私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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160話です。

幕間(おまけ)です。これ要る?
要らないならあと一つ幕間挟んで次行くね……


8章 〜幕間①〜

・Vacation Memories

――――――――――

 

「榛名さんが名残惜しそうに提督と別れました。僅かに伸ばされた手から伺えるは想いの大きさ、と言ったところでしょうか?」

 

「確かに、あそこまで司令を慕ってたのは意外だったわね。何時も金剛お姉様を立ててるから気が付かなかったわ」

 

「それはそれは……名優ですねぇ」

 

 双眼鏡の先では離れて行く提督の背中を見つめ続ける榛名さん。

 大和撫子然とした雰囲気からはちょっと想像できない積極的なアプローチが見所だった。いつの間にか隣に居た霧島さんも困惑している。

 

「では私はこれで。良い土産話になりました」

 

「お姉様にヨロシク伝えておいてください」

 

 霧島さんが去る。

 土産話って言っても十中八九金剛さんにだろうな。なんか金剛さんを応援してる風だったし。いやでも榛名さんを弄るネタになったという線もある。

 まぁ俺としては金剛さんだろうが榛名さんだろうが他の誰かだろうが、提督が俺以外の誰かとくっ付けば良しなので霧島さんが金剛さんと榛名さんのどちらかを応援しようが構わない。

 

 

 それはそれとして、提督が動いたのなら移動しないといけない。

 提督だって艦娘と買い物や観光であっちへ行ったりこっちへ行ったり。それをバレないように距離を保ったまま追い駆けるスリルはやっぱり堪らないね。

 それにさっきの榛名さんもそうだったけど、浮かれて普段とかけ離れた様子の人を見られるのは最高だ。青葉さんじゃないけど、見ちゃいましたぁって感じ。

 

「ねぇ、まだやるの?」

 

 監視の夕張さんもしっかり隣に居る。始めた時より微妙に(やつ)れてるようにも見えないでもない。おかしいな? 女性にとって恋の話題は必須栄養素だと思ってたんだけど。

 

「勿論。提督のスケジュールはデートに次ぐデートでギッチギチなのは確認済みなので」

 

うわぁ……

 

 夕張さんがドン引きしている。俺だってあそこまでギリギリのスケジュールは見たことが無い。例えるならゲームのとかの好感度稼ぎで一分一秒が惜しいとかそんなレベル。

 あまりにも可哀想だったから10秒でチャージ出来るゼリーを机の上にいくつか置いておいた。

 

 寝起きのコーヒーブレイクのあとは連続デート……言葉にするとヤバいな?

 

 実際に朝早くから阿賀野さんと観光スポットへ行き、蒼龍さんとショッピングモールで買い物、榛名さんとレストランで昼食と、とんでもないスケジュールをこなしている。

 それでいながら良い感じの雰囲気を作りつつ時間の管理も完璧ときた。提督はバケモノか?

 

「ああっ、マズい!」

 

 提督がタクシーを捕まえた。

 流石にこうなったらガイドブックも意味を為さない。名所は知ってても何処に行くかなんて書かれてないのだ。

 

「ねぇ、もう良いんじゃない?」

 

「まだです!」

 

 折角ここまでやったんだ。諦めて溜まるか。

 そら、タクシーゲットだぜ!

 

Chasing that taxi(あのタクシーを追いかけて)

 

『 OK 』

 

 目の前に止まったタクシーに転がりこむように乗車しめ叫ぶように言う。

 運転手のノリが良くて助かった。

 あとアメリカ語が通じて助かった。

 

「ふぅ……よし!」

 

 俺たちの覗き見はこれからだ!

 

 

 引き摺り込まれるように車に乗せられた夕張さんの目からみるみるうちに光が失われていくのを俺は知らない。

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

・徒に刃を立てる

――――――――――

 

 長門さんの前に居た彼女が居なくなってから、あちこちから鼻を啜るような音が聞こえてくる。

 でも不思議ね。私の心は自分でもビックリするくらい落ち着いてるのよ。

 特段ショックを受けるでもなく、海面を見つめて涙する駆逐艦や海防艦の子達を宥めながら、浮かぶ思いはただ一つ。

 

 絶対に許さないから♪

 

 

 1番の理由は天龍ちゃんを傷付けたこと。

 正確には、天龍ちゃんの心を傷付けたことかしら。

 

