前半はギャグ風味。
後半はシリアス風味。
2つ合わせてプリキュ……ダークマターです。
時間は昼前。
場所はビーチ。
天気は晴れ。痛いくらいの日差しの下でも元気に燥ぐ艦娘の姿が目に映る。
今日だけは潜らない潜水艦と化した伊400型の2人。
砂に身体を埋めて眠る加古さんと不知火と黒潮。
ビーチバレーを楽しむ人達。
浅瀬で水遊びをしている海防艦たち。
ガチ泳ぎしてるトレーニング中毒の人たち。
「おらーっ、提督! 早くしろ~!」
遠くから大東が提督を呼んでいる。
「うわ。あんな小さい子達を待たせるとか最低ですね」
「ああ……分かってるよ」
ビーチパラソルから提督が出ていった。提督の指定服と思われる白い服ではなく
しかし待ちかねていた海防艦から即座にロックオンされ、お馴染み佐渡サマを筆頭に水鉄砲の集中砲水を受けて既にびしょびしょになっている。南無。
提督も空いた時間にちょくちょく鍛えているのは知ってるけど、遊びたい盛りの海防艦と駆逐艦を複数相手にし続けるのは厳しい、というか子供の体力は無尽蔵だし艦娘なら尚更だろう。
しかも夜には戦艦や空母、重巡たちと
そんな感じの日程が数日続く。らしい。
「人気者は大変だねぇ」
明後日くらいには過労で死んでるかもしれない。
散々連れ回されて振り回されて過労でぶっ倒れて、みんなに心配されて介護生活を送ったらもう2度とオーバーワークしなくなるに違いない。ソースは昨日今日で
そういう意味でなら一度ぶっ倒れてしまえと思う。
そうなったらそうなったで短期間とはいえ提督が居なくなるから色々とやり易くなりそうだし。
そう考えながら昼食の準備を進めていく。
間宮さんと伊良湖さんが哨戒している人たちに弁当を届けて回ってるから、俺がサボると昼食を食べられない人が出てくるからサボるにサボれない。考えたな畜生め。
「ちょっと、この葉っぱは何?」
「ただのシソです」
分けてもらった
何だよ、大麻やケシなんて持ってる訳ないじゃん。
「……その白い粉は?」
「高級砂糖です。食べると幸せになれると評判でした」
現地の専門店でおすすめされた逸品だ。
水に溶かして渡すとその場で棄てられた。
「ああ、勿体ない!」
高かったのに! と悲痛な叫びを上げると、騙されてるんじゃないの!? と肩を揺すられた。
その場で紫蘇を噛んで砂糖を舐めてウケケなんて言ったらビンタされた。冗談が通じない。
それはさておき。
準備が終わったBBQをみんなに振る舞う。
焼き鳥に変なコンプレックスを抱いてる人が居ないから思いっきり焼き鳥も焼いた。
肉類の提供はなんと間宮さん。四次元ポケットよろしく、明らかに間宮さんの荷物より体積のある食材を譲ってくれた。どこに仕舞われてたのかはやはり謎のままだ。
各々が育てた肉を取り合い不人気の野菜類を押し付け合う面々にほっこりしてると、提督の視線に気がついた。
目が合ったのは一瞬だけとは言えまるで神通さんに睨まれた川内さんのような目、つまり爆発直前の爆弾を見るような目で俺を見ていたのが分かった。
そんな目で見られなきゃいけない理由が分からない。
それにチラ見するくらいならガン見しやがれ気持ち悪い、と思う。
仕返しとばかりに俺が提督をガン見してから視線を全く合わせようとしなくなった。
どうでもいい特技の一つである『長時間瞬きをしない』を披露しながら提督に視線を送り続けたら根負けしたのか目を合わせてくれた。
「……」
しかし眉を八の字にして苦笑いをするだけの提督にプッツンときた。
こんなにキレやすい性格だったかなぁ? なんて激情を渦巻かせつつもどこか冷静な部分で思考する。
まぁなんだ……
全部曖昧な反応をする提督が悪い。
「うわっ!」
「ちょっとコレ借りていきますね」
提督の腕を掴んで強引に引っ張る。
楽しい昼食中に水を差した上にストレスをブチ撒けるようにキツい口調になったのは申し訳ないと思った。あとで謝らないといけない。
「どこに向かうかだけ教えてくれないかな!?」
大分疲れたのか、殆ど抵抗もせずに腕を引かれる提督はそう言っていたけど、
「……」
どうせ着いたら分かるんだし、別に答えなくても良いやと言う精神に基づいて無視する。
