誤字脱字報告、ありがとうございます。
なんで書いてる時は気が付かないのか……
陽炎と演習。
それ自体は大湊に居た頃から何回もやっている。
陽炎が
今回は強力な艤装を貰ったから、陽炎の魚雷がちょっと変わったからと言ってそう簡単に負けることは無いと思っていた。
「んだけどなぁっ! ……チッ」
思わず舌打ちをする。
今回の陽炎は一味違う。今もギリギリで魚雷を回避してなかったら相当なダメージを負っていたに違いないと内心では相当焦っていた。ちょっとは加減してくれても良いんじゃないかね? もう背中は冷や汗でベトベトなんだが?
普段はある程度距離を取って同航戦をして、そこに緩急を付けることで攻撃を避けてたんだけど今はそんな余裕が全く無い。
こうなってしまった原因は、俺がヘレナさんから貰ったSGレーダーの強みを活かそうと思って距離を取ろうとしたことだったから自業自得なんだろうけど。
突然だが。
陽炎型の使う魚雷は当たらない。
かなり遠い場所まで魚雷を泳がせられる上に速度も速い。
だが当たらない。
それは何故か?
流石に当たるまで延々と追いかけてくるなんてことは無いけど、普通に発射してから暫くは目標に向かうように軌道を調整するような挙動をする。
数度の角度を調整するだけなんて甘い誘導ではない。目標に向かって緩いS字を描くことだってある。
これだけ言われても「ホーミングするなら何故当たらないのか?」と思うかもしれないがそんなことは無い。むしろ軍艦サイズでこれだけ誘導するなら誤爆とかしない限りは百発百中は間違い無いだろう。
だが
それこそ百発百中なんて魚雷がUターンとかしない限りはあり得ないだろう。
艤装の不思議パワーで甲子園のピッチャー並の速さで簡単に魚雷を投げれると言っても相手だって普通に車並みのスピードで動いてるから百発百中の川内さんは尊敬できるんだけど。
……一度川内さんは置いておいてだ。
そんな魚雷の命中率事情の中で今触れてる陽炎型の魚雷が何故当たらないかと言うと、長い射程に対してこの誘導が甘いからだ。
発射した後の誘導時間が短くて、目標が少し動いただけでまともに当たらなくなる。誘導が甘いから距離が離れれば離れるほどその傾向は顕著だった。
では、当たらない魚雷を当てるには?
川内さんから魚雷の投げ方を指導してもらえばそれまでだけど、陽炎は普通に発射する派だからその線は無しで。
一つ目は当たるように誘導性能を強くする。
魚雷の誘導は艤装に搭乗してる妖精さんが行ってると言うのが明石さんの見解で、それだけじゃなく艦娘自身の精神状態とかも関係してくるらしく、あまり現実的ではないという意見で一致している。
二つ目は避けられない状況を作る。これは展開の運び方が上手な人が採る方法だ。本命の一撃を確実に当てる為の準備とも言える。弥生や夕雲、巻雲辺りが抜群に上手いんだなこれが。
でも陽炎は素直に一球入魂の精神でぶつかってくるからこの手は取
三つ目は今まさに陽炎が実践してる。
「さっきから……近い!」
「誘導なんて関係ない近距離から撃てば当たるよね?」
そりゃあそうだけど。そうだけど!
いつも通り距離を取ろうとした俺を見逃さなかった陽炎が猛追撃してきた時には超ビビった。
まさか陽炎がこんな方法を採るとは思わず背を向けて逃げたのが運の尽き。今は回避してるとは言え反撃もままならずやられたい放題だ。
「あまりにも脳筋過ぎやしませんかぁ!?」
「スチュワートに言われたくない!」
なんだと? 俺ならそんな近距離から発射なんてしないでもっとこう……何か……
「……」
俺ならもっと近くで直接魚雷を叩きつけるね! 自傷ダメージはあるだろうけどまず回避されないから与えるダメージの期待値は陽炎以上になること間違いナシ! つまり俺に避けられてる時点で詰めが甘いんだよぉ! 反撃できないから手加減して♡
まさかここまで一方的にやられるとは思わなかった。さっき一発喰らったけど威力が俺の知ってる魚雷の威力のソレじゃない。もう一発喰らったら自力で基地に戻るのが辛くなりそうだ。
1本当たれば中破は必至、2本当たれば二度と浮かべず3本当たれば……おぉ、怖い怖い。
それにしたってどれだけ爆薬増量したのさ。絶対に1.5倍くらいに増えてるだろいい加減にしろ!
