私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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151話です。

かつてこれほどまでに1日が伸びないかと切望した時期は無いです。

偶には提督視点でも。


待つ者

▼――――――――――

 

「では失礼する」

 

「ああ、ゆっくり休んでくれ」

 

 長門が部屋から出て行った。

 戦闘の詳細を聞いてちょっと喉が渇いたと思ったら阿武隈がコーヒーを淹れてくれたので、それを啜りながら思考に耽る。

 

 やはり戦艦棲姫は強敵だったんだろう。一体ではなく複数出現したことから、かなり力を入れた編成にしてて尚長丁場になったことも理解できる。

 提督同士の勉強会などでも『戦艦棲姫が同時に複数出現したら最悪の場合も覚悟した方が良い』なんて脅されたこともあるくらいだ。現場から複数出現したと連絡が入った時は生きた心地がしなかった。

 戦艦棲姫との戦いでは大破するまで攻撃を引きつけ続けた若葉と、一時的撤退する時に殿を務めた際に大破してしまった神通がMVPに値する働きぶりだったと判断して、明石から優先的に処置してもらうように言っておいた。

 

 何にせよ、空母棲鬼、戦艦棲姫、集積地棲姫との戦闘で全員が無事に帰還したことに胸を撫で下ろす。

 まだ帰還していない艦隊は潜水艦の討伐に向かっている艦隊で、他の艦隊が戻って来たからそろそろ戻ってくるだろう。

 

「早く帰って来て欲しいね」

 

「そうですね。全部終わったら皆さんでパーッと観光とか楽しむのもOKだと思います!」

 

 

 

 しかしただ待っている訳にもいかないので、一仕事終わった艦娘達に労いの言葉をかけて、各々から武勇伝を聞いて回った。

 どうやら文月が陸上型深海棲艦を相手に相当な活躍をしたことが多少の誇張はあれども広まっていた。自分は報告で聞いたけど、本当に個人が挙げる戦果ではない様に思えて仕方がない。

 秘書艦の阿武隈とに同じこと(戦果)を出来るか訊いたら怒られた。どうやら戦艦でも出来るかどうかというレベルらしい。これは他の提督に自慢するしかない。

 

 しかしそうこうしている1時間、艦隊は戻って来なかった。

 

 

 部屋に籠って戦艦棲姫、空母棲鬼、集積地棲姫との戦闘の詳細を纏めること3時間。

 空母棲鬼と交戦した際、こちらの艦載機も大量にスクラップにされて修理不能の状態にされたことが分かり頭が痛くなった。

 それは勝利の代価なのだから仕方ないと受け入れるしかないが、このまま手を打たないでいると艦載機の補充に手一杯でいつまで経っても大和の建造(武蔵との約束)を実行出来ない。

 弾薬や燃料は本当に仕方がないにしても、艦載機は無限に存在する訳ではない。少なくとも艦載機の準備には時間が掛かる。

 艦載機の消耗を少しでも減らすべく、一度空母達には集中特訓を実施、参加させるべきかもしれない。その場合の教官役は……赤城と加賀(一航戦)は忙しいみたいだし、飛龍と蒼龍(二航戦)に任せようかな?

 

 

 考えることは無くならない。

 更に頭の痛い事に、予め大本営によって用意されていた資材の半分以上が無くなったことに気がついた。伊58と龍田を呼んで現地での遠征の必要性を確認してる間に更に2時間経っても、一向に扉は開かなかった。

 

「……こんなに遅いと、流石に天龍ちゃんが心配ね〜」

 

「イムヤ、大丈夫かな……」

 

 その言葉に、あぁ、そういえば天龍と伊168(イムヤ)もそのメンバーに居たのかと思い至った。

 大きく4つに分けられた内、1つだけが他よりも6時間以上遅くなるのは、やっぱり誰だって心配らしい。

 

 ふと、最悪の想定が頭を(よぎ)るが、そんな訳ないと考えを改める。

 

「きっと大丈夫だ」

 

 速さ自慢の島風も居るんだ。本当に全滅しそうなら誰かが最も逃げ切れる可能性の高い島風だけでも撤退する様に言うだろう。

 

 

 

 長門の報告から7時間以上経過し、その時には昼頃だった空は暗くなってしまった。

 それでも一向に、潜水艦の居る方向に向かわせた艦隊のメンバーによって開かれない扉に、自分の我慢が限界に達しようとしていた。

 

「遅い…」

 

 自分が短気な訳ではないと思いたい。だけど信じて待つにしても限度というものはある。

 それに、さっきから頻繁に艦娘が部屋を出入りしては自分の顔色を伺っているのも不安に拍車をかける。

 

「そろそろ捜索に艦隊を出そうと思うんだけど、どう思う?」

 

「はいっ!? あ、阿武隈的には、必要ないかな~ってお、思います! ぁそ、そうだ! 件の潜水艦も撃破したって連絡がありましたよ!」

 

 まさか遭難したのではないだろうかと思って阿武隈に訊いたら、驚いたことに自分の欲しい情報が出て来た。

 

「本当かい? 良かった……」

 

