私の名前は「      」   作:捻くれ餅

20 / 180
20話です。

お気に入りが100を超えてました。嬉しい。
久しぶりの戦闘回? のようなナニカです。


新艤装

「……」

 

 ガンガンと響く頭の不快感で目が覚めた。昨日の歓迎会で結局お酒を飲まされて……アレ? 記憶が無いぞ? としたらその拍子に何か変な事でも口走ったとかしてないよね?

 

 それが起きて最初の感想だった。慌てて飛び起きる。そしてよく見なくても工廠の医務室じゃない。畳が敷いてあってその上に布団だ。

 

 ちゃぶ台の上にはペットボトルに入った水と何かの錠剤が置かれている。“ 二日酔いに効く! ”とメモ紙もあった。口に含んで水で流し込む。

 するとどうだろう、頭の痛みが引いていき、鳩尾の辺りの不快感がスーッっとなくなり爽やかな感覚が体中を駆け巡る。

 何これは……即効性と効果が高すぎるだろ。ヤバいもの配合されてそうで怖い。薬も過ぎれば毒となるって昔から言われてるから……

 

 他に何かある訳でもないから立ち上がって出入口に向かう。相変わらず着脱の難しそうなブーツがしっかり揃えて置かれていた。脱いだ覚えはないけれど。

 

 

 部屋の外に出たら廊下だった。なんて当たり前の感想を持ったけど人が見当たらない。人が居たら俺は何をしないといけないかを聞きたいんだけど。

 やっぱり提督の部屋に行って指示を仰ぐのがベストだろうか……忙しそうにしてたし気が引ける。となると、やっぱり見知った顔に会う為に工廠に向かうしかない訳だけど、ここがどこなのかイマイチよく分からない。窓から見る外は一階なので最悪窓から出て手当たり次第にウロウロするって方法が残されてるけど、流石に不審過ぎるからまだ止めておこう。

 

「あれ? スチュワートさん、どうしたのです?」

 

いぇあああっ!?

 

 どうしようかなぁなんて考えてたら声をかけられた! ビックリして肩が跳ねる。

 振り返ると、廊下の扉が開いていて、そこから雷と電が顔を出している。音もなく扉を開けて話しかけてくるなんて完全に驚かそうとしてるだろ狙ってやったでしょ。

 どうしてみんな俺を驚かすのがそんなに上手なのか……俺の隙があり過ぎるのか? それとも小さなことですぐに驚くほど胆が小さいのか?何か特殊な訓練でも受けてたの? だったら俺にも教えて欲しい。

 

「こ、工廠に行こうとしてたんですけど、どっちに行けばいいのか分からなくて困ってまして」

 

「だったら私に任せなさい! 付いてきて!」

 

 どことなく嬉しそうにそう言って電と俺を置いて歩き出す雷。

 

「雷ちゃんに付いていけば工廠に着く筈なのです。……誰かに頼られるのが好きなので、偶に頼ってあげて欲しいのです

 

「はい、分かりました」

 

 雷は確か「ダメ提督製造機」とまで呼ばれていたらしく、友人も雷に骨抜きにされてケッコン指輪を捧げた……らしい。

 いや、ケッコン指輪ってなんだよ。字面ヤバすぎだろ。画面の向こう側(にじげん)で良かったな友よ。リアルなら終わってたぞ。

 でもこうして頼られるのが好き → 頼る → 喜ぶ → 頼る → 喜ぶ……

 無限ループって怖くね? 確かに全部雷に任せきりになってダメになるわ。

 

 しかし残念ながら俺はそこまで色々任せるのは気が引ける人だ。そう友人に言ったら「ふざけんな!」ってビンタされたことがあるが、俺は決して悪い事を言っていないと思う。

 しばらく上機嫌な雷に付いていくと、数回は通ったであろう建物の出入り口が見えて外に出た。今日も波に輝く太陽光と潮風が目に悪い。

 

 

 

 工廠に入ると明石が誰かの艤装を磨いていた。ここまで案内してくれた雷と電にお礼を言う。

 

「困っている人を助けるのは当然よ! もーっと私に頼って良いんだからねっ!」

 

「なのです!」

 

 と、笑顔を向けてきた。是非そうしてやろうとも。雷に「ママー!」って言って盛大に頼ってみた時の反応を見るのも面白いかもしれない。……俺にそんな度胸があればな。

 ……捻じ曲がった俺に君たちの純粋さを少しでいいから分けてくれ。

 

 2人は手を振って何処かへ行ってしまった。俺も工廠の中に入る。

 

 

「おはようございます。昨日はお疲れ様でした。よく眠れましたか?」

 

 えぇ、記憶も残さず溶けるようにね。なんて言わない。そんな状態で知らない部屋まで移動できるとは思えないので、きっと誰かが運んでくれたんだろう。

 それに、歓迎会で飲酒を嫌がる俺に無理矢理お酒を飲ませた艦娘に対する苛立ちを明石にぶつけるのはお門違いだ。

 

「はい、ありがとうございました」

 

 だから無難な返答しかできない。

 記憶がなくなって気が付いたら朝ってことは、よく眠れたってことに違いないから嘘は言ってない。だから大丈夫だと勝手に納得する。

 

「それは良かったです。……そろそろ夕張が盾を完成させる頃だと思いますよ。歓迎会の後からも随分と頑張ってましたから。今日は夕張の実験に付き合ってあげてくださいね?」

 

「え? もう出来たんですか?」

 

 盾が欲しいって夕張に頼んだのは一昨日だったような……。2日で完成するって随分早いな。でも昨日の歓迎会の後ってどういうことなの?

