イ級が出てこない……
おかしいな、戦闘させるつもりだったのに……
「はぁ……」
もう溜息しか出てこない。
どうして朝一で哨戒に出た人たちが
しかも駆逐級の単艦! みたいな『取り敢えず艦隊を編成すれば良いでしょ』程度の意識の低さでも十分に勝ちの目があるような小規模なものじゃなくて、そんな相手を束ねて率いるような鬼級や姫級を、しかもそれぞれ方向が微妙に違う場所で見つけてくるのか。
「 面倒くさ~…… やってらんないでスよ~」
「どーかしたん?」
部屋に戻ってベッドに倒れこむ。
そのまま、朝食の席に着いてなかった隼鷹さんに事情を説明した。
夜戦で川内さんたちの見つけた集積地棲姫が居ると推定されるエリア、空母棲鬼、謎の潜水艦、戦艦棲姫の発見地点。
不思議なことにこれらの点は俺たちが居るホテルを中心にほぼ等距離にある。
完全に包囲網を布かれてるとしか思えない。誰かが深海棲艦に繋がってるって言われてもすんなり信じられるレベルで綺麗に囲まれちゃってる。もしこれが只の偶然だとしたら俺たちは相当運が悪いと思う。
まぁ敵性の深海棲艦に繋がってる人は居ないけどね。みんな善良だし。
だからこれは偶然、とんでもない
「休日労働反対! ビバ長期休暇!」
「休日労働はんたーい! びば長期休暇! アッハハ!」
だからこう言っちゃうのも仕方ない。
ゆっくり休みたかったのに……クソ深海棲艦め。
建前上はとは言え、一応バカンス中だから邪魔しないで貰いたかった。
「まぁ、提督は『
自分で言っておきながら楽観視にも程があるとは思うけど、大湊警備府が立ち上がってからそう思わせるだけのことを提督はやってきたと思う。
確かに提督は弱気な発言が目立つし、戦う上で
そんな提督の積み上げて来た1年間。
たかが1年、されど1年。
人の認識なんて1年もあれば多少なりとも書き換わるもので。
『提督の指示に従っていれば作戦は成功する』
大多数の人に無意識下でそう思わせることが出来れば、それはもう提督は指揮官として一人前だという証拠では無いだろうか。
かく言う俺ですら『何とかなる』って感じちゃってるあたり、大分毒されてるなぁなんて思ってつい苦笑いをしてしまう。
「信頼が厚いねぇ~……もしかして惚気かい?」
「違いますって」
隼鷹さんの言葉にムッとしてベッドから起き上がる。
どうしてこう、もう3ヶ月以上経つのに未だに俺と提督の関係を掘り返してくる人が居るのか……。
「ほら、そんなことよりも隼鷹さんだって多分出撃するんですから朝食でも摂った方が良いですよ。ほら行った行った」
「え~? 食べさせてくれないの? 「あーん♡」って」
「飛鷹さんだってそんな事しないでしょう!」
隼鷹さんを部屋から叩きだした。
「さて、何を
他の人達は艤装以外の荷物が多かったけど俺は逆。取捨選択が出来る程度に沢山の艤装が目の前に並んでいる。出発前の俺はまるでこうなることを予測していたかのようだ。
まぁ、色々とメタ読みすれば何かあるかも、強敵が居るかもって思ってもおかしくは無かったんだけど、まさか姫級や鬼級がポンポン出てくるとは思わないじゃん?
つまり強敵との戦いは避けられないということで、俺が持ってる中で群を抜いて優秀な艤装である533mm五連装魚雷とSGレーダーをチョイス。
「やっぱりこれは外せないよね」
この2つの汎用性が高すぎる。
そのせいで、俺の専用装備である筈の盾と投擲物の出番が無くなってしまっている。せっかく佐世保の明石さんと妖精さんに作って貰ったのにも関わらずだ。
「でも、作って貰った以上は使うのが礼儀か……やっぱり砲は要らないんだなぁ」
他の人に聞かれたら怒られそうだけど、駆逐艦は母数が大きいから変わり種の1人や2人は居ても良いと思うんだ。
例えば……
・何故か
・どういう訳かバルジを積みまくった
・過剰気味な程の食糧と
・他の装備を犠牲に46㎝の砲を搭載した
・攻撃力を犠牲に
なんだこのイロモノたち!?
そう考えると砲戦火力を犠牲に手札が多いだけの俺ってマシな方では?
