私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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133話です。

どうして誤字はなくならないのか…コレガワカラナイ
毎回報告くださる方に感謝です。


手元に

「ふぁ~……っふ

 

 今日もやはりと言うか脅威となるような深海棲艦が現れないアメリカでは暇を持て余す。

 普段はトレーニングとかをして過ごしているアメリカの面々も、日本から出向で人が来るとここぞとばかりに演習や娯楽に精を出し始める。

 それでもやっぱり休みは必要な訳で、俺はゆっくりと釣りをしていた。

 

 しかし悲しいかな、既に3時間は釣り竿を海に向けてるけど小魚すらまともに釣れてない。

 途中で待つのに飽きてガンビーさんから適当に借りた小説を読んでたのもあるだろうけどアメリカの魚は釣り針に耐性でも持ってんのか?

 

 

 

 残念なことに俺の周りには俺と同じようにゆっくりと釣りをする人が居ない。

 

「そういった釣りもあるかもな……オレはそんな釣りはしねぇけどよ」と不思議なモノを見る目で天龍さんから言われた。

「ただ待ってるだけなんて詰まらないよ! 何が楽しいの?」と時津風に純粋な眼を向けられた。

「釣りは待つもんじゃねぇ! 仕掛けに行ぐモンだぁ!」と地元の漁師さんと釣り人たちにも言われた。

「釣りよりも、網で一網打尽にした方が速くて楽ですよ」とフレッチャーにちょっとズレたことを言われた。

「ダイナマイト漁とか楽しそうじゃない?」とアイオワさんも言ってた。確かに一回はやってみたいと思う。怒られるのは間違いないだろうけど。

 

 同士は居ないけど、俺はやっぱり待つ釣りをする。

 

「一人でのんびり過ごすのも乙なモンだよ」

 

 母なる海の音を聴き、穏やかな時と風の流れを感じ、温かい日差しと奇異の視線を浴び、そして釣りあげるものの大半が有機物ですらないものだったとしてもだ。

 ……凄まじい寂寥感と敗北感を感じる。何でだろうなぁ?

 

「お?」

 

 遠くに放った浮きに違和感があった。

 小説を閉じて竿を手に持つ。

 

「せやっ! ……」

 

 勢いよく引き上げると、俺の目の前にぶら下がるパンパンに膨れた白い球状のナニカ。

 

 針が掛かった場所から水を吐き出し、徐々に小さくなっていくに従って中に入っていた食べ物の容器のような物がうっすらと見えてきた。新種の魚を釣り上げたという可能性は完全になくなったらしい。

 

「やっぱり呪われてるんじゃねぇかな」

 

 本日3個目のゴミ袋を釣り上げた俺の率直な感想だった。

 

 残念なことに俺は魚を釣ることが出来ないらしい。

 俺が釣りをしようとすると、天気や場所に関わらずゴミが釣れるからだ。

 初めてこの釣り竿で釣りをした時も、佐世保でも、大湊でも、此処でも、艤装を装備して遠洋で釣りをした時にも魚よりゴミの方が良く釣れた。

 

 深海棲艦は艦娘と共に近年現れたらしいからこれから海洋ゴミを棄てる輩が減って、地上に溢れ返ったゴミを解決するために技術が発展して、海洋ゴミの問題は解決に向かって……

 

「もしかして深海棲艦は地球の自浄作用なのでは?」

 

 地球から見た人間って完全に惑星を殺すウイルスか寄生虫だって前世の友人が言ってた。そりゃあ海洋ゴミとか温暖化とか有害物質とかを何とかする為に深海棲艦くらい生み出すわな。

 

「つまり『艦これ』は地球がちょっとだけ過激な世界線だった?」

 

 そこに気が付くとはやはり俺は名探偵スチュワート。

 いや絶対に違うわ。身体は子供で頭脳はお花畑だもんね。

 

「お、ヒットした」

 

 錆びてる缶詰の空き缶が釣れた。中から海藻が生えてるオマケ付きだった。

 嬉しくない。

 

 

 

 

 

『ハッハッハ! 元気なようで何よりだよ!』

 

「!?」

 

 再び針に餌を引っかけて遠くに放り、小説の続きを読もうと手に取ったら後ろから声を掛けられた。

 

『ふぅむ……【一味違う釣りの時間を貴方に!】というキャッチコピー付きで格安販売されてたんだが、君の釣果を見るからにその釣り竿もまだまだ現役のようだね』

 

 このポンコツが現役? いつもとは一味違うって言っても限度があると思う。キャッチコピー考えたヤツの感性狂ってんじゃねーか? そして格安販売とか絶対に騙されて……ないのか。安いんだもんな。

