シナリオはほとんど進みません。
「ごほんっ! ……初めまして、私は工作艦の明石です。よろしくお願いしますね。それで、貴女の名前は何ですか?」
「初めまして、私はスチュワート……です。夕張さん、明石さん、助けてくださりありがとうございました」
とりあえずお礼を述べる。少しでも柔らかい雰囲気になればいいんだけど……
「修理するのは当然ですよ。私たちの仕事ですから! ……それで? 体の方に問題は無いですか!? とりあえず立ち上がって確認してみてください!」
「艤装は完全には直せなかったけどどうする? 折角だから何か好きな物でも積んでみたりする!? 今なら――」
勢いが強い! 質問とかは一人一つまでって小学生でも知ってるんだぞうわ一体何をする……ウボァーーッ!
「もうダメ……殺して……殺して……」
俺はベッドに体育座りをして膝に顔を埋めて嘆いていた。女の子みてぇな事してんじゃねぇよ気持ち悪いって? あんなことされたら羞恥のあまり女々しくなるわ!
圧の強い2人の勢いに押されてワタワタしている間に明石に手を取られ立ち上がらせられ、病衣を外されて触診された。驚きのあまりフリーズし、戸惑い、止めようとしたら既に終わっていたようで服を元に戻されてご覧の有り様である。
怪我と服装が元に戻っても心に傷が出来ちゃあ世話ねぇよなぁ……
今の体の裸を初めて見た俺は酷く混乱していた。何? 女同士だからってこんなに脱がせることに抵抗無いの? それとも明石がレズだったりするのか? もしそうなら警戒しておこう。
脱がせられるのは好きじゃない。露出癖なんてないしそもそも精神は男だ。女の体だからってホイホイ脱ぐのは完全に変態だろう。そもそも
「ご、ごめんなさい。貴女の体が気になってつい……」
……これってかなりの問題発言では? 自分は触り魔ですって言ってるようなものじゃない? こんなのが医務室に居たらおちおち怪我もしてられない。
「こらっ! 何やってんのよバカ……。ごめんなさい、許してくれない? スチュワートちゃん……言いにくいわね……スーちゃんの容態が気になってたのは私もだから」
「スーちゃん!?」
「うん。ダメ? まぁ、
「ダメ、じゃないです……けど。」
かなり気軽に、シンプルな渾名を付けられて困惑してる。渾名が付くまで早すぎないか? もうちょっとこう、お友達とかの段階って無いの? いや、邪険に扱われたいって訳じゃ無いから嬉しいだけど……えぇ?
「えつと…ありがとうございます夕ば「それでスーちゃんの艤装はどうするの!? もう妖精さんも直せないくらいボロボロだったんだけど……」」
感動が台無しだよ! 確かに艤装は大事だけどさ…
「えっ。……まぁそうでしょうね。艤装って作り直せるんですか?」
「もっちろん! 私と明石に任せて! ……それでだけど、この際だから私が考えた新兵装、搭載してみない?」
あっ……
でも新兵装と聞いて食いつかねば漢が廃る……今は艦娘だけど。それでも
保留にしてもらう旨を伝えると非常に喜ばれた。怪しげな笑い方をしている夕張を見ている俺に明石がそっと耳打ちしてきた。いつの間に横に……ビクッとしてしまう。今ので寿命が半年は縮んだ間違いない。
「夕張は、今までいろんな子に似たような提案をしてたんですけどほぼ全員から素気無く断られてまして。貴女が前向きに考えてくれたから喜んでるんです。……何されるかは分からないけど、きっと大丈夫ですよ!」
一気に不安になってきた。提督さんの様子から二人とも普段はまともなんだろうと分かるが、これはちょっと……。二人の言うことを素直にハイハイ聞いていたら
なんて考えていたら腹の虫が盛大に暴れ始めて俺たち三人の動きを止めた。めっちゃ恥ずかしい。……クッ、殺せ!