「うん、盾の装備は何らおかしい事じゃないね」
普通の駆逐艦は盾なんて使わないけどな! 俺だって最近は全然使ってないこともあって、俺が盾を持ってることすら知らないような人まで居るんじゃないかって思えるくらいだ。
でも比較対象が色々とぶっ飛び過ぎてるのもあるから、大湊が立ち上がった頃に比べたら盾を持って出撃し易いと言ったらそうなんだろう。
若干悩みながらも盾と投擲物をチョイス。
腰の艤装には高角砲が標準装備で……ちょっと重たいかな? ちゃんと動けるか不安だ。
でも、
そんな訳で砲戦に期待できない俺が配備されたのは未知の潜水艦の対応を目標とする艦隊。
他のメンバーは大鷹さん、北上さん、風雲、沖波、岸波だ。提督の潜水艦を決して逃がさないと言う強い意思を感じる。
俺の役割は大鷹さんの護衛だけど……これまたイロモノ枠の潜水艦絶対沈めるウーマンである沖波が居るから護衛するまでも無いかもしれない。
だって見ろよ、沖波だって砲を持ってないんだ。その代わりに葡萄でもくっつけてんのかってくらい大量の爆雷持って来てる。潜水艦に何の恨みがあるってんだ。
ただし未知の敵と言うこともあって、こんなバランスの悪い上にたった6人での攻略にはならない。
相手に戦艦とか万が一水上型の姫級とかが居た時に備えて、後方には真っ当な編成がされてある艦隊が居る。これで撤退も視野に入れられるから気兼ねなく撃ち合いができる。
因みに戦艦と空母の多くは戦艦棲姫とか空母棲鬼の撃破に向かっている。
俺もそっちの方に向かいたかったんだけど……潜水艦にトラウマ持ってる人が結構多くて、人気が無かったこっちに移された。
それと集積地棲姫だけど、提督が持ってきた情報からすると飛行場姫みたいに対地兵器の効果が抜群なんだとか。
そしてその情報を聞いた途端に文月が大喜びで志願してたのが印象的だったとだけ言っておこう。多分集積地棲姫に明日は来ない。
まぁ他の艦隊は気にしても意味無いし、俺たちのところに集中しようか。相手を見ながら高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応していくしかないだろう。
「と、待って! みんな避けて!」
「「「え?」」」
突然風雲の声が聞こえたと思ったら横に引っ張られた。
急展開!? 何が何だか分からない。
「大丈夫ですか?」
「岸波? ……ありがとうございます」
横を見ると大鷹さんと北上さんも突き飛ばされてたり引っ張られている。俺と同じようにポカンとしている。
「まさか敵の攻撃ですか?」
頷く岸波。
……マジで? 予想されてた場所より随分近い場所なんだけど。
そう思ったのも束の間、前方の海面から深海棲艦フェイスの子供たちがワラワラと浮かび上がって来た。
「ん~……ちょっと多くない? 後ろの人達にも援護してもらおうよ」
「同感ですねぇ」
北上さんの言う通り、ちょっと数が多すぎるように思う。面倒なんてものじゃない。
そしてその黒い頭の中に一つだけ、真っ白なヤツが居る。
どう考えてもアレがボスですって言わんばかりだ。
ちょっと目を凝らすと全体像がよく見える。
やだ、カワイイ……あんな子に攻撃なんて……しなくちゃいけないんだよなぁ……。
悲しいけど、これ戦争なのよね。子供だろうと戦場に敵として立ったらぶっ飛ばすだけだから。
『通してよ……魚雷、いっぱいあるからさぁ!』
『『『 キャハハハハ! 』』』
『『『 ウエェーーイ! 』』』
そんな声が聞こえたと思ったら、周りの子供たちが手に持った魚雷を天に掲げて「沢山あるぞ」とアピールしてきた。どうやらやるつもりらしい。
「皆さん、攻撃準備をお願いします」
大鷹さんの一言で全員が攻撃準備に入る。俺も遅れないように構える。魚雷発射準備ヨシ!
すると、白いヤツは水中に消え、黒い子供たちが一斉にこっちに群がって来た!
「まずは後方の艦隊の到着まで持ち堪えて、数の利を多少とは言え打ち消すのを優先しましょう」
「「「了解!」」」
みんな大嫌いPT小鬼群
・文月
大湊のイロモノその①
原因は不明だが、何故か戦車に魅せられた人。
上陸用舟艇、特型内火艇を召喚する。
陸上型深海棲艦を挽肉に、その根城を更地にしていく。
集積地棲姫の明日はどっちだ!?