私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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178話です。

ちょっと資格取得のお勉強してたので遅れました。

……また一月空いてんよ~
もう忘れられたでしょうし、気楽に行きましょう。


回収、点火、花火

『よォ……良い夢見てたか?』

 

 おままごとサイズの布団をひっぺ返し、そう言った時の妖精さんの反応は劇的だった。

 全体的なカラーが白と黒な俺たちを見て即座に深海棲艦だと判断したらしく、見て分かるレベルで青くなった。更に口元に手を当てて白目を剥いている。

 

 さっきまでガッツリ熟睡してたのにこの変わり様。氷雨は堪えきれずに顔を背け肩を震わせ、タコは高速で体色を変化させることで煽り始めた。

 でも実際に漫画みたいな顔をリアルでやるとか、実は結構余裕あるんじゃねぇの? みたいなことを考えていたら俺たちが何もしていないのに逃げ出そうとしてた。

 

 まったく、見た目がモノクロっぽくなっただけで誰だか分からなくなるとか仕事意外はポンコツと名高い提督未満ってことだぜ? まさか不思議の塊である妖精さんがそんなザマな訳無いよなぁ?

 

『その盾は俺のだぞ?』

 

 そう言いながら盾を手に取っていつものように構えると、妖精さんがピシリと固まった。

 ……マジ? 本当に気付いてなかったの?

 というか盾が本体で俺はオマケみたいな認識されてるみたいで腹立つんだけど。

 

『お前も革命派にならないか?』

 

 意外と頑丈だし大丈夫だろうと遠慮なく鷲掴みにしてそう言うと、仕方ないなぁって感じにゆっくりと首を横に振った。

 スゴい嫌そうにするじゃん。

 でも強く反対されないってことは良いんだな!

 

『さぁ征こう、お前も歴史に名を刻む英雄となるのだ』

 

 そう言って妖精さんをタコに投げ渡し、盾が置かれてた台のサイドテーブルの引き出しを漁ったら出てきた投擲物を回収した。

 これで目的のものは全部見つけたことになるな。

 

 妖精さんはずっと俺の装備の点検(サボって倉庫番)してたみたいだから盾もキレイ。投擲物のメンテの日付もつい最近。

 余りものとは言え、氷雨もタコも準備万端。

 

『よし、参るか』

 

 

 まずは海に出る為に空母たちの相手をしなきゃいけないけど、正々堂々を好む人が多いから背後からの急襲はちょっとだけ心が痛むなぁ……でも俺にだって使命ってモンがあるのよ。

 

 『深海棲艦として艦娘を大量に戦闘不能に追い込み、尚且つ深海棲艦が優勢になったタイミングで艦娘に投降を促す』 という使命がな。

 ……めんどくさ過ぎて頭が痛くなってくるような内容だけど、俺のガバガバなプランニングによると案外行けそうにも思えてくる。

 何処かで確実に破綻するだろうけど思うだけなら自由なんだよなぁコレが。ハハハッ!

 

 う~ん、なんかいろいろ漁ってた辺りから脳内麻薬とかでアガって来たかもしれない。

 工廠で物色に時間使い過ぎたし、このノリを大切にして迅速に終わらせてしまおう。百戦錬磨の艦娘たちをどうにかするにはやっぱり勢いが大事だ。

 

 

 

 

 

 静かに扉を開けると、並んだ空母の背中が見える。皆に音を立てないように指示を出し、そっと近づいていく。

 ターゲットに選んだのは翔鶴さんだ。

 すぐ後ろに移動したけど誰一人として気づかない。集中力が仇になったなと考えながらも遠慮なく背中を押す。

 

「えっ?」

 

 何が起きたか分かってないような声を出しながら海に突き落とされた翔鶴さんを尻目に、背を押した勢いそのまま海面にジャンプ! 着水!

 そして前進しながら反転して後方で海面に尻餅を付いている翔鶴さんに魚雷を4本発射! よし3本命中! ……やり過ぎたか? 沈めてないよね? うん、ボロボロだけど沈んでないからセーフ。

 

「翔鶴姉!? っ、敵襲!

 

 予測だと瑞鶴さんはかなり狼狽える。そしてククク、どうやらその通りになったな。殺意が込められてると一目で分かるくらい引かれた弦が怖すぎる。

 でも狼狽えた瑞鶴さんが弦を絞るのより俺の砲撃の方が早い。牽制として砲弾をプレゼント。

 

「くっ!」

 

 明後日の方向に飛んでいった艦載機は無視でいいか。

 ってか朝潮の連装砲狙いやっす……良いなぁコレ。

 そして〜、そろそろ艦載機から爆弾が落ちて来そうだから盾を上に構えて……ふむ、予想よりも衝撃が少ないな?

