私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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147話です。

久しぶりに深海棲艦の香りがする……


束の間

「なぁ、お金貸して……なんでも無いわ」

 

 部屋で隼鷹さんと時間を潰していたら、巻物の整理をしていた隼鷹さんに話しかけられた。

 「いや、でもなぁ……流石にヤベーか?」みたいに百面相をしている。

 

 でも何でもないって言ってるんだよなぁ……言葉に出てる時点で何でも無い訳ないじゃん。

 何か言いかけて途中で止めるとか1番気になるやつ。

 

流石に人の金で飲む酒は……でもなぁ……

 

「何でもないんですか? 吐いたらスッキリしますよ?」

 

「まだ飲んでねーよ」

 

 茶化したらデコピンされた。

 なんでも、現地のお酒がべらぼうに高かったらしく、多少の換金ではあっという間に素間貧になってしまうらしい。

 

「偶には素面でゆっくりしろってことじゃないですか?」

 

「バッキャロー! お酒を無くしたらあたしどーやって生きてけってんだよ〜」

 

「別に死にはしませんって」

 

「肝臓なんて虐めてナンボだろ~?」

 

「お身体に障りますよ」

 

「かぁーっ! 真面目ちゃんだねぇ」

 

 ノーアルコール、ノーライフ! と騒ぐ隼鷹さんは想像以上だった。

 嘘みたいだろ? 素面なんだぜ、コレ。

 

 そもそも俺だってお酒は飲めるんだけどね……普通に飲んだこともあるし。でも流石に毎日のように瓶を空にする人とは比べないで欲しい。

 程々が一番よ。

 

『皆さん聞いてください、川内さんが深海棲艦を多数発見しました』

 

 コンビニで買ったスナックとコーラを隼鷹さんに分けていた頃、大淀さんから通信が入って来た。

 内容は穏やかじゃない。

 けど、緊張とかいう雰囲気になれない。

 

「はぁ……」

 

「そーかそーか、頑張ってきな!」

 

「まったく川内さんときたら」

 

 溜息を禁じ得ない。

 らしいと言えばらしいんだけど……観光よりも、休暇よりも夜戦かよ。

 どうせ夜戦に行くならいつもみたいに大騒ぎしながら行って欲しい。窓開けてたのに何も聞こえなかったんだけど?

 

 品性を疑われる? 近所迷惑? どうせ日本語通じないから「ヤセンヤセン!」って鳴き声の野生動物と勘違いしてくれるでしょ。

 

 深海棲艦見つけるのは別にどうだって良いんだよ。むしろ見つけてくれるなら万々歳だ。でも多数発見って絶対に面倒じゃん。

 どうせ好きでやってるなら全部処理してくれよ。自分の趣味の後始末にみんなを巻き込まないで欲しい。

 だってもう外真っ暗じゃん? となると駆逐艦の出番になるじゃん? 俺も行かなくちゃいけないんだろうなぁ……

 

 

 

 突然だが、俺の中での駆逐艦の扱いは鉄砲玉、あるいは先鋒といったところだ。

 明石さんは「修理が大型艦の皆さんに比べて簡単」って言ってるし、戦艦や空母と比べるとコストだって安上がりだろう。

 だから他の艦種より雑に運用出来る感じがある。悪く言うなら使い潰してオッケーな艦種。

 まぁ実際に提督から「使い潰すよ」なんて伝えられたら無言で中指立てるくらいはするかもしれないけど。

 

 そんな感じで割と雑に運用できる駆逐艦……軽巡洋艦もだけど。

 でもちょっと安売りし過ぎじゃないかね?

 

 見た目小中学生とかの子供も居るのにさぁ……夜まで仕事ってどういうことだよ。戦艦の方が規則正しい生活を送ってるのはなんか納得いかないんだけど。

 まぁ艦種的に仕方ないにしても、間違いなく仕事を増やしてくる人には白い視線を向けざるを得ない。

 

 俺以外のほぼ全員からも、思い思いに休んでいたところに水を差されて不機嫌そうな視線が正座させられている6人に突き刺さる。

 

「何か弁明はありますか? 川内姉さん?」

 

無いっ! 私たちはしっかり夜戦してきたよ!」

 

「…………」

 

「……数が予想以上に多くてね、ちょっと皆に力を貸して欲しいな~なんて……」

 

「また海に出るんですか? お気をつけて」

 

「薄情者!」

 

 川内さんが喚いている。

 薄情者って言ったってなぁ……艦娘程確実じゃ無いにしろ簡単な監視くらいは設備さえ整ってたら出来るんだし、そもそも観光地として売り出せるくらいにはそれが整ってるってこと。

 だからせめて初日くらいは全員でのんびりしても良かったと思うんだけどなぁ。

 

「それで、川内姉さんが力を貸してほしいと言う程に数が多かったんですか?」

 

「そりゃあもう、数が多いのなんの!」

 

「遅れて済まない。神通? 流石に正座は「何か問題ですか?」……」

 

