お待たせしました。
Q.遅いんちゃう?
A.展開的にどうしようか悩んだ。所謂難産。
すごい低評価付きそうな内容。
だったら投稿すんなし
あっという間だった。
あれからは意識を失うなんてことはなく、謎の幻聴も聞こえなかった。
深海棲艦も群を成して現れたりもしなかったから、つまるところ平和だった。
そんな中で何をしてたかって?
大淀さんに『大湊で港湾棲姫とか鹵獲したことになってるからそこに深海棲艦が1人増えても問題ないのでは?』って屁理屈を捏ねたりした。
明石さんに貰い物の艤装のネジ規格を日本のものに変えても良いか訊かれてダメと答えて涙目にした。
呆れる夕張さんの隣で提督と艦娘のランデブーを雪風の望遠鏡で覗き見て実況したりもしたし、深夜帯には少しづつ遺書のようなナニカを書き進めたりもした。
あとは日替わりで変わる面々をビーチパラソルの下から眺めてたり、連日のBBQに腹を壊したり、武勇伝を聞いて回ったりした。
まぁ、忙しくも充実した時間を過ごしてた。
でも楽しい時間はいつだってあっという間だ。
雷撃処分当日の早朝、つまり今。
穏やかな時の流れを感じさせる風。
哀愁を感じさせる心地良い波の音。
最後の景色には勿体ないくらいだ。
薄い雲に隠れて柔らかい光を湛える朝日から目を離して振り返る。
そこには最後の最後まで見張りを続けた職務に忠実な夕張さんと、その隣には雷撃処分担当に選ばれたらしい長門さん。
……なんで?
アナタ雷撃なんて出来ないじゃろがいっ!
しかも後ろにはその他大勢が見える。野次馬が多すぎないか?
てっきり雷撃処分担当に選ばれた誰かと海に出て、ひっそりと速やかに誰に知られるでもなく終わるものだと思ってたんだけど? 見た感じだとほぼ全員居るじゃないか……
しかも、しかもだ。
駆逐艦と軽巡は分かる。
潜水艦と重巡も分かる。
でも長門さん含め戦艦と空母系と海防艦。これが分からない。
雷撃処分ならぬ砲撃処分にでもするつもりか? そんなのただの標的艦じゃないか。
流石にこの人数から一斉射撃されたら沈む云々の前に粉微塵になる自信があるね。
「お前はいつだってそうだ」
そんなに俺を沈めたかったのかと、みんなの殺意の高さに戦慄してたら長門さんが口を開いたから目線を後ろの大勢から長門さんに移す。
「大事な事はすぐ隠して……私たちがこの件を聞いたのはついさっきだぞ?」
どういうことだと目線で訴えてくる。
「それはその……沈んだら雷撃処分という処置が存在するなんてことは知らないに越したことは無いでしょうし、雷撃処分ということは誰かに沈めてもらうってことになります。すると沈めることになる誰かが必要になりますけど、その人の心の傷になりたくなかったから……ですかね」
ちょっと答えにくい質問だったけど、この場に及んで口が回る回る。
「馬鹿者ッ!」
だけど、喝を飛ばしてきた長門さん回答に納得しなかったらしい。
「私たちは戦っているんだ。そして全く犠牲の無い戦いなんてものは存在しない。当然、苦しい時もあるだろうが……スチュワート、私たちは相談するに値しない程頼りなかったのか?」
「うっ」
これはそんなことないって答えなきゃいけない感じのヤツだし、実際そんな風に思ったことは一度もない。
だけど言われてみれば確かに、大事なことは自分で解決するか相談するとしても大淀さんくらいだった気がする。不満は専ら悪戯するか川内さん主催の夜戦に参加して駆逐級を叩いて解消してたし……あれ、俺って意外と薄情者?