 

 チラリと海沿いを見ると、なんとタコが俺に付いてこないで加賀さんと雲龍さんを触手で拘束していた。しかもその2人を盾に攻撃を牽制してる。

 勝手になにやってんだアイツは? でも空母のみんなが攻めあぐねてるし、かなり良い仕事してるのは間違いないから強く責められないのがなんか悔しい。

 それにしても絵面が凄まじくエッ……エゲツない。

 

『……でかした』

 

 とにかく、海に集中してた空母たちのほぼ全員が俺とタコに意識を割いた。

 当然だ。ベテラン3人があっという間に無力化されたんだ。しかもそれをやった深海棲艦()は何故か後方から現れたときた。こんなの警戒せざるを得ないだろうな。

 これだけでも空母のパフォーマンスはガタ落ちで、最前線で戦ってる深海棲艦との力関係の逆転に大きく寄与するのは間違いない。

 タコのおかげで想像以上に俺の負担が少ないから、氷雨には予定通りに中枢棲姫に提督の考えを伝えに行って貰っても良さそう……じゃない。

 

『やっぱりそう簡単にはいかないかぁ』

 

『どうするの?』

 

 そう言う俺たちの目の前には海防艦がメイン且つ少数とは言えちゃんと砲撃戦が出来る面子が集まってきた。

 タコのやらかしによって想定よりも大分楽出来てるけど、それでも俺の処理能力ギリギリの攻撃を仕掛けてくる空母の相手をしながら空母と反対方向に居る海防艦たちを砲撃戦なんて出来ないし、仮に出来たとしても加減する余裕なんて無いから“やり過ぎ”が発生しそうで怖い。

 

『手伝って貰っても良い?』

 

『任せて。貴女を沈めさせたりはしないから』

 

 キリっと顔を引き締めて砲を構え、さっそく撃ち放ち始めた氷雨が心強い。

 でも俺だって氷雨を沈めさせるつもりは無いんだよね。

 あ、翔鶴さんは艤装のバランス悪いんだからもうちょっと転んでてもろて。魚雷あげるから……無理しないで引っ込んでくれ頼むからぁ! そうそう、バランス崩して転んでれば良いの。

 

『背中は任せて!』

 

『そっちこそ。いのちだいじに ヒェッ!』

 

 瑞鶴さんが弓矢を艦載機に変化せずに直接叩きつけてきた。普段は神風特攻なんて絶対にしないのにどういうことなの……。

 でもその攻撃力はヤバいの一言。盾で防いだら大きな衝撃と共に今までで一番大きく盾を凹まされた。咄嗟の反応で防げたけど、直撃してたら爆散してたかもしれない。

 

 そしてヤバいことは続く。

 瑞鶴さんの攻撃をきっかけに、タコを警戒してた空母たちが最低限の人数を残して目標を俺に変えたっぽい。

 瑞鶴さんの猛攻に便乗する形で確実に敵を減らそうってことだろうな。

 

 これは流石に投擲物の出番だな。

 ピンチの時の切り札をこんなに早く切ることになるなんて思わなかったけど、使わないでやられるなんてもっとダメだろ。

 艦載機の数は多いけど、雪で閃光のフラッシュ効果は減衰するだろうから音響手榴弾かなと判断して缶に手を伸ばした……その時だ。

 

ドオォン!

 

『は?』

 

 タコの居た辺りから、とんでもない爆発音がした。

 ……何かが爆発した?

 

 チラリと見てみたところ、タコが爆発したらしい。

 足を1、2本くらい吹っ飛ばされたタコの足元に肌面積が随分増えた加賀さんと雲龍さんが伸びている。

 ……どういう状況!?

 

 でも、警備府の近くに居たタコが空母二人を抱えながら爆発しただけあって空母は勿論、海防艦の手も止まったらしい。

 それでも目標()に向かって機銃やら何やらを放つ艦載機は止まらず、手の止まった俺に砂利をぶつけられたような痛みからデッドボールを喰らったような痛みを与えてくる。

 そのおかげで他の艦娘よりも早く立ち直れた。

 

 同じように魚雷を回避していた氷雨も手が止まる程タコには意識を向けてないみたいで、辺りを見回したのか一瞬だけ視線が交差した。

 

 数の差はまだまだあるけど、十全に動けるのは二人だけ。

 今がチャンスだ。

 




更新遅いから今年中に終わらなくなりました。
あ~あ。
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