 ホテルの従業員が「Oh...ハラキーリ」とか言ってたけど気にしないでおこう。

 ヤクザめいた儀式じゃないから問題ないのだ。

 

「続けようか」

 

 そう言った提督は夜戦に参加した川内さんと朝潮と荒潮、時雨と夕立と萩風にいくつかの質問をした。

 

 

 そして問答が終わり、暫くうんうん考えた後に口を開いた。

 

「う~ん……集積地棲姫かな」

 

 そんなヤツが居るのか。少なくとも俺は相手にしたこと無いからどんな奴かよく分からない。

 

 周りも知ってる人居る? って反応だから少なくとも駆逐艦と軽巡は知らない感じなんだろう。つまり未知の相手になる訳だ。

 

 提督の問答で出て来た情報から想像すると蜂の巣って感じなのかな?

 少数の駆逐級を殲滅したら何処からともなく大量の深海棲艦が現れたんだとか。おっかねぇ……

 

 でも何で提督は知ってるんだろうね?

 

「深海棲艦にとっての補給地点、仮拠点といった具合のあんまり放置したくはない相手だね。幸い本体の機動力は殆ど無いと聞いているし、今晩は様子見して明日の日中に叩いてしまおう。他の提督達にも話を聞いて、作戦を立てておくよ」

 

 成る程ね。大本営で習ったのか。

 

 それにしても、深海棲艦側の資材置き場ねぇ……早急に潰した方が良くない? 兵糧攻めは基本。歴史もそう物語ってるんだし。

 

「他の皆さんにも連絡してきますね」

 

 大淀さんがグループから抜けていった。お疲れ様です、とだけ声を掛けておいた。

 

「でも夜のうちに行動を起こすかもしれないじゃん? だったら私たちの出番だよね!」

 

「「「……」」」

 

 川内さん全然懲りてねぇ。神通さんの超怖い笑顔を向けられても尚夜戦って言い続けられるのは流石としか言えないけど、方向がちょっと変だから全く尊敬出来ない。

 

姉さん?

 

うぐっ……提督、神通に何とか言ってよ~」

 

「じゃあ、川内を旗艦にした監視任務を与える。敵を刺激しないようにこちらからの不要な攻撃はしないこと。あとは探照灯の仕様も禁止。これで良いかな?」

 

「……分かりました。でも、あまり川内姉さんを甘やかさないでくださいね?」

 

 

 

 

 

 翌朝、ホテルで朝食を摂っている時に大淀さんから聞いた話だと、川内さんたちが一晩中監視した限りでは特に大きな動きは無かったらしい。

 

 明るくなったことで、いつものように空母の皆さんが艦載機を飛ばして哨戒を始めると、川内さんたちのお仕事は終わり……なのだが、なんとその時に深海棲艦の群れに大量の魚雷をプレゼントしてきたんだとか。

 堂々と提督の言いつけを破ったのか! と思うと困惑を通り越して笑えてくる。

 

 でも先制攻撃としては何も間違ってないんだよね……。

 撤収する川内さんたちと入れ替わるように海に出た人達と、まんまと先制攻撃を喰らった深海棲艦には堪らない置き土産だろう。フリーダム過ぎるわ。

 

提督! 空母棲鬼を見つけたよ!

 

 食堂に入って来たのは蒼龍さん。内容がこれまた面倒な内容だった。

 空母棲鬼を見つけたってマジ?

 

「しかも集積地棲姫が居ると思われる場所とは方角が違う、と」

 

「分断ですか……」

 

 当然と言えば当然なんだけど、提督は海には出れない。

 武蔵さんとかにお姫様だっこされるなら大丈夫だろうけど現実的じゃない。

 

 そうなると当然提督はここに残らなくちゃならない。

 他にも間宮さん、伊良湖さん、明石さんと夕張さんもかな? あとは普段工廠で働いてる妖精さんもか。その護衛に何人かは残らなくちゃならない。

 

 するとそうだろう?

 

 ある程度は予備戦力としてここで待機になるにしても、集積地棲姫と空母棲鬼の撃破にそれぞれ人数を割かなきゃいけない。

 

 対面の大淀さんと一緒に溜息を吐く。

 初日からこの調子では……果たして平穏な休暇は得られるんだろうか……

 

 

 

 だが悪いニュースは立て続けに来るものだ。

 

 

 

「提督、見たことない潜水艦見つけたよ。どうする?」

 

 伊47(ヨナ)が提督に話しかけて。

 

戦艦棲姫が出たぞーっ!

 

 蒼龍さんのお知らせで俄かにざわつくレストランエリアに大声を上げて谷風が突っ込んできた。

 

謎の潜水艦に戦艦棲姫……フヘッ、フヘヘ」

 

 もうどうにでもな~れ!

 




ダメコン(ダメージコンテスト)? なんだァ……それはァ……

大事な資材を艦娘の魔の手から護る為!
今こそ立ち上がれ、駆逐イ級!
頑張れ駆逐イ級! 負けるな駆逐イ級!
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