私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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54話です。

ちょっと短めです。

小説作成時間が取れません。困ったなぁ……


気持ちは問題

 いやいやいや、「興味出ちゃった♪」じゃねーよ。そんなことで俺を混乱させるの止めてくれないかな……。

 

「えっと……どういうことですか?」

 

「あら、鹿島が言った通りよ? 彼女たち三人も、貴女の教育に混ざるからよろしくねってこと♪」

 

 マジ!? 一人目の香取さん(ボス)すらクリアしてないのにおかわりとか冗談じゃねぇぞ……。マジ震えが止まらねぇからよ……。

 

「……私は貴様、スチュワートに近接格闘、ひいては提督殿、要人の護衛の仕方を教える」

 

 相変わらず死んだ目をキリッとさせる神州丸さん。

 ……きっと過去に要人警護で大切な人を亡くしたんだろうな。俺にはよく分からないけど、きっと根性論とかは一切出さずに、経験に基づいた実践的な訓練になるだろう。

 

「私は、書類仕事を教えさせていただきます!」

 

 どこか嬉しそうに俺を見ながら元気にそう宣言する鹿島さん。

 俺は玩具じゃないから、新しい玩具を前に我慢できない犬みたいな目で見ないで……。そこはかとなく不安だけど、香取さんが止めないってことは変な教育にはならないだろう……ならないよね?

 

「自分は「特に無いわね♡」そっ……そんなこと無いのであります! 自分は―――」

 

 何故か焦ったようなあきつ丸さんにやいのやいのと何かを言っては盛り上がる四人。俺は輪の外に弾き出されてしまった。……これが悲しきかな、ボッチ気質の宿命なのよね……。

 

「えっと……有難いんですけど、なんでこのタイミングなんでしょう?」

 

 これは訊いておきたい。……だって昨日の時点で鹿島さんとは接触してないし、神州丸さんは顔を合わせてないし、あきつ丸さんなんて椅子がぶつかっただけだ。一体どこに興味を持つというのか、コレガワカラナイ。

 

「昨日スチュワートさんが休んでる間に、提督さんと私たちがお話しする機会があったの。そしたらスチュワートさんが新しく設置されるそこの初期艦に選ばれたって聞いたの!」

 

「あっ、そうですね……」

 

 選ばれたってなんか誉れある何かっぽくない? それよりだったら何方かと言うとお仕置き的な意味で行けって感じだし、一年は出撃も出来んし……それは当事者の俺と、決めたあの人くらいしか知らねぇよな。

 でも、俺に興味が出たって言うのはそういうことだろう。新しい秘書艦がどんなヤツか見定めてやるって意味か? ……やっぱり香取さんの妹か。仄かにただよふ S のかほ()りがするぜ……。

 

「だから、私たちでスチュワートさんを完っ璧な初期艦にしましょうって決まったの!」

 

 あ~……うん。俺を忙殺しに来てない? せめて影分身とか使えたら全部簡単に熟せるんだろうけど……そんなの人間じゃないし、そもそも生物ですらそんなの出来なさそうだからどっちにしろ無理だね。

 

「その時に私が書類仕事を―――」

 

「私が戦闘を―――」

 

「自分が「あ、あきつ丸さんは昨日も言ったように教える事無さそうだから挨拶も済んだし、帰っても良いわよ?」あ、あんまりであります!」

 

 ……あきつ丸さんには悪いんだけど、滅茶苦茶イジられてるのは、見てる分には愉しいから介入はしないことにした。それにしたって不憫ポジとか……実は結構美味しいポジションに居るんじゃねぇかな。

 

 

 

 

 

「……そうです。もっと抜いてください」

 

「……これ以上は、無理です……ッ……!?」

 

 神州丸さんの吐息が耳に掛かって、くすぐったさからまた体が跳ねて注意を受ける。

 

「……もっと意識してください……そう。姿勢はそのままに」

 

 ピタリ、と意識して動きを止める。

 

「……」

 

 俺は神州丸さんに連れられて畳張りの部屋に連れてこられていた。

 藺草(イグサ)の、畳の香りがジャパニーズブラッド、ヤマトソウルを刺激する。

 しかも目の前、ではなくほぼ密着状態で俺の腕や肩を掴んで揺すってくる美少女(神州丸)が居るとなると、訓練なんて頭の中から飛んでいく。男の心を持つヤツはもっと別のナニかも刺激されるだろう。

 

 むしろ緊張して力が抜けないんだが!?