 どうやら自分には連絡がなかっただけで、しっかりと連絡自体はされていたのか。

 ひとまずは朝方に出撃して行ったまま、夜戦をすることにならなくて良かったと思う。

 日中からそのまま夜戦に突入するのは疲労が嵩みパフォーマンスの低下を招く上、各種探知機や電探が無いと視界が悪いのも相まって各種事故が起こりやすくて非常に危険だと教えられている。……川内のせいで感覚が麻痺したのかもしれない。

 

 潜水艦の方面に向かった支援艦隊は誰も探照灯を持ってないことが手元の紙に控えてあり、自分も日中に方が付くと思って軽空母の大鷹にも夜偵の類は無いし…と不安になっていたので潜水艦の撃破という事実は非常に安心した。

 

 しかし、そういった連絡が直ぐに自分の元に来ないのは不思議だ。

 

「合計6人が大破して移動に支障が出てるらしくて、遅くなってるのはそれが原因みたい。……。ああ! 捜索とか護衛が必要ないのは、三水戦が護衛のために既に出て行ったっぽいからで…」

 

「6人も?」

 

「えっと……はい。青葉さんが直接報告しなければいけないって……ごめんなさい」

 

「いや、こちらこそ八つ当たりみたいになってしまった。そうか、無事なら良いんだ」

 

 そうは言うものの、6人も大破とは只事ではない。

 でも、自主的(勝手)に三水戦が護衛に行ってくれたから無事に戻ってくることが確定したことで、少なくともさっきまであった『実は全滅している可能性』は無くなった。

 あとは戻ってきたら詳細を訊かないといけない。

 

 待っている間に冷たくなった夕食を阿武隈に温め直してもらおう。

 

 

 

 夕食を食べ終えてから30分程待つと艦隊が帰還したと知らされ、報告の為にやってくるであろう青葉を今か今かと待っていた。

 

「失礼します」

 

 いつもよりだいぶ控えめなノックと、不気味なほどしおらしくなった青葉が入ってきた。

 6人も大破させてしまったことを気にしているのか目が合ってもすぐに逸らされてしまう。顔色が悪いのは青葉本人もボロボロなこととは別の原因があるのかもしれない。

 

「まずは」

 

 そこまで言うとビクリと肩を跳ねさせて息を呑んだ。余程自分に怒られると思っていたのか冷や汗もかいているように見える。

 ……大破した情報に驚きはしたけど怒ってはいない。青葉の思うような事にはならない筈だ。

 

「お疲れ様、だね。報告を聞かせてもらえるかな?」

 

 努めて柔和な雰囲気で怒っていないとアピールする。

 効果はあったようで、まだ緊張を解かないまでも目に力が戻ってきた。

 

「りょ、了解です。まずは―――」

 

 それから青葉の報告が始まった。

 午前中に例の潜水艦とその取り巻きの深海棲艦と交戦したらしく、逃がしはしたものの特に問題は無かったらしい。

 だったら問題は午後だ。どうしてそんな状態から6人も大破状態にまで追い込まれたのか、その原因をハッキリさせておかないと何度でも同じ目に遭うだろう。

 

「それで午後ですが……」

 

青葉さん! 2人が目ぇ覚ましたって!

 

「待って今は! ……あ」

 

 青葉が午後の報告を始めた直後、部屋に風雲が入って来た。

 風雲も青葉に負けず劣らすボロボロだけど、それすら気にならないこと言っていた。

 

「目が覚めた? 青葉、どういうことだい?」

 

「えっとぉ……し、島風さんとスチュワートさんが意識不明と言いますか轟沈しかけたと言いますか……むしろスチュワートさんに至っては一度沈んだと言いますか……」

 

 緊急で明石さんに診せていたんですと言う青葉の言葉が上手く呑み込めない。

 

 轟沈? どういうことだ?

 誰が沈んだ? 何があったんだ?

 一度様子見に行くべき? でも邪魔になるか?

 診て貰って大丈夫だって? 本当に?

 でも誰もこんな質の悪い嘘は吐かないだろう。

 

「「……」」

 

 風雲と青葉、阿武隈が自分をジッと見たまま動かない。

 自分は驚きと混乱のあまり絶句して動けない。

 

 嫌な沈黙が部屋を支配していた。

 

「……報告を続けてくれ」

 

 取り敢えず何があったかだけでも聞いておこう。

 

▲――――――――――




主人公の轟沈ヨシ!
いや~1回は主人公を沈めてみたかったんですよねぇ()
 島風ファンの方はごめんなさい。

・若葉
大湊のイロモノその④
バルジを積みまくったガチタンク。
本人にやや被虐嗜好の気が有るが故に
 “生半可な攻撃ではむしろ逆効果”
※ただしダメージは確実に蓄積されている

艤装のバルジであって、村雨の言う贅肉(バルジ)ではない。
若葉自身はほっそりしているが、艤装は超マッチョ。

駆逐艦特有の“避ける”行動を放棄して積極的に射線に踊り出ては後ろに攻撃を通さない護衛の鑑。
戦艦棲姫の攻撃にご満悦。大破したその顔は笑顔であった
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