私の名前は「      」   作:捻くれ餅

151 / 180
150話です。

毎度毎度遅くなって申し訳ない…



方向音痴

 

「スチュワートさんがこんなにボロボロになるとは珍しい。一枚よろしいですか?」

 

「はっ倒しますよ」

 

 とは言ったものの今は作戦中だからそんなことは出来ないし……しかし良いように撮られるのかと言われたらそんなことは無いんだよ。

 カメラを構えてきた青葉さんとの間に北上さんを挟んで写真を撮られるのをガードする。どうだ! 北上さんを無断撮影したと知った大井さんが怖くて撮れないだろう。

 

「ちょっと邪魔しないでくれるかな〜」

 

『遊ぶために支援艦隊(こっち)に来たなら前線に帰りなさいよ』

 

 おぅ……伊168が手厳しい。

 でも違うぞ。これは人が中大破してるってのに写真に収めようとするデリカシーの無い青葉さんが悪いんだからな。

 

 

 

 俺と天龍さんが、北上さんと大井さんが交代して今は支援艦隊に居る。

 天龍さんなら大鷹さんの護衛も完璧にこなしてくれるだろう……クソ餓鬼にイライラして突撃さえしなければ。

 あぁ、そう考えた途端心配になってきたぞ。何か様子見出来る物は無いのか? 有ったわ。

 

「北上さん、ちょっとその双眼鏡貸してくれませんか?」

 

「駄目」

 

 そう答えた北上さんは大井さんから渡されたという双眼鏡を覗き続けている。

 

「いや~、大井っちから『私の勇姿を見てて♡』なんて言われたら断れないっしょ」

 

「そうですか……」

 

 律儀に見続けてる北上さんも北上さんだけど、これは大井さんとの愛の確認作業。だからまだ死にたくない俺は邪魔をしない。

 例え双眼鏡に【ぜかきゆ】って書いてあったような気がしても質問なんてしない。きっと気のせいだ。

 

 まぁ大井さんを見る ≒ 艦隊を見ることであって、クソ餓鬼を見つける役割も担ってるから本当に邪魔はしちゃいけないんだけど。

 そしてクソ餓鬼がまた出現したらまた島風が真っ先に向かってくれるらしい。

 

 なら天龍さんじゃなくて島風と代われば良いのでは? って青葉さんにも言われたけど、島風なら支援艦隊から前線に向かうのにも大して時間もかからないし、そもそもクソ餓鬼を薙ぎ倒しながら大鷹さんの護衛は無理だ。

 

 得意なことやらせたら随一なんだけどなぁ……代わりに普通のことが出来なくなるってそれはそれでどうなの?

 これが俺を含めた大湊のピーキー集団の実態だよ。

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 支援艦隊の最後の1人はアラレちゃん、もとい霰。平均的に平均以上とか言うぱっと見パッとしない成績だけど、どんな運用をしようとも腐らないヤバい子だったりする。大湊(ウチ)の朝潮型の中で多分1番強いんじゃないかな? 目立ってないから気づいてない人多そうだけど。

 

「?」

 

 けど強さと引き換えに声を失ったらしい。何か喋ってよ……寡黙にも程があるぞ。

 活発、明るい人が多い朝潮型の中で一人だけひっそりと、本当にひっそりとしてるから本当に存在感が薄い。別にシンパシーは感じてないけど……ちょっと心配になる。まさか、これが親心?

 

 

 

「……ん」

 

 納得したように頷いてから後方を指さす霰。

 その方向には青い水平線と黒い点。

 

「アレはなんです?」

 

 

 訊ねると砲を構えて交戦姿勢をとる霰。

 成る程、どうやら前線の後方の支援艦隊の更に後方に深海棲艦が現れたらしい。

 このやり取りを見てた青葉さんが通信を入れるような素振りを見せたから、俺のやることは……

 

「北上さん、あのウザいの(クソガキ)は居ますか?」

 

「ん~……居ないね。殆どが駆逐級で、他の艦種がチラホラ見えるくらい」

 

「島風、前線の駆逐艦の誰かと交代です」

 

「おうっ!」

 

 クソ餓鬼キラーの島風を状況に合わせて動かす事だ。

 こっちにクソ餓鬼が居ないならバッチリ活躍出来る前線に動かした方が良いだろう。

 

『潜水艦も確認したわ。足元(水面下)にも気を付けてね!』

 

 伊168(イムヤ)の通信によると潜水艦も居るらしい。

 正直言ってげんなりした。やっとまともに砲撃してくれるのが相手でようやく盾に出番が来たと思ったらコレか。クソ餓鬼による魚雷の飽和攻撃でお腹一杯なんだけど。

 

「北上さん、敵の駆逐艦の射程圏外から叩きますよ」

 

「合点。今度はちゃんと魚雷当たりそうだね~」

 

 北上さん結構怒ってる。やっぱりクソ餓鬼相手に自慢の魚雷が殆ど当たって無かったの気にしてたのかな? 北上さんも重雷装巡洋艦と言うことでそれなりに艤装のチョイス偏ってる節あるからなぁ……つまり俺たちはあのクソ餓鬼に対して相性が悪かった。

 でも今の敵にはちゃんと当たりそうって言ってるから霰とか伊168が撃ち合いを始める頃には敵の数が半分くらいになってそうだな。

 

 じゃあ霰に付いていってサポートしようかな。盾と投擲物のリハビリも兼ねてね。

 

まだ行ける?