二人に引き連れられて食堂へ行く。
と言うのも、2人の勢いが強いこともあるけど、俺の足が役立たずになってるからだ。筋肉痛を酷くしたような感じでかなり歩きづらい。包帯でグルグル撒きにされてるのもあるのかもしれないけど。
時間は午後四時くらいだからだろうか、人は居らず広い空間はガランとしていた。良い匂いはするものの電気は点いておらず、どこかアンバランスな雰囲気を醸し出していた。
「すいませーん! 間宮さーん!」
夕張が声を張り上げる。すると奥の方、恐らく厨房があるところから女性が出てきた。彼女が間宮さんだろう。
「はーい! ってあら? 彼女起きたの?」
良かったわね。なんて言ってくる間宮さんに挨拶をする。明石が言うには俺が昏睡しているときの飯も間宮さんが作ってくれたそうで、つまり大恩人ということになる。頭が上がらない。
「初めまして、給糧艦間宮です。夜中以外は食堂に居るからお腹が空いたらいつでも来てください」
間宮さんがそう言うと夕張が「スーちゃんは何食べますか? 間宮さんの料理はとっても美味しいですよ~」なんて言ってくる。
そんな俺の目の前には日本語で書かれたお品書きがある。……感動だ。腹一杯、ちゃんとしたものが食べられるなんて。
「私は蕎麦! よろしく間宮さん!」
「カレー、は無さそうですし……悩みますねぇ」
夕張は即決、明石は何を食べようか悩んでいるようだった。その反応でどれも本当に美味しいということが分かる。
「うどんを……うどんをお願いします……」
感動のあまり涙声が出た。
少し待ったら出てきたうどんはかなり美味しそうで、実際に美味しかった。空腹は最高のスパイスなんて言うけど、そんなものが無くても美味しいだろう。
うどんを大切そうに食べる俺を見て間宮さんもニコニコしていたと後で知った。
工廠、医務室にて俺は夕張から詰め寄られていた。
「それで、本当にスーちゃんは今までの艤装と似たような艤装を使うってことで良いの? ドリルは? トマホークミサイルは?」
「そこまでは……」
夕張は一体何を言っているんだろう。ドリルは重りか飾り以外の何者でもないだろ。しかもトマホークミサイルって……え? なんで実物っぽいのがあるの? 本物よりは小さいだろうけどまだデカいし、あんなのどうやって撃つんだよ。持ってくだけで精一杯だろ。
「夕張は試験的に建造された所謂先駆者ってヤツで、間違っても色んな武器武装を実験していたんじゃない!」
というのは前世の友達の言であるが、目の前の彼女はどう見てもマッドサイエンティストである。これじゃあどっちが本当なのか分からないな。
まぁ、自壊しながらオーバーブーストする
それと、トマホークミサイルが作れるなら以前例の妖精さんに言ったような物も作れるかもしれない。
「えっと、いくつかリクエストさせて貰えるなら腰に着ける艤装と魚雷だけで、手に持つ砲は軽いやつが良いです。あと……盾を貰えないですか?出来れば片手で扱えるデカいヤツが良いですね」
「へっ、盾?」
「なんでそんなをモノを……」
う~ん、何故と来たか……漢のロマンなんて言っても「はぁ?」ってなるのは目に見えているし納得され……るかもしれない。この2人には通用しそうな気がする。
適当な理由でもでっち上げておくか。考えるの面倒臭くなってきたし。唸れ俺のアドリブ力ゥ!
「え~っと……ほら! 駆逐艦の主な兵装って魚雷だと思うんですよ!」
「う〜ん、まぁ間違っては無いわね……でも、砲も大事でしょ? 一部の駆逐艦娘は低い攻撃力を補おうと必死なのよ?」
「私もそう思います。だけど、盾を持って防御力を上げて継戦能力を上げることで結果的にプラスになるんじゃないかなぁって思いまして。それに、剣とか持ってる艦娘も居るそうですし」
おっコレ結構良い感じの理由なんじゃない? 反応はどうだ?
「へ~面白いじゃない。研究価値あるよそれ!」
釣れた釣れた。さっすが夕張さん! 話が分かる。
「ありがとうございます。他にもやりたいことがあるので妖精さんを何人か借りて良いですか?」
「へー……他にも何かするつもりなんだ……だったら私にも一枚噛ませてよ!」
何かするつもりじゃないとそんなことは言わないと思うんだよ。あと、一枚どころか希望だけ出したらあとは全部投げるから十枚だろうが百枚だろうが噛ませてあげよう。イヤという程に。
「ちょっと! 修理するのは私もなんだから一人だけ除け者にしないでよ!」
明石も食いついてきた。正体表したね。
『艦これ』の二次創作で大体なんでも作ってる技術者二人を味方に付けたんじゃないか? と思うと自分のやりたいことが出来るような気がして、自然と口元が緩んでいった。
スチュワートは英語ではStewart
愛称や略称はスチューやステューなどですが、ここ日本だしスーでも良いよね……
工廠の変人コンビはどうやらこの二次創作でも変わらないそうです。
明石 → ノーマル(本当に普通)
夕張 → ノーマル(艤装が絡まなければ)