出来事だ。

 

 

 

『イヤよ! ……私じゃなくて陽炎でも誘ってみたら?』

 

 初風からは素気無く断られて

 

『え……ちょ~っと遠慮しておこうかな……アハハ

 

 陽炎からは普通に断られて

 

『困っているようだな? どれ、この長門に任せるがいい!』

 

『申戦N』

 

『も? もうせん……なんだって?』

 

『申し訳ありませんが戦艦はNGです』

 

『クソッ! 何故私は戦艦なのだ!? どうすれば良い!?』

 

『その艤装を清霜にあげたらどうですか?』

 

それだ!

 

それだ! じゃないよ……

 

 ポンコツと化した長門さんを断って

 

『……応援してるわ』

 

『はい……ありがとうございます……』

 

 加賀さんからの応援を受けて

 

『来ましたね。途中で逃げ出さないことは良い事です』

 

『お、押忍!

 

 

『―――今日はここまでにしましょう』

 

……押忍……』

 

 神通さんから扱かれた。

 

 

 

 今日が到着予定日じゃなかったら今頃過労死してたんじゃねぇかなぁなんて考えながら、進行方向で仁王立ちしてる長門さんを眺める。

 一週間に渡って夜に行動してた上に、疲れからか日中は死体の如く寝てた。しかも時差と呼ばれるものが世界に存在しやがるお陰で体内時計は滅茶苦茶になってる。

 

「長門さんはいいなぁ……」

 

 探照灯一つで神通さんの猛攻を避け続ける訓練を受けた俺は、自らが動くまでもなく艤装をぶっ放してくれるであろう長門さんをイメージして視線に羨望を乗せた。

 

「はぁ~……ぁふ……太陽が憎いぜぇ~」

 

「意外ね」

 

ホヮアァイ!?

 

 絶対に心臓止まった! どうしてくれんの!?

 加賀さんはすぐそうやって俺の背後に音も無く忍び寄る!

 

「驚かせて悪いわね。スチュワートの言葉が意外で」

 

「あ~……まぁ、普段は色々と相談されることが多いので……こういったときくらいはゆっくりしてもいいかな~って思いまして」

 

 そこでまた欠伸が出そうになったから手で隠す。加賀さんも夜に行動してる筈なのに全然眠そうじゃない。どうなってんだ。

 

「本当は江風とか涼風辺りと一緒に騒ぎたいんですけどね。何故か真面目とかいうイメージ出来ちゃってて……どれもこれもあのバカ提督が悪いんスよ。もっと頼りになる人はいっぱい居るでしょうに」

 

 普段からの鬱憤をブチ撒けるかのようにぶっきらぼうに言ってから缶を空にして、手摺りに叩きつける。

 最高におっさん臭いけど、それはそれ。

 

「そう……苦労してるのね」 

 

「誰かが提督の一番になってくれれば大分楽になるんですけどね」

 

 折角俺自身は仕事以外(日常や私事)では提督に関わらないようにしてるのに、未だに提督は特定の誰かを近くに置きたがろうとしない。

 ……やっぱり提督はホモなのでは?

 

 他愛のない話を続けていたら、加賀さんが遠くの空に艦載機が飛んでいるのを発見して艦載機を飛ばした。

 いよいよ加賀さんの出番かと思って茶化したらどうやら敵性の艦載機では無いと答えた。

 どうして分かるのかと訊いたらところ「アメリカの戦闘機」らしい。

 

 つまりアメリカの空母の防衛圏内に入ったってことで間違いないだろう。

 

「長門さん、船内に戻って支度を済ませてください」

 

『了解した』

 

「私も戻るわ」

 

「はい」

 

 長門さんと加賀さんが船内に戻っていった。

 すると、しばらくコンテナ船上空を大きく旋回していた艦載機が俺の近くまで高度を下げてきたので蜻蛉を止めるように掌を上にして腕を出したら、そこに艦載機が停まった。

 

「はえ~……やっぱり日本の艦載機とは全然違うねぇ」

 

 なんか近代的! メタリックなボディが格好いいね!

