私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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36話です。

始まりました。始まってしまいました3章!

タイトルに悩みました……

3章は飛ばしても読めるように頑張ります。


ブラック鎮守府
始まり


「君は佐世保鎮守府の提督を殺害した。間違いないね?」

 

「確かに提督は撃ちましたけど、アレを提督だと私は、佐世保鎮守府の皆は絶対に認めませんよ」

 

「……そうか。私は、君が提督を撃つまでの経緯を詳しく知りたい。話してくれないか?」

 

「分かりました。事の始まりはこうです──」

 

 そんなに聞きたいなら聞かせてやるよ。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 やっぱりお通夜みたいになってる……

 

 それが人の人数からは考えられないくらい静かな食堂に入ったときの感想だった。

 前を歩いていた夕雲型の4人も、食堂の雰囲気から既に提督が鎮守府に居ないと思ったのか、廊下までしていた談笑を止めた。

 鬼怒は報告に行くと言って執務室に行っている。後任の提督が居るかは分からないけど、居ないなら居ないで大淀あたりが秘書艦の椅子に座っているだろう。

 

 やっぱり提督の影響って大きいんだなぁ……普段は執務室からあまり出てこなかったりするから、レアモンスターよろしく殆ど会ったりしないというだろうに……。

 

「あ~……秋霜? 早霜の料理食べてみたいなぁ~なんて……美味しいって言ってたから」

 

「う、うんうん! はやはや、うちもハラペコだからご飯作って~。たかたかときよきよも食べるよね?」

 

 陰鬱な食堂の雰囲気を少しでも和らげようと話を振ると乗ってくれた。食堂中の視線が突き刺さるけど負けてはいけない。この無言の圧力とでも言えるような食堂の中で、それなりに明るい話題を途切れさせたら病むわ。

 

「……分かりました。準備してきますので、しばらくお待ちください」

 

 そう言って早霜は厨房に消えていった。間宮さんの料理も美味しいけど、姉妹達から評判の料理はどんなものか気になる。

 

 五人が座れるようなスペースを見つけて座ってお喋りをする。早霜の料理の話題から俺の盾の話題、そして次の提督はどんな人なのかといった感じで話続けていた。

 

「……そういえば、なんでこんなに雰囲気暗いのか分かります? 提督が居なくなったっていうだけでここまで暗くなるのは流石におかしいんじゃないかと……」

 

「いやー、うちに言われてもねぇ」

 

「後任の司令官がとっても嫌な人だったりするかも、です?」

 

「えぇ~……。高波姉さん怖い事言わないでよー! 清霜は戦艦にしてくれる人なら誰でも歓迎! って思ってたんだけど、酷い人でみんなが傷付くのは嫌だな」

 

 あ~なるほどね、新しい提督が良い人だったり有能だとは限らないってことか。それでみんな不安になってると……そんなところかな?

 

「きよきよ~! やっぱりいい子だねぇ~!」

 

 秋霜が清霜に抱き着いた。実に目に良い光景だね。良き(かな)良き(かな)

 

「あっ、ここに居た! 私も一緒に食べて良いかな!?」

 

「どうぞどうぞ、鬼怒さんはこちらへ……」

 

 鬼怒がやってきたので隣に座らせる。話のタネ結構持ってそうだから楽しくなりそうだ。

 

「鬼怒さん、新しい司令官には会ってきましたか? 私達どんな人か分からないから教えて欲しいかも、です」

 

 そんな高波の質問は俺も訊こうと思っていたヤツだ。むしろこの場の誰もが知りたい情報だろう。俺たち以外に誰も喋ってないから静かだったけど、その誰もが鬼怒がどんな言葉を発するのか耳を傾けているように感じた。

 

ねぇ、なんでこんなに静かなの?

 

きっとみんな不安なんだと思います

 

そう? ……執務室には……大淀さんしか居なかった!」

 

「そうですか……新しい司令官はまだ来ないというのね……どうぞ、舞鶴仕込みの肉じゃがです……。鬼怒さんの分は今からよそいますね」

 

「やったー! はやはやの肉じゃがだー! いっただっきまーす!」

 

「秋霜。早霜と鬼怒さんと一緒に食べ始めたほうが良いかも、です」

 

 そんな会話を聞いてると小、中学生みたいだなぁ~なんて思う。多分世間一般の感想は「守ってもらえるのは有り難いけど、小っちゃい子に戦いをさせるのは申し訳ないと思う」って感じだろうか。

 目の前では清霜が早潮に「もっと頂戴! いっぱい食べて戦艦になるんだ!」なんて言っていた。おいおいマジ!? 駆逐艦でも戦艦になれんの? だったら俺も大盛りにしてもらおうかな……。ん? 何さ高波。あっ違うのね……。頑張れ清霜、応援はしないが祈ってるぜ。

 

 

 

 

 

 いや~早霜の肉じゃがは美味しかった。秋霜の言う通りだったわ。なんていうか……味が染みてて美味さが2倍! 空腹が相まって更に2倍! 早霜の手料理補正で更に3倍の合計12倍美味しいね!

