私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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40話です。

Q.こんなヤツが提督になれたのは何故?
A.創造神(作者)の力です。



距離と時間 速度は?

 黒潮と長良、意外なことに望月も哨戒に行ったので、今残っているのはスヤスヤと眠る海防艦たちに付いている旗風と、他の艦娘達はどこに行って何をしているか話している俺と初月とイムヤだけだ。

 

「それで、戦艦、空母、軽空母、重巡が出撃したって言ってたけど……本当か?」

 

「本当みたいよ。「安全な海を取り戻すの為には一刻も早く、少しでも多く深海棲艦の数を減らす必要がある」とか言って無理やり出撃させたの。信じられないよね!?」

 

「提督の言いたいことは分かるし、理屈も間違ってる訳じゃない……でもいくら何でも急すぎるし、前提督はゆっくり確実に深海棲艦の居ない海を広げていくつもりだったからやり方が違い過ぎる。大本営としては鎮守府ごとの方針は各提督に一任しているのか?」

 

「さぁ? そんなこと私が知る訳ないでしょ。……それよりも! あなた、スチュワートだっけ? みんなが出撃して目標にしている所に向かってくれない? あの提督、空母や戦艦ばっかりの編成で出撃させたから駆逐艦も潜水艦も居ないのよ!」

 

「それは……本気なのか? 敵潜水艦が居たらどうするつもりだ?」

 

「えっと……大丈夫、じゃあなさそう?」

 

「そう! 大丈夫じゃないのよ! でも私はここを離れられないし……」

 

 初月が俺を見る。そして頷いた。

 

「スチュワート、僕はここで防衛をする。だから君がみんなの支援に行ってくれないか?」

 

 ……1人で!? ちょっと無茶振りが過ぎるんじゃない?

 

 でも……仕事を任されるなんてなんか信頼されてるみたいで嬉しくなっちゃうね。ちょっとニヤニヤしてきたかもしれない。

 

「分かりました。艦隊の支援ならお任せあれ~」

 

 ふざけてワンクッション置いてから立ち上がる。

 

「皆さんはどこを目標に出撃しに行ったんですか?」

 

「ソロモン海域よ……」

 

「何!? ソロモン海域だと? どれだけ長期間掛かると思って……。大型作戦並じゃないか!」

 

 初月が声を上げる。

 ソロモン海域? って夕立とか綾波とかが頑張ったヤツだっけ? 綾波の活躍はにわかの俺でも涙が出ちゃうんだよね……。

 でも単語は知ってるって感じだけど場所がどこなのかは分かんない。ソロモンってヨーロッパっぽいけど実はイスラエルとか西、南アジアの方なんだっけ?

 それに大型作戦並って……絶対に即決で「よし、やろう!」みたいなノリでやっちゃいけないヤツでしょ。それに、ゲームの脳筋(チンパンジー)プレイしか出来ないようなヤツの計画で攻略出来るとは俺は思えない。

 艦娘たちは俺以上に無理だって分かってる筈だろうに……多分功を焦って職権乱用して反対意見を封殺したんだろうなぁ。

 

「大淀さんも他の皆も反対したの! でも、止められなくて……」

 

「分かってる。……こうしている暇は無いぞ。やっぱり僕も行く。準備を始めよう」

 

 あ、結局初月も来るんだ? ってどこ行くねーん!

 

「一緒に遠征用食糧庫まで来てくれ。2人分だとしてもそれなりの量になる。……速くしろっ!」

 

「イ、イェス(Y e s)マム(ma'am)!」

 

 

 

 

 

「……僕はあの提督に心底失望したよ」

 

「だろうね」

 

 遠征用食糧庫……3日前に俺たちが食べる缶詰が置いてあった部屋だ。あの時は缶詰が大量に置いてあってしっかり整理されていたけど、俺たち以外にも遠征の班で消費する上に、初月曰く当然、大型作戦にも食べ物は必要な訳で……

 

 つまり何が言いたいかというと、缶詰はほとんど残っていなかった。沢山はあるのだが、何せ一般家庭と違って人数が多い。これでは他の遠征班が戻ったとしても再び出撃するのは無理だろう。飲まず食わずになる人が出てきてしまう。

 

「3日もあったらそれなりの準備が出来てると思うんだけどな」

 

「それすらもやらない馬鹿者だったってことか……ハァ」

 

「でも大淀さんが見過ごすとは思えないですね」

 

「確かに。……まさかとは思うが──

 

「「止められた?」」

 

 もしそうなら正真正銘のクズだ。そもそも見た目女子供の艦娘、それも海防艦をあんな目に遭わせて、更に事務は大淀に放り投げてる時点で情状酌量の余地無しって感じだけれども……

 

「……いや、それどころじゃないな」

 

「まずは戦艦たちの支援に向かわないと」

 

「ああ。不幸中の幸いだが、戦艦が多数でしかも集団行動していたとなると当然、駆逐艦よりも速度は出ない。最低限の荷物だけ持って全力で追いかけるっていう手もある。……これで行こう!」

 

 戦艦たちを全力で追い駆けるってこと? 3日近くのハンデは流石にキツいと思うんだけど。でも、みんなが通ったルートなら深海棲艦も蹴散らされてるだろうし、索敵も捨てて速度極振りで良いのか。だったらワンチャンありそうかな?

