UAが10万を超えました。
一つの目標に到達した感じがありますが、満足せずに完結まで頑張ります。
これからもこの拙文にお付き合いくださるとうれしいです
基地を出る前にジョンストンが見せた笑みは所謂本物だったらしい。
穏やかさが消えて純粋な、感情の根源である恐怖を湧き上がらせるような凶暴な笑みに移り変わっていくのを見て、ホラー映画みたいだぁ……と、危機感を忘れて小学生並みの感想を抱いたくらいだ。
日本ではいつもどんな感じの私服を着てたのか訊かれた時に
『……ああ、あそこの男性居ますよね。そう、あの黒い服の。あんな感じの
なんて答えたのが
『真っ黒のメンズなんてあり得ない! もっと! こんな感じの可愛いのを着るべきよ!』
『因みに最近の流行りはコレです! 一度着てみてください』
ジョンストンを止めるだろうと思ってたフレッチャーもジョンストンと一緒になって俺を着せ替え人形にしてきた時は助からないと悟った。
俺に肌面積の少ない服だったり、ゆったりしてたり、カワイイ色をした服を持ってきたときはきっと目が死んでただろう。妹が持ってたリ○ちゃん人形の気分を味わったね。
それでも断固として露出を拒否したのが功を奏したのか、二人は渋々ながら諦めてくれた。
しかし、言いくるめる途中で『黒は女を美しく見せる』というどっかで聴いたことのある謎理論を展開したせいで、適当に灰色のシャツと青のデニムジャケット? と黒のジーンズとスニーカーを選ぶことになった。
『なるほど、センスが……』
『センスのカケラも無いわね』
と二人から言われ、他にも精一杯のお世辞を貰って流石に傷ついた。
後から知った事だが、フレッチャーは雑誌のモデルとして何度か掲載されたことがあるらしい。
『機密とかって無いの?』
『日本にはナカ=チャンが居るんでしょ? 同じようなものよ』
そう言われた時は凄く納得した。
が、そんな会話だけで楽しみは終わらない。
その後もアメリカをこれでもかと言うほど体験することになった。
スイーツを食べるとなるとおやつの概念を壊すようなカロリーテロに眩暈を起こし、直後にゲーセンに寄ってはダンスゲームを始めて死にかけ、アメリカの一般市民からのナンパにしっかりと対応するフレッチャーに尊敬した。
因みにガンビーさんとヒューストンさんは服屋を後にした時点で別行動をして、ゆっくりと本屋とカフェに居たらしい。
そんなこんなで
だけど、この後に夕食が控えてるとなると一度
まだ腹に残ってるであろうクリームをさっさと吐き出してしまおうと考えながら日本の艦娘の為に用意された部屋にフラフラとした足取りで向かうと、すれ違った長門さんに捕まった。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないです……」
そのまま長門さんに肩を借りて部屋に入る。畳の香りがするがそれどころではない。
即座に備え付けのトイレに入って自主規制した。
「私は茶の用意をしていたので何も聞いていないぞ」と言う長門さんからお茶を受け取って飲み干す。長門さんはこういった時には本当に頼りになる。
「助かりました」
「ああ。ゆっくり休んでろ」
そう言ってお茶を片付け始めた長門さんに見られないように自主規制の所為で汚れたかもしれない制服を着替える。
インナーがあるとは言え、例えこの先うん年経とうが人前で着替えるのには慣れないだろう。
素早く他の制服……ではなく買い物で買った私服に着替えたら、丁度よく戻ってきた長門さんからスマホで連写された。そういうとこなんだよね。
「おかえり~ってどうしたの? すっごい顔色悪いよ?」
「スチュワートさん!? 大丈夫ですか?」
初風と神通さんが何処かから戻ってきた。
ヘレナさんと三人で軽い運動がてら哨戒をしたんだとか。深海棲艦は影も形もなかったらしい。
「なんか私だけ遊び歩いてて申し訳ないです」
「気にするな」
「艤装の調整を含めた軽い撃ち合いだけでしたので」
