まさか50話まで続くとは思わなかった…プロットよわよわ♡ 計画性無し♡ 見切り発車♡
目を覚ますと最早見慣れたと言っても過言ではない謹慎部屋に居た。
昨日お偉いさんから俺の処遇を聞いてから帰って来た記憶が無いんだけど……何があった!?
「記憶処理? いやいやまさかそんな」
しかしいくら頭を捻ってもまるで思い出せない。マジで記憶処理された可能性があるな。ヤバいぞ。
――コンコン
「スチュワートさん、起きてますか?」
扉がノックされ、呼ばれたのでベッドから素早く起き上がって身だしなみを確認する。多少服に皺が出来ているだけでそれ以外は何ともなかったから多分問題は無いだろう。
「はい、どちら様でしょう……か?」
ドアノブに手を掛けて声を出しながら開ける。
そこに居たのは……そう、女教師っていう言葉がとてもピッタリな女性だった。
「あら、おはよう。私は香取よ。今日から貴女に色々と指導するように言われているわ」
「あっ、ハイ。おはようございます」
女教師――香取さんって……俺がこの部屋から出る為に一緒に居なきゃいけないんだっけ?
「これからしばらくの間、よろしくね」
「……ヨロシクオネガイシマス」
あぁヤバい! 事情聴取の時に偉そうな人の隣に立ってた大和を見てから一週間。何もない部屋で新聞ばかり見てたから佐世保で培った女性への耐性が落ちている。そのせいで上手く喋れない!
そもそも緊張のあまり会話どころじゃないから、スルリと近寄って握った手を離して欲しい。出来れば後二メートルくらい離れて欲しい。
「うふふ♪ これはまた虐め甲斐のありそうな子……♪」
何故か俺の方を向いて楽しそうに微笑んでいる香取さん。何かを呟いていたみたいだけどボリュームが小さくて聞こえなかった。気のせいかな?
「挨拶はこれくらいにして、と。朝からそんなに緊張しなくても大丈夫よ。まずは朝食にしましょう」
「……分かりました」
俺は香取さんに連れられて食堂にやってきた。壁や床は佐世保鎮守府よりも近代的だけどあまり広くなかった。佐世保鎮守府とは似ても似つかない。
それに途中で憲兵さんとはすれ違ったけど艦娘とはすれ違わなかったから、恐らく大本営は鎮守府とは別の建物で、俺みたいにヤバいやらかしをした艦娘の処罰をしたり各地の提督を集めて会議したりと、艦娘に関係はするけど艦娘が関わらなくても出来る仕事を主とする施設だろうなと思った。
そのうち適当な席に座らせられて、別れた香取さんが皿を手に戻ってきた。
「はい、トーストとコーヒーよ。少なかったらおかわりはあっちね」
「ありがとうございます」
……さっきからなんでこの人ずっとニコニコしてんだろう。
そう疑問に思いながら久しぶりのコーヒーを啜る。砂糖が入っていない普通の苦いコーヒーの風味が口の中に広がる。美味しい。
特に会話が為されるでもなく、全て食べ終わるまで会話が無かった。
久しぶりの色どりのある朝食にリラックスして思わず足を組みそうになったけど、慌てて元に戻したから香取さんには気付かれなかった。
「あら、どうかしたの?」
「……少し気になることがあるんですけど」
「えぇ、何でも訊いて頂戴。答えられるものなら答えるわ」
……じゃあバンバン質問していこうか。情報は何よりも高価ってどこかの偉人も言ってたんだし、俺も倣って情報収集に励んだとことで何もおかしくは無い筈だ。
「ここは大本営ですよね?」
「確かにここは大本営と呼ばれているわね」
「……だったら何故艦娘が居ないんでしょうか?」
「良い質問ね。でも、ちょっとややこしいから、後で教室に案内するわ。そこで授業をしましょう♪」
そう言って立ち上がり、食べ終わった食器を片付けに行った香取さんに付いていく。食堂の従業員も普通の人だったし、やっぱり大本営には艦娘が居ないんだなぁ。
食堂を出てからちょっと歩けば 「第一学習室」 とプレートが見える部屋に着いた。中には誰も居らず、それを確認した香取さんが中に入っていく。
室内はいかにも会議室ですって感じのデカいホワイトボードやスクリーンがあった。
「席に付いてください。授業を始めます」
「はい」
促されるままに椅子に座る。するとそれを見た香取さんがホワイトボードに向かって進み始め、何かを書き始めた。
○大本営とは
そう大きく書かれた下にずらずらと文字が書かれていく。
