出向編もそろそろお終いかな……
Washington? 知らない子ですね……
アメリカ艦のガチ喧嘩とかやってみたかったなぁ……
「ウチのも良い感じにガス抜き出来たし、資材の備蓄も増やせた。深海棲艦は来なかったけどまぁ、いつものことだからそこは気にしないでくれ。最後になるけど一月の出向ご苦労様。助かったよ」
「我々も大湊では経験できないことが多くて充実した時間になった。」
「それがいい意味かどうかは訊かないでおくよ」
短く感じた出向の一月も終わり、来た時と同じように先頭に立ったアレックスさんと長門さんが互いに代表として挨拶をしている。
「他のは挨拶しなくても良いのか?」というアレックスさんの言葉で各々が最後のお別れとついでにお喋りを始めた。
「また来てくれるなら大歓迎だよ! また色々楽しもうね!」
「言われなくても
「貴女の妹はまだ全員知らないんです。次があるなら積極的に参加させてくださいね」
「手のかかるのばっかりよ。後悔しても知らないからね」
「期待しています」
『スチュワートさん! この前作ってくれたオムライスの作り方をまだ教えて貰って無いです!』
『焦らなくても連絡先一つで万事OKです』
『アメリカの料理のレシピもどんどん送りますね』
「次は“殴り愛”の出来そうなヤツ連れてきてくれよ。……やはり霧島だろう」
「悪いな。霧島はまだ建造されたばかりで出向は無理だ」
「なんだと!? じゃあ長門! 次も来てくれ!」
「戦艦加賀なんでしょう!? 主砲の一つや二つくらい積みなさいよ!」
「貴女は出来るの?」
「私は純粋な正規空母だから無理よ!」
「……」
「今度は負けません」
「そもそも川内型って夜戦なんでしょう? 土俵が違うと思わない?」
「……話を逸らさないでください」
みんな楽しそうで何よりだ。
俺の相手はサラトガさん。この前俺が夕食に作ったオムライスの作り方を教えて欲しいらしい。だがあれには伊良湖さんから教えて貰った秘伝の知恵と技術が詰まっている。どれだけせがまれても伊良湖さんが頷かない限り教える訳にはいかぬ。
『君の……君達のこれからの活躍を祈ってるよ』
『ありがとうございます。アランさんが祈ってくれたので大湊の将来は安泰ですね』
『それは良い。神父にでもなろうかな?』
「互いに帰ったらまた色々と苦労しそうね」
「『自分だけじゃない』って良いですよね」
「全くよ」
そんなやり取りがあったりした。そしてそれすらも懐かしい。
今はもう既に海の上。今度はアメリカから日本への貿易船の護衛も兼ねている。
「楽しかったな~……」
「そうね……」
「あ~あ、帰ったらまた遠征に演習に……忙しくなりそう」
甲板の手摺りに捕まって憂鬱に沈む俺たち駆逐艦組。まだ正午くらいなのに全員が黄昏ているのは修学旅行の帰りを彷彿とさせる。
「うむ。深海棲艦の居ない日常はある意味貴重な体験だったかもしれないな。だがいつまでものんびりしては居られないぞ。神通と加賀を見習え」
「あの二人はもう流石って感じしない?」
せやね。
アメリカではどっちかと言うと艤装を使わない活動が多かったように感じるし、娯楽の為に全力を尽くす感じで努力のベクトルが違う人が多かったから真面目な神通さんは退屈だったんだろう。
加賀さんは帰還前日にサラトガさんから砲撃の指導受けてたから多分その練習も兼ねてるんだと思う。
神通さんから副砲を借りて今もマンツーマンで指導を受けている。上を目指す姿勢は流石一航戦って感じだ。
まぁ理由はどうであれ俺が知ってることはだ。
二人は
俺は貰ったレーダーと魚雷の分析、陽炎は改造した魚雷。
初風は買い物とか満喫してたし多分アメリカの日常みたいな感じに纏めたんだろう。長門さんは全体の記録とその他諸々があるらしいから免除なんだとか。
「スチュワートはどうだ?」
明後日の方向にぶっ飛んでった思考を目の前に戻す。出向がどうだったかって?
