私の名前は「      」   作:捻くれ餅

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59話です。

ちょっと長くて内容がとっ散らかってたり、誤字が多かったりするかもしれません。
その時は「日本語も分からんのかサルゥ!」って言いながらご覧ください。

誤字脱字報告、いつも助かっております。感謝です。


艦載機と駆逐艦

 赤城さんに渡されたのは盾、時雨に渡されたのは手榴弾。そして香取さんに渡されていたのはレンタル艤装。既に手に持つ砲は返してあるけど、魚雷や腰に着ける艤装はそのまま借りている。流石に魚雷も何も無くてはそれこそタックルくらいしか有効打が無いことになって非常に拙い。

 前回の演習では突っ込んだ進路上に格ゲーの設置技みたいに爆弾落とされて吹っ飛ばされたんだよね……。

 あの時は何をトチ狂ったのか遠慮して魚雷を撃たなかったんだっけ? ……格上相手に舐めプとか、殺されても文句言えないんだよね……

 

「ククク……だがあの時の俺は所詮最弱設定よ……」

 

 教官に鍛えられたし、今回は魚雷も撃ち込むつもりだ。前回は赤城さんにダメージを与えられなかったけど、今回は沈めてしまっても構わんのだろう? な心意気で行きたい。

 

 それをするには艦載機を何とかしないと話が始まらない。俺の持ってる投擲物がマジで有効だったんだけど……きっと何かしらの対策はしてるだろうし、既に音響手榴弾を海に沈めてるからその分数を減らすことは出来ない。

 

―――チャプチャプ

 

 聞いたことのない、戦場に似合わないコミカルな音が俺の背後から迫ってくる。気になったから振り返る。

 

「……」

 

 敵じゃない。

 

 そう直感的に理解できた。

 おそらくコレが神州丸さんの言っていたヤツだろう。確かに赤城さんと比べると数は少ないものの、あっちは本職だし仕方無いと思う。それでも何もないよりはずっと心強い事は間違いない。

 

「だけど……だけど……ッ!」

 

 これはあんまりじゃないか……お風呂に浮いてそうなアヒルのオモチャの飛行機バージョンと言えば分かりやすいんじゃないだろうか? 緑色に塗られた飛行機がそれこそアヒルみたいに俺の後ろに並んでいた。

 これを見て噴き出さなかった俺自身を褒めたい。

 

 非常に気になるものの、いつまでも他所見をしている訳にもいかない。前を向いたら赤城さんの影が結構大きくなっていた。ゆっくり赤城さんの方に進んでいたが、それでもまだ距離はある。

 

 前に何度も見た、詰めようにも詰められない距離だ……

 

 そう思った直後、赤城さんの方から大音量と共に大量の艦載機が飛来して来た!

 

 

 

 前回からの反省を活かせオラァ! 序盤に艦載機を落とさなきゃジリ貧で詰みだ。

 

なろぉ!」

 

 まずは焼夷手榴弾ン! 先頭から順番に出来れば全員、誘爆して散れ!

 

 そして手榴弾を放った後は(うえ)のことなんて気にしてられない。全速力で艦載機の雲を突っ切ろうと盾を上に構えて速度を上げる。

 

 ―――ドドドドド―――

 

 そして盾越しに聞こえてくる硬いもの同士がぶつかり合う高い音と衝撃。神州丸さんから教えて貰った護身術の受けの一つ、関節を良い感じにクッションにする上手なやり方がまさかこんなところで発揮されることになるとは……。

 

 

 

「チッ!」

 

 思わず舌打ちが出る。俺を中心に放たれる爆撃の雨あられで、弾けた海水が盾と言う名の傘の下から打ちつけてくるこの鬱陶しさと言ったら溜まったもんじゃない。

 チラリと前方に視線を送ると、予想通り距離を取ってる赤城さんの影が見える。香取さんの講座では空母は足が遅いらしいが、足止めを喰らってる駆逐艦よりは全然早いらしく、ちっとも距離が縮まった気がしない。魚雷を撃とうにもこの距離で当たるとは思えないし……。

 

 ―――ドォン!

 

 突然大きな爆発音が聞こえたかと思うと、続いて何回も同じような爆発音が聞こえ始めた。

 超良い感じに誘爆してくれたんだろうな。心なしか盾に掛かる圧が多少小さくなったように感じるし。

 だけど良い事ばかりとは問屋が卸してはくれないらしい。降り注ぐ鉄のシャワーに燃えてる破片も追加されてしまった。いつ俺の足に着いてる魚雷に当たって誘爆するかしないか気が気ではない。

 

「……ええい、キリが無いわ!」

 

 多少軽くなったとは言え全く止む気配のない攻撃はストレス的なアレで心臓に良くない。何時またあの超低空飛行する変態機動型(目の前に爆弾を落としていった)艦載機が盾と水面の隙間からコンニチワしてくるか分からないのも大きなストレスだ。

 

 ここは一旦、煙幕を展開して考える時間を作るべきか?

