私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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53話目です。

お酒に任せた勢いで出来上がった狂気の産物。

ちょっと読んで「あ、無理」って思ったら飛ばして頂いても問題ありません。
やりたいことやったら主人公が壊れていく……なんで?(素朴な疑問)


最悪の寝覚め 増える教官

「ハッ……ハッ……ハッ……」

 

 ただ走る。止まる訳にはいかない。

 唾液が乾燥して(のど)が粘つく感覚が気持ち悪い。脇腹が蹴られたように痛む。

 それでも、隣に居る奴と一緒に逃げないといけない。

 

 すれ違う人の、家々の窓から俺を見る顔を真っ黒に塗り潰された人の視線が気持ち悪い。

 目すら黒く塗り潰されているのに何故か視線は感じる。

 

「アイツはどうなった!?」

 

 俺がそう訊いただけで、振り返りもせずに隣のコイツが答える。

 

「駄目だ! 全く変わってない!」

 

 その答えでまだ終わらないのかと思う。

 

 俺はコイツと一緒に逃げていた。

 

 

 

 昔よく遊んだ公園を―――

 

 玉虫色の空に黒い雲が渦巻いている。

 

 通っていた小学校の廊下を―――

 

 教室から黒く塗りつぶされたデカい人影が俺たちを見てくる。外は夕暮れだった。

 

 中学校のグラウンドを―――

 

 周りには昼休みにサッカーをする子供しかいない。人は多いのにぶつからない。

 

 高校の体育館を―――

 

 走っても走っても入り口から出口まで辿り着かない。景色は流れるのに終わらない。

 

 ただひたすらに逃げる。

 

 

 

 ……どれだけ走ったか分からない。それでも色々な場所を逃げたから相当な距離で追いかけっこをしたんだろう。俺たちは今、部活動で何回も来ている大きな総合体育館の用具室に居た。

 跳び箱を背もたれにして、互いに息を切らせながら座り込んでいる。

 

 ―――ギィィ……ガコン

 

 俺たちがこの用具室を開けた時と同じ音がした。

 

「おいでなすったみたいだぜ」

 

「……ここまでか」

 

 目線を上へ向ける。足音も立てずに俺たちの目の前にソイツは立っていた。

 

「……」

 

 俺たちを追いかけていた時は手ぶらだったのに、今は何故か日本刀を手に持ち、追いかけているときと変わらない無表情で、息も切らさずに無言でこっちを見ている。

 逃げている時は半ば直感的にだったが、実際に見てしまった今は確信した。

 

―――殺される。

 

 そう思った時には視界の隅が赤く染まり、生温く、どこか鉄臭い液体が大量に降り注ぐ。そして一緒に逃げて来た男の首が俺の前まで転がってくる。

 

「……」

 

「……」

 

 転がって来た首を見る。

 

 ……鏡で見慣れた――――(前世の俺)の首だった。

 

 こんなことをしたやつの顔を見る。

 

 ……随分と見慣れてきた、妖精さんが作った艦娘の、スチュワート(今の俺)の顔だった。

 

「……」

 

 視線を下ろして両手を見る。

 

 まるで影が実体を持ったかのように真っ黒だった。

 別のところ、腰辺りの服も、靴だって真っ黒で、輪郭も曖昧だ。

 

 

 

 俺は……

 

 

 

「今の俺は……誰だ? 何だ?」

 

 

 

 

 

「知らんよそんな事」

 

 転がっていた俺の首が笑いながら喋って、直後にスチュワートが一歩踏み出す。

 

「……」

 

 そして握られていた日本刀を振りかぶり―――

 

 

 

 

 

「うわあぁ!」

 

 飛び起きた。……なんかすっごい夢見てた気がする……。

 

「ハァ……ハァ……。ハアァ~」

 

 とんでもねぇ目覚めだ。ヤベェ夢見たってことは覚えてるんだけど……。殺される夢とか縁起悪ぃなぁ……

 

「うえぇ……」

 

 寝起きから汗だくとか……最悪かよ……。

 

「……疲れた」

 

 おかしい……睡眠時間はガッツリ確保したはずなのに、なんで余計に疲れて起きるんだ?

 香取さんから演習のお誘いがあるから二度寝も出来ないとか……やっぱり辛ぇわ。

 

 簡易的なシャワールームで汗を流して着替える。

 そういえば謹慎させられてるけど、この部屋って割と充実してるんだよね。娯楽が殆ど無いだけで。漫画とかの牢屋とかよりはよっぽど良い。中途半端に満足させて脱走されないようにしてんのか?

 まぁ俺は香取さんの言うことを聞いていれば出られるんだけどね! 条件付きとは言え簡単に出られるなんて謹慎室の意味もあったもんじゃねぇな。

 

―――コンコン

 

「スチュワートさん、起きてますか?」

 

 おっと、噂をすればってヤツ? 香取さんのお出ましだ。

 

「はぁい」

 

 そう返事をしながらドアを開ける。いつもいつも俺の手が空いてる時に誰か来るんだからなぁ……。部屋の中透視でもしてんのか?