全ての鎮守府の中枢で最も影響力のある施設らしい。大規模な作戦の立案や、海外からの出向要請の諾否を決めたり、視察の計画を立てたり……まぁ、予想通りっちゃ予想通りだった。
その他にも新人の提督や憲兵候補、見習いの教育施設としての面や、もっと別の役割もあったりするらしい。
そんな大本営はというと、横須賀鎮守府の敷地内に設置されているらしい。それなのに艦娘が見当たらない理由は単純で、艦娘にも秘密にしないといけないことが露見するリスクを減らす為らしい。
「―――と、ここまでは理解できましたか?」
「はい。……でも、先日の事情徴収の時に大和さんが居たんですけど、それは良いんですか?」
「えぇ、あくまでリスクを減らすというだけで、艦娘の一切の立ち入りを拒否している訳では無いの。それに余計な詮索をされないように、門や要所には厳重な警備がされていますから」
ふーん。まぁ、「絶対に入るなよ」よりも「出来れば入らないでね」って方が好奇心が湧かない。それに『艦これ』の艦娘は基本的に提督の言うことをよく聞くから、そもそも気になっても自主的に入っていったりはしないんだろう。それに警備もあるみたいだし。
……一体何を隠しているんだろうね? でも怖いから近寄らんとこ……。
それからは俺が香取さんから色々と質問される番だった。いつ頃からどこの鎮守府に居たのか、作戦中に困ったことは無いか、どういったことが得意で苦手か、足りないと思うことは何か。
「へ、へぇ……凄いわね。初めて鎮守府の外に出たのが川内さんから連れて行かれた夜戦だなんて」
「……嵐のように全てを巻き込んでいきました」
これについては丸っきり嘘……ではない。その前には夕張や赤城と演習をして外に出てるけど、それは鎮守府近海だから実質鎮守府っていう屁理屈が通る。けどその前にスラバヤから日本に向かって移動してきたんだよね。だから鎮守府の外に居た時間はそれなりにあるはずだ。だけど鎮守府 “から” 外に出たのは川内から連れてかれた夜戦が最初だった筈だ。
ある程度話を進めていくとチャイムが鳴った。時計を確認すると入って来た時から二時間近く経っている。それまで俺の話を聴いて何かをメモしていた香取てさんの手が止まる。
「……いい天気ね」
「……? そうですね」
「うふふ♪ ずっと座ってるのも退屈でしょう? 他に訊きたいことが無いなら、外で体を動かしましょうか」
ええぃ! なんでこの人は一々言動や行動が妙にエロいのか!
でも外で体を動かすのは大歓迎だ。艦娘に病気の概念があるのかは知らないけど、運動不足は拙いだろう。
「はい」
外に出る。久しぶりに浴びた太陽光が物凄く心地良い。それに屋外に出たのも久しぶりな気がする。
「ん゛~~ッフゥ……」
思いっきり体を伸ばしてリラックスするのは仕方ないと思う。例えすぐ近くで微笑ましいモノを見る顔を俺に向けている香取さんがいて、もの凄く恥ずかしかったとしてもだ!
「うふふ♪ 気持ちよさそうね。そんなところ悪いのだけど、早速あなたの実力を見させてもらおうかしら」
「……一体何をすれば良いんですか?」
「あら? 私達艦娘が実力を見ると言っても、こんな陸上では何も始まらないわ」
「え……」
この人艦娘だったの!? 肩になんか
「何をしているの? 海に出ないと何も出来ないわよ?」
「……艤装が無いから海に行けません」
そうだ、艤装が無いから海に行ったところで何も出来やしない。実力云々の前にスタートラインにすら立ってない。是非とも別の方法で俺の実力を「大丈夫よ」 ―――!?
「艤装に頼らない基本的な動きを教える為に、私達練習巡洋艦は艦種ごとに決まった艤装を貸し出しているのよ」
あ、艤装あるの? だったら久しぶりの海を満喫しようかな。軟禁に謹慎で海から二週間近く離れてたし、なんて素晴らしい日だ!
「だから艤装が無いなんて言い訳はさせないわ♪ 大丈夫よ、非殺傷性の弾が入っているわ。だから―――」
待って、前言撤回するわ。なんか物凄い嫌な予感がするんだけど……
「全力で掛かってきなさい♪」
「は、ハイィ……」
……死刑宣告か何かで?
この世界では大本営はこんな感じです。
久々に戦闘シーンになりそうですね。今回は万能投擲物と盾を縛られた状態です。
……練習巡洋艦の意味が違う? 私の中では超優秀な試金石が彼女達です。
頑張れ主人公! 普通の装備で教官を納得させてみろ!