「あっという間でしたね」
そりゃあもうね。演習から休暇から……全部満喫できた。
エンターテイナーいっぱい居るから退屈はしないし、俺も仲間に加わってアレコレ悪戯三昧して正に全力で羽を伸ばせたって感じだ。ノリが高校生の男子みたいな楽しければ良いってスタンスの人が多くて最高……また行きたいね。
日本の外は水道水もまともに飲めないヤベーところって言ったの誰だよ? 俺だよ。
「アンタは良いわね。アメリカの人たちと散々振り回してくれちゃって全くもう……世話が焼けるわ」
「これからもよろしくね陽炎お姉ちゃん!」
いい笑顔でそう言ってやった。「うわ……」って顔されたけど、その顔をするだろうって思ったからこんなことをしたんだって言ったら怒られるんだろう。
でもなんだかんだ言いながら面倒見のいい陽炎は好きだぜ。
「同郷の
なんだよクッソ恥ずかしいこと言うなよ。
こういったことに耐性の無い俺ならキリっとした顔で「笑顔が良い」なんて言われたら恥ずかしくなって顔が爆発するかもしれないだろ? ギャグ補正とか掛からないからアフロでは済まずに首から上が吹き飛ぶ可能性があるから気を付けて欲しい。もう既に顔が! 顔が熱い!
「……別人みたいだったしね」
「結局深海棲艦も両手で足りるくらいしか見てませんし完全にオフって感じでしたしね。仕事じゃないならこんなモンです」
ヤレヤレって感じで溜息混じりに言う。
ちなみに人が居ない場所だともっと酷くなる。
まぁ最後の一線は越えてないからセーフ。
「ああいう雰囲気苦手だと思ってた。可愛いところあるじゃん」
「……止めてください」
初風に頭を撫でられる。
流石に中身がコレで頭を撫でられるのはキツいんですわ。サウスダコタさんとか摩耶様みたいに大雑把にワシャワシャされるのは全然気にならないんだけど……
「すぐそうやって照れ隠しするのは時津風みたいね。やって欲しいなら素直になった方が良いよ?」
違う。陽炎はボッチの習性を分かってない。
・輪に混ざりたいけど和が崩れることを危惧している。
・輪の一歩外から眺めるのが好き。
・
・イジメとかを受けてるから輪に近寄りたくない。
・恥ずかしいだけ。
大体このうちのどれかに当てはまると思う。ボッチの俺が言うんだから間違いない。
時津風みたいに恥ずかしがってるだけとは思わないで貰いたい。
そもそも俺は見た目はアレでも中身がコレだからボディタッチ含むスキンシップは倫理的にダメだろう。セクハラで訴えられたら勝ち目無いんだぞ。
だから俺のは照れ隠しでは無くて自己防衛の一種だ。決して恥ずかしいとかではないんだ。
「でも早く皆の顔見たいかも……」
「ああ。連絡は取れると言ってもやはり実際に顔を見られないのはもの悲しさがあるな」
「陸奥さんは問題も起こさず待ってくれてるから良いでしょ。私は帰って早々怒ることになるかもしれないのよ……」
「そう言えば初風は出向の序盤で『
「思い出させないで!」
「「初風?」」
「あぁ、ぁぁぁ……」
初風の様子がおかしくなった。
この世の終わりを見たのかと言いたくなるくらいに声から力が失われていき、目の焦点が次第に合わなくなって次第に大きくブレ始めた。手摺りを掴む手が震えて……最後には足に力が入らなくなったのかその場に崩れ落ちてしまった。
「「初風!?」」
「はぁ~……悪いけど、夜の哨戒は神通さんと二人でお願い。妙高さんの写真どこにあったかな……」
虚ろな目をしたまま「妙高さん……」と繰り返す初風は陽炎に回収されていった。
「もしかして新手の深海棲艦の攻撃か?」
多分病気だと思う。
「放っておいても陽炎が何とかしますよ」
「そうか……神通は夜もだったな。代わって来よう」
「頑張ってくださいね」
―――
――
―
この時の俺は知らなかったのだ。
もし知っていれば色々と準備と対策をして回避できた筈の未来を。
「あああああっ! ――――っ!」
一人ベッドの中で枕に向かって激情をぶつけるなんてことはしなくて済んだんだろう。
想定外は、予想や予測を超えてくるから想定外なんだ。
シリアス「出番? お呼びじゃねぇすっこんでろ?(・ω・`
・ホーネット
今回出向に向かった基地の初期艦。
艦載機もまともに揃ってない、資材も無い、護衛してくれる駆逐艦は居ないといった地獄のような日々をアレックスと切り抜けている女傑。
宝物は指輪と基地の皆とXF5U(加賀に自慢済み)。
魅惑のアップルパイは今日も争奪戦を引き起こす。