私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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129話です。

会話回です。


揺り揺られ

『いつもより楽かも。ねぇサラ、あたしが出る必要あった? ガンビーに代わっていい?』

 

『一番新しい鎮守府だから練度が低いのかもね。だからと言って侮って良いわけじゃないわ。あと、途中交代なんてダメよ』

 

『はぁ、マジめんどくさ……ま、いいけど。代わりに何か奢ってよね』

 

『えぇっ!? ……最近できたレストランで手を打ってくれない?』

 

『オッケー。その分はしっかりと働かないとね』

 

アンタたちは楽しそうで良いわね! 私は陽炎と初風を抑えてるのよ!? アトランタに一人分けてあげようかしら!?

 

『……あたしは加賀の相手で忙しいから遠慮しておく。手が空いたら砲撃するから、頑張ってね。日本の駆逐艦なんて相手したくないし……

 

あ! あの初風凄いわ! また私の艦載機落としたわ!』

 

やられて喜ぶなんて変態!? も〜っ!

 

 アトランタさんとサラトガさん滅茶苦茶楽しそうにしてるやんけ!

 一人だけやたらと負担の大きいジョンストンが流石に可哀想に思えてくる。

 

 けど、防空巡洋艦の名に恥じぬ対空能力だなぁ。まさか加賀さんがほぼ完封状態にされるとは思ってなかったんだけど? アトランタさんはイージス艦の艦娘か何かで?

 

「まぁこんな感じですかね」

 

 結構近くで騒いでるアメリカの三人のお喋りを翻訳して通信する。

 

『……頭に来ました。アトランタのあの眠そうな眼を見開かせてやらないと気が済みません』

 

「じゃあやっぱりアトランタさんをどうにかするしかないんで危なっ!

 

『戦いで余所見は厳禁よ』

 

 チラリとアトランタさんの方を見た瞬間に頰に砲弾が掠めた。当たってから避けたけど、まぁ仕方ないだろう。

 

 ヒューストンさんからのありがたいお言葉に気を引き締める。

 

『ありがとうございます。でもまだ頭はくっついてますよ!

 

『ゾンビみたいなこと言わないで!』

 

 ゾンビだって? なんて失礼な。

 頭を吹き飛ばされても動くヤツとか、頭だけになっても戦闘意欲が衰えないヤツなんてファンタジーの世界には沢山居るだろ。俺がその仲間だとは限らないだけで。

 あ、また砲弾が弾かれた。魚雷は……反応なし。効いてんのか分からねぇな。

 

「これ勝ち目無いわ」

 

 少なくとも普通に撃ち合ってるだけじゃ絶対に俺はヒューストンさんに勝てないってことが分かった。直撃さえしなければそうそう負けることも無いだろうけど……

 

「さぁ~て、どうすっかね」

 

 

 

 

 

 

 

 加賀の艦載機が尽く撃墜され、代わりに飛んでいるのはサラトガの飛ばした艦載機。

 そうなった原因であるアトランタを倒すべく前進した陽炎と初風の前に立ちはだかったのはジョンストンだった。

 

「他の鎮守府の人が「スチュワートは強い」って言ってたわ。私も戦ってみたいんだけど貴女達をどうにかしないとそれも叶わなそうなのよね!」

 

 機銃で牽制しつつ主砲で攻撃しながら「だから倒されてくれない?」と話しかけるジョンストンと陽炎と初風の間合いは広い。

 

「何よそれ……私たちは眼中に無いって訳!?」

 

「陽炎落ち着いて! 見え透いた挑発じゃない!」

 

「そんなこと分かってるわよ。でも実際どうやって近づけばいいのよ! ジョンストンは相当腕が立つのかあんな遠距離から撃ってくるし、回り込んで挟み撃ちにしようものなら各個撃破されそうだし。そもそもサラトガさんの艦載機が邪魔で近づけない!」

 

「分かったから落ち着いてよ。……それにしても本っ当に厄介ね。まさかあそこまで防空能力が高いとは思わなかったわ」

 

 二人の頭上からは今も爆弾が降ってくる。他の場所にも飛ばしているのか密度はそこまで高くないが、決して無視しても良いようなものでは無かった。

 

「近寄れないことと加賀さんが何も出来ない現状が問題なのよね。こういった時にスチュワートならどうすると思う?」

 

「う~ん……スチュワートって意外と脳筋だから「サラトガさんの艦載機を撃ち落として同じ土俵に立たせる」って言いそうじゃない?」

 

「確かに」

 

 二人は笑う。

 

「でも、私はそれをしたくないわ」

 

 怒り心頭といった具合に陽炎が言う。

 陽炎は目の前にいる陽炎と初風を無視してスチュワートと戦いたいと発言したジョンストンにプライドを傷つけられたように感じていた。

 確かにスチュワートは強いと思っている。

 何度か演習でMVPを取って天狗になった時に演習で鼻を折られたことがある。

 作戦が始まると、目立たないながらも毎回しっかりと結果を残す。

 最近も、神通との訓練から逃げずに継続する姿を見せた。

 

 スチュワートは強い。それは事実だろう。

 

「ふぅん……じゃあ何するの?」

 

「勿論、ジョンストンに目に物見せてあげるのよ! 私たちをオマケ扱いしたこと後悔させてやるんだから!」

 

 だけど、だからと言って自分から目を離しても脅威と思われないのは納得できない!