 

 思い立ったがなんとやら。サッと取り出した紫色の缶を放る。

 前回と同じように気の抜けた音を出しながら辺りが紫色の煙で包まれた。

 

 

 

 

 しばらく盾を構え続けていたら次第に盾に与えられる衝撃が少なくなっていき、やがて紫色の平穏が訪れた。

 

「フゥ~~……」

 

 一息つく。相変わらず赤城さんの遠距離からの攻撃力が頭おかしい。

 前回と違って最初から全力で艦載機を飛ばしていたように見えたのに、煙幕張るまでずっと攻撃し続けられるとか、あの艦載機の中身は異次元にでも繋がってんのか? 

 

 風はちょっとあるけど、俺の近くにはまだ煙を吐いてる缶が転がっている。風下に立っているから俺は見つからないだろう。確か前回は、煙が晴れたら赤城さんのところに艦載機は戻っていて、俺の姿を確認したら一斉に飛んできたんだよね。

 

 でも今回も同じようになるとは思えない。煙に隠れる……俺の現状までは前回と同じだが、赤城さんがその後も前回と同じようにしてくれるとは限らない。

 

「俺だったらどうするか……」

 

 艦載機を休める、赤城さんと煙を結んだ線上に待機させる、他の戦場に配置する、大きく分けたらこの三つになるんじゃないか?

 

 そんで、俺が赤城さんだったら再戦の相手からターゲットを外すのは論外だ。仮にも噂が立つレベルの防御力を持つ俺を相手に攻撃力を下げる真似は出来ないだろう。そんな事したら容易に接近を許す。そうじゃなくても打ち倒す為なんて言って自分から挑発したのに自分が先に矛先を逸らすなんて不義理は働きたくはないだろう。

 

 そして次、艦載機を煙幕の範囲外に待機させて、煙幕が晴れるか、俺が飛び出して来たら斉射して潰す方はと言うと……艦載機を休めるかどうかの予想が難しい。

 

 艦載機を待機させているんだったら、攻撃される前、煙幕の外に出る前にスタングレネードを投げて、多くの艦載機を落とせると踏んでいる。もし上手くいったらその後の展開が非常に楽になることは間違いない。

 逆に艦載機を休めているなら、範囲外に出る前にスタングレネードを投げたら無駄になるし、艦載機は一切減らないと、非常に旨味が無い。

 

 妥協案として煙幕の外に出てから多少の被弾覚悟で艦載機の有無を確認、艦載機が居るならスタングレネードで数を減らしてから突っ込む。居ないならそのまま突っ込む。

 

「よし、これで行こう」

 

 それじゃあ黄色の缶を抜きまして……いざ出陣!

 

 

 

 勢いをつけて煙幕から飛び出す。を巻き込み靡かせながら参上した俺ってヒーローみたいじゃね? って思いながらも艦載機を確認して……艦載機、ナシ!

 

―――ドォン!

 

「!?」

 

 いきなり発砲音がしたと思ったらレンタル艤装に衝撃を受けた。上ばっかりに注意が向いていたから気が付かなかったが、撃って来た方を向いたら時雨が砲を構えて立っていた。

 

 ……それも結構至近距離で。

 

 え? 時雨の相手誰? 負けたの?

 

「噂には聞いていたけど……本当に煙出すんだね」

 

 ええい五月蠅いわ! 別に俺自身が煙出してる訳じゃねーんだからどうだっていいだろうが! 兎に角、俺は赤城さんと決着を付けないといけないんだよ!

 

「……通して貰えませんか?」

 

「……赤城さんの為に通してあげたいんだけど、黒星を付けて帰る訳にはいかないんだよね」

 

 畜生! ここに来て中ボス追加とか聞いてないんだが!?

 

「御尤も!」

 

 直後に盾に身を隠す。ガンッという音と衝撃から、艦載機から放たれるのとだいたい同じくらいの重たい一撃だということが分かった。

 

 取り敢えず一度抜いちゃったスタングレネードをポイして、眩しいのを盾の陰でやり過ごして……。時雨の悲鳴は無視だ無視。どうせただ眩しいだけで殺傷力なんてほぼゼロなんだし。

 

「おっと」

 

 なんか魚雷が来てる感じがするから横に避ける。すると目が治ったのか、また砲を構えて撃ってきた。

 

 盾を構えて砲弾を弾いてそのまま―――ラムアタックだコラァ! 通しやがれ!

 

ドンッ!

