演習回(いつもの)はじまりはじまり~
「今日の相手は日本の艦娘じゃないです」
まぁ当然だよね。出向して今はアメリカに居るんだし。
俺たち以外の日本の艦娘は長期休暇でバカンスに来てない限り近場には居ないだろう。
「今の倒すべき相手が深海棲艦とは言え、アメリカに負けるのは嫌ですよね?」
「愚問だな。負けを良しとして臨むヤツは居ないだろうな?」
俺の言葉に長門さんが乗ってきた。
うんうんと全員が頷く。
皆のやる気が漲っていくのが分かった。
「丁度いい機会です。戦争の続きといきましょう。勝ちますよ」
「「「……」」」
何故か引かれた。解せない。
遠征から二日後の今日、演習のお誘いを受けた俺たちは負け筋を無くすべくミーティングをしていた。
やるからには負けたくないのは俺を含めた全員の総意だろうけど、俺は特にその思いが強いだろうと自負している。
理由は簡単。単純に負けたくないのと先日の買い物で酷い目に遭ったこと、そして先日の遠征で敗北感を感じたから。つまり今回の演習に臨む俺の心内は半分以上が八つ当たりだったりする。
加賀さん、長門さん、神通さんの話を元にアメリカの戦艦、空母、軽巡の能力を纏めていったら問題にぶち当たった。
「ヘレナさんとアトランタさんが特に曲者って感じがしますね」
「そうね。彼女の防空能力はちょっと相手にしたくないわね。彼女さえどうにかなれば後は空母の一人や二人くらいは捩じ伏せるのだけど」
捩じ伏せるって……空母を? 頼もし過ぎやしないか? 良い事だけど。
でも加賀さんに相手したくないって言わせるアトランタさんも大概だよなぁ。
「ってことはまずはアトランタさんを何とかしないといけないってこと?」
「きっとアメリカもそう考えて護衛の一人くらいは付けてると思う。そもそもアトランタさんが選出されるって決まった訳じゃないでしょ」
「あ、そっかぁ……」
初風の質問に陽炎が答えたことで、再び初風が頭を捻る。
こっちは六人が固定なのに対してアメリカは十ニ人の内から五人が選出される。だから様々なパターンに対して対策を練らないといけない。因みに長門さん曰くコロラドさんは確定らしい。
まるでゲームみたいな読みや考察は楽しいけど、勝敗によって俺以外に迷惑が掛かるとなると責任感が発生してプレッシャーがヤバい。だから楽しむのも程々にして真剣に考えなくちゃいけない。
提督が居ない中での作戦立案。コレが大問題だったりする。
頭脳労働は提督の仕事だろうに……運が悪いことに今日は大本営に用事があるらしく電話が繋がらないらしい。しかも大淀さんや霧島さんなら! と思ってLI〇Eで作戦を求めたら他の人達が俺たちの勝敗で賭けを始める始末。
「アトランタさんが居る限り加賀さんが最大限活躍できる場面は無いと考えて良いでしょう。そしてアメリカは今までの出向の経験から加賀さんの実力を警戒していてもおかしくはありません」
「じゃあスチュワートはアトランタさんが選ばれると思ってるんですか?」
「選ばれるとは思ってますけど……アトランタさんの代わりに空母が二人なんて可能性もあるかなぁ、と思いまして」
そう言って加賀さんの方をチラ見すると微妙に眉を寄せている。一人は捩じ伏せられても二人は中々厳しいところがあるらしい。
「その時は私も対空に……あっ」
「どうしました?」
「対空機銃持ってきてなくて。今は砲と魚雷だけなの」
「あ~……マズイですね」
陽炎の言葉で勝てる見込みが薄くなった。
固定メンバーでの挑戦だけじゃなくてまさか装備もほぼ固定で挑むことになるとは思わなかった。
「演習始まる前の移動の際に相手を見てから装備を交換するのはどうでしょうか?」
「そうですね。相手を見てからでは間に合わないこともありそうなので、ある程度はヤマ張るしか無さそうです」
「確実性に欠けるのではないか?」
神通さんの言葉に返すと長門さんがそう言ってきた。
「何にでも対応できるようにするには自由度が足りないので仕方ないんです。天に祈りましょう」
余裕が無い事に焦ってちょっと酷い返し方しちゃったけど、許してほしいね。
まさかアトランタさんをどうするかっていう最初の話題でここまで条件が厳しくなるとは思わなかった。
「もう一度確認しますけど、空母は一人までなら加賀さんに、コロラドさんは長門さんにお任せしても良いんですよね?」
「勿論だ。相手がコロラドだろうとこの長門、やられはしないさ」
「二人同時が厳しいだけであって負けるとは言って無いわ」
「頼もしいです。では一旦アトランタさんは置いておきましょう」
「次はヘレナさんですね」
俺が曲者だと判断した二人の内もう一人、ヘレナさんに話題をシフトさせる。
神通さんをして「砲撃戦での非常に高い攻撃力は相手にすると脅威だと思いました」と言わせるんだからその攻撃力は本物なんだろう。
だけどちょっと
ヘレナさんの特徴は “火力が高い” だ。多くのゲームにおいてそう言ったキャラクターの性能は攻撃特化型で大体が紙耐久だったりする。
神通さんは攻撃力のことしか触れて無いから耐久力の方は分からないけど多分普通。俺としてはそれ以下であって欲しい。
だけど慢心は事故の元だから神通さん並の耐久力と想定すると……あれ? 強すぎない?