 そうなると準備は手慣れてる初月に任せよう。

 

「じゃあ私は工廠に行ってくる。便利なモノあれば貰ってくるよ」

 

 ……決してこんな状況なのに挑戦的な笑みを浮かべる初月が怖くて逃げた訳じゃない。

 

「そうしてくれると有難い。ああそうだ。長10㎝砲、一緒に行っておいで」

 

 

 

 

 

 

 

「お~い? もしも~し?」

 

 返ってくる返事はない。妖精さんはいつもより大分数か少ないけど何人か残って忙しそうにしている。

 

「明石も夕張も出て行っちゃったのかな? 非戦闘要員みたいなこと言ってたような気がするけど……」

 

 明石はアイツ(提督)の脳ミソをクリーニング出来なかったのか……。綺麗なジャイ○ンみたいに妙に気味悪くなったらなったで害になるから、最初から救いなんて無かったのかもしれない。

 これは誰かが提督を海の藻屑に変えるまでは一切状況が好転しないまであり得るな……。

 

 あ、手の空いてる妖精さん見っけ。

 

「妖精さん、探照灯ください。あとこの子を出来るだけ早く。お願いします」

 

 すると妖精さん達を掻き分けて現れたやけに偉そうな妖精さん。

 その妖精さんが持っていた探照灯を受け取って、俺が受け取ったと同時に長10cm砲ちゃんを引ったくるように奪い取って工廠の奥に消えていった。

 

 ……アイツもしかしてあの妖精さんの分身だったりしないよね?

 アレだ。ゲームとかの主人公に付いてくるお便利キャラ感が半端じゃない。

 

 しばらく待っていると、初月が工廠に入って来た。

 

「こっちの準備は終わった。……僕の長10cm砲は?」

 

「妖精さんに攫われましたよ。……それで、どんな計画ですか?」

 

「まず僕は、高角砲と機銃を置いていく。君も高角砲を搭載しているようだが、必要ないだろう」

 

「どうしてですか?」

 

「空母や軽空母、重巡が出張ってるんだ、僕らの高角砲は大した価値が無い。求められるのは一早く追いつく事、そして魚雷だ」

 

「対空は必要ないから魚雷を持っていくってことですか?」

 

「そうだな……あ、妖精さん。改良型艦本式タービンと強化型艦本式缶。の組み合わせを2つ貰えるか? うん、そうだ」

 

 初月が妖精さんに何か言ってる……まるで魔法の詠唱みたいだ。

 それにしたってタービン……聞いたことはあるんだけどなんだったか。

 

 原動機やんけ!

 

「え? 攻撃手段は主に魚雷だけで、タービンで速度にブーストを掛けることで早く到着するってこと!?」

 

「そうだ。艤装の機能をほぼ全て速度に充てる。幸い手が空くから長10cm砲は連れていける。君も取捨選択を……って必要は無さそうだな」

 

 まぁね。盾と投擲物で両手は埋まっちゃってるんだよね。初月の周りに妖精さんが集まってきて高角砲を除いてタービンとかを取り付けている。途中で初月も干渉がどうとか言ってたけど、ああいうのは慣れと経験からくるんだろうなぁ……。

 俺の場合は高角砲を取ってそこに着けるだけで済んだから関係ないんだけど。

 

 

 

 

 

 準備が終わって海の上。俺と初月は最後の確認をしていた。

 

「早く到着しなければならないから、基本的に移動しっぱなしだ。かなりの忍耐力が求められる上に体力勝負だ。……行けるか?」

 

「勿論さ」

 

 艦娘は知らないだろうけどなぁ! 多くの人間には部活動なる先生に理不尽に怒られながら只管(ひたすら)走らせられるような文化があるんだぜ?

 それに、多少の我慢なんて危機に瀕してたらアドレナリンの力でどうとでもなるに決まってるんだよなぁ……。

 

「頼もしいじゃないか。……よし、行こうか」

 

「ヘッ……戦艦たちに追いつくまで、精々楽しいデートにしようじゃないか」

 

「お前は何を言っているんだ……」

 

「い、1日で追いついてみせようか」

 

「そうだな。それが出来れば最高だな」

 

 辺りは暗くなり始めていた。俺たち……俺は適度にリラックスしていた。

 

 

 

「では……初月、出撃するぞ!」

 

「駆逐艦スチュワート、行きまぁす!」

 

 

 

 

 

 タービンの力ってすげーなー。サラマンダー(ハインケルHe162)より速いかもしれない。

 前方に影を発見! あの特徴的な天使(死神)の輪は龍田か。

 

「あら? 二人してどこ行くのぉ~……!?」

 

 ドップラー効果を伴って聞こえなくなる龍田の質問。時間も時間だから多くの遠征班とすれ違い同じことを訊かれた。

 ただでさえ高速だったのに俺たちは今、それを越えている。しかもすれ違うんだから会話なんて出来ない。それでも、俺と初月は止まることなく――

 

「「ソロモン海域で待ってる!」」

 

 そう叫びながら今はただ、目的地へ。

 




今回の大型作戦(笑)は失敗させます。全部提督ってヤツの所為なんだ! むしろ駆逐艦ナシで成功するわけがない。

初月を遠征班に混ぜたのは食糧庫のくだりがやりたかったからです。
沢山在った物資が無くなっていくのを描写したかったんだけど……私の文章力では無理がありました。
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