 

 タックル感覚で突っ込んだら重たい衝撃を盾に感じた。今度はそのまま盾を横に殴るように振りぬく。

 

 開けた視界には、勢いよく壁にぶつかった人と同じように身体を丸め、顔を痛みによって歪めている時雨が居た。……めっちゃダメージ入ってて逆に驚いたんだが?

 

 だけど呆けてる暇なんてねぇ! そのまま魚雷を喰らえぇい! ……避けられた。

 

「うぅ……随分と、荒っぽいね」

 

「……貴女は行儀が良すぎる」

 

 ん……ちょっと言葉にトゲが出ちゃったな?

 でも香取さんに扱かれた俺からすると、“どんな手を使っても沈める” って言う意志が弱いように感じる。

 香取さんだったらきっと砲弾で盾を構えさせて視界を奪ってから偏差射撃で絶対に避けられないように魚雷を撃ってくるに違いない。

 戦場なんて不意打ち上等、卑怯な手上等。殺ったもん勝ちって香取さんに教えて貰ったらどう?

 

 そんなやり取りの直後に、時雨の足元が爆ぜた。

 

「え?」

 

 呆然言葉を放った時雨が海面に倒れてそのまま沈んで……行かなかった。

 

 

 

 

 

『スチュワートさん、遅くなりました!』

 

 コイツ、頭の中に直接……? じゃなくて、多分通信だろう。意識して使おうとしたことねぇな。だって妖精さんが言うには独り言ダダ洩れなんでしょ?

 

『まるゆさん、伊26さんはどうなりましたか?』

 

『倒したよ。時雨さんはどうしようかな……このまま放置は拙いし……』

 

「……そうか、まるゆが居たんだった……スチュワートに気を取られ過ぎてた……降参だよ。僕はこのまま放置でも構わないよ。自力で戻れるから……」

 

「そう? じゃあ遠慮なく。GG(グッドゲーム)

 

 なんだよ……倒れたと思ったら清々しい顔して降参しやがって……。スポーツマンか? 青春してるスポーツマンなのか?

 

『……という訳で時雨さんは大丈夫だそうです』

 

『時雨さんはスポーツマンじゃないと思います』

 

 あ、全然関係ねぇこと言ってたっぽい?

 

『時雨さんは自力で戻れるから大丈夫だそうです』

 

『そう? じゃあ進もう!』

 

 

 

 

 

 赤城さんは距離を取っていた。艦載機が煙幕の範囲外に無い事から、俺はまるゆが海中に居るものの数えるのも馬鹿らしくなる数の艦載機を相手にクソ真面目に立ち向かわないといけない訳で……嫌になっちゃうね!

 

『スチュワートさん、ここでヒントです。艦載機から出てくる弾をよく見て下さい』

 

『……そんなことしてたら頭ブチ抜かれますよ』

 

 まるゆは一体何を言ってるんだろうか。俺に死ねと申すか。

 

『航空機の攻撃だからってそこまで怯える必要はありません。艦は銃弾一発ではそうそう沈みませんから!』

 

 ……確かに余程の紙装甲か欠陥構造でもない限りは軍艦が砲弾ならまだしも、銃弾で大打撃なんてちょっと信じられない。

 だけどさぁ……やっぱり誘爆って怖いじゃん? いくら表面がガチガチでも、内部で爆発されたらどんな艦もイチコロだぜ? きっとそんなので沈んだ艦は数えきれない程あるんだろうし、警戒するのは当然と言うか何というか……。

 

『……ここまでは言いたく無かったんですけど、艦載機の攻撃には強いものと弱いものがあります。強いものだけ避ければ、ちょっとの被害を妥協さえすれば行動の幅が広がりますよ』

 

 あっ、そーゆーこと……。沈みさえしなければ中破だろうが大破だろうが元通りだもんね。……幸い艦娘に乗組員なんて数人、もしかしたら一人の妖精さんだけ。艤装がダメになる直前までは無茶が出来るってことで良いの?

 

『分かりました。アドバイスありがとうございます』

 

 じゃあ次はまるゆのアドバイスに騙されたと思ってちょっと艦載機の観察でもしてみようかな?

 

『赤城さんを倒しに行きましょう! 支援攻撃は任せてください!』

 

 うん、じゃあ俺が攻撃引きつけるから、攻撃担当は任せた。

 

 

 

 

 

―――ブウゥゥゥン

 

 赤城さんの方から艦載機が飛んでくる。俺の足元からボロボロになって数を減らしてはいたけど、飛行機……神州丸さんの艦載機が飛んで行った。

 

 それに合わせて、俺も前へ出る。

 

 第二ラウンド、互いに一対一じゃなくなってるけど、決着を付けようか。

 




教官たちに鍛えられて確実に強くなってますねコレは……
だけどちょっと染められたんじゃないの?

次で決着。空母 vs 変な駆逐艦 + 潜水艦 !

勝利の女神に選ばれたのは……綾鷹でした。
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