 あとゴミ釣りがデフォルトの仕様だとしたらこれは釣りの出来るゴミ収集アイテムってことになる。

 どうしてここまでゴミが釣れるのかを科学で証明できないから間違いなくオーパーツだ。この釣り竿を作ったヤツの感性もぶっちぎりでイカレてるに違いない。

 

 あぁ、でもまずは

 

『お久しぶりです、アランさん』

 

 やっぱり挨拶だよね。挨拶は大事だって古事記に書いてあるし。

 

『久しぶりだね! スチュワート嬢』

 

『スチュワート嬢は勘弁してください』

 

 “嬢”なんて呼ばれるタマじゃない。中身はまともじゃなくてゲテモノなんスよ俺。

 前にあった時よりもちょっとだけ恰幅の良くなったアランさんは、変わらず陽気な様子で手を挙げていた。チャーミングなスマイルも相変わらずだ。 

 

『ああ、気を悪くしないでくれ。……スチュワートも、ここに居るということは無事に日本まで帰れたようだね』

 

『アランさんのお陰です。コレが無かったら飢えてたかもしれません』

 

 あの時は釣った小魚で海鳥をおびき寄せて食べたんだっけ? 市販の鶏肉とは比べるのが烏滸がましいレベルで違った。やはり食用以外のものはダメだってことを学んだ。

 

 そう言えばイ級も食べたことあるなぁ。全く美味しくなかったけど、ボリューム満点だから非常食としての性能が高いということを学んだ。全く美味しくないゲテモノだったけど。

 

『そうかそうか、それは良かっ『あーっ! アラン叔父さんだ!』 おぉ! サム、今日も可愛いねぇ』

 

 サムがアランさんにタックルめいたハグをかました。

 それを難なく受け止めたアランさんは可愛い可愛いって言いながらサムの頭を撫でている。

 ……ぶつかった時に結構いい音出てたけど、大丈夫なのかね。

 

 そうして突撃してきたサムの後ろには他の艦娘たちも来ていた。

 日本の人たちが俺に「誰?」と尋ねるような視線を向けてきていた。

 

「命の恩人です」

 

「「ええっ!?」」

 

 意外だったんだろう。神通さんですら素っ頓狂な声を上げる。

 加賀さんも目を見開いて驚いているのが丸わかりだ。随分レアな顔だぜ。明日は雹でも降ってきそうだな。

 

「仲良く話してたみたいだけど、本当のところどうなの?」

 

『アラン叔父さん、本当?』

 

 サムもちょっとムッとした顔で俺に問いかけてくる。うんうん可愛いねぇ。

 まぁ言ってることは本当なんだけど……日頃から適当な冗談を言いすぎてたからか信じて貰えないだろうな。狼少年は辛いぜ。

 

『本当だとも。……そうだ! スチュワートは元々アメリカの(ふね)なんだろう? これからもここに残ってはどうだろう?』

 

『それは名案よ! ねぇスチュワート、ここでずっと過ごさない?』

 

『あ~、確かにここは楽しそうですし良いですね~』

 

 イントレピッドさんも来た。

 

 それにしてもアメリカに残る、かぁ……

 

 ちょっと陽の者の割合が多いような気もするけど、慣れてしまえば日本以上にアットホームな環境は楽しそうだ。

 深海棲艦は少ないから楽で良い。代わりに出向の無い間はトレーニングが多いみたいだけど、反復作業は大好きだからぶっちゃけ俺にはそこまで大きなデメリットは無い。

 

 そもそも駆逐艦スチュワートってアメリカの(ふね)だからアメリカに居るのが自然なのでは? と思えてくる。

 

 まぁ残らずに日本に帰るんだけど。

 

「ねぇスチュワート、この人たちはなんて言っているの?」

 

 そう言えばみんな英語だったわ。アランさんは日本語ダメみたいだし、必然的に英語で会話することになってるから何言ってるのかよく分からないだろう。

 妖精さんは早く自動翻訳システムみたいなの作って導入してくれないかな。

 

「出向が終わってもアメリカに残らないかって言ってますね」

 

「……そういうことだったか」

 

「ん? 長門さんは何か知ってるんですか?」

 

「ああ。この前の演習の時にコロラドが教えてくれたぞ」

 

「なん……だと……?」

 

 コロラドさんは予知能力を持ってたのか!?

 




・本
直射日光に当てると痛みやすい(らしい)です。
借りものの本は屋内で読むようにしましょう。
勿論、食べカスやシミ、濡らしてふやけるのもNGです(過激派)
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