私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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34話です。

2章の幕間は三本立てです。長くなったので分けました。

今回は二本立てとなっております。


2章 ~幕間➀~

・工廠の狂信者

▼――――――――――

 

 少しくらい前に、この鎮守府に知らないモノが入り込んできました。見た感じは艦娘にそっくりで、中身もほとんど違わないモノでした。

 酷い傷を負って工廠に運び込まれたので修復剤を使ったら傷が治ったので多分艦娘だと思いました。

 

 イマイチ確信が持てなかったのは、私たち妖精が艦娘を「建造」するやり方とは何かが違うやり方であることと、日本では見たことが無い艦娘だったという理由がありました。

 

 しかし、()()()妖精……とても変わった妖精の一言で全てが変わりました。

 

「こっ、これは艦娘です! 誰が何と言おうと艦娘! 異論は認めないッ! それもあの伝説の妖精が作り上げた究極のッ!」

 

「「「…………」」」

 

 私たちは「またコイツか……」みたいな顔で彼のことをジットリとした目で見つめましたが、彼は尚ヒートアップして騒ぎ続けました。

 その勢いたるや疾風怒濤の如し。島風さんよりも疾く、大和さんよりも力強く、金剛さんよりも勢いがありました。その上駆逐艦並に燃費が良いのかずっと……ずーーーっと騒いでいました。

 

 そんな問題児な彼は、平時は優秀な技術者で、どんなにボロボロに大破した艤装でも直せるので非常に頼りになるのですが、いつも偉そうに踏ん反り返っている上にこうして「伝説の妖精」が絡むと途端に頭がおかしくなるのが玉に瑕です。

 

 「バカと天才は紙一重」、「天は二物を与えず」と言った言葉が非常に似合う彼は、そんな運び込まれた艦娘の艤装を意気揚々と修理している途中で―――

 

「なんと……おぉ……おいたわしや……」

 

 なんて嘆き始め、私たちには分からない理由で泣き始めました。私や他のそういったことに慣れてる妖精は「また始まったよ……」とスルーしていましたが、慣れていない妖精は普段は頼りになる彼が泣き始めたことで非常に慌てていました。……その内慣れますから今のうちに慌てておいてください。

 

 その後何事も無かったかのように艤装の修理を終えた彼は、私たちを集めて小さな紙を広げました。そこに書いてあったことは―――

 

・死んじゃった。ゴメンね♪

・この艦娘はちょっと特殊だよ~

・彼女は盾と投擲物を欲しがっている

 

 要約するとこの三つのことが書かれていました。そして下には両端に矢印が付いたSのサインがありました。それは紛れもなく「伝説の妖精」のサインでした。

 

 私たち妖精には名前はありませんが、妖精同士でやり取りするサインがあります。これは妖精にしか見えないもので、名前の代わりになるとても大切な物です。因みに私は桜の花弁とスパナを組み合わせたようなものです。

 

 そしてその「伝説の妖精」―――がなぜ伝説かというと

 

・ジェスチャーではなく、艦娘にも提督と同じように会話で意思疎通できる

・単独で艦娘を「建造」できる

・普段は任務が無いと鎮守府から出られないという妖精の特性を無視して世界中を巡った

 

 等々……本当に私たち妖精と同じ妖精なのか疑いたくなるようなレベルでブッ飛んだ行動力のある妖精で、いつしか「伝説の妖精」だなんて呼ばれるようになっていました。

 そしてココ、佐世保鎮守府には「伝説の妖精」の熱心なファン……狂信者とでも言えるような彼が生まれました。……生まれてしまいました。 

 

「そういう訳でワタシは「伝説の妖精」の意志を引き継ぎ、彼女の望む物を作成するッ!」

 

 なんて堂々と言い張る始末。変人だから技術が身に付いたのか、技術を身に付けたから変人になったのか。コレは私の仲が良い妖精グループの中で永遠の謎とされています。

 

「まぁいいんじゃないですか? 上が優秀過ぎても下が育たないなんて言いますし、こちらの邪魔にならないなら……普段の艤装修理を同じくらいの費用で修理や艤装の作成をしてくださいね」

 

 しっかり釘を刺しておくのを忘れない。上限を設けないと好き放題し始めるのは目に見えています。

 

 

 

 ―――こうして、佐世保鎮守府に「とある艦娘専用の妖精」という名の狂信者(キチガイ)が生まれた。

 

▲――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・お酒の席 ~空母たち~

▼――――――――――

 

「油断や慢心などは、無かったとは言い切れません。最初から様子見をせずに全力で叩いておけば良かったと思っています」

 

「いや、初めから全力を出すのも手だが、耐えられると一気に相手のペースに持ち込まれることが多い。ましてや初めての相手なら互いに何をしてくるか分からないという状況だ。情報は大事になってくる。様子見で正解だろう」

 

「そうだよ~。あのパッと光るヤツで私の艦載機を落としてくるようなやつさぁ、アレは何なんだろーね?」

 

「分かりません……ですが、その他にも煙幕を張ってきたり艦載機を燃やしたりしてくるような子でしたので、結果的には様子見して良かったとも思っています」

 

「はぁ!? 煙幕って何よそれ!? 出鱈目も良いところじゃない!」

 

「でも、赤城さんがこうして愚痴をこぼすなんて本当に珍しいですね。話を聴いてる限りでは、相当変わった戦い方をするみたいですけど」

 

「そうだよぉ! あの立派な盾見てさぁ、戦艦ル級かと思ってさぁ! ほら! 赤城さんもお酒飲んで、嫌な事もパーッと流しましょうよ! 鳳翔さん! お酒追加で!」

 