 

「やっぱりはやはやの料理は美味しいねぇ……これが食べれるなんて幸せ者だよ」

 

「鬼怒さんも、スチュワートさんも……お気に、召しましたか?」

 

「勿論! 間宮さんにも引けを取らないくらいだったよ」

 

「秋霜が絶賛する理由が分かりました」

 

「そうですか……それは良かっ「でしょー!? はやはやの料理は美味しいんだって!」」

 

 その後は、普段なら各自風呂なり自由時間になるのだが……俺は、俺たちは食堂で新し提督が来たという知らせをお喋りしながら待っていた。

 箸の扱いが海外の方にしては上手だとか、鬼怒の姉妹についてだとか話していた。

 

 8時を回り、夜の五月蠅いのが今日は静かだねという話題になり……

 

 9時を回り、新しい提督はどんな人か予想しようかと話題になり……

 

 10時を回り、話題が無くなってきて、秋霜がトランプ持ってきたり……

 

 11時に差し掛かった頃に長門が来て「いつまでもただ待っている訳にもいかない。各自明日に備えて休め」と言ってきたけど誰も食堂から出て行かなかったり……

 

 そして11時を回った頃――

 

 

 

 勢い良く食堂の扉が開け放たれた。

 

「新しい提督が来たよー!」

 

 そう言いに来たのは島風だった。その一言で静かだった食堂内に音が戻る。

 流石に嘘や冗談ではないだろう。この状況下でそんなことをしたら物凄い顰蹙(ひんしゅく)を買うことは間違いない。最悪の場合は折檻モノだろう。

 

「Hey.島風! よくやりましたー! 全員で新しい提督をお出迎えデース!」

 

 そう言って騒ぎ出す金剛。やっぱり提督ガチ勢って凄いんだなぁ……さっきまで物言わぬマネキンみたいだったのにパッと華が咲いたように……

 

 

 

 食堂内に島風が戻って来た。大淀に食堂に連れてくるように金剛からの伝言を伝えて来たそうだ。どんな人だったか訊かれている。

 

「タクシーが見えたよ。鎮守府に出向と遠征以外は全員居るし、時間的に提督しかありえないよ」

 

 と言っていた。そんな証拠があるならほぼ確定だろう。

 

 

 

 食堂の扉が開き、険しい顔をした大淀が入ってくる。

 

 ……なんて顔してんのさ? 仕事のし過ぎで体調不良にでもなったか?

 多くの人も訝しんでいるみたいだ。

 

 

 

 提督が入ってきた。

 

 背は高くガッチリしてる男で、髪は短めでそれなりに若い。おそらく40前後だろう。

 新しい提督は鋭い目つきで食堂内を見回す。

 

「俺がここの新しい提督の黒川だ。……それじゃあこれからお前たちには遠征に出てもらう」

 

 その言葉で俺は直感的に察した。

 これは、『艦これ』二次創作で見かける典型的なブラック鎮守府の提督だと。そりゃあ大淀の顔も険しくなるわ。

 

 食堂の大勢が初めは何を言っているか分からないといったようにポカンとしていた。そして数舜の間を開けて食堂がまたざわつき始めた。

 

「ま、待ちやがれ! 今から遠征!? 哨戒じゃないのか!?」

 

「俺は遠征と言ったんだ。聞こえなかったのか?」

 

 摩耶様が突っかかったが言い間違いではなかったらしい。そして隣に居る大淀に声を掛けた。

 

「は、はい何でしょうか……」

 

「一番事務仕事出来る奴はどこだ?」

 

「わ、私です……」

 

「じゃあすぐに班を編成して出撃させろ。……早くしろ!」

 

「……了解しました……」

 

 そう言って縮こまる大淀。

 摩耶様も突っかかってたし、周りの反応を見てもおかしい仕事なのになんで拒否しないのか。後で聞いてみるか。

 なんて考えてたら軽巡と駆逐艦、潜水艦は集まるように言われたから俺も呼ばれた方へ行く。横目で提督を見ると、戦艦や空母がが多く座っている所を睨んでいた。……あれは提督と呼びたくないなぁ自称提督でいいか。

 

 大淀の割り振りで決まった俺の班は、長良、初月、望月、黒潮、旗風だった。

 

 互いに挨拶を交わして準備に入る。

 確か提督が言うには遠征って場所によっては日を跨いで行うものだから食料品とかの管理もしないといけないんだっけ?

 初月に付いていくと、缶詰が沢山置かれている部屋に入った。

 

「遠征用食糧庫? へ~……」

 

「スチュワートか。間宮さんの食事に慣れていると辛い目に遭うかもしれないね。それにしたって……新しい提督は随分と嫌な感じがするな。あ、そっちの方に牛の缶詰があるはずだから取ってくれないか?」

 

「何個で?」

 

「……8個くらいで大丈夫だろう。ありがとう」

 

 そうして食材と寝袋や簡易テント、調理器具、燃料などを入れておく容器を持って準備が終わった。

 

「あとは艤装を着けて出撃か……」

 

 持ち物を見る限りだとキャンプでもするつもりなのかね? 随分楽しそうじゃん。でも業務だって言うくらいだし、そんな優しいものじゃないと思うんだけど……想像出来ねぇ……。

 

 

 

 提督が鎮守府を去り、新しい提督の風上にも置けないようなヤツが鎮守府に来た日は、夜遅くに突然遠征に駆り出されるという、異例の事態で終了した。

 

 

 

 この日を境に地獄のような日々が始まることになる。

 




と、いうわけで、今まで居た提督は何事もなく引退しました。
おい、引継ぎちゃんとしとけよ。

 急展開を求めてた方はごめんなさいです。


曙ちゃん、コイツはクソ提督じゃないよ。ただのクソだよ。
暫くは遠征の描写があるのでそこまで酷くはならないと思います。

Q.何で数日も掛かるの?
A.どうでも言ところで妙にリアルさを求めたから。
 例えばミンダナオ島まで島風(40ノットとする)が往復すると、24時間動いても2日以上掛かります。

艦娘だって食事や睡眠は必要でしょうし、速過ぎると今度は体が持たないと思いました。
本作の独自設定としてこうさせていただきます。ご理解のほどをよろしくお願いします。
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