二本立てとなっております。
・謎の艦娘
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『――って名前は知っているけど……そんな艦娘は見たことが無い。偽名でも使われていたんじゃないか? 軍事機密だからって理由でさ』
「いいや、そんなことは無い。そんなことを言うヤツは「軍事機密みたいですけど暴いてみますか?」なんて言ったりはしない。しかも身内に提督が居るって言う人にだ。
それに英語もとっても流暢だった。あのレベルはアメリカで生まれたか長年住んでない限りは無理だろう。
事実私も気になったから君に電話しているじゃないか、それで君はそんな艦娘は見たことが無いって言ってる。だったら、彼女の言うことは本当だという事じゃないかね?」
『だから、ウチの鎮守府に居る妖精は「今はこれで精一杯です。新しい艦が発見されたら……」みたいなことを言っていた。世界の誰よりも艦娘に詳しい妖精、それもアメリカの妖精か知らないって言ってんだから存在しないんだよそんな艦娘は!……確かに資料にはスチュワートって名前はあるけどさ』
私はあの後――スチュワートと名乗った艦娘が出ていった後に甥に電話を掛けた。
「今日、スチュワートと名乗るアメリカの艦娘に出会ったんだ」と。
会社の有給をふんだんに使って旅行をして、いつものように夜中まで映画を見ていて寝坊した。その日目が覚めたら裏口の方から物音が聞こえた。普段は猫も通らないであろうというほど細く、薄暗い路地なのに珍しいなんて思いながらドアを開けて外を見渡すと人影が見えた。
「おぉ!? そんなところで何をしている?」
そう、声を掛けたことが始まりだった――
ちょっとジョークのセンスが無いのが残念だったが根は素直で善良、心配性なだけかもしれないが……人の物を盗っておいて返しに来る人はいない。「盗めるから。そんなところに置いておく方が悪い。だから自分は悪くない」なんて考えをしている人は沢山いるが良心に従い返しに来る人はその中の何パーセントだろうか。
また、非常に行儀がよく「お邪魔します」や「頂きます」などの言葉を口に出し、座る際にも服装に気を付けたりすぐに頭を下げるその様はまるでジャニーズのようだった。
「そうなんですよ! 車並みのスピードが出るのは最高です、風を感じることが出来てとっても爽快なんですよ。ただ距離が長過ぎるのが難点ですね、アメリカ横断を一往復半と同じような距離ですよ? 映画の登場人物だって飛行機とか使うでしょうに……やれやれだぜ」
なんて言って大袈裟に嘆いて見せた彼女は無事に日本に辿り着けるだろうか? クッキーを持ち上げて彼女のコーヒーに入れるお茶目な妖精が付いてるようだからきっと楽しく移動してることだろう。
そう思い受話器の向こうにいる甥に言葉を掛ける。
「そのうちでいい。半年後でも来年でもいいから日本からの出向依頼にスチュワート……彼女を呼んでみたらどうだい? もし来てくれるようなら君は艦娘の不思議を一つ知ることが出来るし、私もまた彼女に会いたいからね」
『叔父さんは本当に気に入ったんだね彼女の事。恋でもしたの? おばさんに怒られるよ? ……まぁ、思い出したら呼んでみるよ。その時は電話する』
「あぁ。楽しみにしているよ」
そう言って電話を切る。
普段は言うことを聴くのに時折変なことをして「マズい事でもした?」とでも言いたげに不安そうな目を向けてくる昔飼っていた犬を思い出し
「似ているな。彼女は」
そう思った。
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・工廠の慌ただしい夜
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「じゃあ交代よろしくね夕張。それに妖精さんも」
夜に工廠に向かうと明石からそう言われた。
今日の日中も特に大きなトラブルも無かったみたいで、いつものように手と服の一部を修理や整備で汚しちゃったのかな? 苦い顔をしながら手を洗っている明石を見て目線を横に逸らす。
すると先ほどから常に鉄臭い工廠の中にいつもよりも香ばしく、鼻を擽る香りを振りまいている人物が視界に入る。
……今日の昼番は金剛さんかぁ。退屈はしないんだけど工廠の中でお茶し始めると妖精さんの手が止まるからあんまりして欲しくないんだよねぇ。
となるときっと今日の夜番も金剛型の誰かなんだろう。まだ来ていないみたいだけど……
「Hey、霧島ぁー! 遅いデース! 引継ぎの時間はまだあるからこっちで
「はいっ。お姉様!」
いつの間に来ていたんだろう? 今日の夜番は霧島さんだった。