 

「!?」

 

 キェェェェェアァァァァァアラレガシャベッタァァァァァァ!!

 まだイケるって何? びっくりして心臓飛び出て逝きそうだよ?

 

「マダイケル」

 

「うん」

 

 言葉が少ないけど、多分『まだ大丈夫なら戦ってもらう』って意味だと思う。そう思いたい……けど、流石に分からねぇよ。

 でも心配してくれるなんて優しい。

 

 

 

「あたしゃ今ちょ~っと虫の居所が悪いのよね」

 

 お、北上さんが双眼鏡を外して青葉さんにパスした。完全に殺る気だ。

 眉を寄せながら不機嫌ですという態度を隠そうともしない北上さんは腕の艤装から、足の艤装から大量の魚雷を発射した。

 なんだよアレ。滅茶苦茶スタイリッシュに魚雷発射するじゃん。ロボットアニメとかのミサイルだろあんなの。

 

「これが北上さんの20射線の酸素魚雷……壮観ですね」

 

 青葉さんの言葉には同感だけど、シャッター切ってるだけで攻撃しないの?

 でもあれか? 北上さんだけでオーバーキルになるかもしれないから様子見でもしてるだけか?

 

「もう一発あるよ~……それっ」

 

「「おお~~」」

 

 北上さんがまさかまさかの2回目の魚雷斉射だ! 青葉さん程興奮しないにしてもここまでされると語彙力が消えるね。何で海の上でSTG(シューティングゲーム)してんのこの人。

 

 見ろ、撃ち込まれた場所に空間出来てら。やっぱりあの密度の魚雷をスルスル避けてたクソ餓鬼はヤバかったんだなぁって思うね。あの乱戦みたいになってた中で味方にも当たらないように北上さんも配慮してたのかもしれない。

 これを後ろから見ることが出来て良かった。これからは北上さんと大井さんが全力で攻撃できるように二人が居た時は前に出ないように気を付けないと……

 

「うわ、何本か潜水艦に当たったかも」

 

『残りの潜水艦を片付けるわ!』

 

「あとはお任せください!」

 

 伊168と青葉さんが残りの深海棲艦相手に攻撃を始めたようで、俺の手元には青葉さんに渡された双眼鏡がある。あ、やっぱりコレ雪風のじゃん……

 どれどれと思いながら覗いてみると普通に双眼鏡だった。良く見える。

  北上さんは敵の駆逐級の中に他の艦種がチラホラ居るって言ってたけど、北上さんと青葉さんの先制攻撃で消し飛んだ先には何が居るのかな~?

 

うげ……

 

「?」

 

 漏れた呟きを霰に聞かれてどうかしたのかと目を向けられる。

 冗談じゃない。あんなの居たら前線に支援に行く余裕なんて無いぞ。北上さんがアレらを見つけてるとは思えない。見つけてたら俺たちに一言二言あっていい筈だからね。

 

「あー……大鷹さん? そっちに支援は無理そうです」

 

『今度は何があったんですか? 例えば姫級が出たとか……』

 

「そのまさかです。こっち(支援艦隊)には誰が向かってますか?」

 

『風雲ちゃんが島風ちゃんと交代しました。そうですか、そちらにも姫級が……こちらもそろそろ接敵しますが、ご武運を』

 

 通信が終わる。

 島風は無事に前線に着いたらしい。あとは風雲が無事にこっちに到着できれば良いんだけど……それまで待つかな?

 

「霰、敵の艦載機に注意してください」

 

「うん」

 

「空母ヲ級と戦艦レ級、駆逐棲姫を発見しました!」

 

 北上さんの超火力が頼みの綱だ。

 今度は北上さんの護衛になりそうだ。

 




駆逐棲姫再び。

・峯雲
大湊のイロモノその③
魚雷? 機銃? 爆雷? 暴力なんて時代遅れ!
大事なのは美味しいご飯と衛生材料とその他(L O V E & P E A C E)だ!

前線にも出てくる高機動プチ間宮 + プチ明石。
火力支援とは方向性がちょっと違うものの
前線で傷付き戦う人たちを強力に支援する。

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