皆さまはいかがお過ごしでしょうか?
私は休日に限って1日が48時間に延びないかなーって感じです。
俺は激怒していた。必ずやあの邪知暴虐の提督に問い詰めねばと決意していた。俺には提督の考えが分からん。俺は元々ただの一般人だ。口笛を吹いて、友人と遊んで暮らして来た。だから
とは言っても詰問って程ではなくて、ただ単に色々と質問がしたいだけだ。……なんで当事者である俺を抜きにして川内と話を進めたのかも聞きたいし。
「川内さんも執務室へ?」
「うん。寝る前に報告しないとね」
川内がノックをするとやや遅れて返事が返ってくる。
……もしかして寝てたか? だとしたら起こしちゃったかな?
確かに『艦これ』では時報は24時間あるみたいだけど、それは『
でも既にノックしたし、返事も返ってきたよ!?
「川内です。夜戦の報告に来ました!」
……お構いナシとかヤベぇな。
要件を伝えた後に執務室に入っていった川内に慄きながら続いて執務室に入る。
提督から労いの言葉を貰ってから川内が報告を始めた。三水戦は全員無事なこと、南側に進んだところで軽巡棲鬼と戦艦水鬼が現れたこと、戦艦水鬼は深手を負わせたものの逃がしてしまったが軽巡棲鬼は撃破したこと。
……俺を勝手に三水戦に入れてくれたことが報告されてないんじゃないか?
「そうか……戦艦水鬼は大きな脅威だから是非とも撃破してほしかったが、君達が無事であることの方が余程大事だ。ご苦労様。ゆっくり休んでくれ」
は~い、と気だるげに返事をしてから出ていく川内と残る俺。俺のだって色々と言いたいこと、訊きたいことがあんだからしっかりと答えてもらうぞ。
「スチュワートも疲れただろう。休んできなさい」
「はい。……ですが、休む前にいくつか質問があるのですがよろしいですか?」
「勿論大丈夫だ。何が訊きたい?」
「なんで私を条件にしたんですか?」
「そのことか……。スチュワートには悪い事をしたと思っているが、度重なる川内の無断出撃に正当な理由付けが出来るから。というのが一番の理由だ」
敷波の言う通りだった。
ここで「なんとなく」なんて言われてたら盛大に顔を顰めていただろうし、仮に崇高な理由があったところで俺に理解できるとは思えない。
それに、提督にここまでさせたってだけでどれだけ川内がヤバいのかがよく分かった。俺の鎮守府生活に早くも暗雲が立ち込める……ではなく夜の帳が降りてきたって感じだな。
「分かりました。あと……昨日は一応秘書艦でしたけど、次の人への引継ぎとかそこら辺のアレコレとかはどうなってるんですか? 終了時間とか。質問する前に連れてかれまして。……因みに今は午前5時半です」
「秘書艦業務は午前7時から午後9時までだ。私だって1日中働けるほど若くないし機械でもないからね。……他に訊きたいことはあるかね?」
「川内さんから三水戦に加入させられたんですけど……」
よし、一番言いたいことを言うことが出来たぞ。別に三水戦が嫌って訳じゃないけど……せめて他の部隊とかを見学して、自分に合ってるところに入るべきだと俺は思う。
「嘆願書を提出しろと伝えてくれないか」
「あっ、分かりました」
やっぱり無断なのね。提督も呆れ気味というかキレ気味だから今までもこういうやり取りがあったんだろうなぁなんて思う。
―― コンコンコン
背後で扉がノックされた。提督が返事をすると大淀が入ってきて、俺を見ると驚いていた。……って今日も沢山の紙を持ってる。
朝早くからお仕事お疲れ様です、と会釈したら無視された。酷い。
すると提督が、今大淀が机に置いた紙とは別の紙を俺に渡して来た。カレンダーだった。
「秘書艦をした子は次の日は基本的に休日にしている。休みは週2日で、スチュワートはしばらく土日休みで良い。そして今日は金曜日だから、ゆっくり休んでくれ」
「……ありがとうございます。あ、最後になりますけど、次の日の秘書艦の人に伝えるまでが仕事で良いんですよね?」
「そうしてもらえると助かるな。今日は確か……ハチだったな。この時間には食堂で朝の支度をしていると思うけど、もしそこに居なかったら寝ている筈だ。部屋は誰かに聞くとかして探してくれ。……夜間出撃ご苦労様」
その言葉を最後に会話が終わり、安心して食堂へ向かう。
まだ明け方なのに飯の支度とか、みんな朝から何を食わせようとしてんだよ……1時間半もあるんだけど、朝からそんな凝ったもの出すのが普通なの?
普通に白米に焼き魚に味噌汁で良いじゃん……
食堂に着いた。灯りは一部にしか点いておらず、厨房に間宮さんが居るのがチラチラ見える。
お邪魔しますっと厨房に入り、朝から一生懸命な忠犬ハチ子を探すとすぐに見つかった。明らかに厨房にそぐわない格好をしている。
なんと水着にエプロンだ。凄まじく変態チックな服装にドン引きする。もっと恥じらいを……いや、常識を身に付け……この場合はまともな制服を身に着けろ。見てるこっちが恥ずかしくなってくる。
正直話しかけたくはない。話しかけたくはないが……
「
あっちから先に話しかけられた。まあ、ここに居る以上は分かってるんだろうけど一応ね。と挨拶してから部屋に戻ろうとしたら世間話が始まった。
やれ秘書艦業務はどうだっただの、昨日は災難だったねだの……やっぱり川内は災害扱いなのね。
「あなたは好きな本とかある? ギュンター・グラスとかシェイクスピアとか」
そして唐突に読書の話題を振られた。
しかし平成の世を生き、スクリーンと睨めっこして育った俺はそんな崇高な本は読んだことが無い。シェイクスピアは名前だけ知ってる。罪と罰? を書いた人でしょ?
「
まぁこう言っておけば問題ないだろ。読んだことはあるから一応内容は大雑把には説明できるはずだ。推理小説以外はなんか途中で飽きちゃうんだよねぇ……まぁ、これらもただ読んでるだけだから俺の頭が探偵みたいに良くなる訳でもないんだけど……。
「そう……ちょっと残念。本が読みたくなったら私の部屋に来てね。海外文庫まで揃ってるから」
「それは図書室では? ……その時はお邪魔しますね」
「それって来ない人が言う台詞。……引き止めてごめんね。ゆっくり休んでね」
優しさが心に沁みる……
疲れた足取りで自室に戻って、ノロノロと布団を用意する。
それにしてもハチの用意した朝食を見たところパン派と言うことが分かった。しかも早朝という時間から考えると恐らく生地から作る本格派。一体何がハチをそこまで駆り立てるのか…
布団も敷き終わり、ダイブしようと思ったけど踏み留まる。このままの格好で布団に入るのはいただけない。布団を汚さない為にも風呂に入らないとだよなぁ……。
女の風呂、シャワー事情なんて知ったことではないけど、一昨日の夕張は演習後すぐ風呂に連行してきたんだしきっと朝とか夜とか関係なく仕事終わりにひとっ風呂って感じなんだろう。
提督やハチと話したし、夜戦してた人たちとは時間はズレてるだろう。今なら誰も居ないに違いない。
「ん? スチュワートじゃンかさー! 今から風呂? 一緒に行こうぜぇ~ほれほれ~」
「Oh…」
江風と鉢合わせた。思わず溜息を吐く。一人でゆっくり風呂に入ることは出来る日は来るのか……
※ヒント
主人公はラッキースケベも起こさないチキン野郎