ああ駄目だ。スッキリしない。
結局提督が色々と話しかけて来たけど全部無視して提督の部屋まで連行した。
何事かと、面白そうなものを見つけたような人は後ろに付いてきたけど、部屋に入ってこないようにさっさと鍵も閉めた。
「何か隠してますよね?」
そして開口一番、気になることを訊いた。
「……なんのことかな?」
間が空いた。これは絶対に何か隠してるね。
「なら、さっきの視線は何なんですか? 人に向けるような視線じゃないと思いますが?」
「……」
「艤装も見せて貰えないのは何でですか? 被害状況だけ説明されても実物視ないと分からないんですけど。あとは夕張さん。夕張さんだってゆっくり遊びたいでしょうに、なんでわざわざずっと見張りに付けてるんでしょうね? 島風も同じくらいの被害を受けてるのに普通に過ごしてますよね?」
提督の緊張した視線。
艤装に触れらせて貰えない現状。
常に見張りが居る現状。
同程度の被害を受けた島風は普段通り。
俺だけが特別扱いだ。
今回の戦闘で沈んだ俺 “だけ” が。
そこから導き出される結論は───
「貴方は私を恐れている」
「そんなことは無い!」
語尾が荒くなった。図星だな。
「詳しく分かりませんが、私に知られると不都合なことですか?」
「不都合では、ない。だけどショックを受けるかもしれない」
「そうですか。じゃあ大丈夫ですね」
ほら話せと視線と雰囲気と態度で催促する。
俺、かなり図太いからそうそうショックなんて受けんよ。今は苛立ってるから脳内麻薬もキマってるし。
しばらく悩んだ提督が視線を合わせて口を開いた。
「沈んだ如月が鎮守府に帰って来たという記録がある」
提督の口から出た内容は確かに衝撃的な物だった。
『艦これ』って轟沈したら
でも納得した。そりゃあ艤装には触らせないようにするし見張りも付ける訳だ。無意識的に味方を攻撃するとか恐ろし過ぎる。
でもそんなことはどうでもいい。いや、どうでも良くはないけど。
結論から言うと、一度沈んだ艦娘は深海棲艦になる可能性がある為、過去の事件を鑑みた結果雷撃処分になるらしい。
「では、私が皆さんと一緒に帰ることは無いんですね?」
出来れば知りたくなかった。
こんな確認もしたくなかった。
「……」
そりゃあ提督だって帰る直前までは言いたくなかっただろうよ。
末期癌で助からないから死ねって言ってるようなもんだ。俺が言わせたんだ。
「はっきり伝えてください。提督の口から」
喉から上手く言葉が出てこない。
申し訳なさと、終わりが見えてしまった悲しさで意外にも参ってたらしい。このまま今まで通り過ごせると思ってたんだけどなぁ……。
「スチュワート。君を……雷撃処分とする。日本に帰るまでの間に行うから、そのつもりでいてくれ」
「了解しました」
はは、提督がみっともなく泣いてやがる。
頬を伝う涙の感覚から、俺も泣いてるんだけど。
「誰もやりたがらないでしょうね」
「当然だ」
「提督……ごめんなさい」
恐らく今までで1番素直に提督に謝れた。
どちらが何を言うでもなく、しばらく時間が流れた。
大分落ち着いてきたので、鼻を啜り声を出す。
「さぁ、皆さんのところに戻りましょうか。遊べるうちに遊んでおかないと」
空元気のまま立ち上がり扉を開けると、何故か多くの人が居た。先頭にはいつもの記者然とした青葉さんの姿。
「司令官と2人きり……何をしていたのか青葉、気になりますっ!」
「
「え?」
「「「え?」」」
部屋の中から提督のマヌケな声が上がる。
目の前の艦娘たちも同じだ。
「沈むような船に提督は乗せられません! そう判断しました。未練ですか? ないです」
そう言うと、何人かの目がギラついた。
ふはは! コレがたった一つの冴えたやり方。
しばらくはこの発言にみんなでバタバタしててもらいたい。そんな狙いもある。
兎に角、提督には雷撃処分から意識を逸らしていてもらいたい。お通夜みたいな雰囲気だけはゴメンだ。
……全部俺のせいなんだけどね!
素晴らしい原作からこんな滅茶苦茶なシナリオが生み出されたのも全部俺のせいだ!!
でも…
この主人公が全部悪い。
“ 次 ”があるなら多少改善するんじゃないの?(鼻ほじ)