「見かたによってはこっちも遊、んんっ! ゆっくりしてたようなものだし」
コンテナ船の貨物の一部は燃料を始めとした資材だったらしく、「久しぶりに演習が出来る!」と騒いだアメリカの戦艦と空母たちがドンパチ賑やかにやってたらしい。
そう言えば普段の遠征で[海外への輸出]なんて項目があったような無かったような。
「そういえば、スチュワートさんって英語を話せたんですね」
「ええ、まぁ」
俺自身は英語なんてサッパリだけど、あの妖精さんから頭に何か細工でもされたのか現地人との会話も問題ない。
「日本語が自然過ぎて時々忘れちゃうよね」
「……」
それは駄目だぞ初風。
だけど、俺も艦娘がそれぞれ軍艦の時にどこで建造されたかなんて知らないからお互いさまってことにしよう。
「それで、スチュワートは楽しかったか?」
「バイタリティの違いってヤツを痛感しました」
「本当に買い物してきたのよね?」
勿論だ。
規模とテンポが俺の処理能力を大幅に超えて、常識と文化の違いが合わさって一杯一杯だっただけで。
「初風も体験すれば分かりますよ。ところで、明日の予定とかって誰か聞いてます?」
「加賀が言うには明日は駆逐艦は遠征、私と神通は今日と同じで空母が自由行動になるらしい」
「わかりました」
遠征かぁ。
結局アメリカに来てもやることは変わらないのね。まぁ、仕事だし仕方ないか。海外の大学に留学した学生と同じようなものだと割り切ろう。
「みんな~晩御飯だよ! 随分豪華だよ!」
部屋の戸を開けて陽炎が入ってきた。晩ご飯とか言ってるけどもうお腹いっぱいなんだよね……。
でも出席しないと俺の具合に気付いてたサムとヒューストンさんに悪いし、取り敢えず出るだけ出るか。
が、その判断が間違っていたのか、立て続けに俺の胃に入ってくる動物性油の暴力に負けて、その日はもうダウンした。
「陽炎、初風! 遅れてるわよ!」
若干の非難混じりに声をかけたのはジョンストン。言葉のチョイスとイントネーションのせいか言葉の節々に棘を感じるけど、悪気は無いんだろうなぁ。
天津風と似た雰囲気を感じる。髪型とかも似てるしこれはもう天津風なのでは無いかと思えてくる。つまり姉を心配する不器用な妹だな!
そんなバカな考えをしてる俺と、他の五人は遠征の最中で海の上に居た。
「嘘、速過ぎる……」
「ちょっとタンマァ!」
陽炎と初風の言葉が後ろの方で聞こえてくる。
確かに、いつもトレーニングしてるって言うだけあってアメリカの三人のペースはかなり速い。本当に昨日俺と同じもの食ったんだよな? 胃袋鋼鉄すぎるだろ……。
『ちょっとペースを落としましょう』
『構いませんが……スチュワートは付いてこられるんですね。陽炎型駆逐艦よりも随分旧いのに』
『割と限界に近いです』
クソ正直にそう答える。昨日のことが無かったら『キツいけどまだ行ける』って感じだったのに……山盛りのパフェは強敵過ぎた。
それでも、秘書艦をみんなで担当し始めてから朝に時間が出来て、大鳳さんと長良さんと一緒になって早朝の走り込みを再開したからまだついていけてる。再開してなかったら今頃は死んでる。
『艦娘は艦と違って意思を持ってますから』
軍艦としての新旧は戦場では言い訳にならないから。疲労の度合いで深海棲艦は待ってくれないから。
そんなハンデを無くす為にトレーニングで補う。
艤装としての優劣があるならテクニックや立ち回りで誤魔化す。
俺みたいなヤツは奇抜な道具を使ったりもするだろう。
それでも足りないなら
『この程度で無様を晒す訳にはいきません』
知ってたか? 俺ってかなりの負けず嫌いなんだよ。
昨日は休日みたいなものだったから死んでたけど、仕事となったら絶対に弱音なんて吐いてやらねぇからな?
フレッチャー
ダンスゲームやリズムゲームが上手い。
雑誌のモデルとして何回か掲載されたことがある。
アメリカ基地の皆のママ。
長門:役得とか考えてた。連写した写真はLI○Eに上げた