私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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41話です。

こんなチンピラみたいでバカ丸出しの提督モドキを出したかった訳じゃ無かったのに…


都合のいい救世主は現れない

▼―――――――――――――――

 

 屈辱だ……。

 

 目の前には深海棲艦の残骸が大量に浮いている。こちらの被害は軽微で敵は “ ほぼ ” 全滅状態だ。それだというのに……

 

「総員! 一気に引き離すぞ! 金剛たちに続け!」

 

 そう言わざるを得ない。まだ目標地点の半分どころか二割も移動できていないのに、様々な問題のせいで思うように進めない。

 

 これでもかと言うほど湧いてくる水上艦は問題ではない。あの愚か者(提督)が組んだ編成では水上の敵は簡単に制圧出来る。

 

「くっ……潜水艦共め……」

 

 しかし水面下からジワジワと少しづつ、だが確実に被害を与え続けてくる潜水艦が問題だった。伊勢型の二人や軽空母、戦いは苦手と言う夕張が頑張ってくれているが、疲労から動けなくなるのは時間の問題だろう。

 

「こんな時に軽巡や駆逐艦のみんなが居てくれれば……って顔してるわ」

 

「陸奥……」

 

 横から声を掛けてきた陸奥の言葉の通りだった。ここに居る全員がそう思っているだろう。

 出撃から四日、未だ大破まで追い込まれた者は居ないが、明石は一人しか居ないし、妖精さんだって鎮守府から全員来てもらうなんて出来なかった。それに資材の問題もあるのだから頭が痛い。

 私は出撃してからすぐに全員である程度固まりながら移動することを提案した。班分けしてそれぞれ別のルートから移動することも考えたが、固まった方が被害は少なくなると判断したからだ。

 

「あぁ、その通りだ。新しい提督は我々の期待を手酷く裏切る者だったな。所詮は軽巡、駆逐艦と侮ったのだろう。彼女らにも遠征以外の重要な役割があるというのに……」

 

 結果としてはどうだろう。確かに基本的な被害は少ないと思う。潜水艦以外からの被害は殆ど無いと言っても良いだろう。だが、これまでは運が良かった。たまたま、夜間に深海棲艦が大挙して押し寄せたりしなかったのだから。

 そして、それがこれからもも続くとは限らない。

 

「そろそろ日が落ちるな……遠征に行った駆逐艦たちは無事だろうか……」

 

「「長門さん!」」

 

 大鷹と青葉が大きな声で、だが真逆の表情で私の前にやって来た。

 

「なんだ?」

 

「私の子たちが前方に多くの潜水艦を発見しました! どうしますか!?」

 

「「なっ!?」」

 

 大鷹の言葉に私と、陸奥も驚いた。

 つい先程、潜水艦から逃げるように移動してきたばかりなのに前方にも潜水艦だと!? 後方の奴らが追いかけてきていたら間違いなく潜水艦に挟まれている状況だ。……夜間も近いし、少々拙いか?

 

「……済まない大鷹。もうひと頑張りだ、頼む」

 

 大鷹には無茶を強いることになってしまうが、皆の安全の為にもやってもらうしか無い。

 だから私は、こうして頭を下げるしかなかった。

 しかし、その貧乏くじを引かされた筈の大鷹は思っていたより爽やかな顔をしている。

 

「長門さん。私は大丈夫です! 心強い小さな味方がもうすぐ来てくれますから!」

 

 その言葉のすぐ後に、後方から低い爆発音が聞こえた。

 

▲―――――――――――――――

 

「見えた!」

 

「探照灯を貸してくれ!」

 

「ほい」

 

 遠くの方に星とも都市のネオン管とも違う光が見えた頃、初月が戦艦たちだと判断した。

 俺はもうヘロヘロなのに隣の初月はそれらしい反応は無いし、戦艦たちだと確信するのも早いし……練度が違う。

 そしてありがとうなんて言ってからカチカチ灯りを点けては消してを繰り返す。これはまさかモールス信号? まるで映画を見てるみたいだ……。

 

「よし……さて、ラストスパートだ」

 

 丸一日移動し続けた俺と初月は、遂に戦艦たちと合流することが出来るらしい。きっとあの後にもイムヤから話を聴いてこっちに向かっている人も多いだろうし、ここからが踏ん張りどころか?

 

「……っておい待て! 潜水艦が居るぞ!」

 

「えっ」

 

 敵の潜水艦を発見!?

