工廠に戻ると妖精さんが何人か寄って来た。身振り手振りだけで何を言ってるかが聞こえない。パントマイムをしている訳ではないんだろうけど……もしかして、あの妖精さんが実は凄いヤツってことだったりして……
何はともあれ妖精さん達の指す方へ向かう。
「おっ、来たね。スーちゃんに妖精さん達からすっごいプレゼントがあるよ~」
向かった先には夕張と……誰だ!? いやどっちだ!? 『提督』経験ゼロの俺には分からんぞ! 伊勢型のどっちかなのは分かるんだけど。伊勢の方かな?
「プレゼントですか? 気になります。えっと初めまして。駆逐艦スチュワートです。今日からこの鎮守府の一員になりました。よろしくお願いします」
「ご丁寧にどうも。私は航空戦艦の日向よ。…………ふぅん。悪くない」
日向の方だったか~……って悪くないって何!? 黙ってないで説明して欲しい。気になって夜も眠れなくなる。
「それじゃあ夕張、日中はよろしくねー」
そう言って夕張の返事を背に受けながら明石が工廠から出ていく。歩くペースが先程とは打って変わって遅く、フラフラしている。アレは……徹夜して作業してたな間違いない。昨夜はお楽しみだったようで。
なんて思ったけど、隣に居る明石と同じことをしてそうな夕張は妙にツヤツヤしてるし……分からないな。
「それでスチュワートと言ったな。お前もどうだ? これを見ろ。瑞雲と言うんだがな」
そう言ってプラモデルのような戦闘ヘリをどこからともなく取り出す日向。
妖精さんといい、この世界の奴らはどこにそんなの仕舞ってたんだよってくらい手品めいた方法で物を取り出す。袂…は無いし、懐も厳しそうだ。いやホントどっから出したの!?
「へ、へぇ……それが瑞雲ですか」
「ちょっとスーちゃん! 待っ「そうだ。お前にも瑞雲の素晴らしさを教えてやろう!」始まった……」
夕張の止めようとする言葉が聞こえてきた。なんかマズい事でもあるの?
しかし夕張の反応が間違っていなさった。俺が後悔し始めたのは、30分経っても終わる気配を見せない瑞雲トークにうんざりし始めた頃だった。
「――とまぁ、瑞雲の素晴らしさについては取り敢えずこんなものでいいだろう。正直まだまだ話足りないが……。私は伊勢に会って来るよ。瑞雲の話が聴きたくなったらいつでも来い。待っているぞ」
日向は工廠から去っていった。
「待たせるのはアレだけど絶対に行きたくない……
つい、そう呟いてしまった。
「それがスーちゃんの素!? うんうん、そっちの方が自然な感じがするよ。無理して丁寧に話さなくても良いんだからね?」
「素じゃないです。ちょっと疲れと悪意が混ざって口が悪くなってしまいました。それはそうと……何でしたっけ? 妖精さんからのプレゼント?」
危ねぇ危ねぇ、これで騙されてくれねぇかい夕張さん。流石に前世に突っ込まれるのは精神衛生がヤバいことになるからちょっと……
俺も妖精さんからのプレゼントは気になってたんだ。瑞雲の話で2時間もお預け喰らってたからそろそろ好奇心で
「そーそー。妖精さん達がすっごい頑張っててね、私もつい徹夜しちゃうくらい熱中しちゃってさ! 盾もある程度の目処がついてね、一週間は掛からないと思うよ! それと妖精さんが作った物はそこの台の上にあるから、妖精さんに見せてもらいなさいよ」
夕張が顔を向けた先には確かに台があった。妖精さん達がたくさん集まっている所だろう。
寄ると、自販機の小さい缶と同じくらいのサイズの何かが布に覆いかぶさっているのが目に入った。
妖精さんが布を取る。そこにあったのはやはり俺が欲しがっていた物。手榴弾! ……ではない。魚雷をぶん投げたら簡易な爆弾として成立することは知ってるからだ。ありがとう
「何よそれ? 妖精さんたちが頑張ってたのは知ってるけどそれが何なのかはイマイチ分からないのよね」
夕張が訊いてくる。やっぱり第二次世界大戦中には存在していなかったのか? 俺は武器マニアでも何でもないから分からないけどさ。
夕張が知らないって反応で俺は満足できた。むしろトマホークミサイルは知っててなんでコレは知らないんだよ……知識が微妙に偏ってないか?
