遅くなりました……
全部面白い小説を見つけちゃった先々週の自分が悪い。
でも反省はしません。
「「「いってらっしゃ~い!」」」
そう見送りされたのは夏真っ盛り。
他の鎮守府の倍以上にもなる2週間という長期休暇、しかもその間に大湊から離れても大丈夫なように各鎮守府からだいたい20人、合計で80くらいの艦娘がやってくるという手厚いサービスまで付いている。
だから、今回の夏季休暇、慰労でのバカンスの間は大湊のことを気にしなくても良いらしい。
しかも資材関係のアレコレは既に準備が済んでいるから全く気にしなくて良い上に、これから俺たちが向かう場所では一般観光客の立ち入り制限までしてくれるらしい。
俺たち大湊のメンバーだけで楽しんでくれと言う大本営の粋な心遣いを感じる。
まさに至れり尽くせりだ。
しかし、こんな美味い話が転がり込んでくる筈もなく……
「まぁ、知ってたよ?」
手元の1枚の紙に目を通して呟く。
全員に渡されたその紙は、高まっていた大湊のムードをどん底に突き落とすには充分だった。
まぁ、こんな書き方されたら如何にも「何かあるよ」って言ってるようなモンだからなぁ……どんなに察しの悪い人でも「万が一に備えろってことじゃないよね」って澱んだ目をして苦笑いをしていた。
しかもなんだよ、一連の
そんな騙し討ちのような休暇(爆笑)に於ける皆の希望はそもそも深海棲艦が殆ど居ない場合だ。そうなったら素直に休めるってことになるから。
去年の夏、温泉旅館に向かったときの倍以上の人数が相応の数のバスに揺られていく。
車内のムードは例の紙のせいでかなり悪い。やたらと涼しく感じるのは間違いなく冷房の影響だけではないだろう。
嘘みたいだろ? こんな雰囲気だけど一応、長期休暇で皆揃って東南アジアにバカンスしに行くことになってんだぜ?
でも大本営からは正式に任務やれって言われてない。
・留守番は任せろ。資材の面倒も見てやるよ
・人払いはしておく。人が多いと面倒だろう?
・みんな艤装持ってけ。何があるか分からんからな
・妖精さんも連れて行け。まぁ一応ね、一応
・長引きそうなら仕方ない。ゆっくりしてこい
この5つしか言われてない。つまりガチで遊ぼうと思ったら一応普通に遊べる辺り意地が悪いと思う。
いくらなんでもあんまりじゃねぇかな……こんな書き方するくらいなら最初から作戦やれって言われた方がモチベーション的によっぽど良いんですけど。
しかも休暇の中に捩じ込んでくるのがムードの低下に拍車を掛けてる。休みとは、慰労とは一体……ウゴゴゴゴ
「2週間以内で終わらせたらあとは遊び放題にゃしぃ!」
睦月が妹たちに向かって発破をかけていた。袖をパタパタしながら必死に盛り上げようとするのは流石ムードメーカーである卯月の姉だけはある。
そしてそれを聞いた睦月型と他の人も「それもそうだな」みたいな感じで多少の熱気を取り戻した。
睦月の言ってることは間違ってないけど、深海棲艦が居なかったりしたらそもそもこんな作戦は実行されないんだよね……きっと事前に偵察か何かをしてあるんだろう。
まぁ、陰鬱な雰囲気でずっと過ごすよりは万倍マシなんだけど。
そう言えば海外に行くのにパスポートとかは?
ふと、そう思った。
アメリカに向かうときはコンテナ船の護衛で海路、しかし今回は普通に飛行機だ。
艤装なんてものを空港に持ち込んだ暁には色々とヤバいのでは? 金属探知機なんて反応しまくって壊れちまうだろ。
しかし実際はどうだ?
提督が事前にアレコレ手続きをしていたらしい。
だから艦娘一向は金属探知もパスポートも全部スルーだと言う。しかも一機の飛行機を貸し切り。こんな出鱈目なことがあるのか……
待ち時間に簡単に空路を調べると最短距離を進まない謎のルートを通ることに気がついた。
どうやら今回に限らず、この世界の飛行機はあまり海の上を飛びたがらないらしい。
まさか高度1万メートルよりも上に艦載機が飛んでるとは思えないけど、高角砲とかで撃ち落とされる可能性を考えると妥当なのかもしれない。
最近の飛行機は凄いなぁ……古い飛行機にも乗ったことは無いけど。椅子に色々と詰め込みすぎでしょ。つい夢中になってテトリスで遊んでしまった。
そして気がついたら飛行機は着陸、そこから乗り換えて現地に到着した。
なんかあっという間だったなぁ……あっさりしすぎてて実感無いんだけど。
そう思いながらゾロゾロと空港から出る。う〜ん、嗅ぎ慣れた磯の香り。場所が違うだけでやることはいつもと同じだからイマイチ盛り上がらない。
「Kalian siapa? Dari mana kamu berasal ? 」
うん?