 戻ってから「オレが交代したばかりに……」なんて落ち込む天龍ちゃんは珍しくて、いつも通りに揶揄ってみたりしたけどずっとウジウジしてるから何があったのか詳しく聞いたの。

 戻ってから謝った時に「天龍さんは悪くないですよ~」って呑気に言われたらしくて、その時の顔が引き攣ってたのが気にかかってしょうがないって言ってたのよ。

 

 聞いた時はあ~あって思ったわね。

 普段だったらオカルト染みた勘の良さで「そうですよ。何で止めてくれなかったんですか?」って軽口を叩いた後に適当に挑発して天龍ちゃんと下らない勝負で決着を付けて終わるんでしょうけど……

 あと、顔が引き攣ってたのは天龍ちゃんの謝り方があまりにも迫真過ぎてちょっと引いてるだけだと思うのよねぇ。若しくは肩を揺すられた時に激痛が走ったのかしら? 怒鳴りつけたいのに我慢してるって感じじゃないと思うのよね。

 それに、真面目な話題で彼女が提督以外に対して怒ってるのを見たことが無いもの。ちょ〜っと彼女のことを知らなかったわね〜。

 

 いずれにしても、冗談だろうと責められたかった天龍ちゃんと全く怒る気の無い彼女が嚙み合わなかったわね。

 でもその時に限って察しの悪かった彼女が悪いわ。

 

 

 

 怒ってる理由の2番目は勝手に居なくなったこと。

 恋敵としては勝手に居なくなってくれたこの状況は願ったり叶ったりって感じなのだけれど、自分から土俵から降りて行ったように感じるのが気に入らないわね〜。

 余裕な態度が崩れないのもあって勝ち逃げされたみたいでちょっとだけ、そうちょっとだけイライラしちゃう。

 

 あとは単純に、1番張り合いのある子が居なくなっちゃったらつまらないじゃない?

 私だって提督に一目惚れしちゃってる手前、他のライバルたちみたいに彼女という最大の障害が居なくなったことには喜んでたりするのよ?

 でもそれは違うんじゃないかなぁっても思っちゃうの。

 

 譲られた。そう思うだけで提督の隣という場所の価値が下がるように感じちゃうから不思議よねぇ。

 最大の障害(スチュワート)を越えたかったのであって、避けて進みたかった訳じゃないもの。

 どうせ振り向かせるなら、私が提督を自分の物にしたっていう達成感とか支配感だってついでに味わいたいじゃない?

 あとはそうねぇ……負け犬の遠吠えみたいに啼いて貰えばちょっとは面白いかしら〜。

 

 

 そう言えば。

 

「深海棲艦になったら勝負しましょう。だったかしら? それはそれは面白いこと言うわよねぇ」

 

 周りがギョッとする。

 いけない。言葉に出てたみたいね。

 

「あら~。そんなに驚かなくても良いんじゃない? あの子に思う存分お仕置きする良い機会だと思わないのかしら?」

 

「……確かにそうね。あの言葉は提督へのメッセージだったんだし、私たち艦娘は私刑を執行しても問題ないわよね」

 

「深海棲艦になると噂で聞いたのだけれど、それなら咎められる理由が無くなるのでむしろ好都合ではないかしら?」

 

 私の一言から波紋が広がるように意気消沈していた雰囲気が霧散していく。長門さんの発破での空元気と違うところは、それぞれが自分の為に頑張ろうとしてるってことかしら?

 

「「「 確かに 」」」

 

 みんなが頷く。

 愛されてるわね~。

 

「「「 絶対にはっ倒す 」」」

 

 皆の心が1つになったわ。感動的じゃない?

 今から既に魚雷がウズウズしちゃってるし、また会った時は全弾発射するつもり。

 当然、他の子たちからも下される愛と怒りと正義の鉄槌も甘んじて受け止めてくれるわよね?

 

 

「うふふ……」

 

 

――――――――――

 




恋の話題は乙女の栄養。でも栄養も摂り過ぎは良くない。
夕張は栄養過多で腐ってしまったようです。あ〜あ。
次の相手は龍鳳、足柄、愛宕と続く。(ここまで初日)

艦娘達に電流走る。
あるものは鹵獲し 自主規制 (化学の発展に犠牲はつきものデース)を───
あるものは正義の下勝率100%の集団リンチを───
龍田は提督の前でR-18クラスの恥ずかしい格好を───

何もされないかもしれない。
ただし、
全部履行される可能性もあることを主人公は知らない。
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