いつもみたいな明石さんの思いつきクオリティだと思ってたら全然そんな事無かった。
実際に陽炎が改造した魚雷はとんでもなく強力だ。運用する距離が今までより近くなったことが大きな要因だろうけど、甘い誘導能力を補って余りある威力と速さは脅威以外の何者でもない。
だけど爆薬の増量=
「これならもっと炸薬増やしても良いかも!」
実際に陽炎が破壊力信者になりかけてる。
「恨みますよ明石さん」
魚雷自体の改良に成功してても使う人がダメになってちゃ世話が無い。
良いものを持ってても使用者が甘いと結局勝てないってことを教えてあげるのが今の俺の役割だろう。
せめて盾があったら反転して
反撃できない現状を打破するのが先だ。
「ちょこまかと……動かないで!」
「言われて止まるヤツなんて!」
居るんだよなぁ。
すぐ後ろから爆発音が3回聞こえてくる。音からして水柱の規模も相当なものだろう。
「グフッ!?」
だけど直後に背中に受けた衝撃がヤバい。艤装が無ければ背骨がクラッシュして即死だったに違いない。肺の空気が無理矢理押し出されてクソ苦しい。背骨本当に大丈夫? 折れてない?
「やった!?」
陽炎の喜びと不安が混じったような声が聞こえてくる。
その言葉はフラグなんだよなぁ……。
痛すぎて逆に笑えてくる。
だけど残念! 満身創痍だけど俺はまだ戦えるぜ!
水柱が収まった頃には俺と陽炎は離れていた。
「ヒヒッ! 残念でしたぁ!」
俺だって負けず嫌いなの! 良いようにやられて喜ぶ趣味なんて無い!
「嘘っ! なんで!?」
どうして沈んでないか気になる?
「砲がやられちゃいましたよ! どうしてくれるんですか!」
「何で砲がやられるのよ!」
そりゃあ、避けながら砲を外して海に沈めたからだよ。
陽炎がほぼ真後ろに居るなら魚雷だってそこから来るし、そこに何か沈めておけば一発はそれで防げるじゃんと思ったのが功を奏した。魚雷発射管を外した方が楽だったんだけどジョンストンに大事にしてって言われちゃったし。
砲なら大湊の汎用品使ってるから問題は……陽炎が火力厨になるよかマシだ。
「常識外れじゃない!?」
「勝てば良い。それが全てですよね?」
まさか2本も誘爆して3本防いだのはいい意味で想定外だったけど。まさか爆薬詰めすぎた所為で誘爆しやすくなったとか言わないよね?
まぁ、普通に撃ち合うつもりだったけどもう付き合わんぞ。何で陽炎の土俵で戦わなくてはいけないんだ。
陽炎は魚雷の装填が間に合わないのか一本だけ発射してくる。
しかし距離が近距離から少し離れればどうだろう、スピードが速いだけで軌道がユルユルの魚雷だ。当たればヤバいけど当たらなければどうということは無い。
距離を縮められないように魚雷を一本ずつ、装填が間に合い次第2本以上を発射して少しづつ距離を取っていく。
後はさっきの演習でジョンストンがやってたみたいに引き撃ちを繰り返せば陽炎はジリ貧だろう。
分かったことがある。ジョンストンに貰った533mm五連装魚雷とやらは誘導性がかなり高い。
SGレーダーの効果で遠くまで狙いやすいとなると本当に良い組み合わせだと痛感した。
遠距離から陽炎を一方的にチクチク攻撃し続けた結果、なんとか勝利をもぎ取ることが出来た。
そして今は、陽炎に小言を垂れていた。
「陽炎はソレを使い続けるなら大人しく神通さんから訓練してもらうことを強くお勧めします」
陽炎の改造魚雷は威力マシマシだから止めを刺すのに向いてそうだし。神通さんもきっと「やっと陽炎が逃げずに私の訓練を受けてくれました」みたいに感動しながら地獄に突き落としてくれる筈だ。
アメリカに来る途中に訓練から逃げて神通さんとマンツーマンする羽目になったこと、まだ根に持ってるからなぁ?
「えぇ~……でもしょうがないかぁ。分かった! やるわ!」
うん。強さに貪欲な姿勢は良いね。でも手段を選ぼうか。
古今東西マッドサイエンティストの栄えた試しは多分無い。つまり明石さんが提督の許可無しに色々し始めても関わってはいけない。
「じゃあすぐに魚雷を元に戻してください。そして帰るまでは勝手に改造しないでください。帰ったら明石さんにちゃんと改造して貰ってください」
『それは勿論です! 良いデータも取れましたし!』
なんか明石さんすっごいウキウキしてるから余計な改造しそうだなぁ。帰ったらまたしつこく釘を刺しておこう。
「あ、明石さんは帰ったら私の艤装をちゃんとセンチ規格に修正してくださいね」
『えっ?!』
「当然です!」
明石さんの思いつきで大変な目にあったんだからこれくらいはして貰わないと割に合わない。
・陽炎
個性的な姉妹の世話に日々奔走している。
割と初期に建造されたから大湊の艦娘では強い方。
スチュワートの評価は「優秀だけど変な思考の脳筋」
時津風と雪風の止め方を他の陽炎と一緒に模索中。