私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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161話です。

幕間(おまけ)です。
アンケートありがとうございました。
投稿頻度上げて欲しい? 私の遅筆(ちから)は53万です。

でも、気持ち早くなるかもしれないです。
いそがしいねむいしぬら


8章 〜幕間②〜

・小さな大戦艦

――――――――――

 

 空母棲鬼率いる深海棲艦の大群は謎の潜水艦、集積地棲姫、戦艦棲姫と比べて拠点(ホテル)から近い場所に位置していた。

 その為早くから主に空母同士の艦載機大戦が始まった。

 敵艦隊の首領は空母棲鬼。紛れもない強敵だ。

 

「……もう決着か? 呆気ないな」

 

 しかし大湊の空母たちは熟練だった。

 他所の鎮守府よりも建造からの日数が経っていないので経験は浅いが、繰り返される演習によって艦載機を操る技量は引けを取らないレベルにまで成長していた。

 つまり、空母棲鬼を警戒して多くの空母を投入した提督は過剰なまでに空母を編成してしまったことになる。そしてその分早く山場が過ぎ去り、あっという間に敵性の艦載機は姿を消した。

 そして、艦隊の後方では───

 

 

 

「敵の艦載機は粗方片付けたわ。残った敵の処理をお願いできる?」

 

「任せておけ。峯雲が来ているから安全な場所で戦闘が終わるまで休憩していると良い」

 

 雲龍と武蔵が話をしていた。

 峯雲が居るという情報に、雲龍の後ろに居た空母たちが色めき立つ。

 

「峯雲が居るの? なら妖精さんも居るわね。艦載機も修理してもらおうかしら」

「えっ峯雲来てるの? ラッキー!」

「ちょっと早いけどおやつにしようかな~」

 

 敵性の艦載機を片付けるという一仕事を終えた空母たちの頭は、峯雲が齎すであろう憩いの時間のことでいっぱいだった。

 しかし峯雲の癒しは中毒性が高く、用法用量を守らないが故に峯雲を母と認識する人まで出たのは別の話───

 

「じゃあ遠慮なく休ませて貰うわ」

「待て、二人にはまだ働いてもらうぞ」

「「そんな……」」

 

 中にはしれっと混ざって休憩しようとする伊勢と日向の姿もあったが、武蔵に肩を掴まれて項垂れていた。ちなみに最上と三隈は見逃されている。

 

 

 

 

「艦載機が無くなった今、あとは砲雷撃戦だけだ。ここまでお膳立てしてもらった以上、中途半端な勝利は認められんぞ!」

 

 空母が退き、それ以外の艦種の出番になっても勝ちは当然だからと流れ試合のようになって弛んだ空気を武蔵が引き締める。

 喝を入れる武蔵の剣幕に飛び上がって我先へと最前線に向かっていく駆逐艦娘の中で1人、様子が少し違うのが1人居た。

 

んふ~~

 

 駆逐艦が持つには大き過ぎる砲を撫でる清霜である。その目線はテキパキと指示を飛ばす武蔵から離れない。

 まるで適性距離は長距離(ここ)だと言わんばかりの態度だ。

 

清霜、航空戦艦を目指さないか? 今なら特別な瑞雲をやろう

 

「えっ、くれるの!? 戦艦たるもの艦載機の一つや二つくらい……え? 航空戦艦?」

 

 戦艦の言葉を餌に悪魔的囁きをする日向の手には瑞雲。

 航空戦艦と言う言葉に引っかかるものはあるけれど、それでも瑞雲を受け取ろうとした清霜に待ったがかかる。

 

「待て日向。清霜、まずは戦艦になるんだろう?」

 

「うん! いっぱい戦果を挙げて、いっぱい改装してもらう! そうやって一歩ずつ戦艦になっていくんだ!」

 

「ああ、いい心がけだ」

 

 そう返しながらも『駆逐艦がどう改装したら戦艦になるかは分からないが……目標に向かって努力する姿勢こそ大事な物だろう』と考えている武蔵。口に出さないのは武士の情けかもしれない。

 それでも、自分に懐いている妹分が盗られるようでちょっと嫌だった武蔵は清霜の考えを修正した。

 

「あ~あ、日向振られちゃったね」

 

「むぅ……だが、瑞雲はいいぞ。最高だ」

 

「そんなに言うなら加賀と艤装を交換してもらえ。……そろそろ誰かしらが接敵するだろう。私たちも準備しよう」

 

 

 

 

 

 戦艦が砲撃を始めてからしばらく経った。

 

 残りの敵は艦載機の大半を失っても尚戦闘意欲を失わずに砲撃を続けながら逃げる空母棲鬼と、追い詰めたと思ったら現れた複数の戦艦レ級。

 無視して戦闘を続行した場合に被害が激増すると判断した武蔵が駆逐艦を後方に下げ、重巡と戦艦が壁になるように指示を出した。

 

「ん? くそ、弾切れか」

 

 前線の中の一番後ろ、所謂最終防衛ラインのような位置から砲撃を続けていた武蔵が顔を顰めた。

 自身の砲撃に自惚れる訳では無いにしろ、それなりに効果のある援護だと思っていた武蔵は、無いものは仕方ないと、装填を待つ時間をどうしようか考え始めて───自分の方を向いている清霜を見つけた。

 

「その砲で戦果を挙げると意気込んでなかったか?」

 

「そうだった! 見てて武蔵さん!」

 

 今気づいた! といった反応をして砲を構えて……否、振り回されるような清霜。

 狙いを定めることはおろか、まともに持ち上げることすら儘ならないようだ。

 それを見て仕方ないなと溜息を吐いた武蔵は、清霜が構える砲を支える。

 

「戦艦の砲は重いから、駆逐艦の小さい砲と同じように構えるのは無理だ。身体づくりと訓練を怠るなよ」

 

「分かった!」

 

「さて、よぉく狙うんだ」

 

! 今だぁ!!

