文月回と言ったな?
それは後半3分の1だ。
甚大なキャラ崩壊アリ?
許しておくれ……
・荒廃の使者
▼――――――――――
サングラス越しに見える景色は輝いてる。
燦然と輝く太陽は……流石に眩し過ぎてちょっと鬱陶しいけど、まぁ悪くはない。
誰もが気持ちよさそうに日向ぼっこしててピクリともしないけど、それはここが安心できる場所だって証拠だろう。
『……』
近くに置いてた
『あ~……ん、美味い』
深海の水でキンキンに冷やされたソレは、日差しで若干火照っていた身体に染みわたる。
さっき食べたマンゴーも美味かったし、人間も悪い面ばかりじゃないなと若干見直す。
『次はマンゴスチン……あれ?』
おかしい。間違いなくさっきまで手元にあったトロピカルフルーツが籠ごと無くなっている。
小鬼達には手を出すなってキツく言っておいた筈なんだけど……
『……美味しい』
は?
危うく湧き出した殺意の下に集団リンチの刑に処そうかと思ったけど理性が仕事をした。
フルーツを籠ごと持ち出したのは駆逐棲姫。今まで見なかった顔だけど姫級の実力者なのは間違いない。後ろにも配下に空母やああ、ヤツまで居る。
まぁ……騒ぎを起こしさえしない間は持て成そうか。
『ねぇ、貴女の話を聞かせてよ』
話しかけられたと思ったら内容が突飛だ。
もしかしてコイツ不思議ちゃんか?
まぁいい。それにしても私の話か。
『仕方ないな、面白い話ではないが───』
ふと思い返せば長い道のりだったと思う。
私は、随分前にこの島にやってきて拠点にした。
当時はゴミだらけの汚い島だったけど、独りでゴミを片付けたり資源せこせこと集めたりして少しずつ快適にしていった。
ある程度島がキレイになって資源が溜まって来た頃、私が居るとどうやって認知したのか輸送艦が寄り始めて、今度は防衛のことにも気を遣うようになった。
最初に対策したのは戦艦の問題児だった。嵐のようにやって来ては折角溜めた資源を根こそぎ奪っていくようなヤツは招かれざる客に他ならなかった。
だから、輸送艦に資源と艦載機のトレードを持ちかけた。砲台小鬼も連れてきてもらった。
確実に追い払えるようになるまで我慢に我慢を重ねた。
ヤツが初めて私の前から資源を奪うことなく退いていった時は、いつの間にか増えていた頼もしい仲間たちと共に喜びを分かち合った。
だけど、私は問題児を撃退しただけでは安心できなかった。
次に対処しないといけないのは艦娘だった。
独自に仕入れた情報では、私以外の陸上型のヤツらは艦娘共の対地兵器……ロケット弾や上陸用艦艇にコテンパンにしてやられるらしい。
それを知った私は、島を丸ごと改造した。
資源を安全に蓄えておけるように地下を用意した。
上陸用艦艇とやらの対策として砲台小鬼も沢山連れて来てもらった。
そして、そもそも攻められないようにヤシの木を育てて普通の島に見えるように偽装している。
今では立派なリゾートだ。
輸送艦の他にも駆逐、軽巡、重巡、空母、戦艦、潜水艦……色んなヤツらが来る。
昨日と一昨日は戦艦棲姫と空母棲鬼も来たし、間違いなくこの辺りで一番の憩いの場所になっていると確信できる。
誰もが足を運んで一休みできる場所の提供───私自身、こうして振り返らない限り気付かなかった意外な内面が有ったんだな。
『まぁそれはそれとして、これからも少しずつ資材を増やしてまだまだ発展させていくつもりだ』
『ふぅん……貴女は人間についてどう思ってるの?』
話し終えると今度は人間について訊いてきた。
人間か……
『
私の考えを述べた上で逆に尋ねると、分からないとだけ答えた。
でも『色んな考え方があって良いのね?』と訊かれたから、そりゃそうだろって言ってやった。
『全員が同じ目標に向かって全力だったらその集団は確かに強力だろう。でも、多様性が無いから生き残れないとは思うね』
『そう。ありがとう……じゃあ、私たちは行くわ』
そう言って離れて行く駆逐棲姫の背中に、お前の目標は何だと問いかけた。
『艦娘の中に絶対に沈めたい人が居るの』
そう答えた時の駆逐棲姫の顔は、さっきまで浮かべていた仏頂面ではなく、まるで艦娘を軒並み沈めた後の夢を語る戦艦棲姫のような顔だった。
『……そうか、頑張れよ』
ささやかな激励を送ると、駆逐棲姫が配下を引き連れて去っていった。
ああ、畜生!
私が何をしたって言うんだ!