「これはスタングレネード。フラッシュバンとも呼ばれます。閃光や爆音で相手の視力や聴力を一時的に奪える代物です」
駆逐艦みたいな素早く行動できる艦種なんだし、ロールプレイングゲームみたいにサポート、妨害に特化すれば良いんじゃないか? って考えを妖精さんに言ったら面白そうだって結構乗り気だったのを覚えている。
どう頑張っても戦艦とかの火力には及ばないのは予想できたから、速さを活かそうと考えた結果がこれである。
あとは純粋に中二病を発症して、衝動的に妖精さんに作って欲しいって頼んだから。きっと移動中に設計図とか書き上げてたのかもしれない。
台の上で一人の妖精さんが、偉そうに腰に手を当てて踏ん反り返っているのが見える。間違いなくその妖精さんが作ったんだろう。周りの妖精さんがちょっと引いてて、その妖精さんの周りに空間が出来ているのが面白い。
「これはこうやって使うんですよ」
そう言ってピンを抜いて、工廠の何も無さそうなところに投げる。自分の近くにポイって投げたら只の自爆なんだよね……しかも本来は屋内での使用を想定してるから海上で使うとなると性能の半分も出せないだろう。
でも常識の外側にあるものに対して適切に処置できるヤツはそうそう居ない事を俺は知っている。戦場に汚いもクソもあるか。
「ん?」
カンッと音を立てて缶は健在している。
「起爆しない?」
イイィーーン!
「「!?」」
まるで黒板を引っ掻いたような背筋にダイレクトアタックしてくる音が工廠に響く。
あぁぁ! 耳が、耳が~……
耳鳴りが治まるまでちょっとの間、耳を押さえる夕張と視線を交わす。「ちょっと! いきなりとか止めてよね!」って言いたげに睨んでくるので目を逸らす。
「いやぁ、想像以上でしたね……流石は妖精さん」
てっきり予備の鼓膜を妖精さんに作って貰う羽目になるかと思った。
「ちょっと! 耳が聞こえなくなったらどうするつもりだったのよ!?」
「私も喰らいましたのでお相子ってことになりませんか? 妖精さんが手を加えていたらしく、想定と違いまして……」
絶対に起爆のタイミングと中身弄ってあるだろコレ。特に眩しいくらいの閃光は出なかったし、これはただの音響手榴弾じゃね? フラッシュによる目の眩みが無いとかどうしてくれんの? と思ったが似たような種類の缶が沢山ある。一つずつ片っ端から投げていく訳にもいかないしなぁ……
「せめて妖精さんと会話とかで意思疎通出来たらかなり楽なんですけどね」
「それはそうだけど、私たち艦娘が妖精さんと会話出来たら提督なんて要らないし、そうなると艦娘も人間から「敵」って見做されちゃうかもね」
確かにそうだ。もし夕張が言った通りなら人間から見た艦娘は、一般人には見えない妖精さんと会話が出来て、人間並みに賢く、水上を高速で移動できる上にかなりの力を持つ人型生物。敵対したら脅威以外の何者でもないだろう。
なにせ個で見たら完全に人間の上位互換みたいなものだ。何としてでも友好的にしないといけない。そして取引をする。譲歩をする。不満が溜まっていきやがて戦争へ……
もしもの、仮にあり得たかもしれない可能性は悍ましいモノだ。想像しただけで怖くなってくる。今は深海棲艦が居るから艦娘は存在しているけど、深海棲艦が居なくなったら? 戦わない
「なんですか? ……あ〜なるほど」
明後日の方向に思考が飛んだところで妖精さんが紙を渡してきた。渡された紙には缶の種類が書いてある。
「妖精さん。出来れば中身の種類ごとに缶に色を着けて分けてください。このままではどれがどれだかすぐに分かりません。……夕張も盾の制作頑張ってください。楽しみに待ってます」
とりあえず深海棲艦はまだいるんだし、もしもの話にアレコレ考えるくらいなら目の前のことに取り組んだほうが良さそうだ。
あの妖精さんはもう居ないけど今は鎮守府の仲間が居る。1番の新参者らしく色々と指導を受けてこの世界に適応していこう。
夕張がトマホークミサイルを知ってた理由
・アイオワ級戦艦、2番艦「ニュージャージー」が退役前に積んでいたから
ってのはどうでしょう? ……ダメ? →【ご都合主義】タグをかざす これが目に入らぬか!
IFルート バッドシナリオ 『海から来たモノ達』
・艦娘+妖精さん+深海棲艦 VS 人類
希望か絶望か……人類の明日はどっちだ!?
※実装予定はありません