 

「「おはようございます」……フフッ」

 

 言葉が被るなんてあるあるじゃん。でもなんか新鮮かも。

 

コホン……今日も演習……と行きたかったんですけど、貴女に紹介したい人が居るので、そちらを優先しましょう」

 

 紹介したい人? 昨日の鹿島さんのことかな? 逃げるように退散したから改めてって事? やっぱり鬼だわこの人。折角失礼を承知で逃げたのに強制エンカウントとか嫌になるわ~。

 

 まぁ、どれだけ心の中で文句を言っても、俺に拒否権なんて無いんだけどね!

 

 

 

 

 

 場所は食堂。朝食ついでに紹介するらしい。

 ……という訳で香取さんと朝食を食べる。

 香取さんはパンにコーヒーや果物。俺は白米にベーコンエッグとコーヒー。

 香取さんが俺のお盆に並んだものを変な目で見てくる……食いたい物を食って何が悪い!

 

「……昨日から思ってましたけど、箸、お上手ですね」

 

「え? えぇ……。」

 

 そりゃあ日本生まれ日本育ちですから……って言葉を飲み込む。

 そういえば傍から見たら俺ってアメリカの(ふね)らしいじゃん。そんなのが超スムーズに箸使ってたらそりゃあ怪しまれるよなぁ!?

 

「練習しましたから」

 

 ドヤ顔でそう宣言する。コレデヨイ……。何とかなる筈だ。

 

「そうですか……昨日の事と言い、一生懸命なんですね♪」

 

「えっ」

 

 何が!? 確かに昨日は頑張ったけどさ? 一生懸命って何さ!? 心当たりが無いんだけど……。それに評価下すの早くね? もうちょっと長い間観察してからしっかりとだな……。

 ……まさかとは思うが、中々Sの気がある香取さんのことだ、「一生懸命足掻いてカワイイ」くらいの気持ちかもしれん。

 ……もしかしたら箸の件も俺の素性をそれとなく聞き出そうと……? やはり侮れん。だが俺に悟られた時点で勝負は付いた。そうホイホイ大事な秘密を喋って溜まるか。

 

 そうこうしている内に食堂に人が集まってきて、丁度食べ終わったから片付けをする。それでも香取さんが紹介したい人が来ないから設置されているテレビを見る。……そろそろ梅雨になるって……遅くね? 今六月だろ? 相変わらず『艦これ』世界の天気は分からんなぁ……。

 

 

 

「申し訳ない。待たせてしまったのでありますか?」

 

「……」

 

「スチュワートさん、昨日ぶりです♪」

 

 暫くテレビを見て待っていると、昨日椅子ぶつけた憲兵さんとその隣に居たフードの人、そして鹿島さんがやって来た。

 

「あら、待っていたわ」

 

「ど、どうも~……」

 

 鹿島さんは来るだろうな~とは思っちゃいたけど……なんか多くなぁい? それに語尾に「~であります」って付ける人初めて見た……。テンプレなツンデレと同じようにリアルだと絶滅危惧種だとばかり……。いや、『艦これ』の世界なんだからキャラ付けの一つとしては問題ないのか?

 

「それでは紹介しますね? こちらが昨日少し顔を合わせた妹の鹿島で―――」

 

「改めて、よろしくお願いしますね♪」

 

「こっちの黒い二人の内、特徴が無いのがあきつ丸さん♪」

 

 ひでぇ……人間第一印象が凄い大事なのにこの紹介の仕方はひでぇな……。

 

「ちょっ!? もう少しマシな紹介は無かったのでありますか!?」

 

「そしてフードを被っている方が神州丸さんよ」

 

「よろしくお願いします」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 赤ずきんが黒くなったらこんな感じにでもなるんかな? ……って目が死んでるゥーッ!? ……何か触れてはいけない過去とかありそうだからあんまり絡むのは止めとこ……。

 

「あきつ丸さんと神州丸さんはなんと……陸軍の艦娘なのよ」

 

「……?」

 

 なんで陸軍が艦を作る必要があるんだ……? まさか飛行船? 昔の人が考えることはよく分かんないなぁ……。

 

「私たちもスチュワートさんに興味が出ちゃったの♪ だから香取姉と相談して、今日から私達もスチュワートさんを教育するわ。よろしくね♪」

 

 マジかよ……。

 

 どうやら、俺の教育はいつの間にか教官が増えて、特別強化プログラムになっていたらしい。

 

 せっかく謹慎部屋から出られたと思ったらこんな日々が来るなんて……。

 




ちょっと夢見の悪い主人公でした。

こんな夢は自分も見たこと無い……精々ドナ〇ドが滑り台の上でジョ〇ョ立ちしてる夢かなぁ……。

四人揃って教育四天王! チャンピオンの座は空席だぁ!
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