いやいや、そんな「ナーフして♡」って言われそうなバランスブレイカーはあり得ないからきっと何かの能力が低かったり、コストが重かったりの代償があるんだろうけどそれが何なのかが分からない。
「う~ん……」
戦艦はコロラドさんで確定。長門さんが責任を持って抑えてくれるそうだから話し合ってない。
空母は加賀さんが所感を述べ、加賀さんは空母の一人なら問題にならないって言ってたから問題ないってことでやっぱり話し合ってない。
そして神通さんの感想がこの有り様。アメリカにまともな軽巡って居ないの?
駆逐艦は「他二人は何とかなるかな? って感じだけどフレッチャーはバケモノだから無理」ってことを言っておいた。
あんな到底駆逐艦とは思えないスペックのフレッチャーに加えて想定では軽巡辞めてるヘレナさんも出てくるとなると始まる前から敗色濃厚なんだけど……
コンコン スパァン!
「日本の皆! 演習始まる時間よ!」
ノックが聞こえたと思ったら戸が開かれてジョンストンが現れた。
思い出したように時計を見ると確かに時間が近づいていた。
『作戦会議中だから出ていってくれない? もうちょっとで終わらせるからさ!』
『分かったわ』……遅刻しないでね!」
「「「……」」」
「で、どうするんだ? まともな案すら出て無いぞ」
「ヤバいじゃん! どうすんのさ!」
「ヘレナさんかアトランタさんが居たら神通さん、最優先でよろしくお願いします。護衛に駆逐艦が居たら陽炎か初風がフォローです」
「「
もうヤケクソだよ。こんなの作戦じゃなくて彼我の戦力差を確認した上でどう動くか確認しただけだよ。
「両方居たらヘレナさんは受け持つので、大破する前に来てください。アトランタさんが居なくて空母が二人ならそのまま防空に回ります」
「その時はお願いね」
「長門さんは……
「良くないぞ!」
良くないの!?
「え、そこをなんとか……お願いします」
「うむ」
うむじゃないよ! なんだこの茶番!? こんな事してる暇ないだろ!
忙しなく最後の確認と準備をした俺たちは弾かれるように飛び出した。
海の良く見える場所にはパラソルスタンドやビーチチェアーが用意されていて、そこには既にサングラスを掛けたアイオワさんや、双眼鏡を持ったサム、他の人たちも「如何にも観客です」と言わんばかりにリラックスしてた。
アレックスさんはバーベキューの用意とか言って見たこともない謎の調理器具を取り出して、他の人もコーラとポップコーンまで用意してある辺り、完全にエンターテインメント扱いしてる。
その中でホーネットさんだけが何かの機材を用意していた。
「記録用の艦載機を飛ばしているわ。真っ赤な艦載機は撃ち落とさないようお願いするわね」
ホーネットさんの言葉に頷く。真っ赤とか、三倍速いだろうから誰も落とせないな。
周りを見てもコロラドさん、サラトガさん、ヒューストンさん、ヘレナさん、アトランタさん、ジョンストンの六人だけが居なかったから彼女たちが相手なんだろう。
「さぁ! 勝ちに行きますよ!」
「「「おう!」」」
「グッドゲームを期待してるわ! Good luck!」
「「「頑張れ~!」」」
イントレピッドさんを始めにアメリカの面々から応援されて、いざ海へ。
主人公たちの戦いはこれからだ!
Q.どうやって勝てば良いんだ! 負けイベだ!
A.①夜まで待ちます
②夜になったら演習を開始します
③イージーモードへ移行します
※ハードモードではコロラドではなくアイオワが
ジョンストンではなくフレッチャーが出てきます。
空母キラーのアトランタと昼戦(速攻)の鬼のヘレナだけPvPの住人してるなーって思いました。フレッチャー性能は化物。異論は認めます。