 

 それは俺も例外ではなかった。友達付き合いの悪友の肩組みとかそういうのじゃないとなると、童貞で自称コミュ障の俺に、このシチュエーションはハードルが高すぎる。

 

「やっと力が抜けて来ましたね……」

 

「……ちょっと窮屈さを感じますね」

 

「始めたばかりなので仕方ないです。最初から上手い人なんて居ないんですから……シッ!」

 

「!? ……え?」

 

 神州丸さんが掛け声? を上げて一拍としない間に拳が目の前で寸止めされていた。

 俺の口からはマヌケで呆けた声しか出てこない。

 

 油断していた言ったら言い訳になってしまうな。

 

 ……そうだ。これはあの香取さんが選んだ三人の人物からの教育だった……。香取さんよりは多少難易度は低いでしょ……みたいな甘い考えを、なんか訓練って雰囲気が神州丸さんとの距離が近い所為であんまり感じないんだよなぁ……みたいな弛んだ思考を、光の灯らない目で見透かしたとしか思えない動きだった……。

 

「……ご指導よろしくお願いします! 師匠!」

 

 つい、ノリで言ってしまった。

 

「~~~ッ!」

 

 顔を真っ赤にした神州丸さんに一本背負い? されて悶絶した。

 死んだ目と無表情がデフォルトなのにあんな顔もするとか……ギャップってすげーな。超絶チキンの俺が柄にもなくドキッとしたね。

 

 

 

 

 

「午前中は神州丸さんの訓練、お疲れ様でした!」

 

 そして午後は鹿島さんから書類仕事の教育……ってこんなの眠くなるに決まっとるやろ! 俺は今日夢見が悪くて睡眠不足気味なんでね。それに午前中は訓練でずっと座りっぱなしか、力を抜くために頑張ってたからね。

 しかもそれに加えて静かな部屋、食後、心地良い日差し……フルコンボじゃねーか!

 

「私が教えるのは書類仕事です! スチュワートさんは確か、佐世保鎮守府に居たんですよね?」

 

「はい、そうですね」

 

「そこで秘書艦って経験しましたか?」

 

「え? あ、はい」

 

 確か提督に淡々と一時間毎に時間を知らせて、飯を用意したり、身辺の細々をやって、負担を軽くする他にも、護衛的な意味があるんだっけ? 確か激辛カレーをな……フフフ。今度の新しい提督サマにはどんなものを……って鹿島さんが凄く驚いてらっしゃる。

 

「えっ嘘っ!?」

 

「?」

 

 一体何? 俺が佐世保で秘書艦するとなんで驚かれるの?

 

そ、それじゃあ私は何を教えたら……え、え~っと……書類仕事について分からないこととか、訊きたいことはありませんか!?」

 

 え? 何でそんな必死なの? 俺なにか変な事したっけ?

 

 ……でも何も質問しないっていうのは意地悪なのかねぇ……あの様子だと絶対に何かしらの質問しないといけなさそうだし、“何でもいいから何か質問してください” って顔に書いてあるし……。

 ……あの慌てよう、まさか……。

 

「か、鹿島さん?」

 

「はっ、ハイ!」

 

「ちょっと言いにくいんですけど~……まさか、新人さん?」

 

「うっ」

 

 そう一瞬呻き声を上げて後ろに半歩下がった鹿島さんの目が凄い勢いで泳ぎ始めた。きっとデフォルメで今の鹿島さんを絵に描いたら間違いなく顔は真っ青で目はグルグル状態だろう。

 

 ……ちょっと香取さんの気持ちが分かっちゃったかもな~。




主人公!? 止まれッ!
ちょっとヤバイ感じのその扉は開けてはイカン!
きっとまだ引き返せる筈だッ!
うおおおぉぉぉーーーッ!
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