また忙しくなってきた……
助けてパトラッシュ……
俺たちにとって良い意味で混沌としている戦況を見て呟く。
『完璧すぎる……』
駆逐級の機動力で漁船を釘付けにしつつ艦娘たちを少しずつ消耗させていった。
始めは威勢よく反撃してた艦娘たちが少しずつ追い込まれていくのを安全圏から観察していた時は嗜虐心が鎌首を持ち上げて、我ながらヤバい扉を開けちゃったかなぁ? なんて考えたくらいだ。
それくらい、今回の作戦はハマっていた。
時間が経つにつれて有利になる戦局に深海棲艦のボルテージは上がる一方で、極度の興奮状態になった駆逐級を宥める為に駆逐水鬼は奔走しながら愚痴を零していた。だけど駆逐級が大活躍したことは事実で、その顔は嬉しそうだった。
一方で氷雨はと言うと、艦娘から補足された途端に集中砲火を受けたとのことで被害状況は深刻。また沈みたくはないと後方に引き籠ってた。
その報告を受けた時は俺の仇かよ、勝手に殺すなって鼻で笑ったけど、
そうと決まれば照れ隠しだ。恩を仇で返すようで悪いけど──
『漁船をジャックしに行こうかと思う』
『分かる言葉で話して頂戴』
『例えばチェスで、漁船はキングだ』
一番動けなくて一番
『乗っ取ればチェックメイトってね』
『乗っ取れば……なに?』
『嘘だろ?』
駆逐水鬼はチェスを知らないのか?
まぁ俺だって駒の種類くらいしか知らないから人のことは言えないけど。
『『『 ??? 』』』
おう駆逐級共はアホ面晒してんじゃないよ。
お前らが理解してるなんて微塵も思っちゃいねぇから。
『漁船の中に俺か氷雨か駆逐水鬼が入り込んで、艦娘と船員たちに『この船はいただいた!』って言えば勝ちってこと』
『それをする意味は?』
『楽しいからって嘘だよ嘘。艦娘の援軍が来ても意味が……説明が難しいな』
語彙力不足ですまねぇと言いながら肩を叩いて氷雨に頼んだとパスすると、嫌そうな顔をしながらも引き継いでくれた。
『そもそも私たちは深海棲艦の考えを大湊警備府……引いては日本の大本営に伝える使者のようなモノで、漁船を巡る攻防をしてるのは漁船と乗組員っていう人質を手に入れる為』
『人質を手に入れたら艦娘は手出し出来なくなるから援軍が来ても無駄。そのまま大湊に直行しても交渉できるって訳?』
アンタ頭大丈夫? なんて言われるけど知ったこっちゃない。
テロなんて昔からこんなもんでしょ。
『まぁそういうこと。既にボロボロの艦娘たちを蹴散らして漁船を制圧すれば、鎮守府に乗り込むっていう全深海棲艦未踏の大偉業だ。歴史を動かす準備は良いか?』
そう言うと駆逐級たちが大咆哮を上げた。
俺が煽った反応がコレとか、ライブでフロアが熱狂した時と同じ最高潮の雰囲気を感じる。凄まじい一体感と押せ押せムードがヤバい。
勢いのままに最後の仕上げだと駆逐級と小鬼たちを連れて漁船に向かうと、信じられないものを見た。
『???????』
別次元の速度に膝まで浸かってる島風がここに居るのは分かる。
扶桑さんもまぁ、
だけど……
なんで瑞鳳が居るの?