 慌てて止まると、手前の海面が弾けた。

 海の下でも見えてんのか? 潜水艦が居るってどうして気が付けるんだよ……化け物か。

 まぁいいや。俺たちは俺たちの役目を果たさないと。

 

「魚雷発射ァ!」

 

 確か演習で夕張の魚雷を見た限りだと『艦これ』世界の魚雷ってある程度ホーミングするんだよね……。一見オーパーツと思えるけど、艦と艦娘はサイズの違いがヤバいからね。ちょっと考えると、ある程度のホーミング性能でも持ってない限り当たる訳無いんだよね。

 つまり「前方に潜水艦が居る」って分かってたら前方に魚雷を放つ。すると、ある程度の命中率は確保されるらしいってことを初月に聞いた。

 ……魚雷に操縦席でも設置されてんのかね? そしてそこに妖精さんが座って神風(カミカゼ)アタックよろしく自爆特攻しているのだとするとホーミングには説明が付くような気がする。だけど乗ってた妖精さんがどこに行くのかは……謎だ。

 

 

 ホーミングするからと言って放った魚雷が水飛沫を立てて進んでいく訳でも無いとなると、どこにあるのかは正確には分からなくなるから不安になる。「だいたいあの辺」って感覚的に分かるだけでも相当だと思うけど、やっぱり目で見えないからしっかり命中したかどうかは分かんないんだよね。

 そもそもそういう時の為のソナーなんだろうけど、そうすると高機動型魚雷発射装置に完全変体するから勘弁してほしい。潜水艦にブースターでも付けてた方がまだ良いだろう。

 

 ズシンと花火みたいに体の芯まで響くような低い音と衝撃を複数感じてからしばらく、海面に貞子みたいなホラーチックな女が虚ろな目を浮かべながら浮かんできた。そのほかにも黒い破片とか腕やらなんやらと色々と一緒に。それも大量にだ。

 

「キモ……」

 

「……うん、片付いたみたいだ。これから一度艦隊に居る長門のところに行って指示を仰ごう」

 

「……了解です」

 

 

 

 俺と初月は多くの重巡や空母たちから歓迎された。

 俺たちが来た方向とは反対方向、つまり前方ではまだ爆撃の音が聞こえる。どうやら潜水艦から挟まれたところに俺たちが到着したらしい。

 

「初月、スチュワート、よく来てくれた。潜水艦だけは我々だけだと厳しいからな……本当に助かった、ありがとう。……それにしても早くないか? 我々が出発してからまだ四日目だぞ?」

 

 長門がお礼と共にそんなことを言ってくる。

 いや~大変でしたなぁ……。何せ遠征明けから徹夜で移動し続けたんだもの。

 初月が長門に説明している隣で俺は結構頑張ったんだぜ? って感じでドヤってよう。別に罰は当たらねないだろう。

 

私だって嫌だったさ!

 

 ホワイッ!? 何事!?

 

「だが「出撃しないヤツは解体だ」なんて言われたら……行かない訳にはいかないだろう! 違うか!?」

 

「Wait! 本当にあの時そんなこと言ったんデスか?」

 

「ああ言っていたとも! そうでもなければ軽巡も駆逐艦も居ない編成で出撃なんてするか!」

 

 長門のその言葉を聞いた人たちの怒りのボルテージが目に見えて上がっていく。

 

「それはあの野郎が軽巡と駆逐艦を無理矢理遠征に行かせたからだろーが! おかげであたしらがいつも以上に危険な目に遭ってる! 編成のバランスも考えないようなヤツの言う事は拒否すれば良かったんじゃねーか!?」

 

「ああその通りだ。だが「解体させる」なんて脅しが出た時点で出撃せざるを得ないだろう? 実際に解体するかは分からないまでも、今まで苦楽を共にしてきた仲間が理不尽な理由で解体させられるのは本意では無い」

 

 長門は俺が知る限りでは時には頼れる大人として、時には意外と子供っぽい一面を見せる魅力的なキャラクターだったけど……こうして見ると本当に艦娘の中のリーダー格って感じがする。

 

 そんなリーダー各の長門だけじゃなくて、ベテランの艦娘たちがこぞって不満の声を上げている現状。まず間違いなくあの提督と長門は出撃前に揉めたんだろう。それを無理やり黙らせて言うことを聞かせるようなヤツが上司? 冗談じゃないぞ……

 ここは現代日本じゃなかったのかよ……お上の偉い人達は何考えてるんだ。教育はどうなってるんだよおい。

 

「あり得ないだろ……」

 

 転勤初日から部下のほぼ全員から不満を持たれるようなヤツを寄こすんじゃないよ。そんなのをこの鎮守府のトップに据えてて良いのか? 居ない方がよっぽどプラスになると思うけど。

 

「いっそ漫画みたい都合の良い救世主とかが現れてくれればなぁ……」

 

 誰が放ったか、そんな呟きが聞こえてくる。

 怒気を放っている艦娘の集団から少し離れ、熱気が冷めるまで眺めていた。

 




内容が薄いし展開は進まないし……
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