 なんて思ったけど、そういえば妖精さんは俺の艤装を20分くらいで作ってた。まぁ、艦娘や艤装についてはプロ中のプロである妖精さんと比べるのは流石に酷というものだろう。

 だから妖精さんと比べるような発言はしない。

 でも、明石や夕張が妖精さんに劣っているかと言われるとそんなことは無い。俺だったら材料があっても艤装を作れるとは思えないし、この2人以外も多分無理だろう。そういう意味では唯一、唯二無三の能力と言えるだろう。

 艤装の作成にプラモデルみたいな手順書とかがあれば俺もまだ何とかなるとは思うけど……

 

「出来た~!」

 

 なんて嬉しそうな声を響かせて夕張が衝立? の裏から盾を持って出てきた。

 

「あっスーちゃんおはよう! たった今盾が出来たところよ。はいっ、大事に使ってね!」

 

「ありがとうございます。……うわっ!」

 

 受け取ったら想像以上に重くて、危うく新品の盾を落として傷つけるところだった……。どうせ砲弾を弾いて傷だらけになるものだったとしても、名誉の傷以外は出来るだけ付けたくない。

 

「シンプルで良いですね。大切に使います」

 

 そう言って左手で盾を持って上下左右に素人ながら盾を構えてみる。屈めばすっぽりと盾の陰に隠れることが出来た。それと、やはり艤装なのか見た目通りの重さは感じられなかった。

 

「うんうん、そうよね! 会心の出来だと思ってるわ! 早速だけど試しに行きましょう!」

 

 あっ、そういえばなんか明石が夕張の「実験」って言ってたな。まさか俺はモルモット?

 

 俺の思考を他所に夕張に引っ張って行かれる。これは俺でも分かるぞ。完成品のテストをしたくて堪らない研究者の顔をしている。さて、俺も素晴らしいモノを貰ったんだし、期待に応えられるように頑張らなくちゃいけないだろう。

 

 

 

 

 

 今は海の上。それなりに離れた場所には艤装を着けた夕張が立っている。ここに至るまで艤装が保管してあるロッカールームがあることを知ったり、夕張に優しく艤装の付け方を教えてもらったりした。

 一つだけ言い訳させてもらうと、日本への移動中は妖精さんに艤装の着脱をしてもらっていて、教えるときは感覚で具体性が無く、盗み見ようにも早すぎて得られるものが何もない状態だった。俺は悪くない筈だ。

 

「それじゃあ行くわよ~!」

 

「はーい!」

 

 なんて返してみる。距離の割に良く聞こえるのはやはり妖精さんの言う通り、艤装の効果だと言われた。

 さて、夕張の攻撃を出来る限り防いでみますか! 気持ち切り替えて、集中集中……

 

 

 

▼―――――――――――――――

 

 

 正直に言ってこれは期待以上かな……

 

 これが素直な感想だった。

 私が放った砲はほとんど全てを捌ききり、魚雷は苦手なのか対処に手古摺っていたけど大したダメージは受けているようには見えなかった。

 

 私としては大した攻撃が飛んでこないのは、あまり自信の無い回避をせずに済むので非常にありがたいけど、私の攻撃が殆ど効果なしってのは精神的にかなりクるものがあった。

 

「ホント、盾持たせるだけで何をどうやったらこんなことになるのよ……」

 

 私もスーちゃんも互いに被害は少ない。けど、消費した弾薬の量が違い過ぎる。私は間違いなくスーちゃんの3倍以上の弾薬を消費している。つまり、このままやり合っても私に勝機は無い。少なくともフェアな戦いにならない。

 もともと勝ち負けを決めるようなものではないし、ただ単に出来上がった盾の性能を見たいっていうのが主な目的だったけど、良いように攻撃を捌かれっぱなしっていうのもちょっと……そう、ちょっとだけ気に障るところがあった。

 主砲や魚雷を斉射して、防ぎようのない物量を叩きつけてみようかなんて思い浮かぶけど、それで大破されても困るのは私と明石で……う~ん。

 

「夕張さん! 後ろ!」

 

 スーちゃんから突然言われて振り返る。後ろには……何も無かった。平和そうな鎮守府が見えるだけで、深海棲艦とか楽しい事を嗅ぎつけた人(ヒマを持て余した駆逐艦)達が乱入してきたとかでは無いようだった。……引っかけられた!? と思って振り返ると案の定スーちゃんは目の前に居て、盾を大きく振り上げていた。

 

 まさか盾で直接攻撃しに来るとは思わなかった。流石は艦娘なのに盾を欲しがる変わった子。

 それでも流石に……

 

「ちょ、非常識」

 

 ズガァン―――!!

 




夕張だけ出過ぎ? だって主人公工廠に入り浸ってるんだし……

火力を犠牲に耐久力を手に入れた主人公
盾を持ってバッシュしないとかありえないよね(偏見)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。