俺の困惑を後ろの
流れを止める訳にもいかず、押されるように前に進む。
ここまでやっておけば勝ち筋よりも負け筋を見つける方が難しいけど、だからと言って何もしない訳にもいかないのも事実。
『ナ級たちは戦艦に警戒! 可能なだけ撃墜して!』
『攻撃出来る艦娘は少ないから落ち着いて対処して!』
どんな指示を出そうか悩んでたら二人が部下に指示を出した。
素早く制圧。とかじゃないからかなり堅実な指示だと思う。だったら俺が出す指示は……
『
二人には出来ないような細かい指示だった。
内容は島風の封殺。手が付けられなくなるトップスピードだろうと、乗られる前に圧倒的物量差で囲んでしまえば正に俎板の鯉。
瑞鳳は俺が相手しよう。
『最後の仕上げだ、行くぞぉ!』
『『『 ウオオオオオオォ! 』』』
全員に発破を掛けたは良いものの、俺自身のモチベーションはと言ったら……ゴミだ。
何故なら俺が瑞鳳に勝とうが負けようが戦況に大した影響は無い、消化試合みたいな感じだと思ってるからだ。
それに所詮は夜戦に出てきた
『まぁやってみようか。どうにでもなるはずだ……ん?』
吹雪の中に雪とは違う煌めきが見えた。目で追い顔を向けた……その時だ。
チッ
鼻先に明らかに自然的じゃないダメージが入った。
煌めく何かを注意深く見てみると、白以外の弱い光を放っている。
『艦載機……嘘だろオイ』
誰だよ夜戦の瑞鳳は軽く相手に出来るって言ったの?
『まさか夜戦に対応してる空母が大鷹さん以外にいたとは』
「深海棲艦が思ってるより私たちだって進歩してるの!」
『成る程……面倒だな。いっちょ大破してみるか?』
そう言って海中からタコを呼び出す。白く、デカくなったタコはジャコンと、脚に持ってる砲と魚雷を一斉に瑞鳳に向けた。
連射性を棄てた代わりに瞬間火力がとんでもないことになってるから、喰らえば一溜りも無いぞ。
「
あ~、ビビッてくれよマジで……沈めちゃいけないってハンデが地味に面倒くさいんだって!
艦載機を堕とせるような砲はあるけど、夜の暗さと雪が相まって艦載機の撃墜は思ってた以上に難しい。
『助けてハ
俺の情けないヘルプに応じて数体のハ級がやって来て、飛んでる艦載機を認識するや否や撃墜しにかかった。
フェアじゃないけど、勝てば良かろうの精神だ。
如何にも悪役っぽく薄くニヤつく俺と、被弾が嵩んでボロボロになりながらも闘志を目に漲らせる瑞鳳の頭に砲を向けるタコ。
島風の方は駆逐級で構成された時々爆けるおしくらまんじゅうになってるし、扶桑さんは小鬼たちに良いようにやられてる。……やっぱり戦いは数だな!
『何か言い残すことは?』
「……スチュワートって知ってる?」
時世の句じゃなくてなんか質問が飛んできたんだけど。
『蕁麻疹が出るまで伊達巻の試食に付き合った』
そもそも俺以外の艦娘スチュワートなんて知らないけど、こんなことやったのは俺くらいだろう。
取り敢えず本人確認って事で正直に答えた。
「やっぱり……だから誰も沈まないんだ」
『深海棲艦にも色々と事情が有ってね。降伏して?』
「深海棲艦を相手に降伏したらどうなるかわからないじゃん。漁師さんたちが居るならもっとそんな事出来ないよ。……あ、ちょっと遅かったみたい」
『え?』
待って、猛烈に嫌な予感がするんだけど?
!!
タコが俺の右側面に脚を伸ばした。
直後、凄まじい音と共に脚が吹き飛び、破片が俺の体と顔にベチャっと叩きつけられる。
『ホワァイ!?』
「シッ!」
殺意を感じ取った瞬間に脊髄でバックステップ。
爆風の中から現れた影は既に、魚雷を振りかぶっている!?
『ま!? くそぁ!』
横っ飛びして回避!
さらなる追撃に備えて魚雷を投げておくと、ようやくその影は動きを止めた。
「みんな、もう安心して良いよ!」
ほぅら、嫌な予感はどんな時だってよく当たる。
聞き覚えも心当たりもあるけど、その声は今、一番聞きたくなかった。
「私が来た!!」
笑顔で胸を張ってる死神がそこに居た。
主人公『お前らぁ! 準備は良いかァ!?』
駆逐級『『『 ウオオオオオ! 』』』(フロア熱狂)
桃「キラキラを感じる」
松「こらっ! 見ちゃいけません!」