『ふざけやがって……』
怒髪天を衝く、怒りのあまり頭を掻き毟る。
まさか、まさか夜にゆっくり星空を眺めていたら哨戒に出ていた駆逐艦が軒並みやられた上に私たちの居る島に砲撃が飛んでくるなんて思うだろうか。
『許さん……』
お陰様で平和だった島が大騒ぎだ。
鎮めた上で、警戒を厳にするように指示するのだって一苦労した。
あとは夜のうちに周囲のフリーの深海棲艦を集めて貰おう。
よし。
どこからでも掛かって来い艦娘共め。
対地攻撃は対策した。艦載機や戦艦が幾ら来ようが、私自慢の要塞を崩すことは出来ないと自信を持って言える。
……そう思っていた。
『Shit! 沿岸からの援護砲撃が激し過ぎるネー!』
『申し訳ありません。艦載機を軒並み堕とされてしまいました……この屈辱、忘れませんわ』
『監視してる時は暗くて良く解らなかったけど、深海棲艦多いね~アハハ……気が付かなかったよ』
戦っている前線のメンバーの通信を受けた大淀の顔色は悪い。
戦艦も嫌がるような援護砲撃があるせいでまともに近寄れず、艦載機は軒並み堕とされ、深海棲艦の数自体が想定よりも随分多い。
幸いにして過剰に近づきさえしなければ被害は少なくできるものの、それでは目標の集積地棲姫の撃破までに時間が掛かってしまう。
戦闘が長期化すればするほど資材に余裕のある敵が有利になっていくのも面倒なポイントだ。
『潜水艦は片付けたよー! 海中からの援護も任せて!』
一時撤退も視野に入れるべきかどうか悩んでいた大淀の下に、伊14からの通信が入った。
潜水艦が居なくなったことで出来るようになったことは何かを考えた大淀は、横で小さくなっていた文月に声を掛けた。
「文月さん、潜水艦が片付いたそうですよ!」
「ふえぇ、凄い対策されちゃってるぅ~……へ、そうなの? じゃあ何時でも行けるよ~」
先程までは陸上に砲台小鬼が多数居るという状況を見て出来ることが無いと首を横に振った文月は、新しく潜水艦が居なくなったという情報に顔を輝かせた。
「みんな準備は良い? あ、コレあげるね~」
文月が持ち込んでいた艤装は多いが、種類は上陸用舟艇と特型内火艇のみ。その内特型内火艇の一つに乗っていた妖精さんにスチュワートから受け取っていた焼夷手榴弾を手渡した。
「それじゃあ出撃ぃ!」
文月の号令の下、特型内火艇が水中に沈んでいった。
「あとは待つだけだよ~」
一仕事終わったとばかりに笑う文月は至っていつも通りの笑顔を浮かべていた。
大淀が文月の言葉を信頼して一時的に戦線を下げてから暫く経った頃。
島の一部で爆発が起きたと思ったら派手に燃え始めた。恐らく砲撃音や深海棲艦が上げる悲鳴や雄叫びも絶えず聞こえてくる。
「「「 …… 」」」
何が起こったのかと唖然とする艦娘たち。
どうしたら内火艇1つ2つでこうなるんだと思う大淀。
誰もが無言の中、文月だけが言葉を発した。
「陸戦隊も出撃~!」
その言葉が聞こえてきたのは蜂が巣を守るように、島を守ろうと艦娘から注意が逸れた瞬間だった。
お世辞にも大きいと言えない艤装から展開された小型の舟艇には武装した妖精さんが搭乗している。
全員が
残党とも言えるような駆逐級や軽巡が迫ってくる光景に、誰もが正気を取り戻した。
「「「 …… 」」」
戦闘が終わり集積地棲姫を確認に向かった一行が見たものは、燃やされて酸化し黒くなった砂浜と大量の瓦礫。燃料が燃えた独特の臭いと多くの深海棲艦の残骸だけだった。
▲――――――――――
Q.こうはならんやろ
A.妖精さん「おっ地下に燃料あるやんけ! 燃やしたろ」
・集積地棲姫
1人で努力を継続して成り上がった苦労人。
敗因はトーチカを知らなかったことと運の無さ。
攻められるのが一日遅かったらバカンスに来た潜水新棲姫も追加され、攻撃の起点が無くなっていた為粘り勝ち出来た。
・文月
内火艇や舟艇はなんか強くてカッコいいと思ってる。
みんな使ったら良いのに。
・妖精さん達
文月の熱心なファン。特殊な訓練を受けている。
文月じゃなくてこっちがだいぶおかしい。
「沿岸砲台? 堀でも用意するんだったな」
「まぁ、堀があったら艦載機に括りつけて直接投下するんだけどね! ハハハッ!」
「文月様万歳ッ! 万歳ッ!!」
次回で幕間終わり。