 

艦載機の綺麗な着陸に10点をプレゼント! もしもし~? 聞こえてますか? ……ンン゛ッ! 私たちの仕事はアメリカの制圧。素敵なお友達を連れてそっちに行くので降伏の準備でもしておいてください』

 

 一通り観察してから艦載機に英語で冗談を言って、再び空に帰した。

 

「アメリカよ、私は帰って来た……なんてね」

 

 水平線にぼんやりと映っていた島の輪郭(アメリカ大陸)は随分大きくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「予想よりも暑いわね……」

 

 加賀さんの一言は恐らく全員の総意だろう。夜間は息が白くなるような環境から、たった一週間で最高気温が二十度を超えるような環境に移動すればそんな感想は当然だと思う。

 アメリカに近付くにつれて徐々に暖かくなってたのは感じてたけど、アスファルトの上に立つと反射で厚さ倍増って感じがする。

 

「でも日本よりもカラッとしてますから、蒸し暑さは感じませんね」

 

 神通さんの言う通りで、暑いのは照り付ける太陽光だけで、空気は乾燥してるから日本の水の中に居るかのような息苦しさは無い。やっぱり日本の夏ってヤバいよな……

 

「そんな事よりアメリカよアメリカ! ほら、カメラ持ってきたの! 上陸記念に一枚撮りましょう!」

 

「陽炎、準備良いね。まぁ、折角だから撮っちゃおうよ」

 

 あ~……陽炎の反応が正に初めて海外に来た子供と同じで和むわ~……。陰キャの俺は通貨や言語、文化と常識が違い過ぎてもう二度と行きたくないって思ったけど、陽炎は何時まで持つかな?

 

「燥ぐ気持ちも分かるが大人しくしろ。旅行で遊びに来た訳じゃないんだぞ」

 

 コンテナ船が泊まり、俺たちが降ろされたのはアメリカの鎮守府の隣。

 長門さんが陽炎を鎮めていると、一人の男が近寄ってきた。

 

「日本の艦娘の皆さん、ようこそ」

 

「「「 」」」

 

 およ? 日本語じゃん。

 ちょっと片言だけどかなり流暢な日本語で話しかけて来たのは金髪の若い男性。

 そして隣に立って無言で俺たちを見つめる明らかに一般人を逸脱したレベルの美人さん。

 

 直感で分かったけどこの二人はアレだ。アメリカの提督と艦娘だ。

 ピンポイントで俺たちに話しかけて来たし間違いないだろう。

 

「「……」」

 

「?」

 

 金髪の如何にも仕事が出来そうな艦娘から不思議そうな目で見られたことでハッと気づく。神通さんからの特訓の所為でつい隙を窺うように見てしまった……ヤバいヤバい。……って神通さんも同じようなことしてるし!

 

 あぁ~……第一印象がどんどん悪くなる……。燥ぐ駆逐艦二人ならまだしも野生動物のような目で相手を観察する二人とか無いわ~。不気味過ぎて俺じゃなくても関わらんとこってなるし。

 

『済まん、代表として挨拶をしてくれないだろうか……』

 

 ちょっと長門さん!? わざわざ通信を使ってまで無茶振り(選手交代)は酷いって! 周りの文字が英語だらけだからって尻込みしないで! 相手は日本語喋ってるんだから落ち着いて対処して!?

 

「……お出迎えありがとうございます。私達は大湊警備府から出向された艦娘です」

 

 苦笑いしながら提督と思われる男に挨拶をする。

 俺に続いて他のメンバーも礼をする。

 

「はい。私はアメリカのロサンゼルス基地の提督をしてるアレックスです。移動しましょう。付いてきてください」

 

 早速移動するようだ。

 さっき長門さんが言ってたけど、観光しに来た訳じゃないから気を引き締めていかないと……

 緊張六割、楽しみ三割、義務感二割の合計十一割、全力で頑張ろうじゃないか。

 そんなことを考えていたら、アメリカの艦娘が話しかけてきた。

 

「ねぇ、アメリカを制圧しに来たって冗談でしょう?」

 

 勿論冗談だよ。

 

「……金属探知機に引っかからない武器だってあるんですよ。例えば拳とか」

 

「あら怖い。……フフッ。これからよろしくね」

 

 ……言語が通じるってだけで安心するなぁ。

 楽しみになってきたかも。

 

 




隣に居る金髪美人はホーネットさん。
絶対に仕事が出来る敏腕秘書だぞ……

翻訳こんにゃくが欲しい…海外に行ってみたい…
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