私の横を通り過ぎる時に「今日もよろしくね」って言ってくれたりする細かい気遣いもさることながら、流石は艦隊の頭脳と呼ばれるだけあって艤装の修理も他の戦艦の人よりも手際よくやってくれる。
言い方は悪いけれど戦艦の皆さんの中では当たりだと思っている。因みにハズレは扶桑型と伊勢型の計四人。
工廠内が暗い雰囲気になったり瑞雲にベッタリで作業してくれなかったり……作戦の時にはしっかりと成果を挙げてくれるんだけどね。やっぱり全てにおいて万能な人なんて居ないんだなぁっと思う。
「それじゃあドッグや建造デッキに不備が無いかチェックしてくるわね。何かあったらそこに居るから呼んで頂戴」
「わかりました霧島さん。チェックよろしくお願いします」
そう言って離れていった霧島さんの背中を見送る。
……いつからだったか、工廠内に明石と私以外の艦娘、それも戦艦や重巡が来るようになったのは。提督の計らいだって明石が年末に騒いでいたような気がする。
妖精さん達が居ると言っても姿が見えるだけで、会話の相手も無くずっと工廠に篭りきりで作業をする。そんな環境が改善されたと知って明石と一緒に提督にお礼を言いに行ったのは記憶に残っている。
「工廠に戦艦や重巡が居ると有事にも対応しやすくなる。それに、独りぼっちは寂しいからね」
その時の言葉に私は感動した。きっと明石もそうだろう。工廠に戦艦や重巡が居ると有事の時に対応しやすいっていうのは事実。
知らせが来てから寮から出るのとでは抜錨までの時間は違う。その数分で状況が変わることは想像に難くない。
だけど、大規模な作戦や深海棲艦の侵攻があるわけでもない時の有事なんてほとんど経験したことがない。つまり工廠内にちょっととは言え戦力を割いたのは私と明石の為に他ならない。
そう思うと毎回心が温かくなってくる。
作業の手を止めて顔を上げる。視線の先では戻って来た霧島さんが誰の寮からだろうか? テレビを持ってきていてガンガン叩いている。――アレはマズイ。
「きっ、霧島さん! そんなに叩いたら逆に壊れちゃいます!」
「あら、そうなの? ……ごめんなさい、電気には弱くて……」
そう言う霧島さんはテレビを隅の方に置きにいった。こういうことがあるから以前よりもどこか楽しく作業をすることが出来る。効率こそが全てじゃないってことを提督は教えてくれた。
――深夜アニメの録画予約してたっけ?
大体のチェックが終わって手持ち無沙汰になって、そう考え始めた頃。工廠に誰かが駆け込んできた。
「こんな時間に珍しいね~……ってどうしたの!?」
「夕張さん! ……哨戒任務中に遠征隊から連絡がありました。「重症者が一人居るそうなので修復剤の用意をお願いします」だそうです。矢矧さんはあと三十分で着くって言っていました」
重傷者だなんて一体何があったの!? 明石に連絡を飛ばす。
『――――はい、明石です……なにかありましたか?』
連絡に出るまでの時間と話すペースが遅い。やっぱり寝てた。申し訳ないと思いつつ有事だから許してほしいとも思う。
「重症の患者が居るみたいだから修復剤使うけど良い?」
『ん~? え゛、 ちょっと何、重症者!? ちょっと待ってて! そっち行くから!』
すぐに切れてしまった。隣に居た霧島さんはやって来た艦娘……風雲ちゃんから詳しい話を聴いていたみたいで、一緒に出ていってしまった。足元に妖精さんが集まっていたので屈んで説明する。
「重症の艦娘が運ばれてくるみたいだからベッドの準備しておいてくれない?」
すると蜘蛛の子を散らすように動き始めた。今まで点検していた艤装が見る間に組みあがっては仕舞われていく。ベッドの方向にも何人か向かっていったので到着する頃には使えるようになっているんじゃないかな。
……それにしても妖精さんは私たち艦娘の声を理解しているのか。逆に妖精さんの声が聞こえるのは提督だけ……不思議よね~と思っていたら明石が入って来た。
早い。と思ったが髪はボサボサなままだ。……相当急いで来たんだね。
「こんな夜更けにごめんね明石」
「本当よ……こんな夜更けにやってられないわ。でもっ! やるならやるで全力で修理、治療しなきゃね! それで、修復剤だっけ?」
「そうそう。誰よ遠征で重症なんて負ったのは……」
そんな会話をした後に、全く見覚えのない艦娘が運び込まれた。
この瞬間から私と明石の本当に忙しい一週間が始まる。
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オリジナル設定とご都合主義が沢山出てきましたね……
「このキャラおかしくなぁい?」って思うのは愛が足りないから?
設定とかいろいろ考えてたりするんですが
何処かで漏らしたほうが良いんですかね?
次こそ2章です。よろしくお願いします。