アメリカ編の最終話です。
賛否両論の回です。
賛否両論の回です。
俺たちの放った大量の魚雷をスルリと躱した川内さんが、お帰りという挨拶と共に神通さんに突っ込んできた。
「……」
「えっ? ちょぶ」
しかし残念ながら一月ぶりの再開を祝う感動ののハグは避けられ、川内さんは海面にヘッドスライディングを決めることになった。これで少しも沈まないで浮いてられる辺り艤装ってスゲーよな。
「受け止めてあげても良かったんじゃないの?」
「常識のある速度でしたら勿論」
「……それもそうね」
「じゃあもう一回だね! おかえり! 私の事を思って夜に帰ってくるなんてお姉ちゃん嬉しいよ〜」
「「「……」」」
起き上がった川内さんが神通さんに抱き着いた。困惑しながらも何処か嬉しそうだった神通さんも、川内さんの言葉を聞いた瞬間に視線に冷たいものが混ざった。
川内さんの為に夜に帰って来た訳じゃないんだけど……さては日中に寝てたせいで連絡事項を全く聞いてないな?
『出向からの戻り? いや〜お疲れさん。いきなりだけどさぁ……そっちに川内さん行った?』
通信だ。この声は嵐か? 随分懐かしく感じるな。
ここは俺が出しゃばルート場面じゃ無いね。ほら陽炎、愛しの妹からの通信だぞ良かったな。
そんな目で見ると「また大変になりそう……」とか言って面倒くさそうな態度で二言三言通信した。でも態度とは裏腹に口の端が持ち上がったのを俺は見逃さなかったね。
それからしばらくすると前方から5つの反応、もとい今日の夜戦メンバーがやってきた。
みんな口々に再会を喜びあっている。何とも微笑ましい光景だ。
川内さん以外がみんな陽炎型という事実に姉妹愛を感じる。秋雲が出てくるなんて珍しいね。
「怪しい反応があるって話だけど、どれのことかな?」
「……消えてますね」
舞風に言われて例の反応を探したら忽然と姿を消していた。夜戦メンバーはここに全員居るから誰かが追いかけて逃げられたってことは無いだろう。
でも居なくなった理由が艦娘の数が多くなったからなのか、大湊に近づいたからかそれとも……まぁいいや。俺が考えても仕方ないし提督にぶん投げとけばいいでしょ。
「アメリカはどうだったの? 話聞かせてよ」
「せっかくだし、アメリカで教わった本場の料理を食べさせてあげようか? 教えて貰ったの」
「良いの!?」
「「「……」」」
初風の提案に無邪気に喜べるって良いよな……ほら見ろ、神通さんでさえ生暖かい目をしてらっしゃる。
実物を見てあり得ないサイズに興奮して、一度口に運べばとんでもない美味さに感動して二度、三度と口に運んで舌鼓を打って、その頃になって分かる“重さ”に言葉が詰まり、胸焼けすると思い始めても半分くらい残ってる目の前の料理に絶望する。
出汁なんてモノは無いから味付けの種類が基本的に塩かソースかチーズ、砂糖かクリームしかないのがヤバい。そしてそれらを美味しくなるまで足すのがもっとヤバい。引き算的思考はねぇのかよ。
やはり加賀さんにおかわりを躊躇させたアメリカの実力は伊達ではない。
よく初風に料理を教えていたイントレピッドさんが作るものと同じのが出てきた場合は、近いうちに陽炎型の座るテーブルがカロリーテロの舞台と化し萩風が卒倒することは間違いない。
まぁ、間宮さんがストップをかけて
その後は神通さんの計らいで陽炎型の全員が船の中に入っていき、静かになった海の上で川内さんと神通さんが話に花を咲かせ始めた。
……俺は気を利かせて船の反対側で見張りでもしてようかな。
俺一人だけ話し相手が居なくて寂しいなんてことはない。
何故なら陽炎型が船内に消えたら例の反応が現れたから。
警戒だけとは言えやることがあるって素晴らしいねぇ!
憂さ晴らし……もといお喋りしたいからこっち来てくれないかなぁ……こっち来いやオラ。
「「「お帰りなさい!」」」
早朝どころかまだ薄暗いと言うのにほぼ全員が起きて出迎えてくれた。まだ目が寝てる人も居るから嬉しいって思うより申し訳ない気持ちになる。
久しぶりに見た面々の顔がやけに懐かしく感じたと同時に、新しく建造された人も数人居ることに気が付いた。時間の流れを感じる。
「旗艦長門、以下6名只今帰還した」
長門さんの言葉に続いて敬礼。流石にもう手慣れたわ。
「一月の出向お疲れ様。全員が帰ってきたことを嬉しく思う。……スチュワート、前へ」
「っ! はい」
このままあとは解散だろうと思ってたら突然呼ばれた。言われた通りに前に出る。
俺アメリカで何か怒られるようなことしたっけ?