 

 放たれた特大の砲弾はレ級の頭部に吸い込まれた。

 そして清霜は、大湊鎮守府の駆逐艦娘の中で初めて戦艦レ級を倒したとして一目置かれるようになる。

 

 艤装を手に入れ、将来へのヒントを手に入れ、機会に恵まれ、チャンスを物にして少ないけれど華々しい戦果を挙げた。

 こうして清霜は夢への第一歩を踏み出した。

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

・反転と不屈の意思

――――――――――

 

ウアアアアアアアアア!

 

 深海棲艦特有の異物感あふれる、化け物という表現がピッタリな艤装が大きく吼えて私の方を向きました。気持ち悪い口から漏れる光から目が離せません。

 

 私には戦艦のような重厚な装甲はありません。

 攻撃を避ける駆逐艦のような機動力もありません。

 砲撃を無視できる潜水艦のような特殊性もありません。

 

 戦艦棲姫の攻撃が当たれば一溜りも無いでしょう。

 ですが私は、ここから退くことはありません。

 例え、戦況を仕切りなおすために艦隊は一時撤退の指令が出ていたとしても。

 

 何故なら、後ろには運悪く動力部中枢に被弾してしまった扶桑さんが居るからです!

 

「ダメよ御蔵ちゃん……私は良いから逃げて」

 

できません!

 

 自分を奮い立たせる為に。叫ぶように意思を伝えます。

 本当は今すぐに逃げたいです。でも、でも……

 こんな時に引いては海防艦の名折れ!

 艦隊の主力、作戦の要たる戦艦を守れるなら!

 

「こういった時の……その為の海防艦です!

 

『これで終わりだ!』

 

 目を瞑り衝撃を覚悟します。

 でも、思ったような衝撃は何時まで経ってもやって来なくて、恐る恐る目を開けたら誰かが戦艦棲姫と私の間に立っていました。

 

「え?」

 

『なんだと?』

 

 

 

「ふむ……悪くない砲撃だな

 

 戦艦の砲撃を受けたとは思えないほどケロリとした若葉さんが居ました。

 どうして砲も魚雷も無い、まさしく手ぶらの状態で若葉さんがやって来たのかは分かりませんが、今も砲撃を受け止め続けている以上、何かしらの秘密はある筈です。

 

「殿は引き受ける」

 

「御蔵さん。扶桑さんを連れて早く撤退してください」

 

 それに、隣に来ていた神通さんはきっと無駄な人員配置をしないでしょう。

 おニ人を信じて明らかに普段よりもスピードの出ていない扶桑さんの手を引きながら後退します。

 

「申し訳ありません……すぐに戻ってきますね」

 

「心配しなくとも信念が揺らがない限り決して斃れん。安心しろ」

 

「ご武運を!」

 

 

 

 

 

 ───それから暫くの間、若葉と神通は殿を勤め上げた。

 

「もっと撃って来たらどうだ?」

 

『なんなんだお前は……』

 

 何度砲撃を喰らおうが立ち上がる若葉は戦艦棲姫さえも慄かせた。

 服がボロボロになろうが決して笑みを絶やさず、ギラギラと輝き続けるその眼が拍車をかけていたのは間違いない。

 

んっ……ふぅ。流石に多いな」

 

「ですが着実に数は減らせています。」

 

 若葉が攻撃を引きつけ、生まれた隙に神通が攻撃を加える。

 たった2人の駆逐艦娘と軽巡洋艦娘は、この上ないコンビネーションの下に大量の深海棲艦を相手に善戦出来ていた。

 

 その結果───

 

『ええい鬱陶しい! さっさと水底へと沈んでいけ!』

 

それは無理だ

 

『な、ぐあぁッ!』

 

 鬱憤が溜まりに溜まった戦艦棲姫が何度目かになる全霊の攻撃を加えようとした時、神通のものよりも数段威力の高い砲撃が戦艦棲姫に命中した。

 

「戻って来ないと思ったら……殿とは何だったのか」

 

 追撃の阻止だけではなく何故反転攻勢を仕掛けているんだ……しかもたった2人で。と嘆く長門の言葉に神通は顔を赤らめさせた。若葉は何故か既に赤くなっている。

 

 艦載機を速やかに撃墜したのは神通の手際であるのは間違いない(若葉が攻撃手段を持たない以上自明の理)が、扶桑の艤装が応急修理を終え、もう何体か出現した戦艦棲姫を撃破するまでの時間を稼ぎ続けたのは若葉の手柄であることも疑いようのない事実だった。

 

 そうして、完璧が過ぎて文句が出る殿を務めた2人は長門によってMVPに推薦されたが、詳細を聞いた多くの駆逐艦娘は「アレは真似できない」と揃えて首を横に振った。

 

――――――――――

 




空母棲鬼『バカンスもさせてもらえないなんて……』
戦艦棲姫『なんだコイツ……』

文月は次回。
最近、皆既月食だったから致し方なし。
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