第一村人、もとい現地人の言葉に提督含めてほぼ全員が困惑していた。
英語はヌルっと頭に入って来たけどこれ何語だ? インドネシア語? そもそもそんな言葉は存在するのか?
アメリカ語なら俺が分かるし、イギリス語なら金剛さんが、ロシア語なら研修に行った響が、ドイツ語なら伊8とか神鷹さんとかが分かるんだろうけど……これはちょっとカバーしきれないでしょ。
と思っていた瞬間が俺にもありました。
隼鷹さんと飛鷹さんが一言二言その人と言葉を交わしたら、あっさりと引き下がっていった。
「佐藤元帥から話は聞いてたけど、まさか本当に分かるのか」
「いやぁ~、昔取った杵柄ってヤツ?」
「本当は欧州の方がメインなんだけど……あって困るものではないし」
そう答えた二人もなんか訳アリな一生を送ってそうだな。
「ありがとう、助かったよ」
「また絡まれても面倒だからよ~さっさと海行こうぜ!」
「その前に荷物を置きにホテルでしょ」
実は語学に明るい飛鷹さんと隼鷹さんに道案内されてかなり大きなホテルに到着した。海にかなり近い如何にも観光客をターゲットにしてますって感じのホテルだ。
しかし駐車場らしい駐車場に車が無い。まさかここも貸し切り? 大本営はどれだけの影響力を持っていると言うんだ……
広いフロントで飛鷹型2人の話が終わるのを待つ。
飛鷹さんは受付で話をしていて、紙に色々と記入していた。
隼鷹さんは話の途中で額に手を当てて難しい顔をした。
「提督、ホテルの各種サービスを纏めました。確認してね」
「ありがとう」
そう言って飛鷹さんは、恐らく現地の言葉を翻訳したものを提督に渡していた。
飛鷹さんのこのデキる感じ、良いね~。
「~~~? あ~、マジか~」
「どうかしましたか?」
「いや……ここに日本酒は置いてないんだとよ」
「そうですか」
どうでもいい事だった。もう少し飛鷹さんを見習ってよ。
「ちょっと冷たくない!? あたしらにとっちゃ死活問題なんだよ~」
そう言いながら肩を組んできた。
凄い距離が近い。お酒の臭いはしないけど雰囲気的に酔ってるように見えるからこっちが恥ずかしいわ!
「っつーのは冗談で、深海棲艦の目撃情報が最近増えてるんだと」
ボソッと聞こえた言葉に頭がスゥーっと冷えていく。
なるほどなるほど、穏やかじゃないね。
「Oh……でもそれって提督に言った方が良いんじゃないですか? ちょっと近いですよ!」
「寂しいこと言うなよぉ、どーせ海に着いたら一通り哨戒とかはするだろうからね。 初日くらいはパーッとしたいじゃん!」
「じゃあ最後は二人で良いよね?」
突然現れた飛鷹さんに鍵を渡された。
「「はい?」」
「部屋割りだよ? 肩まで組んで仲良さそうだったからさ、隼鷹とスチュワート、その鍵の番号で相部屋ね」
スチュワートはしっかりしてるし、これで羽を伸ばせるわね~と何処か上機嫌に飛鷹さんが去っていき、呆然とした俺と隼鷹さんが残された。
他の人達から突き刺さる視線が痛い。いきなり肩組むのは常識としてどうなんだって? よく分からないなぁ……隼鷹さんがルールだ。
「「……」」」
「お酌しましょうか?」
「お~、頼むよ~」
まぁ、言うほど俺はしっかりしてないんだけど。
艤装はバラバラにして荷物に混ぜてます。
だから頭数以上にスペースを取る。
部屋割りは前もってみんなで決めていた模様。
その時完全に酔ってた隼鷹とボッチの主人公は当然……
・隼鷹
飲兵衛その1
アルコールがガッツリ入ってても何故か強い人。
大雑把に見えるがその実、艦載機の運用はかなり緻密。
実は多言語使いだったりする。
能ある鷹は―――