「何も言わずに居なくなるなんてひどいじゃない!」
そんな声が聞こえた。
それに便乗して俺がダメなヤツだと言う声があちこちから聞こえてくる。
そんなにダメだダメだって言わなくても良いんじゃないかな? いやでも、しんみりした空気から一転して『どきなさい! 止めを刺すのはアタシよ!』とか言ってる人も出てきた。
なんかお祭り騒ぎっぽくなってきたな……流石にこれよりだったらしんみりした空気の方が良いかな。
「一つ。提督に伝えておいて欲しいことがあります」
この一週間で考えていた宣言を始めると騒がしくなってた外野が黙る。
「これから行われるのは雷撃処分……それが終われば私は深海棲艦の仲間入りです。しかし、海の上で再び出会うこともあるかもしれません。そうなった時は───勝負しましょう」
「「「 は? 」」」
爽やかな笑顔を意識して宣戦布告? をしたら周りがポカンとした。
何かを言われる前に畳み掛けよう。
「深海棲艦の私にあっさり負けるほど弱いようなら、許しませんからね!」
これで良し。
あとは俺が深海棲艦になっても艦娘からは敵じゃなくて
「提督にもしっかりと伝えておこう。それと、その時が来ても私たちは負けんさ……絶対に。そうだろう!?」
「「「 おーーーっ! 」」」
「よぉし! 戻ったら反省会だ。良いな!?」
「「「 おーーーっ! 」」」
そうだ。それで良い。
暗くならず、前向きに勝利の為に頑張る艦娘たち、と提督。
俺の知ってる『艦これ』もこんな感じだったな……。
そこに
「最後になりますけど、メッセージを紙に残してあるので後で読んでおいてください。仕事の上で必要な事とかは大体書いてある筈です」
「分かった」
「……言いたいことは言いました。では、どうぞ」
長々としても嫌われそうだしそろそろ終わらせよう。ちょうど良い感じに「終わるんだな」って雰囲気になってるから今しかない。
「ふぅ~っ…………スチュワート」
「はい」
長門さんの巨大な砲がゆっくりと向けられる。
不思議と怖くない。心が凄く穏やかだ。
無意識的に笑みが浮かぶ。
「 また会おう 」
結局コレ、砲撃処分じゃねーか!
視界が真っ白に染まり、暗転した。
▼――――――――――
「……終わったんだね」
「はい」
「何か言い残してたりしてなかったかい?」
「ええ、沢山残していきました」
まずは伝言です。と言う言葉がやけに遠くに聞こえる。
だけど、彼女からの伝言まで聞き逃すつもりは無かった。
「もし深海棲艦になって私たちの前に現れた時は勝負しましょう。と」
「それは……負けられないね」
負けず嫌いな彼女の事だ。軽く勝負だ、なんて言っておきながら簡単には勝ちを譲ってくれる筈もないだろう。少なくとも、今までの中で最も厳しい『演習』になりそうだ。
続きを聞けば、負け無様は許さないとまで言ってたんだとか。本当に厳しい。
「それと、提督にはこちらを……」
渡されたのは複数の封筒。
その中の一つは準備が良いのか蝋封までされている。何を想定していたのかイマイチ分からないけど、彼女のことなので変わってるなぁくらいの感想しか出てこない。
『 提督へ───
①コレを読むときは1人で読んでください。
②誰にも言いふらさない
③上記が守れるなら読んでも良い。
書き方が分からないから簡潔に書こうと思う。
まずは、ごめんなさいってこと。
沈んだのは完全に油断だった。だから自分がこうなったことに提督の責任は無い。
でも、提督が幾ら完璧な指示を出したとしても、艦娘が油断や慢心をしていたら計画は破綻するということを覚えてもらえたら、沈んだ事実にも多少の意味が生まれるから自分としては嬉しい。
慢心は敵。良いね?
次に、スチュワートの秘密について。
一番気になってることじゃないかと予想してる。
前提条件として駆逐艦娘スチュワートは存在しない。
じゃあ大湊に一年以上居たスチュワートは何者だと思うかもしれない。
答えは 何者でもない。
おかしいかもしれないけど、適切な表現だと自分では思ってる。
強いて言うなら、コレを書いてるスチュワートの中身は外見とは全く別。ついでに言うなら今まで猫を被ってたから本性も全く別。
もっとガッツリカミングアウトするなら、自分は別の世界の人間だ。
・・・冗談だと思う? そんなことは無い。
まぁ、簡単に説明するなら、違法建造された艦娘が何かの手違いで前世の記憶を持っちゃったって感じがイメージとして近いと思う。
生まれはスラバヤ。最初期の所属は無し。
この辺は大本営とかが情報持ってるだろうから、調べたら分かると思う。
残念だったな。提督の最初のケッコン指輪は台無しだよ。
最後に、これからについて
自分の部屋は好きにして、どうぞ。
でも艤装は貰い物だから出来るだけ返品した方が良いと思う。
盾とかは専属の妖精さんが管理しちゃってるから、ノータッチで。
最後の最後に一言:楽しかったぜ。
終わった……(色々な意味で)
提督的にはベストパートナーが居なくなってショック
→実は味方でも敵でもないねん。→ ???
な感じか?
でも最後まで口頭でカミングアウトされなかったのはショックでしょうねぇ……
それはそれとして、自然に語録を使っている主人公は既にミーム汚染済み。終了しなきゃ……
次から幕間です。