……正直心当たりしかないけど。
挨拶の為に前に出ていた長門さんの脇まで移動してももっと前へと視線と雰囲気で促され、とうとう遂に提督の前まで移動してきた。
MVPの知らせならまだ名誉ある呼び出しだから良いんだけど、今回のコレはな~んか嫌な予感がするから良い知らせではないような気がする。
いやマジで、お叱りなら後で個人的に呼び出して貰って構いませんのでこんな注目を受ける仕打ちはどうか勘弁してくだせぇ。
「……」
「スチュワート、これを……」
そう言って提督が何かを差し出してきた。
早くこの状況から抜け出そうと、脳死で差し出されたそれを受け取ろうと手を伸ばし、ピタリと動きを止めた。
……なんで指輪が出てくるんですかねぇ!?
いやアレでしょ? 知ってる知ってる。『艦これ』に出てくるケッコン
ガチの結婚指輪じゃ無いってことは知ってるんだけどさ「これを……」じゃねぇんだよ朝っぱらから一体何考えてやがる。珍しいものだから食べて欲しいのか!?
しかもやるにしてもこんなに注目を浴びてる環境でやるか!? お帰りなさいの次にいきなりそれを出してくるとかどんな思考回路してんだよあぁん!?
「え、え〜っとぉ〜……」
考えろ考えろ……どうすれば穏便に終わる? 間違いなく嫌がらせとかドッキリでは無い。この提督はそんなことはしない。つまり本気でこんな事をしてるって事だ。正気じゃないとは思うけどね。
でも無理ですって断ったら提督の後ろで「まぁ仕方ないか」みたいな顔してる人たちと悔しそうな金剛さんから怒られそうだし、カメラ構えてる青葉さんからは瓦版に有る事無い事書かれることは間違いない。
無言で逃げても問題の先送りな上に余計に興味引くだけだろうし、俺は俺で何も考えずに
「……」
「……」
マジかよ……もう
「受け取ってほしい」
キリッ! じゃねぇよ。
俺だって渡された以上しっかりと受け取らないと逆に申し訳無く感じちゃうんだけど?
受け取るよ? 受け取っちゃうよ!? 考え直さなくて良いんだな!? やっぱりダメって引っ込めるなら今しかないぞ!?
「……」
目だけを動かして誰かが『ドッキリ成功!』の看板を持ってないかを探るが、誰も持ってないように見える。
心の中で溜息を吐く。
「…………はい」
諦め半分に呆れ半分。観念するってこんな気持ちなのか……
あ〜あやっちまったなぁとか思いながらも、最後の最後までドッキリである可能性を捨てずにおずおずと受け取る。
結局差し出された指輪が引っ込められることはなく、ゆっくり手を伸ばしても触れてしまった。
すると周りから拍手とか聞こえてきた。
口笛、指笛、シャッター音、どれもが冷やかしと揶揄いにしか聞こえなくてイラっとする。
あ〜あ、勿体ねぇなぁオイ。初めてのケッコン(仮)の相手がこんなのじゃあダメだろ。もっとさぁ、金剛さんを筆頭に相応しい人は居るでしょうよ。
「ありがとう」
何が「ありがとう」だオイ。
いや待て、第三者から見た時の提督と俺の様子ってまるでプロポーズそのものじゃね?
え、めっちゃ恥ずかしいんだが?
照れてるんじゃなくて羞恥で。提督がケッコン指輪を出したときからポカンと半開きになっていた口が呼吸を忘れていることに気が付いた。
「……」
これは過剰に意識し過ぎちゃってるってことでオーケー? 頭真っ白でまともに働かないんだけど……取り敢えずお礼は言っておいた方が良い感じ?
「どっ……どういたしまして!」
その一言を叩きつけるように残して逃げるように列に戻る。
「おめでとう」
「思い出させないで!」
列に戻ると陽炎が声を掛けて来た。
だけど今は務めて冷静になろうとしてるところで余裕が無いの!
くっ……殺せぇ! 一思いに殺れぇっ!
……これは一週間くらい時間を空けて向き合う方が良いかもしれない。
こんな夢であって欲しいような最後で出向の全日程が終わった。
提督は1年弱の間に相当拗らせたようです。
Q.主人公チョロない?
A.墜ちてないのでセーフ。
でも告白でフリーズして頷いちゃう辺り絶対チョロい。
提督のペースに流され続けた結果がコレだよ!
次から幕間です。季節のイベントがわんさかあるぞぉ……