 そう言われて私は隼鷹さんに日本酒を渡し、カウンターの向こうでお酒を飲んでいる面子を改めて見ました。

 赤城さん、翔鶴さん、瑞鶴さん、日向さんが、隼鷹さんにお酒を注がれていました。話のネタは、どうやら最近ここに来た駆逐艦のスチュワートさんみたいです。

 ……それにしても、あの赤城さんが駆逐艦を大破まで追い込むのに時間が掛かったっていう噂は、こうして愚痴をこぼしている時点でほぼ確定なんでしょうか? だとしたらスチュワートさんはとても防御に秀でているのではないでしょうか。

 

「おぅい! 摘まむ物はまだかー!」

 

「今作ってますよ。もうちょっと待って下さいね」

 

 ……ここの常連の隼鷹さんは本当に遠慮がありません。体が心配になるくらいいつもお酒を飲んでいます。……でも、私も注意しておきながら、なんだかんだお酒を出してしまうので、甘いのかもしれません。

 

 

 

 

 

 時間もすっかり夜遅くになってしまいました。空母の皆さんと日向さんはお酒を飲みながら談笑し続け……

 

「加賀さんに知られてしまったらどうしましょぅ……ック……駆逐艦に手古摺るだなんて一航戦の誇りが……」

 

「赤城さん! 貴女ねぇ……ッ! 一航戦の誇りは駆逐艦を落とせなかっただけで損なわれるようなモノだったの!? もしそうなら艦隊全員に謝りなさいよね!」

 

「ちょっ、ちょっと瑞鶴!?」

 

「翔鶴姉ぇは悔しくないの!? たまたま駆逐艦一人、演習で追いつめられなかっただけでダメになるような誇りを持ってる人が、多くの人から期待され、憧れとなってるのよ!? 許される筈ないじゃない! もっと堂々としてなさいよ!」

 

「…………瑞鶴の言う通りです。赤城さん。もし立ち直れないようでしたら、一航戦の看板、二航戦のお二人か私たちに譲ってください」

 

「それは……」

 

 えぇーっ!? いくらお酒が入ってると言ってもこの話はかなりとんでもない内容ではないでしょうか!?

 驚いて店内を見回して、他に誰も居ないことを確認してホッと一息つきます。流石に内容が内容ですので、他の方には聞かせられないというか……。

 隼鷹さんには、お酒を回したからには責任を持って収めて貰いたいです。

 

「うひゃひゃひゃ! 良いねぇ良いねぇ、やっぱり酒の席はこうして騒いでナンボよぉ! グチグチとチビチビとやってちゃ詰まらないよ!」

 

 ……期待できそうにないですね。 日向さんはちょっと離れたところで顔を伏せています。……寝てしまいましたか。毛布を掛けておきましょう。

 

「……瑞雲は……良いぞ……」

 

「ふふっ」

 

 ……寝てても瑞雲ですか。らしいと言えばらしいですけど、他にも素敵な艦載機は沢山あるので、そちらにも目を向けてほしいですね。

 

 

 

「それは……出来ません」

 

 ずっと黙っていた赤城さんが口を開いて言葉を発しました。凄まじい葛藤があったのでしょう。かなり汗を掻いていていて、髪が頬にくっついてしまっています。

 

「もう一度、互いに全力を出してスチュワートさんと演習をします。前回は彼女、魚雷を撃ってきませんでした。私だけが一方的に攻撃するのはフェアじゃありません。互いに全力で、後から「まだ全力じゃない」っていう逃げ道すら残させないような状況で、叩き潰します」

 

「「「……」」」

 

「それでですけど、スチュワートさんは、先ほど隼鷹さんが言っていたように盾を持っていてかなり頑丈な上、謎の手段で艦載機を落としてきたりと、一筋縄では大破まで追い込めません。翔鶴さん、瑞鶴さん、隼鷹さん、ひゅ……鳳翔さん。彼女を倒すために知恵を貸してください」

 

 赤城さんはそう言って頭を下げてきました。防御性能が高い艦を、みんなで協力して倒す……なんかちょっとワクワクしてきますね。スチュワートさんはちょっと可哀そうですけれど……。

 

「分かりました。挑戦や研鑽をし続ける限り、私は赤城さんを一航戦だと認めますよ。一緒に知恵を出し合いましょう」

 

「ふふっ、翔鶴さんは優しいですけど、甘くは無いですね」

 

「ほ、鳳翔さん! ……ハァ……瑞鶴もそれで良い?」

 

「そう言われたら仕方ないわね。なんかズルいような気もするけど、これで倒せなかったら許さないから! 空母たちの威信をかけてると思ってよね!」

 

「あ~私は今はパスで。ちょっと飲み過ぎてね~、難しい事は考えられないや。アハハ~!」

 

 

 

「……う~ん……瑞雲を出せ~……Zzz……」

 

 

 

 この会話をスチュワートさんに伝えたら……

 

「へぇ、それは……楽しそうですねぇ!」

 

 乗り気でした。そして、この時の居酒屋での会話がきっかけでこの後、スチュワートさんにいかに大ダメージを与えたり、撃破できるかといった一つの挑戦、「スチュワートチャレンジ」なるものが生まれ、スチュワートさん自身も防御力の向上に役に立つみたいなことを言っていたりするのは、別の話です……。

 

▲――――――――――




投稿開始から二ヶ月目です。
早いものですなぁ。
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