 “私は私のやり方でやる”。同じことをしていてはいつまでも越えられない。自分たちよりよっぽど旧型のスチュワートがあそこまで出来るんだから自分たちがもっと上手く出来ない理由はない。

 

「ジョンストンを倒してアトランタさんに対空出来ないようプレッシャーを掛けに行くのね?」

 

「そうよ! 加賀さん、聞いた!?」

 

『ええ。本当はアトランタも正面から叩き潰したかったのだけれど、やっぱりリスクが大きすぎるわ。だからお願いね。期待してるわ』

 

「「任せて!」」

 

 二人が全速力で動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ神通、スチュワートって凄いと思わない?」

 

 淡々と攻撃を繰り返す神通にヘレナが語り掛ける。

 

「シッ!」

 

「あら怖い。……もう、釣れないわね。でも勝手に喋らせてもらうわ」

 

 攻撃を続ける神通と回避や防御を繰り返すヘレナ。この図は神通が有利に見えるが、当の神通の内心は穏やかでは無かった。

 演習が始まってからそれなりに時間が経ち、互いに殆ど無傷。自身は攻撃を受けていないから無傷なのは当然として、何度か被弾しているヘレナにダメージが無いように見えることが一番の原因であった。

 

「絶対に終わりだと思って処分された筈なのに、平然と戦場に戻ってくるんだもの。想定なんてする訳無いじゃない。幽霊船っていうオカルトチックな話題に何度上がった事か」

 

「……」

 

 しかも、お喋りをする余裕がヘレナにはあり、その余裕を無くすことが出来ていない事実が拍車をかけていた。

 最初の数分や数十分なら「余計なことに頭を使うなんて」と馬鹿に出来ただろう。だがそれも、長期化することで「あとどれだけの余力があるのか」というプレッシャーへと変わっていく。

 我慢強い方だと自認している神通も、一向に焦りを見せない相手に我慢の限界を迎えるのは必然だった。

 

「そこです!」

 

 そして、余裕綽綽なヘレナの体制をちょっと崩し、全身全霊の一撃を叩きこんだ。

 

 焦らせられていた(・・・・・・・・)ことに気が付いたのは、奇しくも手ごたえを感じなかった直後だった。

 それでもと、大きく上がった水飛沫に隠れたヘレナに追撃しようとして飛沫の中に飛び込んだ神通が目にしたものは、長い銃身を自信に向けて構えるヘレナの姿。

 

「残念でした♪」

 

……」

 

 銃の中が一瞬光ったと思ったら最近提督に貰った鉢巻に大きな衝撃が加わった。

 

「ヘレナを倒したいなら艦載機で徹底的に爆撃するか夜戦で、ね。……ま、アトランタが居るから艦載機は怖くないし、そもそも夜の演習は遠慮するんだけどね」

 

「ま、待って……」

 

「どうしたの? 基地まで戻れる?」

 

「まだ、戦えます!」

 

 頭に衝撃を受けたのがマズかったのか、激しく揺れる視界に苦戦しながらも神通が戦闘続行を申し出る。

 

「お断りよ。サムライソウルは立派だけど、ヘレナは新しい仲間の実力を見に行きたいんだから、また後でね。グッドゲーム」

 

 悠々と、とまでは行かなくても、普通の範疇に入る速度でその場を去るヘレナを神通は止めることが出来なかった。

 

 

 

 

 砲を撃ち合い、互いに有効打が無い事に気が付いたビッグセブンの二人は「資材が勿体ない」という理由で互いに攻撃を止めていた。

 時折サラトガの艦載機が咎めるように二人に攻撃するが、長門は「何かしたのか?」と言った具合に無視をして、コロラドは煩わしいとばかりに威嚇射撃して艦載機を追い払った。

 

「待て。その話は本当か?」

 

 コロラドの砲撃も、サラトガの艦載機も、流れ弾と魚雷も全て受け止めた長門を一番揺さぶった攻撃は物理的なものではなかった。

 

「Yes! Admiralが近いうちにスチュワートはアメリカへ配属される予定だって言ってたわ!」

 




よし、大湊の提督を壊してしまおう。(非物理的に)


アトランタ
艦載機は全然怖くないけど夜と魚雷、日本の駆逐艦は苦手。
以前夕立と江風と川内が同時に出向してきた時には部屋から出て来なくなった。
シューティングゲームが得意。

「空母と演習? ボーナスゲームの間違いでしょ」
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